知り合いはさいつよ決闘代理人   作:秘境と聖杯ダンジョン

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嗜むくらいがちょうどいい

お酒って怖いよね。

悪いものだと言っているワケじゃないよ。ただちょっと、過剰に飲みすぎるとね。その人の本性が現れるというか、自分が自分で無くなってしまうというか。

僕はそんなに強い方ではないしね。しかも酔いすぎると記憶が飛ぶタイプ。

そんな僕には教訓がある。酒は飲んでも呑まれるな。

 

 


 

 

クロリンデさんと一緒に狩りに行く時、その収穫を使って一緒にご飯を食べる事がほとんどなんだけど、最近はその食後や帰る前に決闘ゲームをする事が増えた。

一度承諾してしまったばかりに──あるいはクロリンデさんのお願いを断れずに──ほぼ毎回決闘ゲームでクロリンデさんと組手をしている。

結果?勿論僕の全敗。万に一つも勝ち目があるワケ無いでしょ。

初回以降運命判定カードもちゃんと持ってきているクロリンデさん。ちなみに僕はそこそこ運が悪くクロリンデさんは結構運が良い。

僕は木の枝でクロリンデさんは剣を、なんてこともあれば、僕は両足を縛ったり、目隠しをしてなんて事もあった。

クロリンデさん曰く、この状況からどうすれば勝てるかを考えるのがこのゲームのコツらしい。でも僕、剣を使っても両手両足縛って目隠ししてるクロリンデさんに負けると思うんですよ。そんな僕がそれこそ逆立ちしたって勝てるワケ無いじゃん?

 

っと、話が逸れたね。

決闘ゲームが嫌って話じゃないんだ。アレはアレで楽しいよ。クロリンデさんも楽しそうだし。

問題はゲームの後でね。クロリンデさんは毎回、負けた方はご飯を奢るという賭けをするんだよね。

それとなく賭けの内容を他のものにしようとしたんだけど、結局ご飯奢りになってしまう。

クロリンデさんにご飯奢るのは全然構わないよ。ただ、毎回僕の家で開催するのはどうかと。

よくフリーナ様に男を家に上げるのは良くないって言ってるんだけど、男の家に頻繁に上がり込むのはもっと良くないと思うんだよね。

以前からたまに僕の家で夜ご飯一緒にーなんてことはあったけど、月に二回あるか無いかくらいだったのに今では週二ペース。

なんなら今日は一週間で三回目。さすがにマズイよなぁ。

なんて切り出すべきか考えながら夜ご飯を作って振る舞い、一緒に晩酌。結局言い出せず流されるまま。

 

いつもなら食事のあと、軽くお酒を飲みつつ談笑する程度で済ませてお開きにするんだけど、今日は色々と考えていたせいか、それとも最近の疲れが溜まっていたのか、いつもより酔いの回りが早かったしその上で飲み過ぎちゃった。

 

 

 

「あ゙ーフワフワする……」

「珍しいな、君がそんなになるなんて」

「そうっすね……んー……」

 

上手く思考がまとまらないね。頭がクラクラするよ。

 

「──ある意味ではチャンスか」

「何がですかぁ?」

「こんな時で無いと、君の話は聞けないだろうからな。この前はかなりはぐらかされた」

 

はぐらかすー?僕がクロリンデさんにそんなことをぉ?

 

「私は君の事を知りたいと思っているんだ。フォンテーヌに来る前は何をしていたのか。故郷はスメールのどの辺りなのか。閑雲さんの事や、弓の師の事。色々とな」

「んー?」

 

フォンテーヌに来る前……。

 

「旅を……してましたねぇ……スメールから璃月、モンド行って……色んな人と知り合ったり、弓剣作ったり……」

「なぜ旅に?」

「なぜ……」

 

旅に出た理由……?

 

「あー……んー……それ、ダメ……」

「そうか、悪かった。じゃあ次は故郷の事を聞きたいな。スメールのどの辺で生まれ育ったんだ?」

 

故郷……スメール……。これは……いいか。

 

「ガンダルヴァー村……森の中で、弓はそこの人に教えてもらって……」

「ガンダルヴァー村というのか」

「ん。レンジャー長、大マハマトラも元気かなぁ」

「その人たちが君の師か?」

「弓と、戦闘術、すね」

「そうか。少しだけど君のルーツが知れて嬉しいよ」

「んふふ」

 

嬉しいって。クロリンデさんが嬉しいなら僕も嬉しいや。

 

「どうしてスメールを出ようと、外国に出てまで旅をしようと思ったんだ?」

「そりゃ……色々……あって……ん……」

 

 

そこで度々飛びかけていた僕の意識は完全に途切れた。会話のあいだあいだに、クロリンデさんが注いでくれたお酒を飲み続けていたから酔いが爆発したのだろう。

 

 


 

 

なんとも形容しがたい頭痛によって目が覚めた。お酒を飲んで以降の昨晩の記憶が全く無いが、何とかベッドで寝ることには成功したらしい。暖かな布団が心地好い。今何時かは分からないが、今日のこの体調で出歩くのは多分無理。完全に二日酔い。

頭の中で草原核が烈開花を起こしているみたいな感じの頭痛と、異様な身体の重さ。なかなかキツイ。今日はゆっくり休もう。

 

そう思って、寝返りを打とうとして、動けなかった。なんか身体が縛られているような感覚。

 

「……いやいや、まさか……そんな……」

 

一人用のベッドがどこか狭く感じるのも、身体の重さも、半身に感じる温もりも、妙に膨らんだ布団も、全部気のせい。あるいは夢だ。

 

もぞもぞ、と。布団の中で何かが──誰かが動く。

 

昨日僕と一緒に居た人なんて、一人しかいない。

 

「──おはよう。よく眠れたか?」

「…………おぉう、マジか……」

 

布団の中から、若干寝ぼけ眼のクロリンデさんが顔を覗かせていた。

 

……僕もクロリンデさんも服は着ているので、一線は超えていないようだ。超えてないよね?

 

 

すぐさま飛び起きて五体投地と謝罪をしたよ。

詳細を聞いた所、クロリンデさんと話をしていた僕が途中で寝てしまったらしい。ベッドまで運んでくれて寝かせたのはいいけど、家の鍵を開けっ放しで帰る訳にもいかず、僕は全く起きる気配なしなので泊まる事にしたんだって。本当に申し訳ない。

僕の家はそんなに広くなくて、客間も客用の布団もない。夜はそれなりに冷え込むから、僕の寝るベッドに入ったというのもよく分かる。

重ねて謝罪と、詫びをすると言うと、

 

「今度は素面の時に君の話を聞かせてほしい」

 

と言って帰ってしまった。

昨日の僕が何を話したのか、何も覚えていないが変な事を喋ってないといいな。

一人になった僕はもう二度と飲まないとクラクサナリデビ様に誓いながらベッドに倒れ込み、再び夢の世界へ堕ちていったよ。

 

 

 

 


 

 

 

 

「どうしてスメールを出ようと、外国に出てまで旅をしようと思ったんだ?」

 

先程似たような事を聞いたが、その時は拒否されてしまった。

それでも私は君の事が知りたい。

以前君が使う弓剣について聞いた時、その時の君はまるで自分を責めるかのような顔をしていた。

二面性と複雑な機構を持つ弓剣は君を人に留めるよすが、だと。

その真意、君の過去を知りたいと思ったんだ。

 

「そりゃ……色々……あって……ん……」

 

……もうやめておこうか。これ以上は、彼に悪い。

 

「……もう、獣には……なりたく、ない……もう……いやだ……」

 

────あぁ。そういう事か。師匠の言っていた事と似たものが君の心を蝕んでいるんだな。

 

ファントムハンターの戦いは平和を勝ち取る為の戦い。戦いそのものが目的であってはならない。

 

詳細までは分からないが、きっとこれが君がスメールを出て旅をしていた理由なんだろう。

 

「君は獣じゃないよ。獣を狩る狩人だ」

 

そう言いながら机に伏す彼の頭を撫でてやると、完全に寝てしまった。

彼をベッドまで運び、布団をかけてやる。

 

魘されているな。今日だけなのか、それとも毎晩そうなのか。

 

「きっといい夢は見られないのかもしれないが……少しでもあなたが安らかに眠れるように祈っている」

 

 




お酒に呑まれた人
「何も覚えてなくて怖い。やらかしてしまってたら責任取って腹を切ります」

飲ませた人
「やめてくれ、君の思ってるような事は起きていないしそんな事しなくていい」
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