知り合いはさいつよ決闘代理人 作:秘境と聖杯ダンジョン
一夜で開園し一夜で跡形もなく消えた伝説のテーマパーク
「今度の休み、映影ランドに行ってみないか?」
「映影ランド?」
夕食後、クロリンデさんとゆったりしていたらそんなことを言われた。
映影ランドっていうとアレだよな、ポート・マルコットの近くの砂浜にいつの間にかできてたテーマパークみたいなヤツ。
「ああ。ナヴィアに招待されたんだ。映影の名シーンをアトラクションとして追体験できる遊園地らしい。棘薔薇の会が統括、運営をしていて、軌道に乗ってきたから是非来てくれと」
なるほど。ナヴィアさんが関わってたのか。そりゃあ早いワケだ。
「最近ナヴィアさんを見かけないと思ったらそんな事してたんですか。言ってくれれば手伝ったのに」
「仕事がある私に気を遣ったのかもしれないな。聞いたところ、旅人も運営に参加してくれたようだ」
「へぇ、旅人さんが。フォンテーヌに来てたんだ」
「ナタでは大活躍だったらしい、最近はフォンテーヌ邸内でもナタの人をよく見かけるようになった」
僕は旅人さんの見送りに顔出さなかったし、顔を合わせておくのもいいか。
「じゃあ次の休日、一緒に行きましょうか」
「ん……楽しみだな」
「ですね」
次の休日……。
早速二人でシュヴァルマラン映影ランドに来たよ。早めの時間に来たけど思ったより混雑してるね。それだけ人気が出てきたと言うことだろう。
ナヴィアさん直々にお出迎えしてくれた。
「いらっしゃーい二人とも!」
「どうも、ナヴィアさん」
「繁盛しているようだな」
「もっちろん!これも旅人とパイモンのおかげね」
本当になんでもそつなくこなすよな旅人さん。できない事の方が少ないんじゃないか?
「その功労者の旅人さんに挨拶しておきたいんですけど、どちらにいます?」
「あー、旅人はちょっとね……」
「またなにかに巻き込まれてるのか?」
「旅人さんなら巻き込まれたってより自分から首を突っ込んで行ってそうですけどね」
「まぁそんな感じ。クロリンデなら知ってるんじゃない?ほら、最近あった密輸騒ぎの……」
「ああ。あの事件なら記憶に新しい。最近は新たな証拠品が見つかったという噂も流れているな」
「それよそれ。今日はその件でパレ・メルモニアの方に行ってるよ」
「行き違いになっちゃったみたいですね。まぁ元々、旅人さんの方はついでのつもりだったので」
「そう?なら、今日は思いっきり楽しんでいってね。マップは向こうにあるから、好きに周ってちょうだい」
「オススメはあるか?」
「んー、二人で行ったら私が面白そうなのはカラフルアドベンチャーかな。二人ともよく動けるし名演映影ベストシーンも良いと思う。ゆっくりしたくなったらのんびりガーデンに行くと良いよ」
「要は全部周れという事だな」
「そういう事!じゃ、楽しんでいってね!」
全部オススメか、ナヴィアさんらしいかな。小声でなんか言ってたのが凄く気になるけど。
「どこから行きます?」
「せっかくだからナヴィアの言った通りに周ろう」
「じゃあまずはカラフルアドベンチャーですね。行きましょうか」
カラフルアドベンチャーの受付へ向かう道中、通りかかったレストランの方から聞き覚えのある怒鳴り声が聞こえてきた。
エスコフィエさんもここで働いてるのか。ホテル・ドゥボールの元シェフがレストランで働いているテーマパーク、それだけでも集客できそうだな。
カラフルアドベンチャーの受付に着いたよ。
うん、波止場。船も止まってる。
係員さんから説明を受けてるけどイヤな予感しかしないよ。クルージングでもするのかな?
初心者向け中級者向け上級者向けと色々段階があるらしい。とりあえず一番簡単なモノにしたよ。
「それでは船にお乗りください!」
「クロリンデさん、イヤな予感しかしない」
「私が一緒に潜るから大丈夫だ」
「潜るって言った!やっぱ泳ぐタイプじゃん!」
「大丈夫ですよ、とっても簡単なので!それでは、いって──らっしゃい!」
「おわ!」
いつの間にかコースに到着していたらしい、僕は係員さんに船から叩き落とされ、無様に沈んでいったよ。
次いでクロリンデさんが飛び込み、見事な泳ぎで僕を抱え、水中コースのリングを次々とくぐり抜け、海流に乗って進んでいく。
綺麗だなぁ。人魚が実在するとしたらこんな感じなのかな。
空中コースは僕でもちゃんと楽しめたし、水中コースは水中コースで良かったです。こういう楽しみ方もあるのか。
船に乗って受付まで戻ってきた僕たちをナヴィアさんが待ち構えていたよ。
「お疲れー。どうだった?」
「とても良かった。ナヴィアが考えたのか?」
「これを考えたのはあたしじゃなくて、映影ファンの人たち。あたしはそれを形にしただけだよ。他のアトラクションも一緒」
「次も楽しみだ」
「アンタは?初めてまともに泳いだ気分はどう?」
「……まぁ、その……」
「はいはい。全部撮影して映像に残してあるから、後で受付で受け取っておいてね。じゃ、あたしは他にやることがあるから。楽しんでね、バイバ〜イ!」
ナヴィアさんは颯爽と去って行った。やっぱり経営って忙しいんだなぁ。
次は名演映影ベストシーン。言いにくいな。注意しないと三回は噛みそう。
内容は名前の通り。名作映影の名シーン、ベストシーンをそのまま体験できるアトラクション。
各コースを遊んでみたけど、どれも楽しかった。子供の頃スメールの地下とか遺跡とかを走り回ったのを思い出したよ。
ランチタイムはエスコフィエさんのレストランに行くよ。
「あら、クロリンデとその旦那じゃない。いらっしゃい、ご注文は?」
「あー、そのー……はは……」
「…………」
どうもニヤけちゃって言葉が出ない。
クロリンデさんも顔にこそ出ていないけど、帽子を深く被ってそっぽ向いてる。照れてる証ね。
「二人してなに照れてんのよ。まだお客様は来るんだから早く決めてちょうだい。注文は?」
「えと、このスペアリブローストとクロワッサンを……」
「同じくクロワッサンとフォアグラ・ドゥ・フォンテーヌを頼む」
「はいはい。ドリンクは先でいい?それとも後?」
「先でお願いします」
「私も先に頼む」
「では席に座ってお待ちください」
程なくして紅茶二つが運ばれてきた。そして伝言が一つ。
『一つのグラスに二つのストローの方が良かったかしら。ウチはそういうサービスはやってないのよ』
と。
そんなのお出しされたら僕はどうすれば良かったんですかね。
昼食後はのんびりガーデンに来たよ。
リスとかヒツジ、プクプク獣とかの動物だけじゃなく、スライムとかキノコンまでいる。
僕の足元に擦り寄ってきたキノコンを撫でながら、ふと昔の事を思い出した。
「懐かしいなぁキノコン」
「キノコンといえばスメールに多く生息していたな。なにか思い入れでもあるのか?」
「不規則に移動したり飛ぶのもいるので、狙いをつける練習に丁度いいんですよ」
「なるほど。ポンポンの実と同じか」
撫でていたキノコンは僕たちの言葉を理解したのか、或いは勘がいいのか、大きく震えながら僕たちの元を離れていった。
「逃げてしまったな」
「怖がられちゃったみたいですね」
一応弁明しておくけど、僕は狩人だからって動物と触れ合えないワケじゃないよ……一部例外を除いて。
僕が言っても説得力無いかもしんないけど、狩りとは本来自然とのバランスを考えなければならないものだからね。
映影ランドを満喫した僕たちは帰宅することにしたよ。勿論、カラフルアドベンチャーの受付で映像記録フィルムを受け取るのも忘れずにね。
余談だけど、僕たちが行った次の日に映影ランドでちょっとしたサプライズショーがあったらしい。
狼は好きだが野犬狂犬は嫌い「貰った記録映影を観たけど、水中コースの時の僕、ずっとクロリンデさんの事見てた」
デート満喫決闘代理人「サプライズショーの顛末は公爵から聞いた。私服警官や特巡隊が多いとは思っていたが、日が被らなくて良かった」
のんびりガーデン顧問「うんうん、とってもお似合いな二人ね!邪魔しないように、ウチは隠れておくのよ!」