殺人ピエロは連邦生徒会長を狩りたい……♠︎   作:GT(EW版)

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 ダブルピックアップガチャが出る度に「迷うねェ〜❤︎」「両方引くのがベストじゃない?」「現実は厳しいね☠️」と心の中のヒソカが騒ぐので思いついたネタです。


殺人ピエロは連邦生徒会長を狩りたい……♠︎

 荒野を疾走していく一編成の列車。その屋根の上で、二人の少女が壮絶な銃撃戦を繰り広げていく。

 身の丈を上回る竜のような巨大なライフルを軽々と振り回し、その弾丸の一つ一つが必殺の威力が込められているのは空崎ヒナ。

 そしてそんな彼女の攻撃の間を縫うように掻い潜りながら、時に大盾でいなし、手榴弾やショットガン等のあらゆる武器を駆使して立ち回っているのが小鳥遊ホシノ。

 両者の攻防はまさに一進一退であり、どちらに転んでもおかしくないほどに拮抗していた。

 

 いずれも学園都市キヴォトスにおける最高峰の実力者──そんな二人の激闘に対して、数キロ離れた高台の上から高みの見物を決め込んでいる一人のピエロが居た。

 ウェーブの掛かった赤い髪をオールバックに流しており、右頬には星形の、左頬には涙のような雫のペイントを描いているそのメイクはまさに道化師のようだ。

 

 

「絶景だね♪」

 

 

 単眼鏡越しに列車の様子を眺めながら、ピエロの少女は上機嫌に独語する。

 他の生徒たちとは明らかに一線を画している二人の実力を上から目線で採点し、賞賛の言葉を贈っていた。

 

 

「ゲヘナ最強の風紀委員長とキヴォトス最高の神秘が生んだ暁のホルスの戦い……♣︎ これほどの戦いは滅多に見れるものじゃない♪」

 

 

 普段は糸目に細められている眼光を弓形に歪め、舌舐めずりをするようにほくそ笑む。

 二人とも外見こそ「青い果実」と呼ぶ方が相応しいあどけない姿をしているが、その器に練り上げられた神秘の程は常軌を逸しており、一つの到達点と評して良いほどに円熟していた。

 故に、収穫するには既に十分な頃合いであるとピエロは判断する。

 

 しかし、彼女は考える。

 

 今から二人の戦いに割って入るのは簡単だが、それではせっかくの名バトルが台無しである。

 突然出てきたピエロがそれまで積み重ねてきた物語の流れをぶち壊していくサプライズピエロ展開も嫌いではないが、それをあの二人の戦いに行うのは無粋に思えた。どうでもいいならず者たちの抗争に首を突っ込むのとは、話が違うのである。

 自他共に戦闘狂と認めるピエロは、達人と戦うのはもちろんだが達人同士の戦いを観戦するのも好きなのだ。故に、今少しの間は傍観者に徹することとする。

 

 

「生き残った方を……ボクが狩る♠︎」

 

 

 本音を言えば二人とも狩りたいのだが、彼女は極上の玩具とは常に一対一で遊びたい女だった。だからこそ、今戦うのは生き残った強い方でいい♠︎

 手の中で弄んだトランプの中から一枚のカードをおもむろに抜き取ると、その絵柄がスペードのキングであることを認め、ピエロはニチャリと笑う。

 

 ──と、彼方から決着を示す激しい爆音が響いたのはその時だった。

 

 数キロ離れたこの場所にまで震動が伝わってくる凄まじい爆音。

 それが空崎ヒナの放った砲撃によって招き起こされたものであることを、ピエロは単眼鏡を使うまでもなく肉眼で観測していた。

 銃本来のスペックを明らかに超越した赤紫色の弾丸──その連撃の余波を受けて、二人の足場となっていた列車が粉々に爆散したのである。

 

 

「やれやれ……舞台が持たないなんてねぇ♠︎ 呆気ない終わり方だったね♣︎」

 

 

 一見すると勝利者は空崎ヒナに見えたその戦いだが、実のところ小鳥遊ホシノは彼女の一撃を耐え抜いていた。

 大盾を大きく損傷させながらも臨戦し続ける彼女は、ヒナが撃ち尽くした後でカウンターを喰らわせるつもりだったのだろう。

 しかしそれが叶わなかったのは、彼女の盾や肉体は無事でも、二人のステージとなっていた列車の方が持たなかったからである。

 空崎ヒナもまた爆発の煽りを受けてホシノと共に谷底へと落下していき、手放しに勝利者とは呼べない幕切れを迎える結末となった。

 

 勝敗を語るには相打ちに近い形で訪れた、この呆気ない決着──強いて言うならば……

 

 

「まっ、この勝負……生き残ったボクの勝ちってとこかな♦︎」

 

 

 二人の激闘の傍観者たるピエロ──「揃カルカ」の不戦勝である! 

 

 

 

 

 

 

 

 揃カルカは狂人である。

 狂人の殺人ピエロである。

 

 他者を傷つけ弄ぶことに性的な興奮を感じ、殺し合い=愛し合いとさえ認識している。日常的に銃弾が飛び交うこのキヴォトスにおいてもその性癖は極めて異質であり、身に纏う道化師のような衣装と奇怪なメイクも相まり各方面から謎の変態ピエロと不気味がられていた。

 そんなカルカは天才的な格闘センスの持ち主であり、並みのスケバンなどでは束になっても太刀打ちできない実力を誇る。そして何より、彼女は自身が見つけた才能ある強者を「玩具」と見なし、命がけのタイマン勝負を吹っ掛けていく戦闘狂でもあった。

 世が世なら猟奇的殺人者として名を馳せていただろうカルカであるが、しかしそんな彼女には自らの危険な性癖に対して一つの制約とも言えるこだわりを課していた。

 

 それは「玩具」と認めた強者と戦う場合には、まず相手側に都合を合わせ、事前に舞台を整えた上でタイマン勝負を仕掛けていくある種の礼節である。

 

 彼女にとって「玩具」との戦いは真剣な交際に等しい。野生のスケバンやヘルメット団と言ったどうでもいい相手こそティッシュ感覚で消費する彼女だが、極上の獲物が現れた場合には相手側の合意の上、一対一で踊りたい……純情な乙女だった。

 

 

 ──その最たる例が、彼女がかつてこのアビドス砂漠で行った善行であろう。

 

 

 今から二年ほど前の話になるが、カルカはある日気まぐれにこの砂漠を散策していた頃、道端で今にも死にそうな状態で砂に埋もれている一人の少女の姿を見つけた。

 

 

「おや♦︎ こんなところに人が♣︎ 大丈夫?」

 

 

 可哀想なことに、この砂漠の中で遭難してしまったのだろう。放っておけば数時間と持ちそうにない状態にあったその人物の姿を見下ろすと、カルカは記憶の端からその人物の名を思い出した。

 

 ──梔子ユメ。当時のアビドス高校の生徒会長である。

 

 カルカは自分が玩具と見なした強者のことは覚えているが、そうでない人物のことはそこまで深く記憶しているわけではない。そんなカルカが梔子ユメのことを知っていたのは、彼女自身と言うよりも彼女が可愛がっている後輩のことを特別気にかけていたからであった。

 

 暁のホルス──当時高校一年生だった小鳥遊ホシノである。

 

 カルカと同学年である彼女は、この時点でもキヴォトス有数の実力者と噂されていた。そんな彼女のことを、カルカもまた良き玩具と見込んでいた。

 

 

「うーん♣︎」

 

 

 あの子がその才能の全てを自分を殺す為だけに向けてきたとしたら……想像するだけで、下腹部が熱くなる。

 自分の遊び相手にはなり得ない梔子ユメの生死は正直どうでも良かったが、この選択は小鳥遊ホシノの人生を大きく変えることになると、カルカの乙女の勘が強く訴えていた。

 

 

「梔子ユメにとどめを刺してホシノの恨みを買う方が楽しいか、見殺しにして連邦生徒会に責任を押し付けるのが楽しいか……❤︎ 迷うねェ〜❤︎」

 

 

 そうして彼女の口から出てきた言葉が、それである。

 今にも死にそうな人間を目の前にして、嬉々としてそんなことを呟く彼女の姿はどこに出しても恥ずかしい人でなしだった。

 しかしそれは思春期にありがちなブラックジョークなどではなく、いざ実行すると決めれば何の躊躇いも無く実行してしまうのが揃カルカというピエロの精神性だった。

 

 だが……

 

 

「ユメが死んでホシノが腑抜けて、アビドスが廃校になって会長との約束を果たせず……じゃ、ホシノと戦えても+−(プラマイ)ゼロじゃない?」

 

 

 カルカは悪辣極まりない性格であったが、一時の衝動に待ったをかけることができるぐらいには、理性的な思考が働く人物であった。

 尤もその理性は良心のブレーキなどという生易しいものではなく、「こうした方がもっと楽しそう❤︎」という徹頭徹尾自分本意に働いたものであったが。

 しかしその精神が、世のため人の為に役立つこともままあった。

 

 

「それならユメを助けてホシノに貸しを作って、その功績で会長からご褒美を貰って……が、ベストじゃない……?」

 

 

 ニチャア……と不気味に笑いながら、我ながら妙案♥とカルカは自らの判断を讃える。

 

 彼女の双眸は己が性癖を満たす為、自分が最も気持ち良くなるにはどのような選択がベストなのか即座に吟味し、先々を見据えていた。

 そうと決まればカルカの行動は早く、足下で死体になりかけていたユメを砂から抱き起こすと携帯していた水筒から水分補給を行い、ユメの身体を米俵のように担いで迅速に駆け出していった。

 

 

 ──そうして猛スピードで梔子ユメの身柄を設備の整った病院へ送り届けた後、カルカはトランプの絵柄でデコレーションされた自らの通信端末を開き、軽快なタップでモモトークを送った。

 

 

 件名は「死体は偽物(フェイク)☆-_-◇」。

 

 

 送信すると十秒と掛からず、送信先の人物からメールではなく通話の形で返信が来ることとなった。

 

 

『今忙しいんだけど!? 何あのふざけたメール!』

 

 

 開口一番怒号を上げてきたのは、この度の送信先である小鳥遊ホシノだ。

 お気に入りの玩具の一人である彼女とは、友人とは言わないまでもお互いの連絡先を知っている程度の関係だった。

 彼女が今忙しいと言ったのは、砂漠で行方不明になっていた梔子ユメを捜索しているからだろう。スピーカーから聴こえる声は電話越しでもわかるほど息が上がっており、焦燥感に駆られている様子が目に浮かぶようだった。

 そんな彼女の心境にくつくつと愉悦を感じながら、カルカは親切心と言う名のからかい気分で教えてあげることにした。

 

 

「やあ♪ ホシノ❤︎ カルカだけど、愛しの先輩を見つけたよ❤︎」

『っ! 先輩……? ユメ先輩っ!! 先輩、どこにいるの!?』

「彼女、砂漠で干からびてたよ☠️ 大丈夫❤︎ ボクが連邦生徒会の病院に送っておいてあげたから♦︎ アビドスにはまともな病院が無さそうだからね♦︎ ヘイローは無事だったけど、心配なら来るといい♣︎」

 

 

 そう告げると、プツリと通話は切断される。

 カルカとしてはもっと話したいことがあったのだが、ホシノとしてはいてもたってもいられないというところだろう。「どうやら想像以上にあの先輩のことを大切に想っていたようだね♣」と、カルカは目論見通り彼女に大きな貸しを作れたことを喜んだ。

 

 そう、これはユメ先輩を助けたかったホシノと、ホシノに貸しを作っておきたいカルカの利害が一致した結果に過ぎない。カルカの気分次第では、あの時ユメを見殺しにする選択を取っていた。

 そしてその場合も、ピエロは決して後悔しないし良心の呵責を受けることもない。揃カルカはツンデレでもダークヒーローでもなく、間違いなく破綻者であった。

 

 

 しかしこの時下した自らの判断が正しかったことを──カルカは病院を出てすぐに確信することになる。

 

 何故ならば彼女が今ホシノ以上に戦いたかった存在が、労いの笑顔を浮かべながら出迎えてくれたからだ。

 透き通った青空のような瞳が特徴的な、清楚な白い制服に身を包む連邦生徒会長その人である。

 

 

「お疲れ様、カルちゃん」

 

 

 日常が銃撃戦と共にあるこのキヴォトスにおいて、重傷の怪我人が発生するのは日常茶飯事だ。しかしそれが生徒の死──ヘイローの崩壊ともなると、滅多なことでは起こらない一大事件である。

 故にこの件は当時ミレニアム自治区まで出張していた連邦生徒会長の耳に届き、蜻蛉返りで搬送先の病院へ駆けつけてきた次第だった。

 そんな彼女は梔子ユメが一命を取り留めたことに心底ホッとした表情を浮かべると、カルカに対して惜しみなく感謝の言葉を告げてきたものだ。

 

 

「梔子さんのこと、よく助けてくれましたね」

 

 

 忙しい仕事を中断してまで駆けつけてきた連邦生徒会長の、普段は決して見せない焦燥した様子に嗜虐心をそそられながら、カルカは親しげに話し掛けてきた彼女に対してさも真人間のように言い返した。

 

 

「連邦生徒会役員として当然さ♣︎ 人助けも嫌いじゃない♠︎」

 

 

 ……なーんて、本当はそうした方が楽しそうだったからだけど♣︎

 小鳥遊ホシノはボクと同じ一年生♦ まだまだ実る♠ ここで壊してしまうのはもったいないじゃないか……♦

 高価な玩具(おもちゃ)は大事に扱わないとね♠︎ 大事に扱った玩具ほど、壊した時の快感は一層大きい♥

 

 心の内に隠した悪意に満ちた打算を、カルカは薄っぺらな嘘で隠し通す。

 しかしこの時の一件がD.U.に広まると、揃カルカの人となりを知っている周りの人々は口々に衝撃を受けていた。

 

 

「カルカが人助けを……!? まさかアイツ、本当に改心したの?」

「……だと良いのですが」

「揃カルカ……流石は会長が右腕と見込んだお方ですね。やはり超人の目に狂いはなかった……!」

 

 

 目の前でヘイローが壊れそうになっている人間を見かけた以上、救命活動を行うのは賞賛されるべき真っ当な人道である。故にこそ、揃カルカという人物がそれを為したことは彼女を警戒していた人々を大いに驚かせた。

 

 揃カルカという生徒は、連邦生徒会から危険人物として認識されていた。極めて正しい認識である。

 

 不気味なピエロメイクとコスチューム姿のまま、市内の暴徒を過剰な暴力で蹂躙しているのが普段の彼女だ。その姿は控えめに言って不気味で恐ろしく、猟奇的殺人鬼そのものだった。そんな彼女の気まぐれな行動に対して、「同僚」の連邦生徒会役員たちは常日頃から振り回されるばかりだった。

 

 

 ──しかしそんな中でただ一人、連邦生徒会長だけは彼女の善行の裏に隠された真意を見通していた。

 

 

「……悪巧みですか? カルちゃん」

「もちろん❤︎」

 

 

 そう──彼女、揃カルカの望みはただ一つ。

 

 このキヴォトスで一番の超人である、連邦生徒会長との対決である!

 

 

 狂気的に強者とのタイマンを求め続けていた戦闘狂のカルカにとって、初めて目にした連邦生徒会長という存在はまさしく最高の獲物だった。

 実力もさることながら、その立ち振る舞いやカリスマ性、そして何より顔である。温和そうに見えて何物にも揺るがない宝石の如き眼差しも、空のような青に淡いメッシュの入った髪も、あと目隠れなところも好みだった。バチクソに、好みだったのである。

 

 故に、カルカは心を奪われた。

 その圧倒的な存在に、骨抜きにされてしまったのだ。

 

 

 ──その秘めた能力は、無限にして絶対♠︎ かつ、唯一無二のオ・ト・コ❤︎ そ! れ! が! ボクのターゲット❤︎

 

 

 その姿を一目見た時から、カルカの心はかつてない脈動に突き動かされていた。当時は爆速のルンルン走りで駆け出すと、数々の建物の壁を突き破りながら一直線に連邦生徒会の管理地域「D.U」へと駆け抜けていったものである。

 その時の剣幕ときたら、道行く先々に立ち塞がろうとしてきたスケバンたちさえも「あっ大丈夫っす……」とドン引きして道を開けたものだ。なお、道を開けなかった者は不幸にも撥ね飛ばされていった。

 

 そうしてたどり着いた連邦生徒会の本部サンクトゥムタワーにて、カルカは連邦生徒会長に殺し合い(デート)を申し込もうとした。

 

 しかし、相手はキヴォトスの最高権力者とも呼ぶべき立場。その身は常に忙しなくキヴォトス中を飛び回っている為、D.U.内に留まっていることの方が珍しい日常を送っていた。

 アポイントメント無しでは捕まえることができず、運良く見つけることができてもその周りはガードが硬く、一対一のシチュエーションを作るどころか接触すらままならなかった。

 

 

 故に、カルカは連邦生徒会へ入り込むことにしたわけである。

 

 

 侵入者としてではなく、「生徒会役員」という公的な身分を手に入れた上で、正々堂々とサンクトゥムタワーへと乗り込んだのである。

 おかげで彼女と対面する機会は何倍も増え、殺し合い(デート)を申し込むチャンスは激増した。

 カルカは中学時代から「変態殺人ピエロ」という異名で知れ渡っていた指折りの問題児であったが為に、品位を重んじる連邦生徒会に入部するのはそれなりに面倒だった。

 しかしそこは天才的な戦闘技術と無駄にキレる頭脳をアピールした上で、連邦生徒会長直々の許可を貰うことでクリアしてみせたのだ。

 他の役員は最後まで渋っていたが、連邦生徒会長は演説の時と変わらず、人の心を安心させる穏やかな微笑みをたたえながら言った。

 

 

「ようこそ連邦生徒会へ。私、────は、貴女を新委員として歓迎します」

 

 

 そうして揃カルカは、連邦生徒会役員に任命される。

 新しいリーダー、連邦生徒会長の清廉さはキヴォトスきっての問題児さえ改心させるのだと、何も知らない者たちはこれも彼女の武勇伝として囃し立てていたものだ。

 

 

 ──もちろん、カルカの心にまともに働く気など備わってはいない!! 

 

 

 彼女が連邦生徒会に入ったのは……入ったと見せかけたのは、愛しの連邦生徒会長と二人っきりになる為の手段に過ぎない。その時が来たら役員としての使命など捨て置き、いつでもヤる♠つもりだった。

 

 ……しかし、カルカにとって想定外だったのは、殺し合い(デート)の相手のコンディションが、思っていた以上に優れなかったことだ。

 

「ミレニアム自治区の調査は終わったようだね♦ どうだい? この後♥ 一緒に食事でも……」

「ごめんね。この後、ゲヘナの雷帝とお話しなくちゃいけないから」

「……☠️」

 

 演説等大衆の前に出た時は常に澄ました顔でリーダーの立ち振る舞いを崩さない彼女だが、生徒会内部に入り込んだことで直に見てみると、外からはわからなかった彼女の変調を読み取ることができた。

 

 会長は今、とっても疲れていると──彼女と親しい友人たちでさえ気づかなかった事実を、カルカはその無駄に高い洞察力を以て見抜いたのである。

 

 

 ──まるで隙だらけで毒気抜かれちゃったよ♣ 今ヤるのはもったいない……♣

 

 

 健気にも、このキヴォトス全ての問題をたった一人で解決しようとする連邦生徒会長の肉体は、日々の激務で疲弊していた。

 もちろん、今すぐ彼女が倒れるだとかそういうことはない。変態(カルカ)でなければ見逃してしまう微々たる変調であったが、いざ戦った時に彼女が全力を発揮できない状態になることをカルカは危惧していた。

 

 壊れかけの玩具とまではいかないが、どうせヤるのなら本来のスペックの彼女とヤりたいな❤︎という欲求が芽生えたのである。

 

 故に──カルカは連邦生徒会長との殺し合い(デート)は、彼女をこうも疲弊させる「問題」とやらを解決するまで待つことにした。恋する乙女は待つことさえ楽しめるのだ♠

 なに、彼女ほどの超人だ。自分がほんのちょっとだけでも手を貸してあげれば、たとえキヴォトス存亡の危機だろうと解決にはそう時間は掛からないだろうと思っていた。

 

 実際、カルカが入部してから彼女の仕事はさらに捗るようになり、いつしか揃カルカは「連邦生徒会長の懐刀的正義の変態殺人ピエロ」という謎のポジションに収まることとなった。

 連邦生徒会の内情を知らない者たちからは本人の預かり知らぬところで英雄扱いすらされていた。利害の一致とは言え、このような形で行く先々で人助けをしていればさもありなんである。

 

 

 ──しかし、カルカは自分以外の誰にも属さない。自分が最強だと理解しているからだ。

 

 

 故に、カルカの立場が上がり連邦生徒会長に重用されるようになると──カルカがその禍々しい内心を彼女に打ち明けるのは早かった。 

 

 

「……全部終わったら、どちらかのヘイローが砕けるまで戦ってほしいって? ふふっ……そんなこと言われたの初めてだよ」

 

 

 お互いの身を焼き尽くすような熱い殺し合い(デート)の申し込み。それを言い渡した時、超人は困ったように笑っていた。

 

 そして。

 

 

「うん、わかった。このキヴォトスにその時が訪れたら……お互い、死ぬまでやりましょう」

「……! キミ、意外とイケる口なんだね♠」

 

 

 彼女、連邦生徒会長は承諾した。揃カルカとの殺し合いを。

 しかしその時、彼女はただ一つだけ条件を付けたのである。

 

 

「貴女の目の前で、生徒のヘイローが壊れるのを見届けるのは……私で最初で最後にしてください」

 

 

 暗に、私以外の人を殺すのはやめてくださいと──そう告げた彼女の言葉に、揃カルカは不敵に笑む。

 カルカは気まぐれで嘘吐きだが、お気に入りの相手との約束は割と守る方である。そんな彼女はおもむろに取り出したトランプをシャカシャカと弄んだ後、そこからランダムに引き抜いたカードがハートのエースであることを確認すると、それを連邦生徒会長に投げ渡しながら応じた。

 

 

「OK♥」

 

 

 今後二度と現れるかもわからない最高の玩具と、お互い合意の上で(こわ)し合えるのだ。その約束はカルカにとって重い誓約であったが、快く受け入れることにした。

 そして連邦生徒会長もまた、投げ渡されたカードに目を落とすなり静かに微笑んだ。

 

 

「これは?」

「お守り♥ このトランプにはボクの神秘が込められてるから、懐にしまっておけば致命傷の一発ぐらいなら耐えられるよ♥」

「……ありがとう、カルちゃん」

「いつか返しに来るまで、それは貸しにしておく♠︎」

 

 

 返しに来た時が、約束の時だと──お互い言葉にはしなかったが、カルカの意図は連邦生徒会長にはっきりと伝わっていた。

 お守りとは言ったが、もっと突き詰めた言い方をするならばそれは、カルカからしてみれば婚約指輪も同義だ。それを笑顔で受け取ってもらえたことに歓喜したカルカは超人と化し、この後程なくして雷帝時代の終焉を決定づける致命的な一打をゲヘナ自治区に与えることになるのだが……それはまた別の話。

 

 

 ──ともあれこの時交わした約束が巡り巡って梔子ユメの救出につながり、本来訪れる筈だったアビドス高等学校の小鳥遊ホシノの運命が少しだけ変わることとなった。

 

 

 しかしその一方で、道化師の踊りだけではどうしても変わらない運命もあり──連邦生徒会長は彼女らが三年生になってから程なくして、行方をくらませた。

 ブルー・アーカイブの始まりである。

 

 

 

「早く帰ってこないかなぁ、会長❤︎ 新しい玩具も見つけたし……キミが帰ってこないなら、先生もあの子たちもみんな、殺しちゃおうかなァ……♠︎」

 

 

 ……そして、この物語は冒頭に立ち返る。

 

 連邦生徒会長が行方不明になってから数ヶ月が過ぎたその日、本当に訪れたキヴォトスの危機を乗り越えたその世界で……純愛を謳う殺人ピエロは今も、消えた超人を探し続けていた。

 

 

 

 






 ユメ先輩は生きてますがずっと昏睡状態なので、この世界でもアビドス編は大体原作に集束しています♠︎
 ブルアカナイズに美少女化してもヒソカの顔しか浮かばないのは仕様です☠️
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