さっさとあげようと思っていましたが、遅くなってしまいました。
早く上げれるようになりたい。
Side 士道
琴里の指示で、一旦俺たちはフラクシナスに戻ってきていた。
もう一人の俺と名乗った、俺そっくりの少年と共に。
琴里が言うには、俺たちとその周辺を見ていたのだが、その少年は俺たちが地上に降りた時に突然現れたので、彼がどのような存在なのかはまったくわかっていないらしい。
なのでとりあえず本人に話を聞くことにしたのだそうだ。
―――正直、俺はまだこいつの存在が信じられない。
だってそうだろう。いきなり目の前に現れた自分そっくりの奴が、もう一人の俺だなんて言われても信じられるはずがない。
実際存在しているから信じるしかないが。
令音さんについて、琴里のいる部屋に向かう。
ここで考えていても仕方がない。とにかく今は琴里のところへ行こう。
あと、十香は今この場にはいない。
俺がここにきたときにはもういなかった。
会わせろとも言ったのだが、検査があるの一点張りで結局会うことはできなかったのだ。
ここの司令が琴里である以上、危険なことはないと信じているが、やはり心配だ。
琴里にあったらそのことも聞いてみよう。
俺がそんなことを考えているうちに、どうやらついたようだ。
令音さんの後に俺も部屋に入る。
それにしても、さっきからあいつ何も喋らないな。少し不気味だ。
◆◆◆
Side out
「あなた、一体何者なの?」
琴里が少年にそう尋ねる。
問われた少年は無表情で、じっと琴里を見ている。
「…彼、士道にも言ったが、我は”もう一人の彼”…それ以上でもそれ以下でもない…」
数秒の後、彼が口を開く。
彼の答えは、彼が士道に言ったことと大差ないものだった。
「――なあ、それって一体…」
今度は士道が少年に尋ねる。
少年はその言葉を聞くと、わざとらしくため息をついた。
「はぁ…貴様はもう少し聡明な人物だと思っていたのだがな…士道。我の思い違いだったか…。貴様もそうだ、琴里よ。貴様ならば自ずと解に辿りつけるだろうに…」
落胆したようにそう零す少年。
つまりこう言っているのだ。
自分はもうヒントを出しているのだから、あとは自分たちで答えを見つけろと。
「勿体ぶらず教えてくれないか。君がどういう存在なのか、どうやって生まれてきたのかを。」
ここでいままで沈黙を保っていた令音が口を開いた。
その言葉を聞いた少年は少し考えるような動作をする。
「貴様らでは解に辿りつくことは出来なかった、か。致し方ない。それでは話そう、貴様らの疑問に答えるとしよう…」
そう言ってから一拍おき、彼は話し始める。
「さて、では我がなんなのかを話すとしよう。まあ、これは生まれた理由にも関わってくるのだがな。まず、――我が”もう一人の士道”であるのは紛れもない事実だ。そしてその事からわかるように、我は人間ではない。我は、――そうだな、貴様らが言っていた”精霊”とやらと似て非なるモノ、といったところか。今はその程度に理解していればいいだろう。……次に、我が生まれた理由だが…」
そこまで話すと、彼は突然上を見上げ、さらに右手を顔の前に持っていく。
まるで高いところにあるものを掴もうとしているようなポーズだ。
その奇妙なポーズをとった彼は、
「――人間とは、なんと脆弱なのだろうな…。」
そう、呟いた。
その時、士道やフラクシナスのクルーたちはこう思った。
(何言ってんだコイツ…)
と。
だが当の本人は周りのそんな空気に気づいた様子もなく話を続ける。
「…精霊の力は人間の身にはあまりにも強大すぎる…士道は人間の中でもかなり容量が大きいが、それでもダメだ。せいぜい精霊一人分程度しか入らんだろう…だから我が生まれたのだ。…理解したか?」
少年はそう言って口を閉ざす。どうやら今ので話は終わったらしい。
琴里や令音は少し考え込むような仕草をしているが、士道は全くわかっていなかった。
士道がもっと詳しく話を聞こうと思ったとき、琴里が口を開いた。
「…なるほど、つまりあなたは、士道の中から溢れた精霊の力の塊のようなもの、ということね。」
「ご名答。さすが我が妹、聡明で助かる。」
「私はあんたの妹になった覚えはないわよ。」
訳のわからないことを口にする少年。だが士道は突っ込むことができないほど混乱していた。
「ち、ちょっと待ってくれ。一体どういうことなんだ?」
そう士道が問いかけると、琴里がため息を一つ吐いたあと話してくれた。
「いい?まず、士道が封印した十香の力はどこにいったと思う?」
「え?…封印したんだから、十香の中じゃないのか?」
「はずれよ。十香の力は―――士道、あなたの中よ。」
「え…?」
困惑したように士道が声を発する。
「でも、その力は人間の身に余る。あとはあいつが言ったことそのままよ。」
そう言われ、士道は少し考えてやっと理解する。
つまり、十香の力を士道は自分の身に封印したが、精霊の力は強大なため士道から溢れ出てしまう。そこから生まれたのがあの少年だ、ということだ。
「でも普通なら、精霊の力が士道から出ていくだけのはずよ。何故あなたは生まれることができたのよ。」
士道が理解したのを見て、琴里が疑問を口にする。
そして、その疑問に少年が答える。
「ああ、それはだな。士道から出ていく時に、士道の精神内に封じられていたなにかも共に出てきた為だ―――と、思う。そのときはまだ意識がなかったのでな、あまりよくわからんのだ。」
その言葉を聞いた瞬間、士道はなぜか嫌な予感がした。
それと同時に、疑問が生まれる。
「なあ、その、俺に封じられてたなにかってのは、一体何なんだ?」
「さあな。我はもう一人の貴様ではあるが、貴様と同一な訳ではないし、そもそも生まれてすぐにここにきた故、何もわからん。貴様の妹は分かっているようだがな。」
士道は琴里を見る。
琴里はニヤニヤと笑っていたが、やがて口を開いた。
「いい?士道。コイツの今までの言動と…ぷぷっ、あなたが封じた記憶を…くっ、思い出してみなさい。そうすれば…わかるはずよ。」
琴里が、堪えられない、といった様子で笑いを漏らしながらそういう。
やはり嫌な予感はするが、士道はその言葉の通りに考え始める。
程なくして、結論に至った士道は、一気に顔を青ざめさせる。
「ま、まさか…なにかっていうのは…」
そんな士道を見て、琴里がこの上なく楽しそうな顔をする。
「そう。コイツは士道、あなたの―――黒歴史そのものよ。」
その言葉を聞いた士道は、頭を抱えることしか出来なかった。
士道くん涙目。