知り合いはさいつよ決闘代理人 作:秘境と聖杯ダンジョン
今日はクロリンデさんとナヴィアさんと一緒にフリーナ様が監督している劇団の演劇を見にエピクレシス歌劇場に来ていたよ。
フリーナ様に『三人も是非僕の劇を見に来てくれ!』って言われたから、てっきりフリーナ様が出るものだと思っていたけど、実は監督だったってオチね。クロリンデさんとナヴィアさんは知っていたらしい。教えてよ。
劇が終わった後、エントランスで二人と感想を話しながらフリーナ様を待っていたら、メリュジーヌのトロウさんに話しかけられた。
「こんにちは。ヌヴィレット様にあなたの事を呼んで来て欲しいって頼まれてるの。いい?」
「ヌヴィレットさんが僕を?なんだろ」
「理由は分からないが、悪い事は起きないだろう」
「行ってきたら?あたしとクロリンデはここで待ってるからさ」
なんか会う流れになっちゃった。ヌヴィレットさんと会うのはあの釣り以来か。
トロウさんに案内された場所はステージ横の控え室のような部屋。ここって事はフリーナ様も一緒なのかと思ったんだけど、中に居たのはヌヴィレットさん一人だった。
「来てくれたか。座ってくれ、今紅茶を淹れよう」
「どうも……」
一瞬ヌヴィレットさんが淹れるのかと思って身構えてしまったが、メリュジーヌさんがポットを持ってきて淹れてくれた。
フォンテーヌの最高審判官に紅茶を淹れさせるなんて畏れ多いよ。
メリュジーヌさんに淹れてもらった紅茶を一口。美味しい。
「……それで、何故僕を?」
「少し、君と話がしたい。先日の件だが」
先日……何かやったっけ……。
「三週間ほど君が行方不明になっていた事の件だが」
「あっ……」
ヤバい。ヌヴィレットさんから切り出されるとは思ってなかった。もしかして僕、これから審判にかけられる感じ?
僕の動揺が伝わったのか、ヌヴィレットさんは咳払いをしてから再び話し始めた。
「君を審判にかけようという事では無い。君の様子がおかしかった期間の事は水を通して概ね把握していた」
「水……?把握って……」
「時に、君は私の事についてフリーナから何か聞いているだろうか」
「特に何も……長い付き合いとしか」
「そうか。ならいい。私の事より、君の事について話そう」
「僕の?」
「以前の君から感じていた、私へ向く殺気にも似た気配を感じなくなった。これについての話だったが……その様子だと、自覚はなかったようだな」
ヌヴィレットさんの目には、余程怪訝な顔をした僕が映っている事だろう。
全く身に覚えがない。ヌヴィレットさんに対してそんな感情を持ったことなんて無い。はず。
「……すみません、なんの事かさっぱり……」
「気にする必要はない。君の本能が私に向けていたものだろう」
僕の、本能。つまりは、狩りにのまれている時の僕。
……えーっと……。
「君は聡い。私のことについてもう勘づいているのだろう」
全然そんな事ない。なんで僕のその本能とやらがヌヴィレットさんを敵視してたのかとか全然わかんない。
「私は古龍の大権を持つ水の龍王なのだが」
「ちょっと待って!?」
「ふむ」
いきなり爆弾発言出てきた。流石に動揺。知り合いが急に『私は龍なんだー』とか言ってきて『へーそうなんだー』で流せるほど僕は気楽な生き方はしていない。
「り、龍……?」
「そうだ」
「水の龍王って、あの水龍?」
「くれぐれも内密に頼む」
こんがらがってきた。この人……龍?いや、400年前からずっと最高審判官やってるってのは聞いてたから人外の長命種か呪いでも受けたとかだと思ってたけど、まさか龍って。スメールの砂漠にいるらしい草龍アペプと同じってこと?目の前にいる人が?
「話を進めよう」
「あ、はい」
「君は私と初めて会った日の事を覚えているか?」
「はい。パレ・メルモニアで引越しの書類を出した時でしたよね」
「それより前、君が璃月からフォンテーヌに来た時にルミドゥースハーバーですれ違っている」
マジでか。全然気が付かなかったなぁ……。
「たまたま仕事で訪れていたのだが、君とすれ違った瞬間、今までに感じたことの無い悪寒が私の背に
「なんか、すみません」
「君が謝る必要は無い。私の方こそ、君に謝る必要がある」
ヌヴィレットさんが、僕に。なにを謝るというのだろう。
「君のことを調べさせてもらった。生まれ、育ち、可能な範囲で全て。フォンテーヌに害なす者であるかどうかを判断するために」
「なんだ、そんな事ですか」
「すまない。害意が私個人に向けられたものか、フォンテーヌに向けられたものであるかを判断するために必要な事だったのだ」
「構いませんよ、それくらい。……あ、ヌヴィレットさんが異様に僕に良くしてくれてたのってもしかして……」
「勝手に身辺調査を行った事への慰謝料代わりでもあるが、君に興味を持った事もその一つだ。調査の結果、君にフォンテーヌへの害意は無いと判断した。しかし、私と君に接点は全く無い。ならば私が悪寒を憶えるほどの殺気を感じた理由は。それを知るために君と接触したのが始まりだ」
「へぇ……」
「それから度々君と─────」
「なるほど……」
「君の狩りの対象にフォンテーヌ人が当てはまらないこと────」
そうなんだ。ヌヴィレットさん、話し始めると結構長いタイプなんだ。
かれこれ三十分くらいずっと喋ってる。僕もう適当に相槌打ってるだけだよ。
「──すまない、長くなってしまった」
「いえいえ、お気にせず……」
「本題に入ろう」
え、今までの前置きなの?
……あ、そういえば僕の事について聞きたかったんだっけ。脱線してから長かったから忘れてた。
「私に向けられた君の本能は、私の正体に気付いていたのだろう」
「そんな事、あるんですか?」
「そう考えるのが妥当だ。だが君が戻った日を境に、君から感じていた殺気を感じなくなった。その事について心当たりはあるか?」
「いや、特には……僕の狩りの意味が定まったからですかね?」
「そうか。今日はありがとう。有意義な時間だった」
え、これだけでいいの?あんなにいっぱい喋ってたのに、聞きたかった事これだけ?
「こ、こちらこそ。紅茶、ありがとうございました」
「構わない。待たせてしまった彼女達に、私からの謝罪を伝えておいてくれ」
「了解です」
そういえばクロリンデさん達が待っててくれてるんだっけ。ナヴィアさんとフリーナ様が怒ってなきゃいいけど。
「おっそーい!どれだけ喋ってるのよ!」
ダメだったね。ナヴィアさん仁王立ち。フリーナ様はなんかニコニコしてる、怒っては無さそう。クロリンデさんは特になんとも思ってないね。強いて言うなら少し心配してるくらい。
「想像より長かったが、何かあったのか?」
「特には何も。ほとんどずっとヌヴィレットさんが喋ってただけですね」
「ヌヴィレットのやつ、余程キミを気に入ってたんだね。ここまで長話する事なんて滅多にないよ」
「へぇ……なんか嬉しいですね 」
「待ちくたびれちゃったわ。ご飯食べにいきましょ!フリーナは予定とかある?」
「僕は問題ないよ。劇団の打ち上げは明日だからね。お店はどこにするんだい?」
「歩きながら決めましょ」
「僕らには聞かないんですか?」
「あんた達はこの後予定なんか無いでしょ」
「確かに無いが、あったらどうするんだ」
なんて、喋りながらフォンテーヌ邸に帰ったよ。
ちなみに、夜ご飯は僕が作ることになったよ。
暴走とか本能とかを克服すると強くなる系主人公じゃない方
「は?ヌヴィレットさんと戦え?ムリムリムリ。ムリに決まってるでしょ。タルタルに遊ばれる程度の僕とタルタルを上から制圧できる人となんて勝負になんないって」
水の龍王
「もし、私と彼が
ご飯食べに上がったらある異変に気付いたボス
「やっぱり普通の味ね」
凄腕監督兼凄腕演技指導者
「やっぱり普通の味だね」
狩りの意味
「何故だ?彼の料理は美味しいが……」