才人工房の研究施設に、新たな能力者が加わった。
「本日付で、帆風潤子さんが我々のプロジェクトに参加することになりました」
研究員の紹介を受け、帆風潤子はまっすぐ立ち、礼儀正しく一礼した。
「帆風潤子です。よろしくお願いします!」
彼女の瞳には強い意志が宿っており、その姿勢はどこか武士を思わせるようなものだった。
「彼女の能力『天衣装着(ランペイジドレス)』は、自身の体細胞の電気信号を操作することで肉体のリミッターを外し、筋力やスピード・五感・動体視力などを向上させるものです。現在はレベル2ですが、将来的にはレベル4、あるいは5まで上がる可能性もあります」
研究員の説明に、食蜂操祈は興味深そうに頷き、蜜蟻愛愉も「すごいわねえ~♪」と感嘆の声を漏らした。
「なかなか面白い能力ねぇ。これからの成長が楽しみだわぁ」
操祈が微笑みながら言うと、帆風は力強く拳を握った。
「早く皆さんのようになれるよう、頑張ります!」
結絆は彼女のやる気を感じ取りながら、優しく微笑んだ。
「うんうん、その意気だねえ。どんどん成長していこうねえ」
橘博士も満足げに頷き、研究員達は帆風の今後に期待を寄せた。
こうして、才人工房に新たな才能が加わり、さらなる成長が始まろうとしていた。
それから数日後、帆風の能力を向上させるため、結絆が組手の相手を務めることになった。
訓練場に立つ二人を、研究員や橘博士、操祈達が見守っていた。
「遠慮はいらないからねえ、全力で来るんだよお」
結絆が柔らかく微笑みながら構えた。
その言葉に、帆風は静かに頷き、能力を発動した。
『天衣装着(ランペイジドレス)』
帆風の全身が微細な電気に包まれ、身体能力が活性化する。
視覚が鋭くなり、地面を蹴ると同時に猛スピードで結絆へと突進した。
「はあっ!」
電光石火の拳が結絆を襲う。
しかし、結絆はわずかに体を傾け、それを紙一重で避けた。
「おお、速いねえ。いい感じだよお」
結絆は軽やかに帆風の横に回り込み、指先で彼女の肩を軽く叩いた。
その瞬間、帆風は直感的に危険を察知し、後方へ跳躍。
「くっ......!」
帆風は冷静に息を整え、再び猛攻を仕掛ける。
強化された脚力で地面を割るように蹴り、拳を突き出した。
結絆はその拳を軽く受け流しながら、次第に速度を上げていく。
帆風の動きに合わせるように自己制御(セルフマスター)で自身の身体能力を微調整し、彼女の速度を凌駕した。
「すごいねえ。でも、まだまだ行けるよねえ?」
結絆の挑発に応えるように、帆風はさらに能力を解放。筋力と速度を限界まで引き上げ、一撃必殺の突きを繰り出した。
「これならどうですか!」
しかし、結絆は冷静だった。
帆風の拳が届く瞬間、結絆の身体がわずかにブレるように動き、帆風の拳は空を切った。
その直後、帆風の背後に結絆は回り込む。
「......惜しいねえ」
そして、帆風の背中に軽く手を当てる。
その瞬間、彼女の全身に衝撃が走り、バランスを崩して地面に倒れ込んだ。
「......負けました」
帆風は悔しそうに拳を握るが、結絆は笑いながら手を差し伸べた。
「うんうん、すごく良くなってるねえ。でも、もっともっと強くなれるよお」
帆風はその言葉に決意を新たにし、結絆の手を取って立ち上がった。
「次こそは......勝ちます!」
その光景を見ていた橘や操祈達は、帆風の成長を確信し、さらなる可能性を感じていた。
それから数か月後、帆風の能力はついにレベル4に到達した。
しかし、能力の反動で彼女の体には異変が生じていた。
「うっ......頭が......」
帆風は額を押さえながら、苦しげに膝をついた。
全身の痛みが彼女を襲い、耐えるのがやっとの状態だった。
「これは......能力の過負荷だねえ......」
結絆は帆風の状態を見て、すぐに察した。操祈と蜜蟻も心配そうに彼女を見つめる。
「結絆クン、何とかできる?」
蜜蟻が不安げに尋ねると、結絆は静かに頷いた。
「あまり他者に干渉するのは得意じゃないけど、やってみる価値はあるねえ。帆風の身体の状態を調整するよお」
結絆は自己制御(セルフマスター)を発動し、帆風の体に触れた。
そして、彼女の神経伝達や筋肉の負担を最適化し始めた。
瞬く間に彼女の痛みは和らぎ、表情が落ち着きを取り戻していく。
「......すごい、楽になりました......」
帆風は驚きの表情を浮かべた。
「これで無理なく能力を使えるはずだよお。まあ、でも、無理しちゃダメだよお?」
結絆の言葉に、帆風は感謝の笑みを浮かべた。
「ありがとうございます、結絆さん......!」
休日の朝、結絆、操祈、蜜蟻、そして帆風の四人は学園都市の動物園を訪れた。
「動物園なんて久しぶりだねえ」
結絆が楽しげに言うと、操祈は微笑みながら「お兄様が連れてきてくれるなんて、意外だわぁ」と返した。
「いやいや、たまにはこういうのもいいかなあってねえ」
蜜蟻はワクワクした様子で「楽しみだわあ~♪ どんな動物がいるのかなあ~?」と目を輝かせ、帆風は落ち着いた様子で「普段の実験の息抜きとしても、いいですね」と頷いた。
動物園に入ると、まずは大きなゾウのエリアに向かった。
「うわぁ、大きい~!」
蜜蟻が興奮気味に柵越しに手を振ると、ゾウがゆっくりと鼻を振って応えるような仕草を見せた。
「ゾウって意外とかわいいのねぇ」
操祈も興味深そうに眺め、帆風は「筋肉の付き方がすごいですね」と違う視点で感心していた。
次に向かったのは猛獣エリア。
ライオンやトラが悠々と歩き回っている。
「ふふっ、なんかお兄様と似た雰囲気のライオンもいるわぁ」
操祈の言葉に結絆は苦笑し、「オレはそんなに獰猛じゃないよお」と肩をすくめた。
「でも、結絆クンって強いから、もしライオンと戦っても勝てそうだよね~♪」
蜜蟻が冗談めかして言うと、帆風が真剣な顔で「でも、動物相手なら戦うべきではありませんね」と訂正し、皆は笑った。
ペンギンのエリアでは、ちょこちょこと歩く姿に操祈が「かわいいわぁ~」と目を輝かせ、蜜蟻も「ペンギンさん、こっち向いて~♪」と手を振った。
結絆はそんな二人の様子を見ながら「動物達を見てると癒されるねえ」とのんびりした表情を浮かべた。
最後に立ち寄ったのは小動物コーナー。
モルモットやウサギ達と触れ合うことができる。
「お兄様、このウサギ、ふわふわよぉ」
操祈がそっとウサギを撫で、蜜蟻もモルモットを抱えて「小さいけど、あったかいわあ~♪」と感動していた。
帆風は優しくモルモットを撫でながら、「生き物と触れ合うのも、良い経験になりますね」としみじみと言った。
こうして四人は楽しい一日を過ごし、動物達に癒されながら、また明日からの生活に向けてリフレッシュするのだった。
数日後、休日の午後、結絆と操祈はカフェで紅茶を飲みながらゆったりとした時間を過ごしていた。
「お兄様、ちょっと相談があるんだけどぉ」
操祈が珍しく真剣な表情を浮かべると、結絆は興味深そうにカップを置いた。
「相談?珍しいねえ。どうしたのかなあ?」
操祈は少し頬を染めながら、スプーンでカップを軽く回した。
「最近、ちょっと気になってる男の子がいるのよぉ」
「ほう!?気になる男の子かい」
結絆は意外そうに眉を上げ、楽しげに微笑んだ。
「それは、どんな人なのかなあ?」
操祈は少し恥ずかしそうに目を伏せながら答えた。
「上条当麻っていう男の子なんだけどぉ......」
結絆はその名前を聞いて軽く首を傾げた。
「うーん、その名前、聞いたことがあるような、ないような......どこが気に入ったのかなあ?」
操祈は紅茶を一口飲んでから、少し照れくさそうに語り始めた。
「少し前にねぇ、不良に絡まれてた時があってぇ......その時に助けてくれたのよぉ」
結絆の表情が少し険しくなる。
「不良に絡まれてた?それ、大丈夫だったのかなあ?」
操祈は苦笑いしながら手をひらひらと振った。
「まあ、結局はお兄様に言う前に解決しちゃったけどぉ。でも、あの時の彼の姿がねぇ......なんていうか、かっこよかったのよぉ」
結絆は紅茶を飲みながら、じっと操祈の顔を見つめた。
「なるほどねえ。まあ、操祈がそこまで言うなら、そいつは悪い奴じゃなさそうだねえ」
操祈は微笑みながら頷いた。
「うん、すっごく優しいのよぉ。でも、結構無茶するタイプだから、そこはちょっと心配だけどぉ......」
結絆は少し考え込むように顎に手を当てた。
「操祈のことを大切に思っている人がいるんだったら、俺は嬉しいねえ」
すると、操祈は嬉しそうに微笑み、「ありがとぉ、お兄様」と礼を言った。
こうして、結絆は妹の新たな想いを知ることとなったのだった。
学園都市のとあるカフェ。
休日の午後、結絆は妹である操祈とともに窓際の席に座っていた。
紅茶の香りがほんのりと漂い、落ち着いた雰囲気が店内を包んでいる。
「お兄様、今日は大事な人を紹介するわねぇ」
操祈が楽しげに微笑みながら言うと、結絆はゆったりとカップを口元に運びつつ、興味深そうに目を細めた。
「もしかして、この前言ってた......」
結絆が言い終わる前に、店の入口から一人の黒髪の少年が入ってきた。
操祈が軽く手を振ると、少年は少し緊張した様子で二人の席へと歩み寄る。
「初めまして、上条当麻です」
少年は軽く頭を下げながら自己紹介をした。
結絆は彼をじっと見つめ、微笑を浮かべる。
「上条君か、初めましてえ。俺は食蜂結絆、操祈の兄だよお」
「えっと、今日はわざわざすみません。操祈からお兄さんのことは聞いてて......」
「そうかあ。まあ、操祈が君のことを気に入ってるみたいだからねえ、どんな人か気になったんだよお」
上条は少し照れくさそうに頬をかいた。
「なんというか......操祈には助けられることも多くて。その、俺が危ない時もあったし......」
操祈は少し誇らしげに微笑みながら頷いた。
「お兄様も、当麻のこと気に入ると思うわよぉ」
結絆は紅茶を一口飲み、ふっと笑みを深めた。
「まあ、こうして話してみると悪い奴じゃなさそうだからねえ。......操祈のこと、よろしく頼むよお」
その言葉に上条は目を見開き、すぐに真剣な表情で頷いた。
「はい、もちろんです。操祈を悲しませるようなことはしません」
その言葉に操祈は少し赤くなりながらも、嬉しそうに微笑んだ。
結絆はそんな二人のやり取りを見つつ、心の中で静かに頷く。
こうして、食蜂結絆と上条当麻の初対面は、穏やかに、そして確かな信頼のもとに幕を開けたのだった。
帆風や当麻との出会いを書いてみました。
当麻は結絆と会話している時にガチガチに緊張していました。