ヒトヒトの実モデル“決闘者”withふわんだりぃず 作:月日は花客
色々と試してみて、わかったことがいくつかある。
僕の能力は決闘者として必要な能力をしっかり備えていること。たとえば、コントロールを奪われてないなら自分のモンスターにぶつかられてもダメージを受けないし、モンスターの意志が、アニメの精霊のようになんとなくわかる。
デュエルディスクに表示されたLPで何となく今の自分の状態がわかるということ。
そして、今のモンスターたちは完全な力を発揮できていないことだ。
《ふわんだりぃず×いぐるん》や《ふわんだりぃず×とっかん》などの低級モンスターは問題なく効果を発揮できたが、《霧の谷の巨神鳥》や《ふわんだりぃず×すのーる》は効果が無効化されていた。
それは何故か。
リリースによるアドバンス召喚をしてないから、である。
リリースしなくても喚び出せるには喚び出せるし、攻撃力なんかは変動していないのだけれど、効果のみ使えないのだ。
すのーる達上級モンスターは強力な効果を持っている。きちんとリソースを払わないと完璧な効果は得られないと言うことだろう。
また、召喚回数に限りはなかった。ここら辺はラッシュデュエルに近いだろうか?
ふわんだりぃずは通常召喚を一ターンに何度も行うテーマだけれど、その効果を使用しなくとも召喚を行うことができた。
ただし、モンスターゾーンである五つを超えて召喚すると、統率力や動きの機敏さが無くなってしまった。
僕がまともに戦わせられるのは最大で5体のモンスター、と覚えておこう。
ふわんだりぃずは特殊召喚をしないのでエクストラモンスターゾーンはぶっちゃけ使わない。
金満で謙虚な壺が生きてたらドローソースに使ったけれど、制限になっちゃったからなぁ……。ピン刺しはちょっと不安かも。
あ、そしてデュエルディスクを生成できたあたりでいけると思ったら出来たのが、他カードの生成だ。
試しに《ふわんだりぃず×ろびーな》を生成してみたら、普通に手のひらからぱらりとカードが作り出されたのだ。
ニューロンにあるカード情報やリミットレギュレーションを確認して、都度デッキを新しくしていこうと思う。
禁止カードや制限カードは、使えたけど使った瞬間強烈な疲労感と眠気に襲われた。おそらく僕が使うには強力すぎる……というか、ペナルティみたいなものなのだと思う。
制限カードはまだ使えるけど、禁止カードは使った瞬間寝落ちたから実用性はなさそうだ。
まだ実を食べてそう経ってないし、体が慣れてないのかもしれない。
魔法や罠カードも試してみたいところだけど……と、いうところで巨神鳥が島を見つけた合図をした。
海軍基地からかなり遠い、これまたポツンとある島だ。ここら辺は島が多いのだろうか。大きな大陸はみていない。
巨神鳥はあまりに大きすぎるので、いぐるんに代わってもらい、島に上陸することにした。
報酬にもらった3500万ベリーは、なんとかリュックに詰めている。
「すいません、ここはなんて言う島ですか?」
「お、旅人かい? ここは秋島のグズール島ってんだ」
「観光に旅をしているんですけど、何か特産品とか……ありますかね」
「ウチに来たら先ずはチェリー酒を飲んでみてくれよ! あの白ひげ海賊団だってウチに来るたび大量に買ってくのさ」
「か……海賊団に? 大丈夫なんですか?」
海賊、と聞いて、さっきの名前も覚えてない海賊団の暴挙を思い出す。
ここは平和そうに見えるけど、実は海賊に支配されているんだろうか。
「おや、兄ちゃんあの白ひげ海賊団を知らないのかい?」
「はい、海に出たのは本当最近で……」
「白ひげ海賊団はな、あのロジャー海賊団と同じくらい強くてスゲー海賊なのよ! うちの島は白ひげ海賊団のナワバリとして、他の海賊から守ってもらってんだ」
「……海軍には頼らないんですか? すいません、失礼なことを」
「いや、ここはマリンフォードも海軍基地も遠くてね、それに小さな島だ。海軍もそこまで手が回らないのさ。白ひげ海賊団は略奪だとかしないし、ちゃんと俺たちと取引をしてくれる。良い海賊だと俺は思ってるよ」
「そんな海賊が……」
どうやら、海賊イコール完全な悪、と言うわけでもないらしい。
チェリー酒は後で試してみるとして、ここは平和でのどかな町のようだ。海賊のナワバリだというのに、不穏な気配は一切感じられない。
余程その白ひげ海賊団と言う存在の信頼が厚いんだろう。
「親切にありがとうございます。チェリー酒、是非飲んでみたいです」
「ならあっちにある鈴鳴り亭に行きな。最高のチェリー酒が待ってるぜ」
気のいいおじさんにお礼を言って、僕はその鈴鳴り亭に行ってみることにした。
ハンキングの看板が大きく鈴の形に彫られていて、すぐわかる。
中は居酒屋……というか酒場かな? でも騒がしすぎないいい雰囲気のお店だと思う。こういう店には地球時代も来てなかったから新鮮だ。
「すいません、チェリー酒をひとつ」
「はーい! カウンターにどうぞ」
いかにも看板娘っぽいお姉さんがカウンターに案内してくれる。ここはカウンターで座って飲むか、樽型のテーブルで立って飲むか、らしい。樽の方はもう埋まっているので、自然とカウンターに通される。
僕は足の高いカウンターチェアになんとか座って(僕はあまり身長が高くない)、カクテルグラスに入れられた真っ赤なチェリー酒を眺める。
そういえばさくらんぼのお酒って飲んだことないなぁ。そもそもバーとかお酒専門店行かないし。大抵ビールか酎ハイだったし……。
ドキドキしながら口に含むと、アルコール特有の渋みもありつつふわりとさくらんぼの甘味が広がった。たぶんこれ、結構度数が高いな。一杯でやめておこう。
「わ、本当に美味しい……!」
「なんだ兄ちゃん、この店は初めてかよい」
思わず感動の声を漏らすと、隣に座っていた男の人が話しかけてきた。
みれば、驚くほどの長身で、少し特徴的な髪型をしている。うん、パイナップル。
「チェリー酒って飲んだことなくて……すごい美味しいんですね」
「ああ、チェイサーとしてもちょうど良いし、さっぱりしててうめぇんだよい」
待て、チェイサー? このお酒を三杯も飲めば、僕はきっとベロベロになるぞ。
それをほぼ水がわりって、このお兄さんどんだけ酒に強いんだ。
「ここにはどうして来たんだよい?」
「旅、してるんです。途中で降りれそうな島があったらとりあえず降りてみようって感じで」
「へぇ、一人で船旅か、度胸あるよい」
「ああいえ、船じゃなくて、鳥です」
「鳥??」
パイナップルのお兄さんは、不思議そうにグラスを傾けた。
僕みたいなカクテルグラスじゃなく、ジョッキである。肝機能は大丈夫なのか。
「鳥に乗って旅をしているんです。流石にお店には入らせるわけにはいかないので、待ってもらってますが」
「鳥に乗って旅か……ちょいと気になるよい。その鳥は今どこにいるんだよい?」
「ここに」
僕はデュエルディスクからピラっと巨神鳥のカードを取り出した。
「ただのカードに見えるが」
「えーと、悪魔の実の能力でって言えばわかりますか?」
「……ああ、なるほど」
「どうせなら外で見せますよ! 僕のモンスター、すっごくカッコいいんで!」
遊戯王のモンスターの魅力というのは決闘者なら誰だって語りたいものだ。
特に自分が使っているテーマとなれば、その語りにも熱が入るもの。
正直若干酔って気が大きくなっている事に、僕は気づいていなかった。