知り合いはさいつよ決闘代理人   作:秘境と聖杯ダンジョン

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不測の事態には気を付けよう

大マハマトラに鍛えてもらっていた頃、そして旅をする中で得た教訓がある。

不測の事態を予測しろ。

戦いは目に見えるもの、理解できるものが全てとは限らない。

ヒルチャールの群れを全滅させたと思ったら増援が来た〜なんてしょっちゅうだしね。

だから常日頃あらゆる可能性を念頭に置いて行動するようにしてるし、それはフォンテーヌに来てからも変わらない。

 

しかし、不測の事態とは全く予想だにしていないところから、なんの気配もなく訪れる物なのだと痛感した。まるで狩人の矢のようだね。

 

ある日のこと。というか、昨日のこと。旅人さんの手伝いで三日間の出張から戻ってきたクロリンデさんがこんな事を言ってきた。

 

『突然だが、明日私の知り合いを招くから準備をしておいてくれ』

『それは大丈夫ですけど、また急ですね。どなたですか?』

『今回の旅人の手伝いで知り合ったんだ。彼女はスメールの人で、スメール出身のあなたの事を少し話したら彼女もあなたの事を知っていて、意気投合したんだ』

『僕の事を知ってる女性……ディシアさんかコレイちゃんですか?』

『いや、彼女の名はナヒーダだ』

『ナヒーダ……ナヒーダ……うーん?』

 

誰だろう、知らない。聞き覚えがないし、聞き馴染みが無い。そんな名前の女性の知り合い居たかな。

 

 

なんて思っていたのが昨日。

 

そして、教訓を改めて思い知ったのが今。ホテル・ドゥボールに旅人さんと泊まっていたというナヒーダさんをクロリンデさんが迎えに行き、連れてきたその御姿を拝見した僕は目を見開いて絶句し、危うく腰を抜かすところだったよ。

 

「へ……?え、ええ……?……ク、クラ……」

「久しぶりね。それとも、実際に会うのは初めてだから、はじめましての方がいいのかしら。(わたくし)のことはナヒーダと呼んでちょうだい」

「はじめまして、お久しぶりです。クラクサナリデビ様」

「そんなに畏まらないで。ナヒーダでいいのよ?」

「自分で言うのもなんですが、僕はスメール人の中でも特に信心深い方の人間だと自負しているので……」

 

面白そうに、或いは嬉しそうにくすくすとクラクサナリデビ様は笑う。

不測の事態を予測って言ったって、こんな事予測できるワケないでしょ。茶菓子だってその辺で買えるような安物しかないのに。

 

「ふふ、別に高いものなんて要らないわ。今日の(わたくし)はあなたとクロリンデとおしゃべりに来たのだもの」

「僕は全然構いませんが、大抵の人は嫌がるので辞めた方がいいですよ」

「安心してちょうだい。誰にでもやっている訳じゃないわ」

 

小さな両手の指で四角を作って、その内側を覗いているクラクサナリデビ様に進言する。僕はクラクサナリデビ様に助けてもらったからべつに嫌じゃないけど、心の内を覗かれるのは嫌に思う人もいるだろうからね。

僕とクラクサナリデビ様の関係については……恩人かな。一番しんどかった時に、夢の中で助けてくれた方。

 

「あなたは大切なスメールの民だもの。当然の事よ」

「……はは、どうも。どうぞ上がっていってください。豪華な持て成しはできませんが……」

「ええ、お邪魔するわね」

 

クラクサナリデビ様を先に通し、その後を着いていこうとした僕の肩をクロリンデさんが掴んで止めた。

 

「どうかしましたか?」

「聞きたい事はいくつもあるが、一つだけ今答えてほしい。ナヒーダがスメールの草神というのは本当なのか?」

「ええ。間違いなく、クラクサナリデビ様本人ですね。……ていうか、知らなかったんですか?」

「旅人からは特に何も説明は無かったし、彼女も何も言わなかった。見た目の割に大人びていて、私より年上の可能性は考慮していたが、まさか一国の神だったとは……旅人やナヴィアと話す時のように接してしまったが……」

「優しい神様なので、気にしていないと思いますよ。寧ろ嬉しかったんじゃないですかね」

「だと良いが……」

「他の事は後でまとめて話しますね」

 

あまりクラクサナリデビ様を待たせるのも悪いからね。

 

 

 

「粗茶ですが……あ、ナツメヤシキャンディもありますよ」

「ありがとう、いただくわ」

 

お茶とお菓子を用意し、クラクサナリデビ様に献上したよ。この前の稲妻旅行の帰りでスメールに寄った時に買ったナツメヤシキャンディがあって良かった良かった。

僕も椅子に座って……なに話せばいいのさ。

クロリンデさんに視線を送ってみたけど、眉間に皺を寄せて難しい顔をしている。テトシアでナヴィアさんに無茶ぶりされた時とは違う対応を求められているからね。僕が何とかするしかない。

 

「えっと、今回はどうしてフォンテーヌまで?」

「クロリンデからあなたの話を聞いて、会いたくなったからよ」

 

僕撃沈。敬愛する自国の神にこんなこと言われて無事でいられる人間はいないだろう。

悶絶する僕に代わって、今度はクロリンデさんが手を挙げた。

 

「──質問、良いでしょうか」

「ええ、なにかしら」

「ナヒ、クラクサナリデビ様は……」

「いつも通り、ナヒーダでいいのよ。(わたくし)たち、お友達でしょう?」

「……んん、ありがとう。ナヒーダは彼とどういう仲なんだ?その、彼からあなたの話は聞いたことが無くて」

「あら、そうなの?……そうね、色々あったものね。(わたくし)から話してもいいけれど…………そう、分かったわ」

 

僕に向けた両手を降ろして、思いを汲んでくださったクラクサナリデビ様に感謝しながら、僕は顔をあげた。

クラクサナリデビ様との事を全部話すと、どうしたって暗い話になるし、かつてのスメール人は夢を見なかった話とか、教令院の事とかややこしいし、端折りながら話そう。

 

「クラクサナリデビ様とは夢の中でしか会った事がなかったんですよ」

「夢の中?」

「簡単に言うと、(わたくし)は人の夢の中に入る事ができるの」

 

正確にはそれが全てじゃないらしいけど、ひとまずこういう事にするよ。

 

「色々あって気持ちが落ち込んでた時に、助けてくれたのがクラクサナリデビ様なんです」

「悩める民に手を伸ばすのは神として当然の事よ」

 

あの不幸はまさに自業自得で、僕が負うべき痛みだった。

でも、そんな不幸の底から掬いあげてくれたのがクラクサナリデビ様だ。

 

夢の中でしか会ったことは無かったし、スメールを出てからは夢の中でも会ってなかった。実際に会ったのは初めてだから、クラクサナリデビ様とは久しぶりであり、はじめましてでもある。

夢の中で会っていたクラクサナリデビ様の御姿を忘れた事はないし、だからこそ記憶にあるクラクサナリデビ様がそのままの御姿で目の前に現れた時はすぐに分かったし、あわや腰を抜かすところだったというワケだよ。

 

「クラクサナリデビ様の事は説明しにくいし、話す機会も無かったので……」

「なるほど。私としてはその『色々あった』ところも聞いてみたいところだが……」

「それについては、もう話す時期を決めてありますから」

「そうか。では、それまで待つことにする」

「ありがとうございます」

 

話す時期というよりは、場所と言った方がいいかな。僕の過去をキチンと話すなら、それに合う場所の方が良いだろう。それはもう決めてある。

 

「そういえばクラクサナリデビ様、最近色んな人に僕の事を聞いていたらしいですね。ディシアさんから聞きましたよ」

「えぇ。挨拶もなしにスメールを出て何年経っても帰ってこなくて、ある日帰ってきたかと思えば、それは旅行の寄り道ですぐにまた出て行ってしまって、まるで生まれ故郷を忘れてしまった渡り鳥のようなあなたの事が気になってしまったのよ」

「…………怒っていますか」

「怒っていないわ」

 

嘘だぁ……。

 

「その節は申し訳ございませんでした。その代わり……と言ってはなんですが、次の花神誕祭の時期には必ず帰りますので」

「ふふ、えぇ!約束よ」

「はい、必ず」

 

クラクサナリデビ様と約束を交わした……。

そろそろクラクサナリデビ様はホテル・ドゥボールに戻ると言うので、客間が空いているから泊まっても良いと進言したが断られてしまった。旅人と、今回一緒に璃月に行ったメンバーの人達も来ているらしい。その面々でパジャマパーティーをしたいからと。

それを聞いた僕は思わず泣きそうになってしまった。辛いことが多かったであろうクラクサナリデビ様にもパジャマパーティーをするほどのご友人がたくさん……こんなにも素敵な、嬉しいことは無い。

 

そんな感じで感動していたら、クロリンデさんがクラクサナリデビ様を送るついでに顔を出して来ると言い出したので、僕もついて行くことにしたよ。

 

え、ダメ?恥ずかしいから?

なら仕方ないですね。

僕は玄関先からクラクサナリデビ様をお見送りするよ。

 

「それじゃあ、また今度会いましょう」

「ええ、また」

 

街の雑踏に消えていく二人の影が見えなくなるまで見送ったよ。

 

 

 

花神誕祭に合わせて、スメールに帰る。

前々から考えてはいたスメール旅行……帰省になるね。

まだ細部までは決めていないけど、行かなきゃいけない場所は決まっている。

そこでクロリンデさんに全部話そうと思うよ。

 

 

 




親不孝狩人「クロリンデさん、クラクサナリデビ様の花神誕日がこの日なので、この日を中心に何日か仕事の方を……そんなに」

有給余り放題決闘代理人「ああ、ナヒーダの誕生日に合わせて取ろう。二週間程でいいだろうか」


ママではないですね「あの子とは久しぶりに会ったのだけど、とっても大きくなっていたわ。成長って早いのね……草木とは比べ物にならないわ」

ご友人のプロトレーナー「子供の成長は早いってよく言うよな。アタシも生徒たちの成長はあっという間に感じることは多いよ」

ご友人の『おませさん』「もしかして、師匠や甘雨ねぇね、留雲おばちゃんたちもヨォーヨのこと大きくなったって思ってるのかな?ヨォーヨ、もっともっと大きくなりたい!」



ご友人たちは自分がよく使う激化パーティの方々です。
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