先生達は息を潜めて待つ、怪盗が話していた合図を。
しばらく潜んでいると屋敷の裏側から花火のような音がなり始める。
音の鳴った方、花火が打ち上がっている方を見ていると「慈愛の怪盗」という文字が浮かび上がる。
「「慈愛の怪盗」だ!」
「集合!全員で「慈愛の怪盗」を追うぞ!」
警備員達は全て花火が打ち上がった方向に走り出した。
「合図です...先生」
“これ以上なくわかりやすい合図だったね...”
「慈愛の怪盗」からの合図に先生達は動き出す。
「ん?今度はあっちで騒ぎか?」
「一体どうなっているんだ...?」
警備員があちこちで起きる騒ぎに不思議がるそこに、
「どうする?私たちも向か『バチン!』...」
「なんだ!?貴様何者『ベチンッ!』グエッ...!」
レインが箒で一人の首を思い切り叩き気絶させ、気づいたもう一人にも首を思い切り叩き気絶させる。
「うわぁ...」
「間違った箒の使い方だ...」
「メイドは箒で攻撃するんですね!」
「アリスちゃん、メイドは戦わないよ...」
ゲーム開発部はレインの箒の使い方にドン引きする。
「良い攻撃でした」
“ま、まぁ、とりあえず先に進もう”
先生達は、隠し階段を降りて先に進む。
隠し階段を降りた先には、明太郎が「慈愛の怪盗」に追い詰められている場面であった。
モモイ達は追い詰められている明太郎に向けて銃を放つ。
「みんな、今だよ!」
「お姉ちゃん、王冠を確保しないと!」
「と、止めろ!警備員達!」
王冠を確保しようとする先生達に明太郎が警備員を差し向けるが、
「全力で敵を排除します」
「光よ!」
「...ふんっ!」
トキが銃を放ち、アリスがビームを放ち、レインが箒で殴る。
三人の攻撃に警備員は一気に倒れる。
「王冠は...この王冠は...私のものだ...!」
明太郎が警備員がやられたことを確認すると王冠を抱えながら逃げ出した。
「あっ!逃げた!」
「追いかけます」
明太郎を追いかけるとそこには「慈愛の怪盗」と王冠を確保したユズがいた。
「パンパカパーン!仲間と力を合わせて、宝物を取り返しました!」
「盗品の回収を完了しました。これで私たちの任務も無事に終わりです」
アリスは
「...拘束する」
「ふ、ふざけるな!こんなところで捕まってたまるか!」
レインが明太郎を拘束しようとすると明太郎が逃走を始める。
「...追いかけます」
レインが明太郎を追いかけ始めると後ろにいる先生達のところで何かが爆発する音し、その後照明が消える。
レインは一度先生達のところに戻ろうかと考えるが先生達なら大丈夫と判断して明太郎を追った。
「くそ!おい、警備員!あいつを足止めしろ!」
明太郎が逃走中、道中にいた警備員にレインの足止めを命じる。
警備員はレインを止めるために立ち塞がるが、
『グシャ!』
『バコン!』
『バキッ!』
『ガコン!』
と、箒によってさまざまな音色を響かせながら倒れていく。
しかし、数が多く少しずつ明太郎とレインの距離が空いていく。
明太郎ら屋敷を飛び出し庭に逃げる。
「はぁ、はぁ...!追っ手は来てないか...?」
明太郎が逃げてきた方を確認するが見当たらない。
「まだだ...私は諦めん。こんなところで終わってなるものか!」
「...残念ながらここが終着点です」
「!?」
明太郎が声をした方向を見るとそこには箒を振りかぶっているレインがいた。
「や、止めろーー!?『バキンッ!』がぁっ!?」
レインの箒が明太郎の顔面にぶち当たる。
そのまま明太郎は、吹き飛び目を回した。
「...ふぅ」
レインが明太郎の逃走を阻止できたことに安堵していると、
「なんだ?お前?」
「...」
ネルが現れる。
「おい、そこの野郎は俺たちのもんだ。こっちによこせ」
「...どうぞ」
レインは明太郎の襟の部分を掴み投げる。
ネルはそんな明太郎をしっかりと受け取る。
「それで、質問だ。お前は何者だ?」
「...」
レインは女装していることがバレたくないため口を紡ぐ。
「...言わねぇか。お前ら出てこい」
そうするとアスナ、アカネ、カリンが出てくる。
「...」
「これでもダンマリか...仕方ねぇが荒っぽくいくぞ...!」
ネルがレインに肉薄しようとしたその時、
“おーい、レイン!”
「あ?」
先生達が現れたことによりネル達が止まる。
「おい、先生。今から戦闘するからあぶねぇから離れとけ」
“え?なんでレインと戦うの?”
「...は?」
先生の一言によりネル達がレインを見る。
レインはそんなネル達を見ながらしっかりと先生に恨みがましく睨んだ。
「お前、レインかよ!」
「わぁ〜!女子にしか見えない!」
「すごいですね...」
「可愛いな...」
ネル達は、女装したレインをいろんな角度から見る。
レインは死んだような眼で虚空を見つめる。
「うわぁ...」
「レインさん可哀想...」
「ね、ネル先輩がいます...」
「だ、大丈夫だよ...今は、レインさんにヘイトが向いてるから...」
ゲーム開発部はそんなレインを見て同情する。
「...ふふっ」
“レインよ、すまぬ...”
トキはそんなレインを見て笑い、先生はレインに合掌した。
それから数分後、ようやくレインは解放される。
「...」
「よしよし」
レインが体操座りで落ち込み、そんなレインをトキが頭を撫でながら慰める。
「面白いもんが見れたな...。んで...お前ら」
「「「「!?」」」」
ネルがゲーム開発部に話しかける。
「ひぃっ!?」
「い、命だけは...!」
「も、もうダメ...」
「うわーーーーん!もうダメです!」
...が、ゲーム開発部は命乞いを始める。そこに、
「お待ちください、ネル先輩」
「あぁん?」
トキが待ったをかける。
「今回の件...あまりゲーム開発部を責めないでください」
「ほう?」
「ゲーム開発部は何も悪くありません」
トキがゲーム開発部を庇う。
「本来であれば、先輩方に連絡し、応援を待つべきだったところを、私はしませんでした」
「...俺も」
レインも手を挙げる。
「そして、ゲーム開発部の仲間として....友人として。ともに戦う道を選びました。ですから...もし彼女達に責任があると言うのなら、私たちも一緒に」
「そ、そうです。ネル先輩!トキとレインはアリス達の仲間です。友達です!」
レインは体操座りをしながら頷く。
「友達が困っていたら、助け合うとゲームで学びました。なので、なので...」
「いや、だから...あたしが言いたいのはな....」
ネルが言いにくそうな言う。
「なんだ、その...よくやった、って」
「え?」
ネルの口から信じられない言葉が飛び出しゲーム開発部達が唖然とする。
「はっ!?あなたネル先輩そっくりの偽物とかじゃないよね!?」
「何言ってんだ!ったく、人が褒めてやってんのによ...」
モモイの失礼な発言にネルがキレる。
「えっと...本当に許してくれるんですか...?」
「あぁん?許すも何も、結果的にちゃんと解決させたんだろ。ならそれで良いって。容疑者も捕まって、証拠品も揃ってるわけだしな。あとはヴァルキューレに渡すだけだろ?」
ネルの終わりよければ全てよしの言い分にゲーム開発部達とトキとレインが安堵する。
「それとよ、まず、なんでバニーガールなんだ?」
「もちろん潜入捜査だからです。本当はレインにも着せたかったのですが...」
「...!?」
レインはトキを信じられないような眼で見る。
「...はぁ。だからあれほど着たくないって...」
ネルがため息をつく。
「ん?リーダー、あんなに似合ってたのに?あはは!トキちゃんも可愛いね!レインも着てみる?」
「ありがとう、ございます...」
「...絶対に嫌」
トキは褒められて嬉しそうにし、レインは全力で拒否した。
「とにかく!あたしが言いたいのはだな...」
「はい。自粛、謹慎、監禁、どんな内容でも受け入れますので」
「だから!!」
ネルの怒号が響く。
「あぁもう...」
“ネルはトキとレインを褒めてるんだよ”
先生がネルの言いたいことを代わりに言う。
「...」
「それは、一体どういう...?」
トキとレインは困惑した表情を浮かべる。
「あぁもう!だから!」
ネルは声のボリュームを下げて、
「...よくやったな。それと...悪かったよ。だから、なんだ、その...お前らを置いて行きたかったわけじゃねぇから。今回は急な任務で、お前ら二人に任せるしか無かったんだよ。でも最後までやり遂げてくれたし...」
小さな声で、
「その...お疲れさん」
二人を褒めた。
「ふふ、そういう事です。二人とも。リーダーはこういう時、素直じゃないですからね」
「余計な事言うんじゃねぇよ!」
「だってさ、二人とも!良かったね!」
その言葉に二人は、
「「...ありがとうございます」」
恥ずかしそうに感謝した。
そうして、今回の事件は幕を閉じた。
「ところで、レインちゃんそれ誰のメイド服?」
「...」
「あ、逃げた!」
「おい、追いかけんぞ!」
「待ってください、レイン」
...レインはしばらくの間、姿を消した。