遅れてすみません。
Side 士道
気が付くと、俺は自分の家のソファーで寝ていた。
きょろきょろと自分の周囲を確認しながら、記憶を整理する。
俺は、確かフラクシナスとかいうところにいたはずだ。
琴里や他の人たちと話していたんだったな…
…あれ?
琴里たちと、俺は何を話していたんだっけ?
十香のこと?いや、それはあそこにいた人たちに聞いたな。確か、検査があるって言ってたな。
少し怪しいけど、琴里が司令官だし、大丈夫だろう。
まあ十香のことはいったんおいておこう。
問題は、何を話していたか、だ。
もうちょっと思い出してみよう。
部屋に案内されて、琴里と話して…ん?
ちょっと待て。確かに俺は部屋に入ったけど、話していたのは別の人だったな。
どんな人だったか…
「うっ…頭が…」
その人のことを思い出そうとした瞬間、激しい頭痛が俺を襲った。
だんだん視界がぼやけて、意識を保っているのが難しくなっていく。
俺は抵抗もできずに、意識を手放した。
◆◆◆
あの後、目が覚めると琴里がいた。
フラクシナスで話していた人について聞いたが、すぐに思い出す、今思い出してしまうのは危険、などと言って、教えてはくれなかった。
それが三日前。
今日は月曜日で、今は朝。
俺はもう学校につき、あの一件について考えている。
琴里と話していた人については、すぐに思い出す、と自分の妹である琴里がいっていたので、疑いはしない。
問題は十香のほうだ。
三日もあっていない彼女のことが、とても心配だ。
琴里たちのところにいるとは思うが、いない可能性もなくはない。
―――と、そこまで考えたところで、自分の唇に指をあてていたことに気づき、赤面する。
無意識のうちに、あの日のことを思い出していたのだろうか。
もう三日前のことだが、まだあのときの感覚が残っている。
十香とキスをして、彼女を抱きしめ、地面に降りた。
彼女の纏っていたドレスや様々な装飾は、キスをしたときに霧散していた。
…そういえば、あそこに、俺たちとは別の誰かがいた気がする。
確信はもてないが、そんな気がする。
俺は、そこにいた誰かを思い出そうとした。
――が、いつのまにか俺の前に立っていた鳶一に遮られた。
「ごめんなさい」
鳶一が頭を下げてきたのだ。
おそらく、というか確実にあの日のことだろう。
俺は、いきなりのことにひどく吃驚し、立ち上がってしまった。
「い、いいから、頭をあげてくれ」
とりあえず鳶一にそういうと、素直に頭をあげてくれた。
だが次の瞬間、鳶一にネクタイを根元から引っ張られる。
「でも――浮気はダメ」
俺は鳶一が何を言っているのか、いまいち理解できなかった。
意味はわかっているが、なんのことを言っているのかがわからなかった。
浮気ってなんのことだ。
「はーい、みなさーん。ホームルーム始めますよぉー」
俺は鳶一にそのことを聞こうとしたが、ちょうど岡峰珠恵教諭――愛称はタマちゃん――が入ってきた。
鳶一はタマちゃんを一瞥すると、俺のネクタイを離して自分の席――といっても俺の隣である――に座った。
俺も、先程の鳶一の行動を疑問に思いながらも、自分の席に座る。
「はい、みなさん席に着きましたね」
タマちゃんが元気な声を上げ、思い出したかのようにうんうんと頷く。
「そうそう、今日は出席をとる前にサプライズがあるの!」
サプライズとはなんのことだろう。
まあ教諭がああいっているのだ。すぐにわかるだろう。
俺がそんなことを考えているうちに、教諭は教室の外で待機しているであろう人物に声をかける。
入ってきたのは、一人の少女だった。
その少女は、黒板に下手くそな字で”十香”と書くと、こちらを向いて自己紹介をした。
「今日から厄介になる、夜刀神十香だ。皆、よろしく頼む」
クラスが一気にざわつく。男子だけでなく女子もだ。
それも仕方がないだろう。十香は――すごく綺麗だ。
俺も十香を知らなかったら、ほかのクラスメイト同様、彼女の美しさに見惚れていただろう。
だが、今の俺の心情は、感嘆ではなく、驚愕だ。隣の鳶一も驚いているようだ。
十香が視線を向けてくる。
「おお、シドー!会いたかったぞ!」
大声で俺の名をよぶと、十香は俺の近くまでやってくる。
クラス中の視線が俺に集まり、再びクラスは騒がしくなる。
中には俺と十香の関係を邪推する声や、鳶一との関係性を探るような声も聞こえたが、俺はそんな声を聞き、いやな汗を流し、十香に声を掛けようとする。
「はーい、みなさん。静かにしてくださぁい」
―――が、タマちゃんの声によってさえぎられる。
「実は、みなさんにもう一つサプライズがあるのです!――入ってきて!」
はい、という声が廊下から聞こえた。その声は聞き覚えのある声だった。
その声を聞いた途端、なぜか俺の全身から嫌な汗が噴き出した。
まるで、俺の本能が警告しているようだ――そいつは危険だ、と。
だが、そんな俺を無視してその人物は入ってきた。
その顔には見覚えがあった―――ありすぎた。
それと同時に、俺はすべてを思い出した。
あの日、俺と十香のほかに誰がいたのか。
フラクシナスで、琴里と話していたのは誰か。
そして――そいつが何者か。
すべてを思い出した俺は、訝しげな声を掛けてくる十香に、何も反応できなかった。
そうしている内に、そいつは達筆な字で黒板に名前らしきものを書き、こちらに向き直った。
あっ、という声がクラスのあちこちから漏れ、次いで俺に視線が集中する。
そいつの顔は、俺そっくりだった。
「今日からこの高校に通うことになった、
俺は、ものすごい疲労を感じた。
士道君不遇。
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