殺人ピエロは連邦生徒会長を狩りたい……♠︎   作:GT(EW版)

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殺人ピエロは対策委員会も狩りたい……♦

【Vol.1 対策委員会編の場合】

 

 

 舞台は自治区の砂漠化によって生徒数が激減したアビドス高等学校。二年前から意識不明の眠り姫(・・・・・・・・)となっている元生徒会長梔子ユメを含め、全校生徒の総数は僅か六人……事実上五人で活動しなければならないこの学校にとって、世界はかくも過酷だった。

 学校には彼女らが入学するずっと前の代から背負っていた莫大な借金を抱えており、彼女らは先行き見えない逆境の中で廃校の危機に抗い続けていた。

 

 さながら大砂漠の中でオアシスの水を求め彷徨うかのようなアビドス廃校対策委員会の前に、しかし救世主は現れる。

 

 シャーレ──正式名称「連邦捜査部S.C.H.A.L.E」。失踪する間際の連邦生徒会長が、新たに立ち上げた超法規的機関である。

 そしてその顧問として任命された大人──「先生」。

 

 「外」の世界より来訪した彼の到着により、連邦生徒会長失踪以来停止状態だったサンクトゥムタワーは再起動。

 それから間もなくして、先生はアビドス廃校対策委員会から受けた救援要請をきっかけに、アビドス高校を取り巻く策謀……砂塵に覆われた自治区の過去と対峙する事になる。

 

 学園都市キヴォトスは今、変革の刻を迎えようとしていた──。

 

 

 

 

 

 ……が、今日も今日とて自らの性欲の探求に忙しい変態殺人ピエロには関係無い話である。

 

 

 ボクがいようといまいと、砂狼シロコは砂漠で行き倒れていたオトナを(すく)い、あの子たちは先生と巡り会う❤︎

 

 

 到着して早々、彼はアビドス高校襲撃に現れたカタカタヘルメット団に対処することになり、その指揮を受けた五人の力でコレを追い払おうとする。

 しかしおどけた態度の裏で彼の人となりを冷静に観察する小鳥遊ホシノ然り、今になって「助けに来た」と語る都合の良い大人の言葉を信用できない黒見セリカ然り、先生と対策委員会の関係は最初から順風満帆というわけにはいかなかった。

 

 しかし、だからこそ面白いのである。

 現実も恋愛ゲームと同じ……第一印象最悪のところから除々に仲良くなるのが乙なのだ♦︎

 

 このチャプターにおいて、アビドス高等学校に対し揃カルカがやらかしたことはあまり無い。

 精々が連邦生徒会長が任命した「シャーレの先生」とやらがどのようなタマか、あわよくば彼女の居場所の手掛かりが見つからないだろうかと、彼に接触を図ろうとしたぐらいである。

 しかし久方ぶりに足を踏み入れたこのアビドス自治区で、彼女が接触するよりも一足早く先生は対策委員会と合流してしまった為、先を越されたカルカは「まずはお手並み拝見♣︎」と遠目から様子を窺うことにした。

 人間観察は、カルカの趣味だった。

 

 

 アビドス高校を手に入れたいヘルメット団と守りたい対策委員会の攻防。

 その光景を少し離れた廃ビルの屋上にて、腰掛けた足を退屈そうに投げ出しながらピエロは眺めている。

 

 

「10点、20点、45点、10点、2点、50点、30点……カイザーの最新装備と言っても所詮こんなもんか♦︎ やっぱり次闘うならC&Cか……♠︎」

 

 

 その双眸が見据えた先には、アビドス廃校対策委員会の面々……ではなく、彼女らと対峙しているカタカタヘルメット団の姿があった。各々に対して勝手気ままにつけた点数は、戦闘能力はもちろんカルカが戦って楽しいかという基準のもと採点されている。

 因みに対策委員会の面々に対しては既に実施済みであり、全員が高得点。後方支援者である先生と奥空アヤネは採点対象から外したが、ホシノの後輩たちは皆……特に砂狼シロコにはキヴォトス最強格にすらなり得る資質を感じ、カルカは下着を軽く濡らしながら「青い果実……❤︎」と評価していた。

 

 

 だが、まだ早い♠︎

 

 

 今はまだ、かつてのホシノと同じく発展途上。今狩るのはもったいない❤︎

 それに、廃校の対策で何かと忙しそうな彼女らは、今はこちらのデートに応じてくれる余裕は無いだろう。

 一番仕上がっている小鳥遊ホシノについても、かつて梔子ユメの命を救ってあげた対価として二年前から約束(キープ)している。

 カルカとしても現状の最優先事項は連邦生徒会長との対決であるが故に、今は収穫を焦る必要は無いとして彼女らのことはやらしい目で見守るだけに留めていた。

 

 かつて誇った栄華は今や昔。既に不毛の地と化したと思っていたこのアビドスの地に、中々どうして遊び(壊し)がいのある生徒が集まるものだ。

 もしかしたらこの辺りを探せば他にもたくさん逸材が埋もれているのだろうかと期待したカルカであったが……流石にヘルメット団員たちの実力は他所の自治区と変わりないようだった。

 

 しかしその時、突如として背後に現れた強大な「神秘」の気配に、カルカは目を見開く。

 

 

 ──95点……!! 

 

 

 学園最強クラス。

 小鳥遊ホシノに近い実力者の登場に驚く──が、その人物が見知った人物であることを確認すると納得し、落胆した。

 

 

「なんだワカモか♠︎」

「……相変わらずですね」

 

 

 狐坂ワカモ。「災厄の狐」の異名で呼ばれるキヴォトスきっての問題児である。

 現在停学処分中の百鬼夜行連合学院の生徒であり、数日前に発生したD.U.の混乱に乗じて矯正局を脱走した「七囚人」の一人でもある。

 異名の由来は彼女が普段着用している狐のお面と、彼女によって引き起こされる無差別かつ大規模な破壊行為が手の施しようがなく、まさに天災として扱われていたからであった。

 そんな彼女は今も絶賛指名手配中の大罪人なのだが、カルカとしては自らのこだわりと美学を以て自由気ままに暴れ回る彼女とはウマが合い、数年前から友人に近い関係を築いていた。

 

 

「そっちこそ♣︎ 矯正局暮らしでなまってるんじゃないかと心配したけど、安心したよ♣︎」

 

 

 カルカの敏感なシックスセンスを掻い潜り、その愛銃「真紅の災厄」の銃口を突きつけるのに十分な距離まで接近することができたのは、ひとえに彼女の隠蔽術が卓越しているからに他ならない。

 そんなワカモの未だ衰えぬ実力に感心しながら、カルカは「ババ抜きでもどう?」と再会を喜んだ。

 

 

「二人でやるものではないでしょう」

「それもそうだ♦ ……で、何しに来たのかな? デートの誘いなら悪いけど、ボクも今ちょっと先約が渋滞してて♣」

「違います」

「残念♠」

 

 

 尤も、この場に現れた彼女が自分と遊び(闘い)に来たわけではないことは、カルカには一目見てわかっていた。それは彼女が自分に対して殺気を放っていなかったのもそうだが、何より今の彼女はその異名の由来となった「狐のお面」をつけておらず、そのお嬢様然とした美しい素顔を晒していたからである。

 悪名高い「災厄の狐」として活動している時の彼女はヘルメット団にとってのヘルメットのように、他の誰かに自分の素顔を見せることを極端に嫌う。そんな彼女だが、何も四六時中お面をつけているわけではなく、自分が狐坂ワカモだと知られたくない潜伏時などには素顔で堂々と街を練り歩いていた。世間一般に「狐坂ワカモ=狐のお面」という認識が浸透しているからこそ有効なライフハックだった。

 因みにカルカも完全なオフ日には普段のピエロメイクを落とし、オールバックに固めている髪もストレートに下ろしている。連邦生徒会の制服を着こなし、両目もパッチリ開けたその姿はどこからどう見てもただの美少女にしか見えない為、連邦生徒会長以外の者に初見で気づかれたことはなかった。

 そういう点でも、二人は類友であった。

 

 似た者同士であるが、しかし同族嫌悪を抱かない程度には本質的な価値観が違う友人。

 そんな彼女が素顔でここに来た理由がデートの誘いでないのなら、これはどうだろう?と思いつく用件を当たってみた。

 

 

「もしかして、キミの脱走を手伝ったお礼を言いに来たのかな?」

「ああ、やっぱり貴女だったのですね。その節はどうも。一応感謝しておきます」

「首謀者はボクじゃなくてニヤニヤ教授って子なんだけどね♦ ボクは彼女の計画に便乗しただけさ♠︎」

「酷い連邦生徒会役員もいたものですね……」

「キミたちを脱走させれば、会長が駆けつけてくるんじゃないかと思ったんだけど……♠ 現実は厳しいね☠️」

 

 

 因みに、連邦生徒会にはカルカの背信行為は露見していない。カルカはただ「ニヤニヤ教授の企みに気づいたのだが遠くにいたので報告が間に合わなかった」だけであり、彼女の手で檻を開けたわけでも衛兵たちに危害を与えたわけでもないからだ。連邦生徒会長が健在だった頃から、カルカはそういった危険球退場ギリギリのラインを攻めるのが好きだった。正確には、そうやって連邦生徒会長を困らせるのが♥

 尤も、ワカモなら手を貸さなくても一人で勝手に脱走していただろうというのが彼女の認識だった。故に遠路はるばる素顔を晒してまで感謝を述べに来る必要は無い──と思ったのだが、彼女の反応は実にあっさりしていた。

 

 お礼を言いに来たのではないとすると、矯正局を出たばかりだから娑婆の情報を聞きに来た……? いや、そんな感じじゃないな♠

 

 見ると、ワカモは何やら妙にしおらしい態度をしていた。

 腰の裏に組んだ両手の中で、もじもじと忙しなく指関節を揉んでいる。その頬はほのかに紅潮しており、視線は遠くを行ったり来たりしている。

 そんな彼女の視線の先に映るのは──今しがたヘルメット団を鎮圧したホシノたちアビドス廃校対策委員会の面々。いや、その後ろで指揮を振るっていた……

 

 

 ──まさか……! いや、しかし!! 

 

 

 「その経験」に憶えのあるカルカは、すぐに彼女の思惑を察する。

 察しはしたが、その可能性は低いだろうと決め込んでいた。何故ならカルカの知る狐坂ワカモとは混沌大好き人間。人が人に寄せる尊い感情よりも、破壊と混乱こそを尊ぶ破綻者である。

 かつて自分が連邦生徒会長に対して「その感情」を抱いたと話した時、ワカモは「えっ、正気ですか? 理解できません」と真顔で返してきたものだ。

 「そんなことよりシージャックです!」と友人ののろけ話よりも自らの犯罪計画を優先していたこの少女が、よもや「こちら側」に来るなどと……

 

 

「……わたくし……あ、あちらの殿方に恋してしまったもので……」

 

 

 キテいた……! 

 彼女が矯正局を脱走してから僅か数日の間で、災厄の狐は恋する乙女にジョブチェンジしていたのである! 

 うわずった声で発した自らの発言に「言ってしまいました~……!」と身をくねらせるその姿は可憐な容姿も相まって非常に可愛らしかったが、カルカは友人の新しい一面に思わずトランプを落っことしてしまった。

 普段どれほど冷徹で利発であろうとも、「恋」というたった一つの感情は思春期少女の心を惑わせていく。ワカモも例外ではない!!ということだ。

 

 シャーレの先生に恋をしたと語る彼女に、カルカは本心から意外な声を返した。

 

 

「キミ、ああいう大人がタイプだったんだね♠︎」

「オフィスに忍び込んだ時、そのお姿を一目見て……」

「一目惚れか……♣ ボクが会長にしたのと同じだ❤︎」

 

 

 ああなるほど、だから自分のところに来たのだとカルカは理解する。

 自分と同じナチュラルボーンヒールである狐坂ワカモにとって、相談できる友人は少ない♦︎ その感情を初めて理解した彼女は、先に色を知った者として揃カルカに相談したかったのだ♦︎

 

 

「それもありますが、同性愛者の貴女なら泥棒猫になる心配も無いと思ったので」

「ボクは普通(ノーマル)♦︎ ボクは強くて壊しがいのある子が好きなだけで、女の子だけを愛しているわけじゃないよ?」

「貴女はソッチ系の人だと、矯正局ではみんな仰ってましたけど」

「それは心外♠︎」

 

 

 自分の好みに当てはまるのなら、性別に関係無くどちらでもイケるのがカルカ本来の守備範囲である。

 しかしこのキヴォトスではカルカの好みに合致する強者には美少女しかいなかったため、必然的にその性欲は同性にのみ向けられてしまっていた。因果関係で言えば、女の子だから壊しがいがあるのではなく、壊しがいのある相手がたまたま女の子しかいなかったというのが正しい。

 その点で言えば、キヴォトスの外から来たというあの先生はこちらにはいない美青年であり、面食いのカルカとしては悪くない感触だった。

 だが……

 

 

「まあ、確かにシャーレの先生はボクの好みじゃないね♠︎」

 

 

 ヘイローが無いからすぐに壊れちゃうし、前に出て闘う感じでもなさそうだから♠︎

 ……と続く言葉は口にしなかった。怒ったワカモと一戦交えるのも楽しそうだが、相手は違えど同じ恋する乙女。カルカにも数少ない友人に対する配慮はあったのだ。

 

 

「だから貴女にお聞きしたいのです! その……意中の殿方とお近づきになるには、どうすればよろしいのかと……このキヴォトスで今話題の、世紀の大恋愛を成し遂げた貴女に!」

「……?」

 

 

 揃カルカは変態殺人ピエロである。

 己が性癖を満たす為ならばどの自治区へだろうと渡り歩き、周囲への被害を一切考慮すること無く暴れ回る点においてはワカモ同様いつ矯正局にぶち込まれてもおかしくない異常者だ。

 しかし、そんな彼女に対する世間一般からの人物評は……悪名の他に定着している認識があった。

 

 

「……ワカモ、ちゃんと説明しろ♠︎」

 

 

 恋愛経験と聞いて、思っていた以上に自分のことを頼りにしている様子のワカモ。それはいい。彼女は友達だし♣︎

 しかし「このキヴォトスで今話題の」という前振りには何か嫌な予感を感じ、カルカは少し強めの言葉で説明を促した。

 するとワカモは改めて、「語らねばなりませんね……」と懐から一冊の本を取り出しながら語った。

 

 

「わたくしはこの書物……「連邦生徒会恋物語 〜道化師と生徒会長の章〜」を読んでいたく感動いたしました。かつて恐怖の殺人ピエロと恐れられていた道化師は、触れるもの皆傷つけていた──そんな少女は会長と出会い恋に落ち……互いに惹かれ合っていく中で生まれて初めて真実の愛を見つけたのです。そうして道化師は彼女に忠誠を誓う騎士となり……やがては二人の愛が世界を救う、感動の大作書籍です!」

 

 

 胸に手を当てながら浸るように語り出したワカモが手渡した書物の表紙には、空色の髪の少女と道化師の少女が抱き合う耽美なイラストが描かれている。

 タイトルの下に「著:メルリー」と記された表紙をめくると、1ページ目から早々にどこかで見たことのある美少女と、これまたどこかで見たことのあるピエロが登場しカルカは言葉を失った。

 

 

「……マンガか……♠︎」

「ええ、わたくしも普段こういったものは読まないのですが……この間ブラックマーケットの雑貨屋を襲った時、ついこの表紙が目に入ったもので。怖いもの見たさで読んでみたら予想外にのめり込んでしまいました」

「ちょっと目が大きいけど、このキャラクター……会長とボク? よく描けてるね♠」

「店主から聞いた話によると、この著者の描いた作品には実在の人物がそのまま登場することが多いそうですね」

「ふーん♣ なるほど……ボクと会長のラブロマンスって奴だね♪ うん、大体こんな感じだったよ♦ 会長はこんなに甘くなかったけど、ボクと彼女は確かに将来を誓い合った♠」

「意外に冷静な反応をするのですね。貴女ならもっと気持ち悪い……奇怪な反応をすると思ったのですが」

「恋愛ゲームは好きだけど、本の類いには興味無いんだ♦ 恋は実践派だからね♦」

「そうですか。なら尚のこと、わたくしに恋の必勝法をご教授していただきたい!」

 

 

 思春期少女の園である学園都市キヴォトスでは、恋愛系の物語は定番中の定番である。特にブラックマーケットには公的に許可されていない作品があちこちで取引されており、あらぬ風評被害を生む原因として特定の人物を悩ませ、連邦生徒会にも何度か被害報告が上がっていた。

 カルカは意外──と言われることは多いが、その手のトレンドには詳しくなかった。カルカは恋愛を一本道の物語として読み耽るよりも、自分自身の選択でルートを切り開いていく方が性に合っていたからだ。

 まっ、特別不快でもないしいいんじゃない? というのが、こういった肖像権侵害作品への彼女のスタンスである。カルカは興味の無い事柄に対してはとんと無頓着であった。

 

 ……尤も本人がそんなスタンスだからこそ、彼女の預かり知らぬ界隈では今も「連邦生徒会長×カルカ」が大手中の大手として定着した地獄絵図が広がったりしているのだが、それはまた別の話である。

 

 ──ともかくその非公式「会カル本」を通してカルカが恋愛強者であると認識(ごかい)してしまった狐坂ワカモは、彼女にアドバイスを貰いに来たということだ。

 

 

「うん、いいよ♪ 暇だし♣︎」

「! 今初めて、貴女が友人で良かったと思いました……!」

「現金だなぁ♠︎」

 

 

 パアアッと満開の花のような笑顔を浮かべるワカモに「その顔を見せれば大抵の男は落ちると思うけど……♣︎」とツッコみながらも、カルカは恋愛術指南を受け入れる。他ならぬ彼女の頼みだし、断る理由は特に無い。

 それに、ワカモは所属こそ百鬼夜行連合学院となっているがカルカ同様自分以外の誰にも属さず、キヴォトス中を気ままに流離っている生徒だ。そのフットワークの軽さは失踪中の会長を捜すのにもきっと役立つだろうと、今後有力な情報を見つけ次第自分に教えてくれるよう約束させた上で、カルカは彼女の儚い恋を応援してあげることにした。

 

 しかし、その結果──

 

 

「! 何ですかあの女っ! あのお方にあんな口の利き方をして! あっちの女もあんなに馴れ馴れしくして! あと、あっちの貴女の口調に似ている女も無駄に色気を振りまいて……! 全員吹っ飛ばして差し上げましょうか!」

「ダメだよ手を出しちゃ♠ 過激な暴力ヒロインムーブは心証を悪くするからね♠ 先生は今回の件で対策委員会の子たちのことを気に掛けるようになったから、傷つけると好感度が下がるよ♦ 始末するならファーストコンタクトの前にするんだったね♠」

「な、なんてこと……! このわたくしとしたことが、完全に出遅れていた……!?」

「それはそうとボクとノノミの口調、そんなに似てるかな♣」

 

 

 カルカがレクチャーしながら、それからも二人は忍ぶように遠くから先生の様子を覗き見していた。

 

 その際には先生と対策委員会の面々の距離に嫉妬し、狐のお面を装着して飛び出そうするワカモをカルカが諫めたり──

 

 

「陸八魔アル……! イイね……イイ! 凄くイイよその()!! その表情(かお)!! その心意気!! ああ、今すぐキミを……壊したい♥」

「貴女が今出るとあのお方を巻き込んでしまうのでやめなさい」

 

 

 また別の日では、「便利屋68」というこれまたカルカ好みの面白集団もとい実力者たちが対策委員会の前に現れたことで、急に興奮状態になったカルカが思わず飛び出そうとしてはワカモに諫められる一幕があった。

 社長と名乗るリーダーがどうにも、カルカの好みにハマっていたのである。もちろん一番は変わらず連邦生徒会長であるが、出会う順番が違えば連邦生徒会ではなく便利屋68に入り、色々とムチャクチャにしていた世界線もあったのかもしれない。

 

 そんなこんなで先生のストーカーをしながら──ワカモはそれを殿方の一歩後ろを慎ましく歩く奥ゆかしきデートと称していたが──片方が暴走すると、もう片方が諫めるという状況が数日ほど続き、アビドス自治区は変態殺人ピエロと災厄の狐が揃ったにしては奇跡的に平和な日々が続いていた。

 

 

 このチャプターは終始そんな感じである。端的に言えば、大体運命通りと言える。

 

 

 尤も二人が混乱を起こさなかった……起こせなかった最大の要因は、そうさせまいと一人奮闘していた「おじさんの眼力」にあったが。

 

 

「……今日もなにやってるんだろ、あの二人……」

「? ホシノ先輩どうしたんですか~♣」

「うへ~、今日も暑いなぁって。おじさん寝不足だから頭に響くよぉ~」

「この暑さの屋上でよく眠れますね……もっと日陰で休んだ方が良いんじゃないですか?」

「ん、今日の先輩本当に寝不足そう」

「本当に疲れた顔してますね……午前中は私たちだけで大丈夫ですから、休んできていいですよ?」

「優しいねぇみんな~、みんないい子に育っておじさん感激だよぉ」

 

“みんなもこう言ってることだし、保健室で休んできなよ”

 

 

「……じゃあ、ちょっとだけ外すね」

 

 

 そう、二人が先生の様子を覗いている間、先生の近くにいる暁のホルスもまた二人の存在に気づいていたのだ。

 そしてそんな彼女が時折オッドアイの眼光で睨み返していることを、ピエロもまた気づいていた。

 

 

 ──……何の用? みんなに手を出す気なら、私にも考えがあるけど。 

 

 ──心配しなくても大丈夫だよ❤︎ キミとヤるのは会長の後♠︎ デザートは先に食べない主義なんだ♥ 砂漠(デザート)だけに♣︎

 

 ──は? 

 

 ──……☠️

 

 

 数キロメートル離れた間で、彼女と交わしたアイコンタクトである。

 お互い言葉も無くそれだけのやり取りができるのは、ある意味勝手知ったる仲だからであろう。

 

 ともかくこのチャプターでは、借金返済の為に頑張る対策委員会。対策委員会を助けたい先生。先生に話しかける機会を見極め(ヘタレ)ているワカモ。この状況が段々楽しくなってきたピエロ。二人の危険人物の動向に警戒し続け、夜も眠れないホシノ。何も知らない陸八魔アルという構図がしばらくの間続くこととなる。

 

 

 要するにアビドス高校は、今日も過酷だった。

 




 このピエロはホシノのような戦闘力とアヤネのような頭脳、シロコのような遵法精神、セリカのような乗せられやすさ、ノノミのようなスートを併せ持つ♥ つまり実質対策委員会♥

 アル社長から迷いを消して演技力がカンストすれば団長みたいになるのではないかと思いました♠ つまり便利屋68は実質蜘蛛♠
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