負ける気せぇーへん、機械兵やし   作:長い犬

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日常回です
宿舎でのイベントもっと欲しい……欲しくない?


6話

どうも、体がピカピカになったバルスやで。思ってたより汚れててビックリしたわ。灰とか泥とかいろいろ被っていたらしい。真っ黒になった雑巾見て軽く引いた。

 

まあ、それは置いといて。俺はここに潜伏することを決心したが、一つ問題がある。それは何処に隠れたらいいのか、や。

 

これから起こるであろう宿舎襲撃イベントに備えて近くに待機しよう、と考えて潜伏しようとしたが、そのアテが全くと言っていいほどない。皆無だ。

 

そもそもの大前提として俺は機械兵や。見られた時点で即アウトの危険存在である。そんなやつが街中彷徨いてんの見られたらどうなる?んなもん大パニック不可避よ。

 

一応俺だってカゾルミア軍に属してたんや。自国民を不安にさせたくない。けどそうすれば潜伏先さえ探すのにアホほど苦労せなアカン。

 

当初は適当に空き家に住み着けばエエやろ、くらいの気持ちで考えてたけど、現実はそう上手くいかんらしい。

 

この国、カゾルミアは戦争をしている。それも隣国全てと。そうなると資源を全て突っ込む必要がある。国民の貯蓄も擲ってでも。

 

だから等級の低い家庭はほぼ全てと言えるほど貧困状態に陥っている。かくいう俺の家庭もそうやった。

 

そういった家庭は、子供を捨てるところも少なくはない。兎に角金がかかるからな。たまにスラムとかで子供が置き去りにされているのを見たことがある。

 

捨てられた子供は何とか生きるために住む場所を探す。路地裏やったり、下水道やったり、空き家やったり。

 

だから必ず、とまではいかないが十中八九誰かに見られるのだ。空き家などの人目のつかない場所は。むしろ見つかりやすくなってしまう。

 

それに気づいた俺は、物凄く困っていた。守り通す(キリッ)とか決心したのに、それ以前で躓くて……。もし機械兵じゃなかったら顔真っ赤にしてたわ。

 

暫く考えた末、こういうのは賢いやつに相談するのが一番だと思いついた。下手の考え休むに似たりという言葉があるやろ?まさにその通りやからな。

 

ということでライカに相談した。どっかオススメの潜伏先ないですか、と。聞かれたライカは呆れていた。そうね、あんたってそういうやつだったわね……というのが顔に出ていた。面目ない。

 

「正直言ってかなり厳しいわ。無人の場所なんて滅多にないし、あんたみたいなやつを匿ったら、確実に死刑なのは目に見えてるから絶対報告されるでしょうね」

 

「せやな、せやね……」

 

ライカがないって言ってるんや。そしたら何処にもないやろ。う~ん、しゃあなしか……。

 

「やっぱ戦線で隠れときます……。潜伏なんか自分には無理でした……」

 

「ちょ、ちょっと。完全にないとは言ってないじゃない。人の話は最後まで聞くものよ」

 

「え?ここからでも入れる保険ってあるんですか?」

 

「なんで保険が出てくるのよ。……要は報告しないやつの元で匿ってもらえばいいのよ。そうすれば暫くの間は安全だわ」

 

「そんなやつがおったらどれほど良かったか……」

 

「いるじゃない。あんたの目の前に」

 

え?マジ?辺りを見渡すがライカしかいない。

……え、マジ?

 

本気(マジ)で言ってる?」

 

「私はしょうもない嘘は嫌いだわ」

 

「自分でも言うとったけど、バレたら死ぬで?」

 

「バレなければいいのよ」

 

何てことないように言いきりよった。けど彼女の目を見てしまえば嫌でも伝わる。冗談でもなんでもなく、本当に俺を匿う気でいる。

 

「あまりにもリスキーすぎんか?すぐバレてまいそうやけど……」

 

「灯台もと暗し、って言うでしょ。それに私はそんなヘマしないわよ」

 

なんて肝の据わった女だ。俺が女だったら惚れていたかもしれない。……別に女じゃなくても惚れてるが。

 

「ほんまにエエんか?別に戦線でも構わんよ、俺は」

 

「二度も言わせないでよ、バルス。それとも私が信用できない?」

 

……それはズルいわ。そんなん、否定できるわけない。

 

「……わかった。束の間やけど頼らせてもらうで、ライカ」

 

「それでいいのよ。困ったら頼りなさい」

 

つくづく思う。ライカと知り合えることができて本当に良かったと。溶鉄のマルフーシャの世界に転生して、最も運のよい出来事がこれだろう。俺は彼女ほど、親切で思いやりのあるやつには会ったことがない。

 

「だからここにいなさい。無断で宿舎に入ってくるやつなんていないから」

 

俺が喜びを噛み締めていると、ライカはあっけらかんと言った。……聞き間違いかな?

 

「ここってライカの部屋やろ?」

 

「ええ、そうよ」

 

「ライカってどこに住んでんの?」

 

「ここに決まってるじゃない」

 

さも当然って顔されてもなぁ……。

 

「機械兵やけど、一応男よ俺」

 

「何よ、襲ってくるの?」

 

自分の肩を抱いて、俺から距離を取るライカ。軽蔑するような瞳をこちらに向けて。あっ、そんな目で見ないで、癖になる。

 

「んなわけあるかい!そっちが不快じゃないか聞いてるんや」

 

「……?別に」

 

何だ?信頼の表れか?本当になんでもなさそうな顔で言われると、こちらが気まずくなる。けれど同時に嬉しくも思う。そこまで信頼されているのだと、伝わるから。

 

「じゃあ明日も早いし、もう寝るわよ」

 

「わかった。ほな、おやすみ」

 

「ええ、おやすみ。ふふ」

 

ライカ、何かちょっと嬉しそうやな。うーん、俺の気のせいやろか。まぁええか。

 

ああ、ちなみに。俺は寝る必要がない。だって機械兵やからね。食べる必要もない。というかできない。そういった機能が付いてへんからな。

 

だから、ちょっと暇になる。ライカが寝てるからテレビやラジオを点けたらあかん。何もすることないなぁ。

 

……こうなると好奇心が疼く。ちょっと部屋を物色したくなってしまう。もちろん、棚とか荒らすわけやない。軽く部屋を見てまわるだけや。

 

ふーん、部屋の構造はマルフーシャと同じっぽいな。ただ、監査官特権なのか一人部屋だ。俺の存在は同居人もおらんからバレにくそうやな。

 

あっ、ソファ脇の机上に毛糸がある。ライカの趣味は手芸やからな。空いた時間に何か縫ってるんだろう。軍学校でも度々していた。あの時くれた手袋嬉しかったなぁ。

 

そうや、どうせこれから暇やし俺も手芸習おうかな。実は前から興味あったんよ。ライカの都合がよければ教えてもらおう。

 

それ以外に特徴的なもんはなかった。彼女の几帳面な性格だから、部屋もきれいに整頓されていた。逆に俺は部屋を荒らしがちやからな、これから気ぃつけな。

 

今度こそほんまにすることがなくなった。騒がしくすんのも迷惑やし、大人しくソファで転がっとくか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バルスを匿ってから暫く過ぎたある日のこと。

 

私が趣味の手芸をしていると、バルスが突然「俺にも手芸を教えてくれ」と頼み込んできた。

 

「暇やからっていうのもあるけど、前から興味あってん」

 

「へぇ、そうなの。別にいいわよ」

 

内心少し意外だった。バルスが趣味といえるものは、精々鍛練くらいだったから。

 

私が軍学校でしているのを見て興味を持ったらしい。仲間が増えたみたいで、ちょっと嬉しいかも。

 

「じゃあ初心者用にマフラーでも編む?そんなに難しくないけど」

 

「ええな。昔から家庭科とか苦手やから不安やけど」

 

「大丈夫よ。棒編みは慣れれば簡単だから」

 

戸棚から何個か糸玉を取り出し、好みの色を選ばせる。本当は毛糸の種類もいくつかあるのだけど、それはまた今後の機会に。初めてやるときはストレートな糸がやりやすいから。

 

「一応聞くけど、棒編みのやり方は知ってる?」

 

「微塵もございません」

 

「なら基本的な説明から始めるわね。棒編みは繰り返しの工程よ。柄とかに凝るのならまた話は別だけど、今回は一種類の糸玉しか使わないから心配しなくていいわ」

 

手順さえ覚えてしまえば後は楽なものだ。手順もそこまで複雑じゃないし、あいつならすぐできるでしょ。

 

そんな私の予想通り、トントン拍子で進んでいった。あっという間に一段目を作り終え、次の工程へと移ろうとしていた。

 

しかしここで一人でやってきた弊害が出た。棒針が一人分しかないのだ。本来なら私の例を見せて指導したいのだけれど……致し方ないわね。

 

「次は二段目作るんやろ。どうやんねや?」

 

「ん、ちょっと待ちなさい」

 

クエスチョンマークを浮かべたバルスの後方に回り込み両手を掴む。端から見れば私がバルスを背中から抱いているように見えるだろうが、別に見る人もいないので気にしない、

 

「私が手を動かすから、その動きを覚えなさい」

 

「えっ、うん。大胆やな~」

 

「棒針の数が足りなかったからよ。こ、これは仕方なくなんだから」

 

「典型的なツンデレやな~」

 

「誰がツンデレよ!」

 

くっ、こいつに会話の主導権を握らせると私が永遠に弄られる羽目になる。軍学校時代を少し思い出してしまうわね。……ろくな思い出がないけど。

 

わかってたことだけど機械兵になっちゃったのよね。握る手から伝わってくる金属特有の冷たさが、私にその事実を突きつける。もうあの時のようにゴツゴツとした手から伝わる暖かさはないのだと再認識させられる。

 

それでも。彼は彼のままだ。どこの方言かよくわからない訛った口調、ふざけつつも真面目なところ。心はバルスのままだった。

 

テセウスの船、というパラドックスがある。ある物を構成するパーツを別のパーツに取り替えたものは、果たして同じものと言えるのかという同一性の問題。

 

あいつはまさしくそれだ。全て肉体が機械に置き換わった。人間である名残は殆どない。精々人型なくらいだろう。

 

それでもあいつは自分を『バルス』と名乗った。自意識の問題かもしれない、はたまたそう思い込んでいるだけなのかもしれない。それでも以前の自己を間違いなく認識しているのだ。

 

ならば、それはもう『バルス』だ。あいつがあいつであることを証明するには、それで十分なのだから。

 

思考の海に潜っていると、バルスが申し訳なさそうに言った。

 

「あー、ライカ。あの、いつまで抱きついてるんや?別に嫌ちゃうで?むしろウェルカムやけどな?」

 

「えっ」

 

どうやら考え事をしている間、ずっと抱きついたままだったらしい。……やってしまった!

 

「ち、違うから!そういうのじゃないから!」

 

「お、おう。わかってんで」

 

「本当よ!本当だから!」

 

急いでバルスから離れる。駄目ね、他のことに気を取ると目の前のことが見えなくなる。昔から直らない悪い癖よ。

 

でも、思い返せばこれが私とあいつが話すきっかけにもなったのよね……。気に入らないけど、それだけは褒めてやってもいいわ。

 

正直、バルスならそこまで気にしてない。別のやつは反吐が出るけど、なんだかんだ言ってバルスは特別だから。

 

でもそれを本人には知られたくない!絶対に調子に乗るから!あと単純に恥ずかしい!

 

そんな感情をおくびにも出さないように反応をした結果こうも慌ててしまう。不自然な反応だけど、多分バレてないから。

 

それからバルスはコツを掴んだのか手際よく進めていき、無事白の毛糸で作られたマフラーを完成させた。

 

出来映えは初心者にしては上出来だわ。結構才能あるわね、あいつ。

 

今後も暇な時間があれば一緒にやろうと提案されたので、あっさり了承した。一人でやるのも楽しいけど、一緒にするのも楽しいから。

 

さて、じゃあもう一人用の棒針や糸玉も買ってこなくちゃ。そうして次の休暇に買い出しの予定を立てた。

 

 

 




そういやなんでライカって趣味手芸なんやろ……
ゲームで口述してたようなしてないような……
有識者の方教えてくれたら幸いです
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