負ける気せぇーへん、機械兵やし   作:長い犬

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10話

ヴヴーーッ、ヴヴーーッ

 

けたたましくサイレンが鳴る。ボロボロだからか音割れしており、それが緊迫感を醸し出す。緊急招集の合図だ。

 

集合地として事前に決められていた宿舎前の演習場に兵士たちが続々と集ってくる。私もその流れに乗って整列を始める。皆動きは迅速だが、顔が固い。

 

1分もしない内に全員が集まり終えると、朝礼台に無駄に立派な髭を携えた将校が上がる。ギョロリと擬音が出そうなほど私たちを見回した後、咳払いをして指令を下す。

 

「これよりこの宿舎に機械兵が襲撃してくる。お前たちは盛大にそれを歓迎してやれ。既知の奇襲ほど簡単なものはないだろう。決して敵を逃すな」

 

その後軽い指揮系統と防衛配置について告げると、将校は演習場から去っていった。指揮系統にあの将校の名は無かったが、いったい何処へ向かっているのだろう?

 

まあ、関係の無いことだ。今は目の前のことに対処しなければならない。大型機械兵三体と未知の大型機械兵一体。もし通常任務の際にこの戦力が突入していたらと思うと、背筋に冷たいものが走る。

 

緊急招集から解散すると、各々指揮権を割り当てられた隊長のもとへ集う。幸いにも私はライカさんの隊の一員なので気が楽だ。知らない相手と組むより、やっぱり気の知れた相手の方が動きやすい。

 

指定されている場所に向かうと、そこには一人立っているライカさんの姿があった。

 

「………!ライカさん。どこか怪我でもしたんですか?」

 

挨拶しようとして、言葉に詰まる。遠目で見たときには気がつかなかったが、ライカさんの顔色が気持ち青白い。

 

「大したことじゃないけど、少しね。私は後方で指揮を取ることになるわ」

 

「わかりました。心細いですけど、ライカさんの分まで機械兵を倒してきます」

 

「頼もしいわね。けれど今回は集団行動。そろそろ来るだろうし今回のメンバーについて軽く紹介するわ」

 

ライカさんの言葉通り、すぐに赤毛の少女が私たちのもとに走りながらやってきた。

 

「お待たせ!アリビナちゃん登場!」

 

「彼女はアリビナ。こう見えてもこの軍でも座学、実技成績が優秀な突撃歩兵よ」

 

「ちょっと~!こう見えてもってなに~?どっからどー見ても優秀なアリビナちゃんでしょ~?」

 

ぷんすかといった感じで頬を膨らませる。軍の人とは思えないノリの軽さだ。少し気圧されるなぁ……。

 

その後も次々隊員が集まってきた。

 

「このこじんまりとしたのが本の虫ストレルカ。けど見た目で侮っちゃいけないわ、油断してるとサブマシンガンで蜂の巣にして来るわよ」

 

「そこまで物騒なことはしないけど……」

 

ジト目曇り顔のストレルカに

 

「このツンツンしてるのがベルカ。口調は激しいけれど根は優しいのよ。理解してあげてね」

 

「別に、アンタたちの理解なんか求めてないから!」

 

金髪ツインテのツンデレっぽいベルカ

 

「この子はビオン。自尊心ゼロで卑屈の塊のような性格をしてるわ。こっちの言うことなんでも聞くから、あんまり調子に乗っちゃダメよ」

 

「よ、よろしくお願いします……」

 

びくびくしてる小動物みたいなビオン

 

「これで最後ね。こっちのぼんやりとしてるのがエノス、一日中こんな感じの鈍感なやつ。で、それに凭れてるのがフェリセット。怠惰すぎて誰かに世話焼かれてないと生きていけなさそうなやつよ」

 

「……よろしく」

 

「ふふ、よろしくお願いしますわ」

 

何を考えてるのかわからない瞳のエノスに、雰囲気はどこかのお嬢様のようなフェリセット。私たちの隊はどうやらこれで全員らしい。

 

パン、とライカさんが手を鳴らす。隊員の紹介するときとは違い、目つきが鋭く変わる。

 

「じゃあ、これから私たちの役目について説明するわ。私たちに任されたのは遊撃よ。名目上は遊撃だけど、実際は違うでしょうけどね」

 

うんざりという表情で吐き捨てるライカさん。

 

「それは、どうして?」

 

「今回は防衛戦。それで遊撃手がいるのはおかしくないけど、問題はここの兵力。対抗できる人の数が少ないからどうしても敵を一点に集中させて叩く必要がある。そのためには囮が必要。つまり……」

 

「私たちが生け贄ってわけだね~」

 

ストレルカの説明の最後の部分だけをかっさらったアリビナが飄々と言う。ああ、ストレルカのジト目がさらにジト目に。

 

「そういうこと。元よりわかってるとは思うけど、死ぬ可能性が非常に高い。怯えるなとは言えないわ。でも、弱音は禁止よ。せめて表面を繕うくらいの無理を通しなさい。自分の命が仲間の命を預かっているのだから」

 

ライカさんはここに来る前は憲兵だったエリートだ。マインドコントロールもしっかりと心得ている。厳しい声色だけど、私たちを案じてくれているのがわかる。

 

その後も機械兵対策のブリーフィングが続いた。たまにどこからその情報を得たのかというものも混ざっていたが、皆それには触れなかった。情報は生存率を高めるアドバンテージ。それに茶々をいれるような人なんていない。

 

……私はここで死ぬつもりなんて毛頭ない。家で最愛の妹スネジンカが待っているのだ。スネジンカを一人残してこの世を去るなんて、そんな無責任なことをするわけにはいかないから。

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

ドーモ、機械兵スレイヤーです。

 

只今俺は後方部隊、つまりライカの隣におる。勿論他のやつにバレへんように光学迷彩でステルスしながら。

 

いやー、それにしても臨時で組むことになった隊のメンバーがまさか原作の全メンバーとは。このバルスの目をもってしても見抜けられんかった。

 

原作では相方を一人しか決められへんかったから、こんなに勢揃いすんのは初めて見るなあ。

 

まあ、それはそうとして。

 

『敵機未だ見えず、今後も警戒を解くな』

 

「わかったわ」

 

地面に置かれたラジオに返事をするライカ。まあこのラジオ俺の部品の一つなんやけどな。俺と会話するためのカモフラージュみたいなもんや。これがないと虚空に向かって話しかけるライカが誕生してまうからな。

 

暫く沈黙が続く。そらあからさまに喋ってたら不自然なのもあるけど、仲間が今から命懸けて戦いに行くんや。悠長にしてる暇なんかない。

 

でも、だからといって思い詰めすぎてもアカン。

 

『ライカ、さっき朝礼台に立ってたあの髭将校おったやん。俺の目が特殊やから気づいたんやけどさ』

 

「……何よ」

 

『あれ全部付け髭やねん。ついでにヅラも被ってたわ』

 

「えっ、嘘でしょ!?」

 

『マジよマジ。カゾルミアの技術力もまだ捨てたもんちゃうな。これは周辺諸国より優れてるわ』

 

「ふふっ、それで勝っても嬉しくないわよ」

 

よかった、表情が和らいだな。戦場では油断なんかでけへんけど、常に張り詰めてもパフォーマンスが落ちるからな。ほどほどがええねん。

 

その後も下らない話で時間を潰していたが、遂にその時がやってきた。

 

『……!ライカ、いよいよ敵さんのおでましやで。気張っていこうや』

 

「ええ、必ず全員生き残るわよ」

 

機械兵が自分で考えてるのか俺にはわからへんけど、少なくとも考えなしではないらしい。戦力の逐次投入なんか舐めた真似せず全機突っ込んで来よった。

 

「各員3秒後に散開!その後はブリーフィングで伝えた相手を狙いなさい!」

 

指示通りにマルフーシャたちは左右に散らばり、矢のように直進する機械兵を囲む形になる。そして各々射撃を開始。

 

サブマシンガンを使うストレルカとベルカ、軽機関銃を扱うエノス、アサルトライフルを持つビオンは爆弾をばらまいてくる大型機械兵二体の対応を。DPSの高いアリビナ、フェリセット、マルフーシャは触手機械兵の足となっている機械兵を撃墜しようと攻撃する。

 

今回のマルフーシャの武器はどうやら上級ショットガンらしい。高火力の武器なのは勿論、ライカの持ち武器でもある。まさか、ライカの代わりってそういう?ほんまええ子やわ。

 

『あの動き、そろそろ撃ってくるで』

 

「α班、準備開始」

 

大型機械兵が足を固定するのが見えた。あれは爆弾を発射する前の予備動作。それを見逃すわけないわな。

 

ライカの指示を受けてストレルカたちは構える。あの中でストレルカだけ上級兵やから、皆を牽引する役割に自然に回ってくれてる。

 

「α班、撃て!」

 

相手が爆弾をばらまいてくるのと同時に、一斉に弾丸をぶちこんでいく。爆弾が射出されたすぐ後に撃ち抜いているので、大型機械兵も誘爆に巻き込まれとる。これは思ったよりはよ終わりそうやな。

 

マルフーシャたちの方は……案外手こずっとんな。火力は申し分ない筈やが、どないしたんやろ。

 

ん?あぁ~。下の大型機械兵がガ○ダムに出てくるド・ダイみたいに運ぶことだけに専念してるんか。その上触手がわけわからん青い波動とか爆弾をちょこまか撃つから、それを避けつつ撃たなあかん。そら当てるのムズいわ。

 

『ライカ、マルフーシャの狙うやつがすばしっこい。罠仕掛けなキツそうや』

 

「厄介ね。マルフーシャ、こっちが何とかするからもう暫く耐えて頂戴」

 

「わかり、ました!」

 

息が乱れつつも、懸命に返事するマルフーシャ。まだ大丈夫そうやけど、ずっと体力が持つわけやない。

 

そんな俺の心配を見通してか、ライカはあえて余裕そうな表情で「策はあるのよ」と告げる。

 

「私たちが囮になってるから、ちょっとくらいは他の兵士の余裕はあるはず。そいつらに牧場の犬になってもらうわ」

 

『なるほどな。こっちには数の利があるんや。それを使わんのは勿体ないしな』

 

「その数もなけなしだけれど」

 

『ないよかマシやん?』

 

「ええ、それを思い知らせてやるわ」

 

宣言通り、軍が配布していた手元のトランシーバーで他の隊長と連絡を取り、幾らかの数の兵をこっちに回してくれると約束をもぎ取った。

 

 

 

約束の兵士が来るまでに戦況はあまり変化はなかった。ストレルカたちは大型機械兵をほぼ中破まで持っていっとるし、マルフーシャたちは上手いこと時間を稼いでくれてる。

 

そのお陰でこっちの準備は整った。防衛戦を終わらせる最後のピースを、ライカが手に入れたからな。

 

「待たせたわねマルフーシャ!早速だけど私の指示するポイントに移動して」

 

「了解」

 

『余力兵が持ち位置に着いたで。いつでもオーケーや』

 

「よし!これで終わらせてやるわ」

 

焦る気持ちを抑えるように、深呼吸一つ。

 

『敵機あと五秒後に目的地に突入。5…4…3…2…1…』

 

「今よ!余力兵は北東に避けるように撃ち込んで!」

 

ライカの言葉に従い、余力兵はわざと北東の弾幕を薄くして機械兵を撃つ。目論み通り、機械兵は北東に回避行動。

しかし一度回避行動を取れば、その後再び進路を変えることは難しいだろう。

 

その隙をマルフーシャたちは見逃さない。

 

「後は頼んだわよ、マルフーシャ」

 

「今度こそは外さない!」

 

フェリセットがエンジン部分をスナイプ。飛行体勢を維持するのが困難になった機械兵は制御を取れず、アリビナのアサルトライフルを全て喰らう。

 

そしてシメにマルフーシャのショットガンが機械兵の装甲をぶち破る。全身穴だらけになったド・ダイもどきは、地面と衝突し派手に爆破した。上部に乗せられていた機械兵も虫の息だ、もう抵抗の余力はないだろう。

 

「こちらストレルカ。大型機械兵二体、撃破完了」

 

タイミングのいいことに、彼女たちの方も終わった。つまりこれは……。

 

「……皆、お疲れ様。任務完了よ!」

 

宿舎襲撃の防衛に成功したのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「最高指導者。こちらを」

 

とある任務を受けていた兵士が、大量の勲章を胸に飾った男にファイルを手渡した。無礼のないように、両手で丁寧に。

 

「ふむ……あの使い捨て部隊もやるものだな。特にこの二人は抜きん出ている」

 

何人かの顔写真が貼られた紙には、それぞれのデータが詳細に記述されている。軍事演習の成果や年齢、家族構成は勿論、性格や思考傾向についても。

 

「マルフーシャにライカ。ゴミ箱から思わぬ掘り出し物が見つかったな。すぐにこの二人を呼び寄せろ」

 

「はっ!」

 

教科書のような敬礼をして、兵士は部屋を去る。執務室にしてはそれなりの広さを持つ部屋で、最高指導者と呼ばれた男はアンティークの机にある葉巻を咥えた。

 

先端を切り取り、火をつけて一服。

 

「軍事企業の件も進めなければ、な」

 

ポツリと溢した言葉は、誰にも知られず執務室に溶けた。

 




そろそろ救国のスネジンカに移る頃合い
関係はありませんがダチカ可愛いですよね
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