知り合いはさいつよ決闘代理人 作:秘境と聖杯ダンジョン
フォンテーヌから遥々、そして久々にモンドに来ているよ。
クロリンデさんの仕事の出張に着いてきたんだよ。
出張の内容だけど、早い話、フォンテーヌとモンドの戦術体系の交流らしい。それのフォンテーヌ代表がクロリンデさんで、モンド側は西風騎士団遊撃小隊隊長、つまりエウルアさんということらしい。
モンドには滞在していた時期があったから、案内役という口実で出張に同行させてもらった。
ちゃんと
モンド城に着いてからは二人で城下町を散策した。主に鍛冶屋や訓練場を見て回ったよ。
騎士団の遠征部隊がナド・クライから順次帰還しているということで、モンド城の一部が飾り付けられているね。
長年遠征に出ていた騎士たちの凱旋だから風花祭ばりに国を上げて迎えるものかと思ったけど、ささやかな飾り付けに収まっているのはファルカさんがそう指示したのかな。
そうそう、ファルカさんの指示といえば、あの騎士団の方々の盛大な歓迎もファルカさんの指示なのか?
モンド城に着いた途端、何人もの騎士たちが歓迎と称して、大量の肉料理を振舞ってくれたんだよね。無下にするのも悪いから沢山食べたけど、それで胃もたれ気味。ぶっちゃけこの後何も食べなくても明日の夜まで持ちそうな具合。
そんなこともありつつ、いま僕は野外の訓練場でクロリンデさんとエウルアさんの手合わせを見物していたところだよ。
手合わせ後の二人が仲良く意見交換しているのを微笑ましく思いつつ若干ジェラシーを感じながら蒲公英酒を飲んでいるよ。
断酒したんじゃないのかって?狩人だって酒に酔いたい時もある。酔うほど飲まないけど。
ていうか、モンドまで来たのに
ナド・クライに行った時、フラッグシップでも飲んだけど、やっぱ本場のは各別に美味いね。
穏やかな風を感じつつ、その風に揺れる黒髪を眺めながら煽る一杯はとてもとても……おや、二人がこっちに向かってきたよ。
「お疲れ様です。終わったんですか?」
「ああ、手合わせはこれで終わりだ。これからはモンド城へ戻って、少し早いが夕食にしようと思う」
「いいですね。エウルアさんもご一緒に?」
「あなた達との夕食はとても楽しそうだけど、この後はアンバーと約束してるの。ごめんなさいね」
「構わない。また明日もよろしく頼む」
「ええ、こちらこそ。じゃあまた……あ、そうだ。次はその男を置いてきてちょうだい、気が散るから」
「エウルアさん?」
えぇ?何もしてないのに邪魔者扱いされた。
離れたところから二人の試合を見てただけなのに?
僕、エウルアさんに何かしました?
「ふふ、そうだな。明日は私一人で行こう」
「クロリンデさん?」
「助かるわ。じゃ、また明日ね」
「ああ、また明日」
エウルアさんは訓練場から去っていった……。
「私達も行こうか」
「あの、僕なんかやっちゃいました?」
「見すぎだ」
「見すぎ……気をつけます……」
「私は構わない」
そんなこと言うなら目に焼きつける勢いで見つめますよ。
「見すぎだ」
「はい」
ほどほどにしよう。
僕たちも訓練場を後にして、夕食を食べに行こう。
しかし、夕食か。どうしようかな。僕はあんまお腹空いてないんだよな。
と、考えていたことが隣を歩くクロリンデさんにも伝わったらしい。
「夕食だが……どうする?」
「騎士の方々のおかげでまだ全然。クロリンデさんは?」
「私は動いたから少しは。ただ、この油っこさは何とかしたい」
「なるほど……うーん……ん?」
「この気配は……旅人か?」
何となく知ってる気配がするな……と思ったらクロリンデさんも気がついたみたいだね。
旅人さんか。ナド・クライで連れ回されて以来だけど、どうやらその後も色々あったみたいだし、遠征部隊帰還の件にも関わってたりするのかね。
「ぽいですね。行ってみますか」
「そうしよう」
そうしてやってきたのは、人がよく集まっている屋台。小さな野外酒場みたいな感じだね。
カウンターでバーテンダーやっているのは、もちろん旅人さんだ。
「あぁ、やはりそうか」
「どーも、ご無沙汰です」
「こんにちは、二人とも!」
「近くを歩いていたら、馴染みのある気配がしたので寄ってみたのだが、やはりあなただったか」
「どうぞ座って、お客さん!」
「なんだかやけに声が大きいですね。パイモンは?」
「接客業だからね。パイモンはデリバリーの注文受付をしてるよ。ご注文は?」
席に案内され、メニューに目を通す。んー、たまにはカクテルもいいかな。
「僕は『棘の鏡湖』を。クロリンデさんは?」
「『フレイム・キャラメル・ポエム』を一杯もらおうか」
「え?」
「うーん……」
「どうしたんだ、二人とも。その表情を見るに、私に聞きたいことがありそうだな?」
「いやだって、フレイム・キャラメル・ポエムって……」
「うん、まずはお酒を作るよ。飲みながら話そう」
「落ち着いていて、余裕が感じられる。この仕事に慣れているようだな」
「まぁね。じゃあ、少し待ってて」
旅人さんはカウンターへと戻っていった。
早速カクテルを作成し始めている。
しかしクロリンデさん、フレイム・キャラメル・ポエムなんて飲めるのか?
普段はあまり酒は飲まないし、飲んでも度数低めの果実酒やワインくらいなのに。
「大丈夫ですか、クロリンデさん?」
「なにがだ?」
「フレイム・キャラメル・ポエム、結構強めのカクテルですよ」
「そうなのか?モンドで人気だと聞いているが……それにテーブルトークシアターの新しいシナリオでも登場しているカクテルだ」
「そこまで知ってて肝心の中身を知らないんですか」
「それと、フリーナ様も『モンドは美酒と詩の国』だと言っていた。この土地の特色を味わってみたい」
僕は深く頷いた。
せっかく旅行……出張で初めてモンドに来たのだから、モンドの土地柄を味わいたいというのは当然の事なのだ。
「であれば、僕は止めません。ただ、キツかったら言ってください。代わりに飲みますから」
「ありがとう。だが、私は別にそこまで酒に弱いという訳では……」
クロリンデさんが言いかけたところで、旅人さんがカクテルを運んできた。
「ご注文の『棘の鏡湖』と『フレイム・キャラメル・ポエム』です。どうぞごゆっくり」
「ありがとうございます」
「なるほど、名前通りの酒だな。色は炎のようで……攻撃的な香りを放っている……」
棘の鏡湖に関しては有名なカクテルだから特に語ることは無いかな。
「うん、美味い!」
「ごほっ……少し強すぎたようだ」
まぁ、そうだよなぁ。普段酒を飲まない人が一杯目に飲むようなカクテルじゃないもんなぁ。
「大丈夫?水でも飲む?」
「問題ない、じきに慣れる」
「お酒に慣れてないなら、無理しないで」
「酒は人を酔わせ、仕事の妨げになる。理性的に考えれば、口にしない方が賢明だろう」
「ん?」
「なんだ?」
「いえ、なんでもないです」
でもやたら僕に酒を飲ませてくることが何回かあったような、とは言えなかったよ。
クロリンデさんがフレイム・キャラメル・ポエムを飲んでみた理由を聞いた旅人さんが、満足のいく一杯になるよう改良してみると、クロリンデさんの好みを分析し始めたので、僕は大人しく二人の会話を聞きながら棘の鏡湖を飲んでいるよ。
クロリンデさんが好む味を教えようと思ったら旅人さんに「黙ってて」って言われたからね。
十数分の会話の後、旅人さんが新たなカクテルを運んできたよ。
旅人さんによって『のんびり雷光』と名付けられた決闘代理人専用のスペシャルカクテルだ。
決闘代理人専用と言っていたけど、普通に僕の分も一緒に作ってくれてた。何故か僕のはバルーングラスだったけど。
「いただこう」
「いただきます」
ん、炎水の代わりに柑橘系の果実酒を使ったのか。度数はかなり下がるものの、スノースタイルの塩味と果実の酸味、カラメルソースの甘味、それらにググプラムの渋みがアクセントにもなっている。
それらが合わさって、ずっと喉奥に残ってた肉料理たちの油っこさをスーっと流してていく。素晴らしいね。
それになにより──
「良い味わいだ。私にはちょうどいい」
良い笑顔。クロリンデさんのこの笑顔を引き出せる人はなかなかいない。
ほろ酔いで紅潮している顔も可愛いし、少し上機嫌でいつもより口数が多くなっているのも良いね。
「旅人さん……」
「どうかした……あぁ、フフッ。どういたしまして」
これには僕もサムズアップを送らずにはいられないね。
サムズアップ狩人「b」
サムズアップ旅人「b」
通りすがりのベニー冒険団団長「︎︎︎︎b」
ほろ酔い決闘代理人「?」
波花騎士「あの人と話したことなんて片手で数えるくらいしか無かったけれど、前モンドにいた頃はあんなじゃなかったと思うの。恋人ができると人は変わるものなのねぇ」
偵察騎士「あの狩人さんに恋人ができてたなんて、大ニュースだよ!ガイア先輩にも教えないと!」
なんかフォンテーヌの集録祈願が来たんだけど!!!!!