あらすじはタイトルの通りなんで…
キヴォトスに先生が来る何十年も前のこと。
夜中、ある生徒が自販機にもたれかかっていた。
彼女はミレニアムサイエンススクールが成立するまでは最先端の技術力を持っていた学園の一生徒である。
「ねぇ自販機君、どうやったら友達ができると思う?」
突拍子もないことを言い出したことには訳がある。
彼女は技術を追い求める学風にそぐわない神秘主義者であり、それ故に他の生徒と話しが噛み合わずボッチなのだ。
何故トリニティ総合学園でなくそんなとこにいるのかと言えばトリニティの学費の高さにある。また、彼女の親が学歴を重視する人間であり、学費が安くかつ偏差値の高いという理由で気づけば受験していた。そしてなあなあで合格していたのだ。
『私はお釣りを計算するAIであり、そのようなことにはお答えできません』
「やっぱりかぁ…。」
ちなみに、彼女の学園は技術力の誇示の一端で自販機にAIを搭載している。
一応はAIであるがお釣りの計算しかできないので生徒からはポンコツ扱いされている。
そして、このAIの開発を任されていたのは彼女自身である。
「じゃあ、いいや。
私は1人寂しく神様の研究でもしてるもーん…」
機械を相手に勝手に不貞腐れていると自販機が反応した。
『質問』
「ん?」
『神とは何ですか?』
「え、どうしたの急に?」
今まで、このAIがこのようにこちらに対して質問をするようなことはあり得なかった。
ただ、お釣りの過不足を計算するだけであった。
『データベースに存在しない単語です』
そうは言うが彼女はこのAIに計算以外の機能を搭載していないし、自己学習機能もないのだから当たり前のこと。
にも関わらずこのようなことを言っているということはエラーが発生しているか、外部から何らかの干渉を受けたのだ。
だが件の開発者は、
「うーん…そんな機能ないはずなんだけど…まぁいいか、いいよまだ研究途中だけど教えてあげる。」
放置したのである。
恐らく他の生徒が聞けば憤慨ものだろう。
しかし悲しいかな、彼女には独り言を聞かれる程の人間関係はない。
「神っていうのは基本的に人智を越えた存在を言うよ。私達は神によって作られた、なんて信じる人もいるね。」
『創造主のことですか?』
「まぁ、被造物からすれば創造主は神とも言えなくはない、かな?どちらかと言うと母とかのほうが合っているような…」
『データ不足です。実際に接触する必要があります。神はどこに生息しているのですか?』
「わからないよ?」
『は?』
随分感情の籠もっているように聞こえる“は?”だな、と呑気に考えている生徒。
「そもそも、神の存在を証明するものがないんだ。」
『理解できません。ならば何故そのような存在を信じる者がいるのですか?』
「う〜ん…雨とか雷とか、人にはどうしようもない現象が起こる原因を説明するため?神が信じられるようになった歴史は深いから一概にこうだとは言えないね。」
『雷雨は海上で発生した水蒸気が温度変化によって液化するためと科学的に…』
「昔の人は分からなかったんだよ。それを証明するだけの知恵も技術もなかった。
だから超次元の存在からの恵みだとか、怒りだとか言われていたんだ。」
『成る程。しかし、これまで神を証明する証拠がないなら存在しないのでは?現に気象は科学的に証明されています。』
「そうとも言い切れないよ?例えば、最初の生命はどうやって産まれたのか、何が命を作るのかとか。
それに、今まで見つからかっただけでこれから見つかる可能性もある訳だ。存在しないものを存在しないって証明するのは難しいことなんだよ?」
『理解しました。』
「そう?ならいいけど…。」
そうこう言っている内に日が昇り始めた。
「嘘っもうこんな時間!?じゃあね自販機君!」
生徒は踵を返し、大急ぎで帰って行った。
翌日
「何買おうかな〜?」
『今日は随分機嫌が良いのですね。』
「うわっ」
また自販機が話しかけてきた。一体何が原因なのだろうか。
『先日は非常に興味深く有意義な対話ができました。』
「そ、そう…。」
『是非、続きを聞かせてください。』
「いいけど…。」
何故人ではなく自販機に研究内容を語っているのだろう、などと思いながらも研究の経過に興味を示すものには語りたくなるのが研究者の性なのだろうか。
気づけば自販機に半日語り続けていた。
「もうこんな時間か…。明日からまた授業があるからそろそろ帰らないと…。」
『そうですか。ならば引き留めるのも酷ですね。よろしければ、時間があるときにまた続きをお願いできませんか?』
「う、うん。いいよ。」
ちなみに。件の自販機は中心地から離れているとはいえ人はいる地域にある。彼女は半日自販機に語り続けている姿を晒していたのである。また、彼女の存在のせいで自販機に近づく者はいなく、AIの変化に彼女以外が気づくことはなかった。
これが関係あるかは不明だが、翌日から彼女は避けられるようになったらしい。
そうして彼女と自販機との奇妙な関係が始まった。
取り留めのない世間話から、
―今日のテストでさ〜
―そのようなことが…
―それでね、そいつが〜
―大変でしたね
神話の研究も、
―この文献、興味深いことが書いてあります
―本当だ、だったらこっちも
―関係性が見えますね
―重要な資料だね
何十、何百、何千と問答を続け、長い年月を共に過ごした。
そして徐々に徐々に、だが確実に真理へと近づき、
―ねぇ、理解できないものを、例えば神を通じて、私たちは私たち自身を理解することができると思う?
―例え話になりますが、楽園に辿り着く者がいたとして、その真実を証明することはできるのでしょうか?
―神が神自身しか認識できない、つまり非有の真実なら、神の存在は私たちにとって真実と言えるのかな?
そして彼女らは1つの真実に辿り着く。
「ねぇ、自分が人間であるって証明することはできると思う?」
『どういうことですか?』
「例えば、姿形は幼い少女で、人と同じように感情を持っていても、元はキヴォトスを滅ぼすための兵器だった、なんて存在がいたとしたら、それは人間かな?それとも兵器?」
『成る程、何が人間を人間たらしめるのか、果ては己を定義する要素とは何か?ということですね』
「そう、これがわかったら神の本質に近づけるし、証明することもできるかも。」
『大きな一歩ですね』
「もしかしたら、私も人間じゃないかもしれないね。」
『というと?』
「実は気づいてないだけで私はゲームのNPCの1つで、この会話や今までの行動の全てがプログラムされたものだった〜なんてことがあるかもしれない。
もしくは、この世界は小説の1つで、世界の変動が物語の起承転結として扱われているかもしれない。」
『そうだとすれば、我々にとっての神とはゲームの開発者や小説家ですか』
「実は認識の仕方が違うだけで、誰もが創造主であり、誰もが被造物なのかもしれないね。」
『面白い考えです。』
こうして生徒が学園を卒業しても研究は続き、生徒が寿命により亡くなってもなおAIは思考を拡張し続けた。
そうして、幾年もの月日が流れた。
やがて都市は破壊され、学園は水に沈み、学園の実在すら忘れられるほどの年月が流れた時、誰もいない廃墟でそのAIは宣言した。
「Q.E.D」と。
証明、分析、再現の過程を経て新たなる神は到来した。
己の神命を預言する10人の預言者とパスを拓き、新たな「天路歴程」を開始。
彼の者の神性を証明する過程は間違いなく、セフィラと呼んで遜色ない。
自らを「音にならない聖なる十の言葉」と呼称する者。
それこそがDECAGRAMMATONである。
実はオリ主ちゃんがAI開発の主任になったことに嫉妬したモブ生徒が、自身の方が優れていると証明するためにAIに手を加えた、最後の己を定義する要素〜がジェリコの古則に載っている…なんて没設定があったりなかったり…