知り合いはさいつよ決闘代理人   作:秘境と聖杯ダンジョン

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弓剣作成秘話、或いは僕の過去の暴露大会

今日の狩りには、クロリンデさんだけでなくナヴィアさんも着いて来た。

なんでもクロリンデさんが絶賛する僕の料理を食べてみたかったのだとか。

絶賛してくれてるんですか、クロリンデさん。すればするほど僕に求められるハードルも高くなるんですけど。

 

「んー!美味しー!」

「どーもどーも、お粗末様です」

「ちょっとクロリンデ、アンタこんな美味しいものを毎日食べてんの?」

「毎日ではない、たまにだ」

「だとしてもよ!ね、今度ポワソン町のみんなにも作ってくれない?」

「いいですよ。新鮮な食材をもって作らせていただきます」

「やった」

 

ナヴィアさんと約束。ポワソン町には近くに釣りに行く度に顔を出しているけど、日に日に復興が進んでいて何より。災害前より栄えているような気さえする。これも棘薔薇の会の会長の手腕かな。

 

「アンタも来てよね、クロリンデ。パパもマルシラックもシルヴァも会いたがってると思うから」

「分かった。休みを取っておこう」

 

マルシラックさんとシルヴァさんには、僕も何度かお世話になった。

近くで狩りをする時はお墓の様子を見に行っているし、獲物が取れれば、三人分のお供えも持って行っている。

ナヴィアさんのお父さんのカーレスさんとは会ったことは無いけれど、ナヴィアさんやクロリンデさん、ヌヴィレットさんと色んな人から色々とお話を聞いたよ。

 

「ちょっとちょっと、なに二人して辛気臭い顔してんの?せっかくの美味しいご飯が不味くなっちゃうわ」

「あなたがそういう話題を振ったんだ」

 

そーだそーだ、と僕も思います。

 

「話題を変えましょ。アンタってどこかで料理を習ったの?それとも自前?」

「それは私も気になるな」

 

うむ。誰かに料理を習ったか、か。そうとも言えるし、そうとも言えないような……曖昧な答えしか出せない気がする。

 

「初めからある程度はできたよ。狩った獲物を捌いて、焼いて……捌き方や可食部なんかは本で勉強したり、人に直接教えてもらったり。そして、狩りを続けていくうちに、せっかくいただく命だから少しでも美味しくいただくために味付けだったりとかを研究し始めたって感じです」

 

その辺、スメールの僕が住んでた地域では困らなかった。シティもそれなりに近かったし、近くの村には博識なレンジャー長も居たしね。

 

「料理のレパートリーについては?」

「そこはホラ、スメール璃月モンドと旅をしてて知り合った人達からちょいちょい盗んだり」

 

卯師匠や香菱ちゃん、ノエルさん、ガイアさん、旅人さん辺りかな。

特に旅人さんはとんでもない腕前の持ち主だね。鍋と火と材料さえあればなんでも作ってしまう。

香菱ちゃんからは料理の極意というか、気構えというか……色んなことを教えて貰ったよ。なんでも食材扱いするのはどうかと思うけどね。

 

「ふーん。今度あたしもお菓子の作り方教えたげよっか?」

「お菓子……お菓子……まぁ、機会があれば」

 

お菓子かぁ、作ろうと思ったこともないな。カフェ・リュテスで買える範囲で満足できるし。

 

「私からも良いか?」

「なんですか?」

「弓と剣の師は?」

「師匠……ですか……うーん」

 

強いて挙げるなら、弓はレンジャー長やレンジャーの人達、閑雲先生に甘雨さん。剣の方は大マハマトラ、モンドでガイアさんを筆頭に騎士団の人達にって感じ。基本的には実戦での叩き上げだよ。

 

「弓はスメールのレンジャーの人達に教えてもらって、その後璃月で修行をつけてもらったくらいかな。剣の方はスメールでの知り合いの知り合いの人と、モンドの騎士団の方で少し。こっちはほぼ我流ですね」

 

大マハマトラ、剣を教えるというよりは剣での実戦の仕方を教えるみたいな感じだったからね。槍と雷に打たれながら戦い方を覚えたよ。

 

「なるほどな。余程腕の立つ者が居るらしい」

「あ、今のでわかります?」

「当然だ」

 

以前少しだけ聞いたが、クロリンデさんの師匠も大マハマトラと似た方針の人だったようで。どこか通ずるものがあったのかもしれない。

 

「ねぇねぇ、次はその弓についてなんだけど聞いてもいい?」

「その弓剣については、私からも聞きたい事がある」

「この弓剣について……」

 

うーん。話すと長くなるし、掻い摘んでで良いか。

 

「弓と剣を持ち変えるのが面倒だと思ったから、一つの武器に二つの役割を落とし込んでみたんだ。開発は手伝ってもらったけど、設計は僕だよ」

 

話しながら立ち上がり、ガシャガシャと弓状態と剣状態を切り替えて見せる。

何となく機構に違和感を感じるね、そろそろ大掛かりなメンテナンスが必要かな?

 

「その変形機構、前見た時も思ったけど大分複雑よね」

「私もそう思っていた。剣と弓を合わせるなら、いっそ二振りに分かれるようなものにすれば良かったのではないか?」

「それ、これを作ってくれた人にも同じ事を言われたよ」

 

正確には仙人だけど。

 

「僕も最初はその方が簡単かなって思ってたんだけど、二刀連結型だと、弦の強度と引き絞る時の力に耐えられなくてね」

 

弓状態の弦をナヴィアさんに触らせてあげると、とても驚いていた。なんせ弦まで金属製なのだから。

 

「へぇ……剣を弓にするのって難しいのね」

「そう、剣を弓にするのは難しかったんだ。だから、弓を剣にすることにしたんだ。発想の反転だね」

「……なるほど」

「え、それってなんか違うの?」

 

納得したように頷くクロリンデさんと、まだわかっていない様子のナヴィアさん。

 

「剣にも弓にもなる武器であるという結果は変わらないが、その過程というのは極めて重要だ。狩りをするにも、獲物を追い詰める過程があるように。お菓子を作るにしても、材料を混ぜ合わせたり焼いたりする過程は重要だろう?」

「あ、なるほど。何となくわかったかも。ありがとクロリンデ」

 

クロリンデさんの補足説明のおかげで手間が省けたね。

 

──弓を剣にする。それを前提に僕はまず木で弓を造った。

とてもありきたりな、普通の弓。それに、僕が求める理想の強度の弦、弦を引いた時に必要な弓の耐久力、それにあった素材。広い璃月中を歩き回って探したよ。

それらを何とか集めて、寒鋒鉄器の章さんやティマイオスさんに頼んで加工してもらったりして、この弓剣の原型を造った。

 

次に、弓を剣にする方法を考えた。ここからはかなり難航したね。なんせ弓を剣にするなんて無駄な事、誰も試そうとすらしなかったんだから。アドバイスとか求めても『なんで弓と剣を同じ武器で賄う必要があるんだ?』で終わりだったし。

だからもう自分一人で作るしか無いかなーって。せっかく造った弓を解体して組み直したり、パーツ毎に紙に書いて構造を詰めたり。

未知の探求みたいで、先は見えなかったけど楽しかった。やはり根本がスメール人だからかもしれないね。

 

そうして、弓剣作成について試行錯誤している時に会ったのが、ピンばあやだった。物腰柔らかく優しいおばあちゃんに、半分愚痴のように弓剣の作成が難航していることを話したら、絡繰仕掛けを得意とする人を紹介してくれた。

これが閑雲先生との出会いね。

閑雲先生は僕が持ってた弓剣の設計図(仮)を見て一頻り笑ったあと、『なかなか面白そうな物を作ろうとしておるな。妾も混ぜよ』といって否応無しに作成に参加したのだ。

思えば、他人に頼るということを忘れかけていた頃だったし、そんな僕を見透かして強引な事をしたのかもしれない。

 

そこからは結構あっという間だった気がする。

閑雲先生の仕掛けの術や技術を弓に組み込み、度々失敗しながらも、弓から剣に変形する仕掛け武器が完成したという訳だよ。

 

むしろ、完成してから弓剣を手に慣らす為の修行の方が長かったね。閑雲先生の修行は風域やからくり仕掛けを使ったものが多くて大変だった。おかげで風を読めるようになったりとか、身に付いた技術はすごく役立っているけれども。

修行に付き合ってくれた甘雨さんにも感謝です。

 

「まぁ、そんな感じの経緯で完成したんですよ」

「あたし、てっきりフォンテーヌで造られた武器かと思ってたんだけど、璃月にもマシナリー職人がいるのね……」

「あの人はマシナリーに対して対抗心バリバリだけどね」

 

璃月港に売ってたマシナリーを解体して研究しているのを何度か見たことがあるよ。

……もしかしたらそのうちフォンテーヌにも来るかもしれないんだよな。あの仙人、想像以上にフットワーク軽いから。思い立ってって訳じゃないだろうけど、案外あっさりと璃月港への移住を決めたらしいし。

前の海灯祭の時に閑雲先生の家にお邪魔してたんだけど、その引越し先の家が万民堂のすぐ近くだったもんで、どんだけ申鶴さんのこと心配なんだよとも思ったよ。

 

「私から聞きたいのは、君がその弓剣を使う意味だ」

「あー、気付いていたんですね」

「君がどんな考えでその弓剣を使っているのかはわからないが、なにか強い意志を持って狩りを(おこな)っていることはわかるよ」

「……これは僕の持論なんですけどね。狩りに魅入られ、獲物を狩るためだけに狩りをする狩人は、獣と変わらない。狩人を人たらしめるのは、人の意志(遺志)を持つことに他ならない──弓と剣、二面性を持つ複雑な仕掛け武器は、狩人()を人に留める()()()です」

 

クロリンデさんもナヴィアさんも、口を開かない。

湿っぽい話しをしてしまったかな。

 

「……ああ、形は違えど、私も狩人(ファントムハンター)の遺志を継ぐ者だ。理解できるよ」

「はは、どうも。よし!この話はここまで、まだ日は高いですし、これから倶楽部でテトシアしません?」

「……そうね!オーナーが最新のシナリオを仕入れたって言ってたし、早速行きましょ!今日はオールナイトで!」

「ああ、賛成だ。だがオールナイトはまたの機会にな。明日は仕事がある」

「えー、前もそう言ってたじゃない!」

 

うん。こう賑やかな方が楽しくていいよね。

 

僕たちはワイワイと、これからやるテトシアの最新シナリオの展開を予想をしながらフォンテーヌ邸へと戻ったよ。

 

 

 

 

「──つまり、このシナリオは前にプレイしたものの続編ってこと?」

「そのようだな。世界観がそのまま地続きになっているから、前回作成したキャラをそのまま使うようだ」

「……てことは、僕はまたあの『跳躍』キャラを使わなきゃいけないってこと?」

 

僕は膝から崩れ落ちた。

ナヴィアさんは大笑いし、クロリンデさんまでもがお腹を押さえて笑っている。

やってやる!この『跳躍』を活かしてナヴィアさんにギャフンと言わせてやるんだから!

まあ、テトシアはそういうゲームじゃないし、勿論『跳躍』は大して役に立たなかった。




弓剣使い
「僕に哀しき過去……」

ファントムハンター
「師匠が似たような事を言っていた」

ボス
「あたしの話題のせいで湿っぽくなったから話題転換したのにまた湿っぽくなった」




Bloodborne要素をお漏らししてしまいました。かねて血を恐れたまえ。


ご感想ありがとうございます。
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