知り合いはさいつよ決闘代理人   作:秘境と聖杯ダンジョン

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稲妻旅行記(二)

船に揺られ、稲妻に着いたよ。旅人さんから聞いた時は酷い雷雨だったって事だけど全然そんなこと無かったね。これも開国したからかな。勘定奉行への書類提出とかもほとんどなくすんなり鳴神島に行けたよ。

 

「聞いていた話より楽に入国できたな」

「開国したからですかね」

「いい事だ。秋沙銭湯は城下町にあるらしい。向かうとしよう」

「ですね」

 

稲妻城の城下町へ向かって歩いて行くよ。正面遠くに見える大きな城が稲妻城だって。左手側には綺麗な桜の木がいっぱい咲いてる大きな山もあるね。

初めて他の国に来た時特有のなんだか違う世界に来たみたいな感じ、とてもいいよね。

 

以前は目狩り令とか、内乱とか色々あったらしいけど、それを感じさせないくらい長閑でいいね。先程通りかかった紺田村という村は特にね。

多分僕には合わないが、ああいう土地で穏やかに暮らしたいって人も多いんじゃないかな。

 

そろそろ城下町に入れるかな。道も土から石で整備されたものに変わったし、何より活気が段違いだ。

 

なんか爆弾みたいなの作ってる人もいるけど。

あ、アレ花火の玉か。この店の看板、海灯祭で見た事あるな。このお店から卸してたんだ。凄く綺麗な花火だったから記憶に残ってるよ。

 

「あ、見てくださいクロリンデさん。刀、刀打ってますよ」

「稲妻の刀は一種の芸術のようなものだ。アレばかりはエスタブレさんのマシンでは作れないだろうな」

 

なんて本人に言うと対抗心燃やして刀も鍛造できるマシンを作ってしまいそうな気がする。

 

木南料亭、新料理『キノコピザ』?稲妻料理だけのお店じゃないんだ。懐かしいなぁキノコピザ。前に一度ジン団長がエンジェルズシェアで作ってたっけ。今度僕も作ってみよっかな。

 

「八重堂……本屋さんか」

「どうやら新聞や記事といったものより、架空の物語のようなものが多く置いてあるようだ」

「娯楽小説ってやつですね。人気商品ランキングなんてのもありますよ。どれどれ……『雷電将軍に転生したら、天下無敵になった』……?稲妻ではこういうのが流行りなんですかね」

「旅人の奇妙な冒険……この表紙はパイモンじゃないか」

「本当、いろんなところでいろんなことしてますね、あの二人」

 

長い階段を上ると、稲妻建築の冒険者協会があった。やっぱりキャサリンさんだった。どこにでもいるなぁ。

ん?協会横の屋台、なんだか嗅ぎ慣れない匂いがする。

 

「すみません、何を売ってるんですか?」

「これかい?僕の創作料理だよ。どれも自信作だけど、イチオシは団子牛乳だよ!」

「団子牛乳?」

 

へえ。牛乳に団子を入れたものか。他にも、無難な創作料理から結構チャレンジしたものまで色々ある。意欲があるのはいい事だね。

 

「じゃあその団子牛乳を……クロリンデさんは?」

「私も貰おう」

「じゃあ二つお願いしますね」

「毎度!」

 

屋台の店主さんから団子牛乳を受け取って、その場で飲む。せっかくなら感想も伝えたいからね。

 

「甘くて美味しいですね」

「口当たりもいい。いいものだ」

「へへ、ありがとうございます!最近お客さんの間で、風呂上がりに飲むのが流行っているらしいので、秋沙銭湯をご利用の際は是非もう一度!」

「へぇ奇遇。ちょうど僕たち、秋沙銭湯に行く予定だったんですよ。また来ますね」

「それはそれは!またのお越しをお待ちしてますね!」

 

気の良い店主さんだね。団子牛乳をお土産にできないか店主さんと狛荷屋と相談してみよう。

 

「えっと……割引券に書かれてる住所だと、この辺ですね」

「ここじゃないか?それらしい看板と暖簾が出ている」

「お二人は秋沙銭湯へいらしたのでしょうか?」

 

ヌルリと恰幅のいい男の人が出てきた。

話を聞いたところ、秋沙銭湯の店長らしい。

 

「先日縁あって割引券を頂いてな。利用できるだろうか」

「えぇえぇ、問題なくご利用頂けます。ささ、どうぞお店の方へ」

 

店長の藍川さんに案内されて店内へ。へぇ、室内温泉なんだ。

 

「あ、いらっしゃいませー!すぐご案内いたしま──きゃ!」

「白音、慌てると転ぶわよーホラー」

 

慌てた様子の店員さんが転けちゃった。奥から注意するよう心配の声が聞こえたけど、届く前に転けちゃったね。

 

「す、すみません!えっと、二名様でよろしいですか?」

「はい。入浴と食事を二名ずつ──」

「あと心理療法を一名、彼だ」

「え?」

「承りました!当店は入浴等の前に心理療法から受けるのをオススメしております!」

「では頼む」

「承りました!ではお呼び致しますので、しばらくお待ちください!」

 

店員の白音さんが奥へと走っていってしまった。

温泉と食事だけだと思ってたんだけど、心理療法?しかも僕だけ?クロリンデさんに聞いてみよう。

 

「えっと、なんで僕だけ心理療法を?」

「秋沙銭湯のサービスの一つだ。なんでも悪夢を食べてくれるらしい。夜、よく眠れていないようだったからな」

「悪夢……?」

「まさか、自覚が無いのか?」

「えっと、はい。特に覚えも無いですし、夜眠れないなんてことも特には……」

「そうか……でも、とりあえず施術を受けてみてくれ。きっと君にとっていい結果になると思う」

「そうですか。分かりました」

 

僕も知らない寝ている間の僕を知られている件。船に揺られてたからよく眠れなかったのはあるけど……あ、この前のやらかした時のかな。それ酔ってて寝苦しくて魘されただけじゃない?

 

あ、僕が呼ばれた。奥の部屋へ行けばいいのね。

 

「じゃあ僕は行ってきますので、先入っててください」

「ああ。好きにさせてもらうよ」

「ではまた後で」

 

クロリンデさんとは一旦別れてお店の奥の部屋へ向かうよ。

 

「今回の施術を担当する夢見月瑞希だよ。よろしくね」

「お願いしますね」

「じゃあ早速始めようか。まずはこの椅子に座って」

 

部屋の中へ案内され、椅子に座る。

 

「始める前に、いくつか質問させてもらうよ。肯定なら首を縦に、否定なら横に振ってね。いい?」

 

首を縦に振る。

 

「よろしい。これからキミにちょっとした暗示をかけるけど、緊張も心配もいらないよ。これはキミの睡眠の質を上げるためのもので施術の効果も出やすくなる」

 

そう言った夢見月さんはお香を手に取った。

 

「このお香はスメールから持ち帰ったものでね。鎮静効果があって『夢境の香り』を放つんだ」

 

そういえば、シティにもそういうお香があったような気がしなくも無い。

 

「じゃあ目を瞑って、深呼吸。この香りをじっくり嗅いでみて」

 

スゥ…………ハァ…………いい香りで、だんだん眠くなってきた。

施術内容を聞いた感じ、寝るのも重要な手順らしいし、耐えなくてもいいか。眠気に抗わず眠りについたよ。

 

 

 

 

「じゃあ次は視覚的な──あれ?もう寝ちゃった。疲れてたんだね。暗示もまだ途中だったんだけど、仕方ないか。耳元で囁きながら夢に入るしかないね」

 

 


 

 

「──お疲れ様、施術はこれで終わりだよ」

 

と、身体を揺すられて目が覚めた。んー、夢を見ていたような感覚はなかったんだけど、何となく身体が軽いし、スッキリしたような気がする。流されるまま心理療法を受けたけど、良かったかも。

 

「ありがとうございました。なんかスッキリした気分です」

「だ、だろうね……温泉は来た道を戻れば、白音か紫が案内してくれるよ」

「はい、もし機会があれば、またお願いしますね」

「は、はーい……」

 

ヒラヒラと手を振る夢見月さんに見送られ、室内温泉の方へ向かうよ。どれくらいの時間施術を受けていたか分からないけど、多分クロリンデさんはもう上がってるんじゃないかな?僕も早いところ入って合流しよう。

 

と思っていたんだけど、クロリンデさんは僕の事を待っていたみたい。

 

「先に入っててって言ったじゃないですか」

「その後好きにすると言ったよ」

「どれくらい待ってたんですか?」

「そこまで長くは無い。法廷での待機時間に比べればな」

「そりゃあそうでしょう……」

「心理療法の方はどうだった?」

「良かったですよ。スッキリした感じです。クロリンデさんも受けてみたらどうですか?」

「ああ、またの機会にな。今日はもう店を閉めると言っていた。かなり急だったから、何かトラブルでもあったのかと思ったよ」

「いえ、僕の方は特になにも……お店の都合ですかね」

「かもしれないな。迷惑を掛けて申し訳ないと、営業終了後の入浴サービスと提携の宿を案内してもらった」

「なるほど、道理で」

 

他のお客さんが居ないワケだ。

僕とクロリンデさんはまだ温泉に入っていないからそサービスで、食事は宿の方でってことかな。せっかく宿を案内してもらったんだし、宿泊もそこにお願いしようかな。

 

「温泉のほうは時間に限りがあるから、二人一緒に入る事になるが」

「……は?」

 

聞き間違いか?

一緒に?誰と、誰が?

 

「聞き間違いではないよ。こうしないと、二人ともゆっくり入ることは不可能だ」

「おおう……」

 

腹を括るしかないのか?なんとか避ける道は──

 

「さ、流石に男女一緒に温泉なんて良くないと思うんですよね」

「君は嫌か?」

 

マジ?マジに言ってるの?それ。

 

「それに、さっき店員から聞いたのだが、稲妻には『裸の付き合い』という言葉があるという。私たちにはちょうどいいと思わないか?」

 

何がちょうどいいんですか?

避ける事はできなそう。今の僕はまるで、狩人に追い立てられ、追い詰められ、逃げ場を失った獲物のようだもの。

 

 

 

 

 

 

ちゃぽん。

 

 

いい湯だ。繁盛するのも分かるね。

さっき施術を受けたからか、どんどん疲れが取れていく実感がある。素晴らしいね、秋沙銭湯。もし支店を作ることになったら是非フォンテーヌにもお願いしたい。

ナヴィアさんやフリーナ様、リネさんリネットさん、ヌヴィレットさんリオセスリさんにも教えてあげよう。とても良かったから稲妻に行く機会があれば是非行ってみてください、と。

 

そうやって他のことを考えていないと、僕が僕で無くなってしまう。

 

「知っているか?フリーナ様は水の上に立つことができるんだ」

「そうなんですか」

「水の上に立てるフリーナ様は、果たして湯船に浸かることはできるのだろうか、という話をこの前ナヴィアとしていたんだ」

「面白いですね」

「それで実際どうなのか、ナヴィアが一緒にいたフリーナ様に聞いたんだ」

「すごいですね」

「そしたら『僕の事をなんだと思っているんだい』と怒ってしまった。機嫌を取るのに苦労したよ」

「そうなんですか」

 

今、僕の会話はこの三枚の手札に託されている。

僕の隣りには、タオル一枚巻いただけのクロリンデさんがいる。

白い肌が、お湯で温まりほんのり紅潮しているのがまた──ヌヴィレットさんやリオセスリさんは特に忙しいからね。きっと稲妻まで来ることは難しいだろうけど、だからこそ休暇なんか取った時には一度来てみてほしいものだね。

 

「──さっきから返事が適当だな」

「そうなんですか」

「ほら。どうかしたのか?」

 

グイ、と。クロリンデさんに無理やり顔を向かされた。

目が合ってしまう。いつもならなんて事ないけど、それは当然服を着ているいつもの格好だからであって。だからといって視線を下に逸らしたりしたらそれこそマズイ事になるので、必然的にクロリンデさんと見つめ合うしかない。

綺麗な瞳。いつもは後ろで一本に纏めている長い髪は上の方で団子状にになっていて、普段では見ることのできない髪型。首筋。

ああ、アチコチ視線が向いてしまう。

 

「顔が赤いな。のぼせてしまったか。もう時間も近いし、上がるとしよう」

「そうしましょう」

「……先に上がっていてくれ。私はあと少しだけ湯船に浸かってから上がることにするよ」

「分かりました、お先です」

 

そそくさと逃げるように温泉から上がったよ。とてもヤバかったけど、なんとか乗り越えられたね。

 

 

 

 

「……私も、恥ずかしくない訳ではないのだが」

 


 

温泉に入った後は浴衣というものを着るらしい。

なので着てみたが、色々とスースーするね。

着替えているクロリンデさんを待つ間に、屋台の店主さんのところに行って団子牛乳を二つ買ってきたよ。僕とクロリンデさんの分。お風呂上がりに飲むのが流行りらしいからね。

今は秋沙銭湯の入口前でクロリンデさんを待っているところだよ。

 

「待たせてしまったか」

「いえ、ちょうど──」

 

浴衣を着て秋沙銭湯から出てきたクロリンデさんを見て、思わず言葉を失ってしまった。手に持っていた団子牛乳を落とさなかったのを褒めてほしい。

それほどまでに、綺麗に思えたのだから。

 

もしかしたら、僕は普段との差異を見せられるのに弱いのかもしれない。慣れ親しんだものとは違うものというか。

 

「どうかしたか?」

「あ、いえ!これ、どうぞ。団子牛乳です」

「ああ、ありがとう。頂くよ」

 

僕も飲も。

 

「んん、流行るのも分かるな」

「ああ。同じ味なのに、さっきより美味しく感じる」

 

不思議だなぁ。温泉入って喉が乾いていたのかもしれないね。

 

店員さんから教えてもらった宿に来たよ。

当たり前だけど、フォンテーヌのホテル・ドゥボールとは全然違うね。璃月の旅館が近いかもしれない。

 

「すみません、秋沙銭湯の紹介で来たんですけど、宿泊もできます?」

「いらっしゃいませ。話は藍川から聞いております。宿泊も可能でございますよ」

「良かった。じゃあ二部屋お願いします」

「──申し訳ございません。何分急だったもので、空いているお部屋が一つしか無くて……」

 

──なるほど。

 

「クロリンデさん。僕は野──」

「相部屋で構わない」

「申し訳ございません、ありがとうございます。ご案内いたしますので少々お待ちください」

 

店員さんは奥へと消えていった。

 

「あの──」

「もし野宿するなんて言ったら私もそうする事にする」

「……はは」

 

乾いた笑いしか出ないね。ホント、あんまり良くないと思うんだよな。知り合いってだけの男女が一緒に温泉入ったり同じ部屋で寝たりなんて。

前の事はほぼ不可抗力だから……。

 

「お待たせいたしました。お部屋の方へご案内いたします」

 

店員さんに案内され、泊まる部屋に向かった。

 

「おお、璃月とはまた違うな……」

「机が小さいな……椅子には座らないのか」

「慣れないようでしたら、座椅子をご利用ください。では、料理をお持ちいたしますので、座ってお待ちください」

 

僕たちは机に向かい合って座り、運ばれてくる稲妻料理を堪能した。

その中で意外な事が発覚した。クロリンデさん、魚介類は好きじゃないらしい。理由は僕と大体同じで、骨が多くて食べにくいのと、生臭さ。そして、小さい頃に食べ飽きたからだそう。

そんな魚介類が苦手な僕とクロリンデさんでも普通に食べれる稲妻の魚料理は凄いね。フォンテーヌやスメールの魚料理とは段違いだ。

 

食事の時間が終わり、店員さんによって机等が片付けられ、布団が敷かれた。

……ピッタリと二組くっ付けて。

 

「では、ごゆっくりおやすみください。何かあれば受付までお願いします」

 

そう言ってセッティングした店員さんは去っていった。

 

……僕から布団を離すと、クロリンデさんを避けてるみたいになるな。ここはクロリンデさんが布団を動かすのを待つのが得策か。

 

「……では、寝ようか」

「…………はい」

 

そりゃあ、そうですよね。抵抗は無駄と判断し大人しくクロリンデさんの横で寝ることにしたよ。

 

「おやすみ……」

「おやすみなさい、クロリンデさん……」

 

持ってくれよ僕の理性。

天井の木目を数えているうちに朝にならんかな……。

……あ、何となく目に見える模様を見つけた。

 

「──まだ起きているか?」

「……はい」

「一応、言っておく。今日のことはすべて、あなただからやったことだ。他の者だったら決してしたりしない」

「────」

「それだけだ。おやすみ……」

 

ああ、心臓の音がうるさい。クロリンデさんに聞こえてやいないだろうな。

今日のこと、と言って思い浮かぶ数々のクロリンデさん。それがすべて、僕だけに向けられたもの。

 

「──それは、僕もですよ」

 

僕も、クロリンデさん以外だったら許容していないだろう。

ハァ……明日、普段通りに話せるかな……。

 

 




目を瞑って寝るように務めた人
「二人きりで狩りに行ったりご飯を作ってあげるのはおかしくないのかって?それくらい普通でしょ」

結構攻めたファントムハンター
「……浮かれていたのかもしれないな」
(断られそうな時に「君は嫌か?」と聞けばなんでも通るのでは無いか。と思い始めている)

胃もたれ通り越して食中毒になった夢喰い獏
「あそこまでの悪夢はかなり久しぶりだよ……。一見普通そうに見えるのがとても危うい。なにかのキッカケで簡単に壊れちゃうんじゃないかな。そうなる前にまた私のところに来てくれるといいんだけど……うぅ、お腹が……た、旅人ぉ……いい夢を食べさせて……」





書きたいもの書いたもん勝ち。
二で終わらせるつもりでしたけど、長くなりすぎそうなのでもう一回分けます。

これで恋仲じゃないってマジ?

  • 知り合いですよ
  • いや無理があるでしょ
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