殺人ピエロは連邦生徒会長を狩りたい……♠︎   作:GT(EW版)

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殺人ピエロは便利屋68も狩りたい……❤︎

 相次ぐヘルメット団や便利屋68との攻防。シャーレの「先生」の指揮により、その非凡な才能を十全に発揮できるようになったアビドス廃校対策委員会の面々は、見事これらの撃退に成功する。

 しかしこの戦いに戦車さえ持ち出してきたヘルメット団の装備に違和感を覚えた彼女らは、分析の結果それらが「ブラックマーケット」から流入したものであることを知った。

 

 ブラックマーケット──すなわち闇市である。

 

 連邦生徒会の管理が及ばず治外法権がまかり通るその地域は、いくつかの企業が違法行為を行い、違法物品の数々が取引されている無法者(アウトロー)の聖地だ。

 その規模は学園自治区数個分にまで拡大しており、狐坂ワカモのように自身の学校を追われた生徒たちが多く跋扈している。一般の学生であれば、誰もが足を踏み入れることを躊躇う危険地帯だった。

 

 それでも彼女らは自らの青春を取り戻す為、真相を探る為、先生を伴いブラックマーケットへと足を運ぶのだった──。

 

 

 

 

 

 

 ──一方その頃、揃カルカは一人アビドス自治区に残り、元気に一人喜悦り(マスベ)に耽っていた。

 

 

 失踪した連邦生徒会長の手がかりを求め、先生に会いに来たのがこの自治区を訪れた本来の目的だったのだが……対策委員会、便利屋68と立て続けに青い果実を見つけたことで、興奮冷めやらぬ彼女はとりあえず適当な相手で発散しなければ今すぐ彼女らを壊してしまいそうだと思ったのである♠

 

 それを避けたいと思う程度にはギリギリ理性を残していたカルカは、対策委員会がこの場を離れたことを好機と捉え、一旦彼女らのストーカーを辞めて街に繰り出したというわけだ。

 なお、狐坂ワカモはそんな彼女に対して視界に入れたくないとばかりに目を背けた後、「……で、ではわたくしはこれで。色々建設的なアドバイスをありがとうございました」とカルカのもとを離れ、先生を追ってブラックマーケットへと向かっていった。

 随分と気合いを入れた華やかな和装でおめかしをした彼女は、ブラックマーケットにて意中の殿方と接触する決心をつけたようだ。街を跋扈しているアウトローたちから先生を守る為、颯爽と参上してみたらいいんじゃない?というカルカの粋なアドバイスである。

 

 はてさて、その結果がどうなるのか……友人として興味はあったが、今は彼女の恋路よりも優先すべきことがある。

 

 今や対策委員会の五人と一人の病人(梔子ユメ)しか在籍していないアビドス高校だが、それでもこのアビドス自治区自体に全く人が残っていないわけではない。

 大半こそ砂に埋もれた廃虚ばかりだが、高校の周辺には細々ながらもたくましく暮らしている住民たちの姿があり、三大校ほどではないが立派な街があった。

 

 しかしそこに街があるということは、それを餌にする獣もいるということだ。

 

 この自治区における最大戦力の五人が街を離れたと、目聡く気づいた野蛮人たちが当日中に行動を起こし、略奪に動くのは自然な流れだった。

 

 

 そしてその獣を──ボクが狩る♠

 

 

 対策委員会の居ぬ間に縄張りを広げようと侵攻を進め、悲鳴を上げる人々から情け容赦無く略奪を行っているスケバンやヘルメット団。従わなければ問答無用で火炎放射器を吹きかけていくその横暴さは、まるで世紀末である。

 そんな中で野蛮人同士で衝突すればノータイムで縄張り争いへと発展していき──その渦中に、殺人ピエロは意気揚々と姿を現した。

 

 

 「やんのかゴラッ!?」「っるせぇぞコラ!」とメンチを切り合うヘルメット団員とスケバンの背中に、突如として飛来してきたトランプがナイフのように突き刺さっていく。

 

 

 最初の被害者たちは短くうめき声を上げると、その場にばたりと折り重なり仲良く倒れ込んでいった。

 新手の登場に動揺したのは、それぞれの陣営の仲間たちである。

 

 

「な、なんだてめーは!?」

 

 

 ピエロは二人の背中に突き刺さっていたそれぞれのトランプを抜き取ると、先端に付着した鮮血を無駄に艶めかしい舌使いで舐め取り、忍び笑いを浮かべて言った。

 

 

「くくく♦︎ 自警団ごっこ❤︎」

「はぁ……?」

「な、なんだこの変態ヤローは……」

 

 

 そんなカルカの奇行に一同がドン引きしている合間に、不良たちに巻き込まれた善良な一般人たちは「今のうちに逃げるぞ!」とぞろぞろと撤収していく。

 見ようによっては突然現れた正義のピエロが彼らを助けたようにも見えるが……もちろん、カルカにそのような気は無い。ただ彼女は丁度良いところに丁度良い具合の獲物がいたから、欲求発散の為狩りに来ただけである。

 

 

「悪いけど今身体が火照って、誰でもいいから壊したい気分でねェ……❤︎ キミたちじゃ物足りないけど、少し突き合ってもらうよ♠︎」

「はん、馬鹿か? ノコノコたった一人で何言ってる!」

「そうだそうだ!」

「オラオラこの縄張りは俺たちで決まりだ!」

「さっさと家に帰ってくれよピエロさんよォ!!」

 

 

 数はヘルメット団員とスケバン、両陣営合わせて三十人少々。学校で言えば大体一クラス分ぐらいか。もちろん全員が武装しており、対するピエロはその手に銃すら抜いていない。

 このキヴォトスを象徴する言葉として、「銃を所持していない人間は全裸で街を徘徊している人間よりも少ない」というものがある。故に不良たちの抗争の渦中に無手で介入してくる人間は、控えめに言って狂人だった。それが浮世離れしたピエロの格好をしているのだから、なおさらである。

 

 

「抜きな! 銃を抜く時間ぐらいは待ってやるよォ!」

 

 

 銃口を差し向けたヘルメット団員の一人が、せめてもの慈悲としてカルカの準備を待とうとする。

 尤も彼女はピエロがホルスターに手を添えた瞬間、何もさせずに撃ち殺すつもりであったが……そんなヘルメットの裏に隠された相手の魂胆を見抜きつつ、カルカは困った顔で言い返した。

 

 

「んー……ダメダメ❤︎ キミたちじゃ抜けない♦︎」

 

 

 銃のことである。

 その懐から愛用のモノを抜くのは彼女らの力量ではまるで力不足だと判断し、カルカは嘆息した。

 彼女もまたキヴォトス生まれのキヴォトス育ちであるが故に、その懐には立派なマグナムが秘められている。しかしカルカは並大抵の相手にソレを抜くことを是としない主義なのだ。

 もちろん銃のことである。

 

 

「なら、そのままイッちまいなァ!」

 

 

 ピエロの不遜な態度にしびれを切らしたスケバンの一人が、背後からマシンガンを乱射する。

 この場にいた全員が「こいつ……やだぁ……」と生理的嫌悪感を抱いており、さっさとその口を黙らせておきたいのは共通認識であった。

 故に、スケバンの一人が撃ったのを皮切りに他の面々も続き、ヘルメット団員たちさえも合わさって彼女に集中砲火を浴びせていった。

 

 

 ──今ここに、謎の変態ピエロという共通の大敵をもとに二つの敵対勢力が一つにまとまったのである!!

 

 

 しかし、過剰な弾薬で噴き上がった土煙が晴れた時……そこには既に、ピエロの姿は無かった。

 

 ドサッ……と、一人のスケバンが地に伏せる。

 それは、最初にマシンガンを浴びせかかったスケバンだった。そんな彼女の気絶した身体を足下に転がしながら、無傷(・・)のピエロは平然とした顔で一同を見回す。

 まるで値踏みをするような、ネットリとした目で。

 

 

「そうだなぁ……♣︎」

「て、てめえ今何を……」

 

 

 総勢三十人を超える武装集団からの一斉射撃を喰らって、無傷──否!

 カルカは自身に差し向けられてきたその全てを、しなやかな体捌きで巧みにかわしてみせたのである。そんなことさえも見抜けない彼女らの様子に再度落胆の息を吐いたカルカは、おもむろに取り出した一枚のカード──ハートの4を見せつけて告げた。

 

 

「キミたちまとめて、これ一枚で十分かな♣︎」

「「ほざけェエ──!!」」

 

 

 煽られた不良たちは沸点の限界を超え、未だ銃を抜いてすらいないカルカに躍りかかっていく。「舐められたら殺せ」が信条である彼女らアウトローに対して、彼女の煽りは一際深く突き刺さっていたのだ。

 そんな血の気の多い少女たちの威勢に気を良くしたカルカは、有言実行とばかりに一枚のカードだけを携え迎え撃った。

 

 四方から飛来してくる銃弾の雨を、それこそサーカスの空中ブランコのようなアクロバットな動作で掻い潜りながら接近──そのまま剣のように振るったトランプの先端部で、次々と不良たちを狩っていく♠

 

 ピエロに一発も与えられないまま、僅か数秒のうちに仲間たちが次々と減っていく光景。

 激昂が恐怖に変わっていくのがわかる。「こんな筈では……」という彼女らの気持ちを、カルカはヘルメットやマスクの下からでも読み取ることができた。

 

 そういう顔を見た時こそ、カルカの心はより強く興奮するのだ♥

 

 

「くっくっくっ……あっはっはァ──ァ❤︎」

「うわぁあー!?」

 

 

 さっきまで威勢の良かった人々の身体と心を傷つけていく快感に、堪らず哄笑を上げる姿はまさしく「変態殺人ピエロ」の呼び名に相応しいものだった。

 

 残りの数が十人を切った頃にはアウトローたちはすっかり戦意を失っており、彼女らは脇目も振らず逃げ出していった。

 

 

 だが、まだ足りない♠ あの子たちで昂ぶったこの凄まじい劣情(パトス)は、たった二十人程度狩ったぐらいでは到底収まりがつかない♥

 

 

 両目をバキバキに開いたカルカがホラー映画の名状しがたい怪物のような動きで追撃していくと、アウトローたちはさらに五人ほど人数を減らしていった。彼女らは恐怖に涙すら流した。

 最初に言った「自警団ごっこ」の体裁を保つには大分無理のある絵面であったが……少なくともこの経験をした不良はしばらく罪を犯す気になれなくなるという意味では、遺憾ながらこの街の役に立っていた。小鳥遊ホシノがカルカの存在に気づいていながら放置してブラックマーケットに向かったのも、実のところはそれを見越していたからでもある。

 

 ただ、その絵面は酷かった。

 

 理性を手放し、快楽に表情を歪めながら不良たちを一方的に蹂躙していくその様は、仮にホシノが街に残っていたならば心底嫌がりながらも止めに入らずを得なかったほどに、本当に酷かったのである。

 

 

 粗方狩り尽くしたところでようやく身体の火照りが収まってきたカルカは、そのキマッていた眼光に理性を戻し、生き残った最後の一人の姿を見据える。

 

 カルカの攻撃を一発だけ耐えて見せたヘルメット団のリーダーらしきその少女は、ひび割れたヘルメットを脱ぎ捨てると、額から滴り落ちる血を拭いながら彼女を睨む。

 

 

「ば、馬鹿な……アタシらペロペロヘルメット団が……そんな紙切れ一枚で全滅だと……?」

「全員合わせて30点ってとこかな♪ キミはどうかな♣」

「化け物め……!」

「化け物呼ばわりはヒドいなぁ♠︎ 僕としては奇術師とか、死神のつもりなんだけど♠︎」

「ピエロ……奇術……死神……そうか! あんた、揃カルカだな? 雷帝時代終焉の英雄! 連邦の赤いジョーカー!」

「えっ♦︎ なにそれボクそんな呼び方されてるの♦」

 

 

 まともな会話ができる状態になったカルカは、今の自分が不良たちにとって思いのほか有名人であることを認識し少しだけ感慨に浸る。

 思えば連邦生徒会に入ってから二年も経っている。最初は連邦生徒会長を悩ませている「問題」とやらを解決したらさっさと脱退するつもりだったのだが……その問題が想像以上の面倒事だった為に、予定以上に長くズルズルと体制側に居座ってしまったものだ♠

 尤も会長が失踪して以来、役員の仕事をすっぽかし続けているカルカとしては、自分が今も連邦生徒会の一員である認識は無い。それでも役員の資格を失効していないのは色々企んでいる室長あたりの計らいだろうが、これはこれで暴徒鎮圧を建前とした殺人許可証として色々と便利だった。

 今回の一人喜悦り(マスベ)も治安維持の一環として何ら罪に問われることも無い為、カルカは「やっぱり便利♥ ボクの連邦生徒会腕章(会長からのご褒美)♥♥」とその効力に改めて惚れ惚れしていた。

 

 

 ──と、そのように今は会えない恋人への物思いに浸っていたカルカの前で、ヘルメット団最後の一人が身構えた。

 

 

 観念して逃げることを諦めた様子の彼女であったが……その目には今までは見えなかった闘志が宿っていた。

 砕かれたライフルを地面に置いた彼女は、両拳を握りしめながらピエロと対峙する。

 

 

「武闘家として手合わせ願いたい」

 

 

 スッ──と今までの小物臭いチンピラムーブが何だったのかと思うほどに、堂に入った武闘家の構えにカルカはほうっ♠と息を吐く。

 

 ヘルメット団もスケバンも、どうでもいい相手だからこそここで全員消費する予定であったが……時々こう言った気骨のある子が潜んでいるものだからカルカはこの「自警団ごっこ」が嫌いではなかった。

 

 だが……

 

 

「おまけして55点ってとこかな♦︎ 愛銃(モノ)は抜けなかったケド……案外楽しかったよ♠︎」

「ぐっ……ふふっ……やっぱ……強いな……」

「……?」

 

 

 お望み通り武闘家として素手で闘ってあげると、最後のヘルメット団員はどこか晴れやかな顔で意識を失った。

 カルカに圧倒されながらもしがみつくように立ち上がり、最後の一撃を放つ時には「アタシは……アタシはただ……まともに生きたかっただけだ!」と叫びながら挑み掛かってきたその姿には何か、彼女自身の人生を想像させる熱いドラマのような何かを感じたものだ。

 

 そしてそんな相手を壊す時こそ、心が踊るのだ♦

 ダンスの相手は熱情を持ってなくちゃね❤︎ ヘタクソであんまり気持ち良くなかったけど、今後の成長に期待してとどめは刺さないであげるよ♣︎

 

 そう言い残すなり、カルカは彼らの遺体回収(死んでいない)を隠れてこちらの様子を窺っていた善良な住民たちに押し付け、賢者のようにさっぱりとした顔でそそくさとその場を後にしていく。

 

 さて、この後はどうするか……ホシノたちも今日中には帰ってくるだろうし、それまでおもちゃ箱の整理でもして時間を潰すか♣

 それとももう少し街を歩き回って、他の不良を相手に自警団ごっこを続けるのも楽しいか……♠

 

 ……いや、今はそれよりも──

 

 

「そろそろ食べるか……♠」

 

 

 時刻は昼の二時を回っており、普通に、健全な意味で、お腹が減ってきた♠ カルカは今日、まだ昼飯を食べていなかったのである。

 このアビドス自治区にも飲食店はあるが、やはり栄えたところと比べるとその数は多くない。その内の数少ない店も先ほど狩った不良たちのせいで営業を休止しており、カルカは中々ランチタイムにありつけずにいた。

 玩具を吟味する時同様、食事に関しても彼女はそれなりにグルメな方である。連邦生徒会のワーカーホリックたちは空腹を満たせれば何でもいいとコンビニやカロリーメイトで済ませていたが、カルカは味にも妥協したくないタイプなのだ♦

 故に、少し離れたゲヘナ自治区などには何度か会長とも行った行き着けの店もあるのだが……興奮で誤魔化せていた空腹が今になって露呈すると、そこまで足を運ぶ手間が惜しかった。

 

 

「おや、イイ匂いが漂ってきたねェ……♥」

 

 

 そんな時、おあつらえ向きに風に運ばれてきた豚骨醤油の香ばしい匂いが、カルカの鼻腔をやんわりとくすぐってきた。

 運動の後にはこってりとした味付けに限る♥ まさに今のカルカの需要に当てはまった濃厚な香りであったが為に、カルカの足は花に引き寄せられる蝶のように自然とそちらへと向いた。

 

 「柴関ラーメン」──犬の大将の姿を象ったオブジェと共にデカデカと掲げられたその看板の前で、カルカは立ち止まりよだれを飲み込んだ。

 

 

「ラーメンか……♣ うん♪ ここにしよう♥」

 

 

 揃カルカの孤独のグルメである♠

 

 気の赴くままに立ち寄ったその店は、予想以上に美味で思わぬ収穫となるものだった。

 一口目から「95点……!」という言葉が思わず溢れるほどであり、その独り言に「ははっ、そいつは光栄だ。だけど残りの5点は何が足りないんだい?」と店主が返すほどに、見るからに怪しいピエロ女に対して雰囲気の良いラーメン屋だった。

 

 

「華が足りないところかな♦ ラーメン屋だから仕方ないケド♣」

「だったら今日は運が悪かったな。明日ならウチにもバイトの子で、可愛らしいウェイトレスがいるんだが」

「そうかい♦ だったら明日も来ようかな♪ ボクが今まで食べたラーメンの中でも一番美味しいよこのラーメン♥」

「ふふっ、今後ともご贔屓に」

 

 

 バイトのウェイトレス……と言うと、思いつくのはやはり対策委員会の面々である。あの中の誰がアルバイトをしていたとしても、エプロン姿はとても似合いそうだ♥とカルカは思った。そういう配役では便利屋68の面々もアリである♥

 尤もカルカは先生のストーカーをするワカモに付き添う形で、彼女らがこの店に入っていく様子も何度か見ていた。その時の様子から察するに、ここでバイトをしていると言うのは黒見セリカのことでまず間違いないだろう。なおのこと、その姿を見てみたいとピエロは思った。

 

 

 

 さて、そんなカルカが楽しみにしていた明日の予定であったが……残念ながら、それは叶わなかった。

 

 

 翌日、約束通りこの日も同じ店で昼飯を済ませようと立ち寄ったカルカの前で──柴関ラーメンその店舗が、唐突に爆発したからである。

 

 

「これほどのラーメン屋にはなかなか出会えないのに……惜しかったねぇ♠」

 

 

 あまりにも予想外な「突然の死!!」に、カルカは儚げに瓦礫の山を見つめる。

 昨日語った今までに食べたラーメンの中で一番美味かったという感想はお世辞でもなく本心だった為、その店がこのような形で急に消滅してしまうのは変態殺人ピエロと言えど困惑せざるを得なかった。

 

 

 ──いや、何で急に爆発……♦ ゲヘナの美食研究会……の仕業にしては、あの子たちが殺るような店じゃなかったし♣︎ ボクを狙った復讐かな? 昨日の子たちの仕業なら、もっと壊しておけば良かったねェ……♠

 

 

 カルカ的には、復讐者はいつでもウェルカムである。力の差を見せつけられて、それでも復讐に来るような相手は以前闘った時よりも強くなっているからだ。

 しかし、今はタイミングが悪かった。単純にランチタイムの手前だったのもそうだが、貴重なラーメン屋が消えたのはグルメの彼女には普通に悲しかったのである。

 アー……困るね♠︎と途方に暮れているカルカの前で、瓦礫の山の各所から人が出てくる。

 神秘の証ヘイローを持つ者にとっては、この程度の爆発では致命傷になり得ない。土煙に咳き込んではいるものの、店の中にいた者たちは全員無事だった。

 

 

 ──柴大将は……無事か♦︎ 砂狼シロコが庇ったんだね♪ シロコがここにいると言うことは、みんなもお揃いかな♣︎

 

 あっワカモもいる♠︎ シャーレの先生を庇ったんだねぇ♠︎ ブラックマーケットではちゃんと彼に接触できたのか♦︎ 教えたこと、実践しているようで感心❤︎

 

 

 ピエロの眼光で現状を分析したカルカは、爆発した店の中にはホシノ以外の対策委員会全員と先生、そして狐坂ワカモがいたことを把握する。

 ワカモの姿は自分がテロリスト「災厄の狐」であることを隠しているのか、昨日カルカが見たのと同じ素顔の和装姿だったが無事先生と合流していたらしい。

 もしかしてさっきまで彼女は対策委員会の面々と一緒にラーメンを食べていたのかと、意外な様子にカルカは目を丸くする。しかし考えてみると確かに対策委員会の面々は優しそうだし、案外彼女とも上手く付き合えるのかもしれないと一人納得した。

 

 ワカモがいるのなら、今の爆発も彼女の仕業か……♣︎と推測しかけたが、そんなカルカの判断を他ならぬワカモが否定した。

 

 特に傷ついている様子ではない元気な先生の身体を抱き抱えながら、ワカモはその金色の目をクワッと開き、この騒動を引き起こした元凶の名を叫んだ。

 

 

「よくも先生を……! 許さない……絶対に許しません! 陸八魔アルッ!!」

 

 

 親の仇のように睨む双眸の先には、瓦礫の山の上でいつの間にやら悠然と佇んでいた便利屋68の社長、陸八魔アルの姿があった。

 町々を震え上がらせ、数々の人々から恐れられてきた稀代のテロリスト狐坂ワカモ。その素顔の眼光から繰り出される直の殺意を受けても──かの者は意にも介さず、何事も無いかのように天を仰ぎ見ていた。

 

 

 まるで彼女にとってのこの状況が、昼下がりのコーヒーブレイクと同じ……平穏なものかのように。

 

 

 そしてそんな彼女の圧倒的なカリスマ性を目の当たりにして、下腹部にズキィィン!!と来たカルカは恍惚とした表情でその姿を見つめた。

 

 

「アア……やっぱりイイよ貴女は……❤︎ 絶対に、ボクがヤる♠︎」

 

 

 ──真相はもちろん、陸八魔アルは部下の起こした突然の凶行を受けて、彼女自身も途方に暮れているだけだった。

 

 だがそれを彼女が弁明する暇も無く、状況は目まぐるしく変わっていく♠︎

 同じく激怒していた筈の黒見セリカが思わず我に返るほどに、マジギレしたワカモの存在がそれはもう凄まじかったからだ。

 

 そしてそんな混沌の場に「第三勢力」が介入してきたことで、事態はさらに混沌としていく。

 

 

「おやおや……♣︎」

 

 

 校則違反組織便利屋68拘束の為、ゲヘナ学園から出立してきた治安維持組織風紀委員会。

 それを指揮するのは、No.2である行政官こと天雨アコ。

 ホログラム越しに一同の前に現れ出たその姿を頃合いとして──カルカも「そろそろ出るか……♠︎」とこの舞台に上がることに決めた。

 

 

「オチチが脱出しちゃったネ……❤︎」

「ん、なんか出てきた」

 

“君は……”

 

 

 それまで完璧に気配を「絶」っていたカルカが、彼女らの間に割って入るように姿を現す。

 その存在に最初に気づいたのは砂狼シロコとシャーレの先生であったが、彼女が災厄の狐同様に名の知れた人物であることに気づいたのは、ワカモを除けば天雨アコが最初だった。

 

 

『ッ!? 貴女までなんでいるんですか! 揃カルカ!』

「やあ❤︎ 久しぶりだね、アコ♪ 委員長は元気かい?」

 

 

 対策委員会&災厄の狐VS便利屋68VSゲヘナ風紀委員会──そこに我が物顔でエントリーしてきた……謎の殺人ピエロ。

 その姿に先生と対策委員会は息を呑み、災厄の狐は無言で銃をぶっ放した。

 

 

 ワカモは容赦しない。

 このピエロに主導権を握らせると、話がややこしくなることを理解しているからだ。

 

 眉間に一発受けてもなお顔色を変えないカルカは、額から血を垂れ流した姿のままニコリと笑い、まずは陸八魔アルの姿を一瞥する。

 

 

 そんなピエロの姿を前にして──陸八魔アルもまた、微動だにしなかった。




 例の顔(アルちゃん)と例の顔(ヒソカ)が対面!!
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