知り合いはさいつよ決闘代理人   作:秘境と聖杯ダンジョン

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個人的な事情により、いつ書けなくなるか分からないので最終回先出しの裏ワザを使います。
書ける限りは書き続けていくつもりなので、よろしくお願いします。


最終回
〇〇なさいつよ決闘代理人


フォンテーヌ邸は毎日賑やかだ。人々の暮らしの音。子供たちのはしゃぐ声。果物屋さんのセールス。マシナリーの駆動音。その中で一際街中に響く声。

 

「もういいわ!あなたのことを訴えてやるんだから!」

「は、いいぞ。どっちが正しいか法廷で白黒ハッキリ付けてもらおうじゃないか!」

 

相も変わらず、賑やかなものだ。

この喧騒も慣れてしまえば日常なのだよ。

お、また共律官さんが仲裁に入って間も無く二人が謝罪し合ってる。

 

「相変わらずのネームバリューですね、師匠?」

「その呼び方、むず痒いからやめてくれと再三言っているだろう」

「ははっ。ごめんごめん、クロリンデさん」

 

カフェ・リュテスでいつものようにモーニングをいただきながら、向かいの喧騒の傍聴していた僕とクロリンデさん。

先程クロリンデさんを師匠と呼んだことから分かるだろうけど、ファントムハンターになりました。

クロリンデさんに押し切られてファントムハンターの道に……ってワケじゃなくて。

僕がファントムハンターの道に進んだ理由は、僕なりに僕の今後について、狩りについて、必要な事を考えに考えて考え抜いた結果だ。

 

 

かつてこのカフェ・リュテスで、クロリンデさんにこんな質問をされたことがある。

 

「君にはこれが何か分かるか?」

 

そう言ってクロリンデさんはスプーンを持ち上げて僕の方へ……僕の前に置かれた角砂糖の容器へ向けた。

その質問の意図がわからなかった僕はこう答えた。

 

「そのスプーンがどうかしたんですか?」

 

と。

 

その質問の意図を聞いた僕はホント頭を抱えたよ。

 

当時の僕には意識的に考えないようにしていた事があってね。

それが、僕の狩りの意味についてだ。何のために狩りをするのか、という事。

生きるために狩りをしていたワケじゃない。生きるだけなら、狩りなんてしなくてもどうとでもなる。

それでも僕は獣狩りをしていた。

 

結局のところ、僕は弓剣や趣味を言い訳に狩りのための狩りをしていた。

目的達成の為の狩りじゃなくて、狩りそのものが目的になってた。

お笑いだよね。狩りのために狩りを行う獣にならないつもりでいて、その実すでに獣に身をやつしていたのだから。

その後、僕はフォンテーヌ邸を離れ国中を放浪していた。僕が(狩人)たる意味を考えながら。

でも、その間も狩りをすることは止められなかった。

滑稽だろ。頭ではそんなこと考えてても、獲物の足音、息遣い、匂い。それらがすると、それらを狩らずにはいられない。

そんなどうしようもない僕はそれこそ獣のようにフォンテーヌ中を放浪……徘徊かな、徘徊していた。道行く先で獲物を狩って、その肉を喰らい、次の獲物を探し歩く。

どれくらいそうしていたのか、後から計算したら三ヶ月だって。長いことそうしていた僕を、クロリンデさんが見つけてくれた。

 

「随分と探したよ」

「……あ、」

 

お恥ずかしい事に、喋り方を忘れかけててね。僕が(狩人)たる意味を考えていたはずなのに、いつの間にか思考すら獣に堕ちかけていたというワケだ。

改めて思い返すと、その頃には弓としての弓剣は全く使わず、剣だけで狩りをしていたね。

僕の狩りの流儀には反しているが、それだけ僕がおかしくなっていたという事だ。

 

「久しぶりに君の手料理が食べたいと思っていたんだ。頼んでもいいか?」

 

丁度、獲物を狩った直後だった。

剣で襲いかかり、無駄に斬り刻んでボロボロになった獲物の肉を切り取り、いつものように料理を作ってクロリンデさんに渡した。

当時の僕のいつものように作る料理とはつまり、肉を切って焼くだけだった。

それを一口食べたクロリンデさんは僕の目を見据えてこう言ったんだ。

 

「不味いな」

 

その言葉で、目が覚めた。

その後クロリンデさんは僕の狩った獲物と僕の調理器具を使って、獣肉を焼いてくれた。

それを食べた僕は、涙が止まらなかったよ。美味しさと、僕の不甲斐なさで。

 

一頻り泣いたあと、クロリンデさんにお礼を言った。

 

こんな僕を探してくれてありがとう。僕に意味をくれてありがとう。と。

 

これからの僕の狩りの意味は、クロリンデさんに美味しいと料理を食べて貰う事だ。そのための狩りをする。

 

ただ、この現状を変えなくては結局同じことを繰り返してしまう。実際、繰り返してしまったのだから。

だから僕はクロリンデさんにお願いしたんだ。

 

「──クロリンデさん、以前の勧誘はまだ有効ですか?」

「ああ。誓いから順に、一つ一つ君に教えよう」

「お願いします」

 

こうして、ファントムハンタークロリンデさんの弟子になったというワケだよ。

 

フォンテーヌ邸に帰った僕は、ナヴィアさんとフリーナ様に大層怒られたよ。

 

「アンタ、クロリンデがどれだけ心配してたか分かってんの!?」

「僕の友達を泣かせるなんて、絶対許さないんだからな!法廷に出る事になっても僕は一向に構わないよ!」

「フリーナ様、泣いてません」

「アンタが失踪した後、クロリンデがどれだけ思い詰めてたか、一から説明してあげましょうか!?」

「こんな往来でやめてくれナヴィア」

「代理決闘の時も、テーブルトークシアターゲームの時も、ずっと浮かない顔をしていたんだからね!」

「フリーナ様、もうその辺で……」

 

などなど、もう言いたい放題。その間、僕はずっとジェントルマン・アッシャーとシュヴァルマラン婦人、クラバレッタさんの御三方に殴られてたし。ナヴィアさんもたまに傘で叩いてくるし。

精神的にも肉体的にも一通りボコボコにされた後、二人ともお帰りと言って迎えてくれたので良かったなと。

 

 

その日を境に以前と変わった事といえば、僕がファントムハンターの弟子になった事と、クロリンデさんが僕の部屋に越して来た事だろう。

 

「一応君の師となる私が弟子の君と一緒に暮らす事は何もおかしな事では無い。そちらの方が何かと都合もいい。それに、君はちゃんと見ておかないとすぐに居なくなってしまいそうだからな」

 

とは彼女の弁。師弟が共に暮らす事のメリットは僕も理解できるし、閑雲先生の所にいた時もそんな感じだった。奥蔵山で半野宿みたいなものだったけど。

後者については申し訳無いです。考えは改めましたから。

 

二人で一緒に家に入るタイミングを記者に見られて大変な事になったのは割愛で。間に入ってくれたシャルロットさんには感謝と、ちゃっかり後日独占取材の予定を取り付けていった手腕には脱帽だね。

 

ファントムハンターに弟子入りしたはいいけど、普段の生活は特段変わっていない。

クロリンデさん曰く、

 

「今更君にファントムハンターの戦闘術を教える必要もないだろう。すでに十分な腕は備えている。私から教えるのは『ファントムハンターの誓い』と追跡術、歩法、同業者との付き合い方くらいだな」

 

との事。強いて挙げるならお揃いの帽子と色違いの黒い手袋、そして同じ意匠のマントを貰った事だ。以来、外に出る時は身に着けているよ。

 

「今日は何を?」

「そうだな……久しぶりに、狩りの収穫で作るあなたの料理を食べたい」

「分かりました。じゃあ行きましょうか」

 

一人で狩りに出ることはほとんど無くなり、クロリンデさんと一緒に出ている。僕の狩りの意味だからね。一人で出る必要が無い。クロリンデさんが仕事の時かつ、クロリンデさんからの要望で新鮮な食材が必要な時だけ一人で出ることにしてるよ。

まあ、もし今後一人で獣狩りをすることになったとしても、僕はもう大丈夫だ。

狩りをすることの意味を見出したし、ファントムハンターの(クロリンデさんとの)誓いもある。

 

『ここより、 燭影の帷を通る』

『ここより、 永夜の危険に迫る』

『白昼の誓いを忘れるな』

『涙と命、仁愛を心に刻め』

『やがて夜明けは訪れる』

『故に──希望を捨ててはならない』

 

もう、狩りにのまれることは無い。

強い意志を持ち、帰るべき場所へ帰る。

 

 

今日は二人で巡水船でロマリタイムハーバーへ向かい、船を乗り継いでベリル地区で狩りをしたよ。獣狩りは勿論、新人ファントムハンターとして魔物の類もしっかりと退治したよ。

 

狩りたての獣の肉を使っていつものように料理をする。

ただ焼くだけじゃなくて下処理や味付けをしっかりとしてね。

 

「どうぞ、クロリンデさん」

「ああ、いただくよ。はむっ……んん、美味しいな」

「どうも、ありがとう」

 

僕の手料理を食べてくれたクロリンデさんが微笑んでくれる。

この笑顔を見るために狩りをしているのだから、ね。

じっと見つめていると、顔を逸らされてしまった。もっと見たかったんだけど、仕方ない。また見れるし、今回はこれくらいにしておこう。

 

獣肉の余った部位と倒した魔物の素材などはそれぞれお店と冒険者協会で換金してから、クロリンデさんと帰宅したよ。

 

「ただいまー」

「ただいま」

 

そして、お互いにおかえり。二人とも帽子と手袋、マントを外す。

 

 

 

 

そうそう、変わった事といえばもう一つ。

互いの指には、同じデザインの輝く指輪。

僕からクロリンデさんへの口調が少し砕けていたことから察する方もいるだろう。

 

クロリンデさんは僕の大切なパートナーだよ。




ファントムハンターになった人
「とても幸せです」

パートナーなさいつよ決闘代理人
「この角砂糖のような日々が続くことを願っている」

周りの人達
「やっとくっついたの?」
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