知り合いはさいつよ決闘代理人   作:秘境と聖杯ダンジョン

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元水神にご馳走

今日も今日とて狩りに出る、のではなく、冒険者協会の方でちょっとした依頼が出ていたからそれを受注してみたよ。

内容は、フォンテーヌ邸郊外にある住宅の近くでヒルチャールの退治。こういう依頼って執律庭とかに頼めばいいのになんで冒険者協会に来るんだろうか。或いは両方に依頼してるのかな。今度執律庭の人に会えたら聞いてみよう。

 

「あー……」

 

確かに、件の家の周りにヒルチャールがいる。一体だけ。水スライムをつついてるな。

わざわざ依頼として出されているくらいだからもっと数がいるもんだと思ってたんだけど、一体だけってなるとなんか武力行使で追い払うのもな……。

 

「あのー」

「ya!」

 

声掛けたはいいけど、僕ヒルチャールと会話なんかできないぞ?どうしようか。

 

「そこの家の人、困ってる。向こう、行ける?」

 

適当に遠くの方を指してみるけど、これ通じてるのかな。

なんか棍棒いじり始めたし、ヒルチャールの方も僕を警戒してないか?

 

「んー……」

 

よし。さっき水スライムをつついてたし、コイツを遠くへ投げてみよう。そーれ。

 

「ya!」

 

おー、追いかけてった。なんだったんだろ。ヒルチャールにも個性っていうか、暴力的な個体とそうでない個体がいるよね。

 

民家の住民さんに事を説明して、お礼を貰って帰路に着いた僕は、どうせだからと道中で買い物も済ませてしまう事にした。

肉や果物などの食材には困らないが、パンやパスタなんかは油断すると切らしてしまうからね。なんなら切らしてるし。

 

「ん?キミは確かクロリンデの……」

「あ、フリーナ様?」

 

偶然にも、店先でフォンテーヌが誇る水神のフリーナ様とばったり。珍しいこともあるものだね。

本来フリーナ様と会うには何ヶ月何年といった予約が必要だったのだが、今はそんなのないよ。なんせ水神を辞めたからね。

 

「キミもこのお店を利用していたのかい?」

「ええ、まぁ」

「てっきりキミは「自分で狩った獲物しか食ったりしない」みたいな人かと思っていたよ」

「えぇ……原始人かなんかっすか」

「だって狩人なんだろ?キミ」

「狩りは好きですけど、あくまで趣味の範疇ですし、普通に店売りの野菜とかパンとかも食べますよ」

「へー」

 

と、あまり興味無さそうなフリーナ様の手にはいっぱいのパスタ。というか、パスタしか持ってない。

 

「そういうフリーナ様はパスタしか食べないんですか?」

「な、何を言っているんだい?そんな訳ないだろう!」

「でもパスタしか持ってないじゃないですか」

「い、いいだろう別に!」

 

そう言うと、聞いてもいないのにパスタの食べ方のご高説を垂れてくる元水神様。曰く、一週間ミートソースで食べて、次の一週間は違う味のパスタを食べるんだとか。

飽きるわ。

 

「あ、そうだ!キミはクロリンデが絶賛するほどの料理の腕前の持ち主なんだろう?是非僕にも作ってくれないかい?」

「え?」

「えってなんだい、えって。いいじゃないか、材料なら僕が出すから」

「いえ、材料費とかは構わないんですけど……んー……」

 

どうしよう。フリーナ様は結構期待しているみたいだけど、今家に狩りたての新鮮な素材はないんだよね。

知り合いの人たち曰く、「狩った直後の獣肉で作る料理は美味しいのに、どうして台所で作る料理はこんなに普通なの?」「お前、料理上手いのかそうじゃないのかわかんないな……昨日の鶏肉のスイートフラワー漬け焼きはあんなに美味しかったのに、今日のはすごく普通だぞ……」が評価だからね。自分でも原因はわからない、呪いかなんかかな?不味い訳じゃないんだし文句言わないでほしい。

 

「まぁ、いいですけど」

「本当かい!?じゃあ僕の家まで案内しよう、早速頼むよ!」

 

トントン拍子で進んでしまったね。仮にも女性が簡単に男を家に上げないほうがいいと僕は思うよ。

 

「勿論他の人は簡単に招待したりしないさ。でもキミに限って、ないない」

 

何が『ないない』なのだろうか。

 

「見てわかるだろうが、そっちがキッチンだよ。僕が唸るほどのパスタ、楽しみにしているからね。ふんふーん」

 

鼻歌を歌いながら隣の部屋に行ってしまった。

というか、パスタ固定なんですか。パスタ……パスタ……うーん。

まぁ、いつも通り作ればいいか。

 

で、できたものがこちらのボロネーゼとなります。

特段何も変わったことはしていない、手癖で作ったボロネーゼ。

皿を前に目を輝かせているフリーナ様には申し訳ないが、きっと普通の味ですよ。

 

「ほー、これがウワサの!見た目は普通だね」

「ウワサってほどでも無いですけどね。多分見た目通り普通の味ですよ」

「謙遜かい?まぁいいや、さっそくいただくとするよ」

 

フォークにパスタを絡め、口に運ぶフリーナ様。

どんなリアクションを取られるかと内心身構えてますよ。

 

「んんん?普通のボロネーゼパスタだね」

「だからそう言ってるじゃないですか」

「おかしい!あのクロリンデが絶賛してるんだぞ!キミ、手を抜いたのかい?」

「そんなことしませんって」

 

多分、クロリンデさんの好みなだけだろう。僕がクロリンデさんに料理を作る時って、大抵狩った獲物で作るものだし。

 

「むー……なんか納得いかないような……」

「出会う人ほとんどに同じこと言われるのでそれで正解ですよ」

「そうかい?まあ、不味い訳じゃないからね。普通に美味しいって感じ」

「それはどーも」

「作り置きはあるかい?」

「本当に一週間パスタ生活してたんですか?」

 

フリーナ様にボロネーゼのレシピを教えた後、最高審判官にフリーナ様の今後の食生活について報告するべきか悩みながら帰宅したよ。

 

 


 

「昨日の事、聞いたよ」

「何がですか?」

 

今日はフリーナ様にボロネーゼパスタを作った日の翌日。つまり昨日の事とはその事だと思われる。

今日はポワソン町の近くで釣りをしていたら、後ろからクロリンデさんに声をかけられた。最近後ろから声をかけてくるのが流行りなのかな。

 

「フリーナ様の家に上がったらしいじゃないか」

「招かれたからです」

「これでも私はフリーナ様の護衛。不埒な輩は斬らないといけないな」

「元が抜けてますよクロリンデさん。怖いこと言わないでくれません?」

「冗談だ」

 

ホントに?結構本気な声のトーンだったよ?

以前テーブルトークシアターゲームをやった時も思ったけど、役を演じたりする事に対して、結構本気で臨むよねクロリンデさん。

 

「成果はどうかな」

「ボウズですよ」

 

僕に釣りの才能は無い。

魚が必要になったら弓矢で射抜くから別にいいもんね。

ていうか僕、別に魚が好きって訳でもないんだよな。食の嗜好的にはむしろ嫌いだし。だって小骨ばっかで食べにくいだろ?

なんて事を口走ったら「言い訳か?」って言われた事ある。言い訳だよ。

 

「君は釣れないのに良く釣りをしているな。釣れないのに。好きなのか?」

「二度言いましたね?まぁ釣りというか、釣り糸垂らしてボーッとしてる時間は好きですね。狩りの時と違ってゆったりとした時間なので」

「なるほどな。隣、いいかな」

「構いませんけど、濡れますよ?」

「今のフォンテーヌ人が海に濡れる事を気にすると思うか?」

「んー、人によっては」

「正解だ。だが、私は気にしない」

「そうですか」

 

この後、夕暮れ時まで釣りをしていたものの、結局魚が釣れることはなく、手ぶらで帰宅したよ。

 

何故かまた僕の家まで着いてきたクロリンデさんには、晩御飯をご馳走してから家に帰したよ。

 

 




「彼の料理?私好みの味だ」
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