負ける気せぇーへん、機械兵やし   作:長い犬

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テスト期間が終わった……
どうして数Cはあそこまでいやらしいのか……


7話

絶賛棒縫い中のバルスです。初めてやってみたけど、結構楽しいぞこれ。いうて同じことを繰り返すだけなのだが、やればやるほど出来上がっていくのが面白い。

 

そして俺の体、というより指が想像以上に滑らかに動いてるのに驚き。違和感が全くないのだ。思った通りにヌルヌル動く。隣国の技術力は進んでんなぁ。*1

 

そして俺がひたすら引きこもって手芸をしている間に、マルフーシャが配属されてから一ヶ月が過ぎた。ゲームでいうと70日目である。

 

溶鉄のマルフーシャには各々ボスが存在しており、ここ13番街では60日目、80日目にボスが登場する。60日目のボスは空中から突如降下し、背中から大量に爆弾をばらまく面倒なやつだ。弾切れになったら後方に下がるのも面倒なところだ。

 

まぁ既にやられているのだが。マルフーシャがボコボコにしてたわ。それはもうボコボコに。

 

パイルショットで初手鉄杭をぶちこんだかと思ったら即射撃。しかも持っている武器が上級ショットガンだったようでボスはあっという間に爆破した。絶対パン屋の娘に収まる器ちゃうやん。

 

ここまで俺がまるで実際に見たような話し方をしたが、俺は決してライカの部屋から出ていってりしていない。ではどうやって見たのか?それは……

 

ピコーン!ピシャピシャピシャピシャ!

テッテケテッテーテーテテー!*2光学迷彩ドローン!

 

どこから取り出したかって?お腹のポケット(物理)からよ。前にもトランシーバー出したやろ?あれと同じ原理で身体の中に収納されてんねん。

 

このドローンは隣国の最新技術がふんだんに盛り込まれているらしく、生中継もいけるぞ。名前の通り光学迷彩もバッチリ。

 

これのお陰で、特等席でマルフーシャの活躍を見れました。余は満足しておる。仲間なしで大したもんやで。これは溶鉄ルートまっしぐらやな。

 

だがいよいよ気を引き締めなければならない。あと10日もすればここが敵軍に包囲される。そこが鬼門だ。

 

あまり明確には記載されていなかったが、この宿舎に包囲網を作れるほど敵軍が殺到するのだから相当なものだろう。しかも戦える人員はマルフーシャ以外にはいない。場合によっては同室の仲間と共闘することもあるが、今回のマルフーシャはソロなのでそれもない。

 

差は圧倒的だ。どのルートでもマルフーシャですら包囲網から抜け出せたことはない。まさしく絶望。

 

だが俺が変える。何のためにここにいると思ってるのだ。人だったら厳しいが、俺は機械兵。戦うためだけに作り出された存在。

 

前世の画面越しで見たあの光景を知っていながら、俺は指を咥えて待ちぼうけなんてできない。もうゲームではなくなったのだ。俺が生きている世界であり、親しき仲となった相手と過ごす世界だ。

 

原作と展開が異なるなんてどうでもいい。俺は必ずやり遂げてみせる。やるからには完璧を目指す。宿舎にいるやつ全員守りきってやるよ。多分、いや必ず茨の道だがそんなこと関係ない。

 

負ける気せぇーへん、機械兵やし。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最近、バルスの様子がおかしい。

 

決定的な証拠はないけど、どこか雰囲気が緊張で固くなっている気がする。しかもその緊張感は馴染みがあるものだ。まるで戦地へ向かうような、そんな空気。

 

それとなく聞いてみるけど、あいつは何も話さない。悉くその話題を避けている。きっともし肉体があれば、下手くそな作り笑いでもしていそうだ。機械兵になっても誤魔化し方が上達していない。

 

最初はまぁそのうち元に戻ると思っていた。あいつはなんだかんだいって自分で解決できるのだから。そのような信頼もあり、気にしていなかった。

 

けれど一向に解決することはなく、むしろ悪化していた。普段のふざけた雰囲気はどこに捨てたのか、ずっと気を張っている。

 

流石に無視できなくなった私は、徹底的に問い詰めた。何を隠しているのか?何をするつもりなのか?洗いざらい吐かせるつもりだった。

 

それでもあいつは何も言わなかった。下手に口を開けばボロを出すとわかっているのか、ずっと黙りだった。

 

ここまで話したがらないのは何故なのか?そんな疑問よりも私が信頼されていないのだという悲しみでいっぱいだった。

 

あいつが口を割らないのは、それほど重要な何かを抱えているのだろう。あいつは無駄なことはしないのだと私がよく知っているから。……知ってるのに。

 

理解はできる。けど納得はできない。頭の中で二つの考えが相反している。

 

その間、ずっと突っ立っていることしかできなかった。眼前にいるバルスに何かを言おうとして、しかし頭の中は真っ白になり言葉は消える。

 

そこまで短い付き合いなわけじゃないのに、なんで言ってくれないのかと悶々とする私と。あいつはあいつなりの考えで行動しているから、私はそれを支えてやるべきだという私。

 

どちらを優先するべきか。考えはぐるぐる巡るが、答えは一向に出てこない。もしくは、私が二つの考えに取り込まれているだけ?底無し沼に沈んでいくように、数多の考えが私の足を絡めとる。

 

「……ライカ?どうした」

 

どうしよう。私は何をするべきなんだろう?捻り出さなきゃ、今答えを出さないと。()()手遅れになるかもしれない。そんなことは絶対に嫌だ。

 

「ライカ?ライカ!」

 

ああ、なんだか気持ち悪い。急に吐き気が出てきた。駄目よ、こんなことでやられてちゃ。今まで積んできたものは何だったの?……それで、どうするんだっけ?

 

不意に足元の感覚が覚束なくなった。浮遊感が私を包み込む。このままだと頭から床に倒れるだろう。ふわふわした頭で漠然と思うが、体は動かない。しょうがないからせめて瞳だけでも閉じた。

 

衝撃に備えていたが、いくら待っても床に触れた感触がない。その代わりに冷たい、金属の温度が肌から伝わってきた。

 

ゆっくりと目を開くと、バルスが前のめりに倒れた私を抱き締めていた。その抱擁からは、私を思いやる心が痛いほど溢れていた。

 

「すまん、ライカ。無理させたな」

 

「なんで、バルスが、あやまるのよ」

 

「……俺がしょうもないこと考えて、ライカの気持ちを踏みにじったからや。複雑なことは、頭のええやつに丸投げするって決めてたのになぁ」

 

何してるんやろ、俺は。そんなことを呟いているけど、あまり聞き取れない。機械音声、わかりにくいのよ。

 

「それで、話してくれるの?」

 

「ああ。ライカを思って行動してんのに、それがライカを傷つけてるんやったら意味ないしな」

 

そしてバツが悪そうに後頭部をポリポリ掻くと、はっきりとした声で言った。

 

「3日後にここが包囲される。俺らはここで籠城戦を余儀なくされるんや」

 

思わずため息が出てしまう。

 

「本当に、いきなりね」

 

「そうや。この情報を先に出すことによって相手の行動が変化する可能性を考慮してたんやが、俺がおる時点でそんなんないも当然やったわ」

 

私がバルスからの情報を漏らすとでも?ちょっと怒りが湧いてきた。

 

私の雰囲気の変化に目敏く気づいたバルスは、慌てて言い訳を重ねようとしている。

 

「いや、ちゃうねん。ライカが情報を漏らすとかそんなん一切考えてなくて、あの……あれやん。バタフライエフェクトってあるやん?だから襲撃の情報を誰かに伝えたっていう時点で何か変化が」

 

「はぁ、もういいわよ。私も落ち着いてきたわ」

 

必死に説明しているが、大体のことは伝わった。私たちのことを思いやっての行動だったのだろう。

 

まぁ、それとこれは一旦捨て置いて。

 

バルスの身体を強く抱き締める。

 

「けど、もっと私を信頼しなさい。バルスが私たちを思って行動したいのなら、情報を共有して。置いていかれるのは、もう、嫌だから」

 

バルスが行方不明になって以来、私は臆病になってしまった気がする。それは多分悪いことなのだろうけど、成長でもあるのだ。

 

私は一回学んだのだ。あいつが、戦場で消えたと聞いたときの焦燥を。いくら待っても帰ってこない絶望を。

 

そんなことを二度と味わいたくない。その結果が臆病になることだとしても、後悔なんてしていない。

 

「……ああ、約束する、ライカ」

 

「今度こそ、破っちゃだめよ」

 

「……必ず守る、ライカ」

 

そこからは言葉もなく、暫く抱き合った。今はあいつから伝わる体温を、ただ感じていたかったから。

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――

 

 

 

 

その後具体的な内容を聞いた。あまりに突飛な話なので、バルスじゃなかったら信じてなかったわ。

 

今から3日後の深夜、敵が宿舎を包囲する。大型の機械兵を使ってまで。それも未知の大型。

 

どこからその情報を得たのか、どうやらそれはドローンで敵の動きを掴めたらしい。というかそんなものあるなんて知らなかったわ!

 

ドローンはともかく、先に察知できて良かったわ。深夜の襲撃なんて対応が困難を極める。やはり情報のアドバンテージは強力ね。

 

さて、じゃあどのような対策を立てるかしら。襲撃時間がわかっているから待ち伏せが安牌?それとも私たちが不意を突くのが効果的?

 

暫く悩んだ後、一つの答えを出した。

 

「やっぱり、私たちから攻めたほうが良さそうね」

 

「ほう、それはまた何で?」

 

「バルスの情報によれば、敵は包囲網を作れるほどいるからよ。宿舎を攻めるんだから籠城は想定内。だからそれを突破できる量の機械兵を用意してるはずよ」

 

基本的に籠城戦は守るほうが有利だ。いつか見た本には、守りを崩すには守備側の3倍の兵が必要と書いてあった。もちろん敵側も間抜けじゃないから、きっとそんなことはわかりきっている。

 

だから少しでも相手の数を減らす必要がある。そうすれば、援軍が来るまで耐えきれるはずだわ。

 

「けど、これには問題があるわ。誰が敵を間引くのかって話よ」

 

口で言うのは簡単だけど、大量にいる敵を撃破するのはとても現実的ではない。全員が攻める訳にはいかないから、どうしても少数精鋭になってしまう。それに、精鋭といってもそこらに転がっているわけではない。エースというのは一握りしかいないからこそエースなのだ。

 

「それなら簡単や。俺が行く」

 

ごく自然にバルスは言った。その声色は全く震えておらず、散歩にでも行くような穏やかなものだった。

 

「今宿舎にいるやつでおそらく俺が一番強い。マルフーシャとかライカも強いけど、俺と違って継戦能力がない。籠城戦するんや、資源はそんな使えん。ついでに身体も固なったしな」

 

「……悔しいけど事実だわ。昔からバルスの実力は知っているから。それに、機械兵になったから単純にスペックが上がっている」

 

「せやから、俺が前線出て…」

 

それは元より承知の上。だからこそ、私は……。

 

「でもね、バルス」

 

「ん?どうした」

 

「私も一緒に戦いたい。バルスの背中を守りたいのよ、今度こそは」

 

これは我が儘だ。本来なら私は指揮を取るために、宿舎に残るべきだろう。けれど、ここでバルスを見送れば、また帰ってこないんじゃないかと思ってしまう。

 

私は軍学校でバルスと別れてから何もしていた訳じゃない。ずっと鍛練を続けていた。

 

ここで鍛えてきた能力を使わずに、いつ使うのか。置いていかれたくないからという理由もあったが、それだけで鍛練を積んできたわけではない。

 

頼って欲しかったのだ、私にも。バルスはいつも成績トップだから、人に頼られることばかりだったけど。そんな彼の助けになりたかった。

 

そして、それは今だ。

 

「バルスよりは劣るかもしれないけど、それでも確実に力になるわ。私にもあなたの負担を背負わせなさい」

 

「ライカ……。ほな、少し背負ってもらえるか?」

 

表情は動かないはずなのに、笑っているように見える。不思議な感覚ね。

 

「ええ、当然よ」

 

首元の銀のロケットが、一際眩しく感じた。

 

*1
カゾルミアは周辺国全てとドンパチやっているため、貿易も行われていない。その結果、カゾルミアの技術力は他と比べて10年分の差があると言われている。もちろん、そのことは国民に知られていない

*2
ひみつ道具を取り出す音




ちなみにバルスとライカの仲間レベルは10を軽く越えています。後方からバカみたいな速度と威力の上級ショットガンの雨が毎秒降り注ぐ。敵は死ぬ
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