知り合いはさいつよ決闘代理人   作:秘境と聖杯ダンジョン

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やっぱり服屋さんは手厳しい

今日は千織屋に行くよ。

クロリンデさんがウチに来てから少し荷物整理をしたんだけど、その時に僕の狩装束を千織さんに預けっぱなしだったことを思い出してね。あれから結構経ってるし、もう返してもらってもいいでしょ。

クロリンデさんは今日用事あるって言ってたから、僕一人だよ。

 

「どうもこんにちは、エローフェさん」

「あら、こんにちは……」

「なんだか元気無いですね。何かあったんですか?」

「その……ちょっと店内でトラブルが起きていまして……」

「トラブルですか。ということは……」

 

店内の様子を窺うまでもなく、客と思しき男の悲痛な叫び声が聞こえる。そろそろ投げ飛ばされる頃かな。

お、ドア毎店前まで吹っ飛んできた。こりゃあ順番守らなかったパターンかな。

男が走り去っていくのを見送ってから、エローフェさんに僕の狩装束について訊ねる。

 

「こんな時にすみません、千織さんに預けてた僕の狩装束ってどうなってます?」

「そちらでしたら今ちょうど──」

「あら、いいタイミングね」

「あ、どうもこんにちは、千織さん」

 

お店の中から千織さんが出てきた。ちょうどいいタイミング?何の事だろう。

 

「いいわ、入りなさい」

「イヤイヤ、いま他のお客さんの対応中なんでしょ?僕もう投げられたくないですよ」

「いいから入りなさい。投げるわよ」

「はい」

 

投げられたくないから店内に急いで入るよ。

 

「──って、クロリンデさん?それに、それって──」

「おや?あなたか。バレてしまったな」

 

クロリンデさんの横には僕の狩装束を来たマネキンがある。

でも、それだけじゃない。

クロリンデさんと同じデザインで、狩装束に合わせた濃茶色のマントを着けている。

 

「本当はもう少し後に渡すつもりだったけれど、バレてしまっては仕方ない。これは私からあなたへの贈り物だ」

「クロリンデ、さん……」

 

言葉が出ない。めちゃくちゃ嬉しい。クロリンデさんのマントの事は全部聞いているから、尚更。

そんなマントを着けた狩装束を眺めていたら、千織さんに小突かれた。

 

「ほら、調整するから試着してちょうだい」

「え、でも──」

「構わない」

「ほら、さっさとしなさい」

「あ、ちょ……」

 

千織さんに試着室へ押し込まれ、新しい狩装束が手渡される。

近くで見ると、装束自体もほとんど新品といえるくらいに綺麗になっている。元々あったはずの傷や褪せはほとんど分からない。

流石に狩ズボンとブーツは新しい物になっているね。

 

「千織さん、ありがとうございます」

「礼なら全部終わってからにして」

 

試着室の入口を閉められてしまった。

有難く着させてもらう。

ズボンとブーツはちょうどいいサイズ。前に依頼した時、採寸もしてもらってるからね。流石の仕事です。

 

そして装束だけど……着慣れた自分の服のハズなのに、なんか緊張するな……。

 

着替えを終え、鏡を見る。

僕の装束に、クロリンデさんと同じマント。

なんか、良いね……。

 

「終わったならさっさと出てきなさい」

「あ、はい」

 

試着室を出て、千織さんの前に立つ。

千織さんが装束を見ながら、僕の周りを一周。

 

「ま、元々あなたの服な訳だし特段問題は無さそうね。マントの方も、丈はピッタリ。初めて会った時に着けてたアレと比べたら一足して千倍良いわね。千点満点よ」

 

つまり元はゼロ点だったってことですか。

 

「ズボンとブーツはどう?どこかおかしく感じない?」

「特段なにも。ちょうどいいです」

「そ。ならいいわ」

 

お代はクロリンデさんが払ってくれたというので、クロリンデさんに何かお返しをしないとね。

 

「それから、これも」

「これ……」

 

貰ったものは、クロリンデさんとお揃いの帽子と黒い手袋。帽子は僕のマントと同じ色のもの。

最近、クロリンデさんに貰ってばかりだな。

僕から返せるものなんて、そう多くないのに。

帽子を被り、手袋を装備して、改めてクロリンデさんに向き直る。

 

「どうですか?」

「とてもよく似合っている」

「ありがとうございます。千織さんも、ありがとうございます」

「どういたしまして。こちらこそ、いい刺激になったわ」

「なら良かったです」

「その服はもうあなたの物だから着て帰ってもいいし、必要なら包んであげるけど、どうする?」

「じゃあお願いします。帽子だけ、このままで」

「はいはい、お熱いこと。そうそう、その服を前みたいに粗雑に扱ったりしたら承知しないから」

「……肝に銘じます」

 

その節はどうもすみませんでした。

僕がおかしくなってた間、当然ずっと千織さんに作って貰った服を着ていたワケで。

当然、手入れなんてしてないワケで。その上傷だらけ、返り血塗れになってると。

そりゃあ、できる限り自分で汚れを落としたけどさ。千織さんに筋を通さないのは良くないじゃん。

だからちゃんと千織さんのところに持っていって、ちゃんと謝罪して、ちゃんと投げ飛ばされたよ。

 

「はい、どうぞ」

「どうも、ありがとうございます」

「今回はありがとう、千織。今度はナヴィアとフリーナ様と一緒に来る」

「はいはい、またのご来店をお待ちしてまーす」

 

丁寧に包装された狩装束を受け取って、クロリンデさんと一緒に帰宅したよ。

 

 

 

「ふぅ、やっと帰ったわね。手なんか繋いじゃって、少しは隠そうという努力くらい無いのかしら。エローフェ、テラスでコーヒー淹れるけどあなたも飲む?」

「ご一緒します。やっと一緒になったんですね、あのお二方」

「遅すぎるくらいよね」

「ですねぇ」




いっぱい貰った人
「しばらく顔が緩みっぱなしだった」

喜んでもらえて嬉しい決闘代理人
「マントや帽子の事を千織に相談して良かった。彼に合う物を作ってくれた」

千織さん
「マントは他の服にも合わせられるよう調整可能よ」
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