知り合いはさいつよ決闘代理人 作:秘境と聖杯ダンジョン
ヤバい。流石にマズイ。この現状をどうにかしないと男以前に人としてマズイ。
狩りで稼ぎをしなくなってから、僕達の生活費はほぼ全てクロリンデさんが出してくれている。
日銭プラスアルファくらいしか稼いでいなかった僕にまともな貯金なんてあるワケもない。
冒険者協会や編集長のツテを使って魔物退治や住民からの依頼をこなす事もあるが、依頼は毎日あるものでもなく、また報酬も多くない。
安定した職とは言わないまでも、毎日稼げる職を探す必要がある。
そういう話をこの前カフェ・リュテス店主のアルエさんにこぼしたら、
『じゃあウチで働いてみるか?』
と言ってくれた。
アルエさんの助け舟に喜んで飛び乗った僕は、今日から初仕事だよ。
「マシンの使い方や商品の作り方については説明した通り、コーヒー豆やミルクの保管場所も教えた、無くなる前に補充する事。質問は?」
「大丈夫です、頑張ります」
「オーケー、分からないことがあったら聞いてくれ」
「はい、ありがとうございます 」
よーし、頑張るぞー。
コーヒーカップをマシンに置いてボタンを押す。コーヒーカップをマシンに置いてボタン。カップをマシンに置いてボタン……──
しばらくコーヒーメーカーのボタン押し係をしていると、アルエさんに接客を任されたよ。
どうやって接客するかは客側からいっぱい見てきたからね、任せてほしい。
「いらっしゃいませ。あ、ナヴィアさん。こんにちは。今日はおひとりで?」
「ええ、こんにちは。ちょっと休憩するだけだからね。あんたはバイト?」
「せめて仕事見習いって言ってくださいよ。色々事情もありまして。ご注文は?」
「ホイップクリームコーヒー。あとマドレーヌをお願い」
「かしこまりました、お嬢様」
「ふふ、なにそれ」
「ナヴィアさんにはこっちの方が合うかと思って。じゃあ失礼しますね」
アルエさんにオーダーを伝えて、出来上がったコーヒーとマドレーヌをナヴィアさんの席へ運ぶよ。
「お待たせいたしました」
「お、きたきた。ありがと。ねぇ、やっぱウチに入る気は無い?」
「はっはっは」
「ウチの方は副業でもオーケーよ。福利厚生もどんどん充実させてきてるし」
「もしクロリンデさんに愛想尽かされたらその時に考えさせてください」
「じゃあ来ないじゃない」
「はっはっはっは」
「まったく、惚気けちゃって」
組織勤めはちょっとね。棘薔薇の会が悪いってワケじゃなくて、僕に合わないってだけなんであまり気にしないでほしい。
そもそもナヴィアさんはこんなに勧誘してくるのか。これが分からないんだよね。
他のお客さんからも注文が入ったので、仕事に戻ろうか。
「はいお疲れ様。これ、報酬ね」
「ありがとうございます、お疲れ様です」
夜まで働いて、僕の一日の労働時間が終わったよ。
お給料のモラを貰って、家に帰るよ。
一日働いて、一万モラか。働くのって大変だね。
あ、家の明かりがついてる。クロリンデさんもう帰ってたんだ。
「ただいま」
「おかえり。どこかに出かけていたのか?」
「あー……それなんですけどね。僕も働かないとなと思いまして。これからは家に居ない時間も増えると思います」
「なるほど、だから家に居なかったのか。だが、現状モラには困っていないと思うが……何か必要なものでもあったか?」
「いつまでもクロリンデさんにモラを出してもらう生活を続けていたらそのうちヒモ呼ばわりされそうで……それは避けたいなと」
「二人で暮らしているんだ。稼ぎの多い私がモラを出すのは当然だろう。それに、あなたと一緒に過ごせる時間が減るのは寂しく思う」
翌日。僕はアルエさんに辞表を提出した。
一日バイトしただけ
「根本解決してないけど、もういいか」
しごでき決闘代理人
「合理的な判断をしたまでだ」
アルエさん
「こうなることは分かってたから日雇いのつもりだった。案の定だな」