ヒトヒトの実モデル“決闘者”withふわんだりぃず 作:月日は花客
「グラララララ……なんだぁマルコ、その雛鳥は」
「ああ……ちょいと拾いもんをしちまってよい、そういえば名前を聞いてなかったな、おれはマルコ。こっちは白ひげの親父だよい」
「え、ええっと……遊鳥旅途と申します。白ひげの船長さん」
「雛鳥に子ども……マルコ、お前また変なもんを拾ってきたな」
「あ、えっと……雛鳥は、僕がマルコさんに一方的に託させてもらったんです」
「ああ?」
僕は説明した。
雛神鳥シムルグがマルコさんの悪魔の実の性質を見抜き、懐いたこと。僕の方から師匠となってほしいことをお願いしたら、ここに連れてこられたこと。僕には敵意はなくて、単純に雛神鳥の意思を汲んでお願いしたこと。
マルコさんは雛神鳥を預かっていいか、船長さんに聞きたいらしかった。
「そりゃまた突然だな」
「おれとしては引き取るのは悪くないと思ってるよい。なんてったって神鳥の雛だ、縁起は良い」
「──!」
「『いざという時は船長さんの仲間たちの盾になってやります』と言ってますね」
「良い感じに覚悟が決まってるな」
鳩?胸の身体でポンと胸を叩く雛神鳥はかわいらしくも勇ましい。
それに白ひげの船長さんは大きく笑った。
「いいじゃあねぇか!! その小さい身体で俺たちを守るって? 気に入った、おいマルコ、ちゃんと世話はしろよ」
「とはいっても、モンスターなので食事も睡眠も必要ありませんがね」
「おお、良かったなぁ雛鳥、これでお前もウチの一員だよい」
「──!」
がんばる! と雛神鳥が鳴く。
な、なんだかトントン拍子に話が進んだような……。
「ほ、本当にいいんですか? 言っちゃえば、見知らぬ旅人の悪魔の実の能力なんですよ?」
「あー……おれたち海賊はな、無法者や無頼漢なんて呼ばれるような輩だよい。だから、人の害意や悪意ってのには敏感でね」
「お前からは一切の敵意を感じられねぇ……むしろその雛鳥も合わせて、こっちを守るとか、心配の色が強い」
「海賊とは縁のない一般人のようだし、雛鳥のやる気があるなら船に乗せるのもやぶさかではないってことだよい」
「そ、そんなもんなんですかね……」
一般人だとしても、他人の異能を船に乗せるって警戒しないのかな。海賊ってこんな大らかなのか、ちょっと《海造賊》のソロモード思い出す。あのマスターデュエルのお話は好きだ。
「お前が乗ってきた黒い鳥からは警戒を感じたが……まぁ海賊の船に主人が乗り込むんだ、当然だな」
「へぇ……」
「親父、こいつ最初おれのこと知らなかったんだよい。ここら辺じゃあ相当無知だ」
「ふぅん、お前、どこからこの島に来た?」
「えーと、リー島? ってところの近くの島です」
すると、コソコソと話を聞いていたらしい他の船員さんがザワザワと騒ぎ出した。
「リー島って……ここから何百海里と離れた辺境じゃねぇか」
「そこから鳥に乗ってここまで? 何日かかると思ってんだよ」
「えーと……自分の悪魔の実の力を試してたらいつの間にか?」
そういえばあれからパンとか食べてないような……。寝てもいないような……。
ハイになってたんだろうか、全く疲れも空腹感も感じない。
「リー島近くの島で攫われたんです。なんか神? にされかけたので、逃げてきました!」
「神にされかけた?」
「なんか無足一眼がなんとかって……。明らかに拷問部屋みたいな所に連れてこられたので、咄嗟に走って逃げて……」
「それって……もしかしてツュジマ教じゃないか? あれは神の子の両脚を切り落として片目を抉るやべー宗教って聞いたことあるぜ」
一人の船員の言葉に、ざわめきが大きくなった。つまり僕は、両脚を切り落とされて片目を抉られる直前だったということ?
「はわわ……やば……」
「いや軽いな!?」
「いやーまぁ、このカードたちのおかげで逃げられたのでまぁいいかっていうか……もう過ぎたことっていうか……」
「お前……顔に似合わず胆力あるよい」
まぁ胆力無いと決闘者としてやっていけませんから。どんどん相手の盤面が出来上がっていくのを見つめるしかできない……そんな状況でも絶望せずに相手を見れる人こそ決闘者だと思う。
最初こそ絶望したけど、すのーる達やシムルグがいるからもう怖く無い。
「最初こそ悪魔の実を食べさせられたりして混乱しましたが、そのおかげで彼らに会えたわけですし……そこだけには感謝してますよ」
「……その危機感でよく海を渡ってこれたよい」
「空路は海路より落ち着いているだろうからな。マルコみてぇに飛べるやつも少ない」
ともかく白ひげ海賊団は新しい仲間を歓迎しようと、わらわらと宴の準備を始めた。
愉快な海賊だと思う。雛神鳥が懐いたのも頷ける、良い雰囲気の集団だ。白ひげさんを親父と慕い、ナワバリで島を守る……。海賊といっても、悪い海賊と良い海賊がいるのかもしれない。
「野郎ども! この雛を歓迎する宴の準備だ! 客人も忘れんなよ!!」
「おおー!!」
白ひげさんの一声で、船員たちは一丸となって動き始める。
僕としては客人なんて丁寧に扱われなくても良いから準備を手伝いたいのだけれど、断られてしまった。残念。
雛神鳥はマルコさんの腕の中でみんなを応援している。
「それにしても……微弱とはいえおれの覇気に耐えるとはな。お前、本当に何者だ?」
「ただの一般決闘者です」
「デュ……?」
白ひげさんも知らないあたり、やっぱりこの世界に遊戯王は無いのだ。せめて伝説とかで残ってたりしないかと思ったが、完全に異物として転移させられてしまったのだろう。
それに少し憂鬱になるが、カードを作り出せて旅ができてオゾンより下なら問題無い。
「って、待て……あの船は……!?」
ふ、と船尾にいた望遠鏡持ちが叫びを上げた。
ここからではよく見えないが、何かが近づいてきているらしい。
「親父! 親父! やべぇよ、アイツは、あの船は──」
宴の準備はもうほとんどできていて、あとは料理を運び出し全員で席に着くくらいだった。
しかし望遠鏡持ちの叫びが船員たちの気を片結びに引き締めて、その腰のサーベルに手を伸ばさせた。
「あの船は……ロジャーの船だ!!」