才人工房の研究施設内。
新たな能力者が加わるという報告を受けた食蜂結絆は、研究室の奥でデータを見ながら紅茶を飲んでいた。
そこへ、橘博士が足早に近づいてくる。
「結絆君、新しい能力者の受け入れ準備ができたわ。警策看取っていう少女よ」
「警策......ねえ。どんな能力持ちかなあ?」
「『液化人影(リキッドシャドウ)』っていう、比重20以上の液体を自在に操る能力よ。ただし、操作する液体は彼女自身の体型と同じ形でないと精密な動きができないのが特徴ね」
「へえ、面白いねえ。能力を使ってるのを見るのが楽しみだよお」
数分後、研究室の扉が開き、一人の少女が入ってきた。
銀色の髪を持ち、鋭い眼差しをした警策看取。
その視線は落ち着いているようで、どこか周囲を探るような警戒心を滲ませていた。
「警策看取です。お世話になります」
彼女は深々と頭を下げると、すぐさま研究員達へと歩み寄る。
「......あの、できるだけ能力開発を優先してもらえませんか?私は強くなりたいんです」
警策はやや低姿勢に出ながらも、研究員に対して巧妙に媚びを売るような態度を取った。
その姿に、結絆は紅茶を飲みながら微笑む。
「ふうん、積極的じゃないかあ。まあ、強くなりたいのはいいことだよお」
「......当然です。私はもっと上へ行くつもりですから」
警策の瞳には強い意志が宿っていた。
彼女の能力『液化人影(リキッドシャドウ)』が才人工房でどこまで伸びるのか、結絆は興味を抱きつつ、その場の様子を見守っていた。
才人工房に加わったばかりの警策看取は、しばらくの間、周囲と距離を置いていた。
能力開発に熱心な彼女は、研究員との関係を重視し、他の能力者とはあまり接点を持とうとしなかった。
しかし、食蜂結絆はそんな彼女を気にかけていた。
ある日の昼下がり、結絆は研究施設のラウンジで紅茶を淹れながら、警策に声をかけた。
「やあ、警策。少しお茶でもどうかなあ?」
「......別に、いいですけど」
警策は警戒するような視線を向けたが、結絆の柔らかな笑みを見て、しぶしぶ席についた。
「ここでの生活、もう慣れたかなあ?」
「別に問題ありません。能力開発も順調ですし、特に困ってることはないです」
そっけない返事をしながらも、警策の指先はわずかに動揺していた。
それを見抜いた結絆は、少し微笑んだ。
「でもさあ、一人でいるより、仲間がいた方が楽しいと思うけどなあ」
「......私は別に、馴れ合うつもりはありません」
警策はそう言ったが、その表情には迷いがあった。
結絆は紅茶を一口飲み、穏やかな口調で続けた。
「別に無理に仲良くしろとは言わないよお。でも、君のことを気にしてる人はいると思うよお?」
警策は一瞬、目を伏せた。
その言葉が、彼女の中で何かを揺さぶったのかもしれない。
それから数日後、警策は訓練場で食蜂操祈や蜜蟻愛愉、帆風潤子と顔を合わせた。
最初は距離を取っていた彼女だったが、操祈が気さくに話しかけた。
「ねえねえ、警策さんって液体を操れるんでしょ?すごーい!」
「......まあ、それなりには」
蜜蟻が興味深そうに続けた。
「その液体で、何か面白いこととかできたりするの?」
「......例えば、こんなのはどうですか?」
警策は手元の金属製のカップに入っていた高濃度の液体を操り、それを自分の分身のような形に形成した。
すると、蜜蟻が目を輝かせた。
「わあ!すごいね結絆クン、こんなの見たことないよ!」
帆風も腕を組みながら感心したように頷く。
「なるほどねえ......いろいろ応用もききそうだねえ」
警策は少し驚いた顔をした。
今まで彼女は自分の能力を「ただ強くなるための道具」としか考えていなかった。
しかし、ここではそれを純粋に興味を持ち、称賛する仲間がいた。
その夜、警策は施設のベランダで一人、星を見上げていた。
そこへ結絆が現れ、隣に腰掛けた。
「なかなか楽しそうだったねえ?」
「......まあ、それなりには」
警策は小さく微笑んだ。
彼女の表情は、以前よりもずっと穏やかだった。
「ありがとう、結絆さん」
それは警策が初めて素直に言った感謝の言葉だった。
結絆は満足そうに微笑み、夜空を見上げた。
こうして、警策看取は少しずつ才人工房の仲間達と打ち解けていったのだった。
休日の朝、学園都市のとある水族館の前に、食蜂結絆、食蜂操祈、蜜蟻愛愉、帆風潤子、そして警策看取の五人が集まっていた。
透き通るような青いガラスの建物が、朝日を浴びて輝いている。
「わぁ~!水族館なんて久しぶりねぇ!」
操祈が目を輝かせながら入り口の前でスキップする。
「うんうん、クラゲとかペンギンとか、いっぱい見たいねえ」
結絆が柔らかく微笑む。
「私も楽しみ!」
蜜蟻が興奮気味に手を握りしめる。
「水族館......トレーニングばかりじゃなくて、息抜きも大切ですよね」
帆風が少し照れ臭そうに言う。
「......まあ、せっかく来たんだから、楽しませてもらいますね」
警策も控えめながらも興味を持っている様子だった。
入場券を受け取り、五人は館内へと足を踏み入れた。
エントランスには巨大な水槽があり、色とりどりの魚が泳いでいる。
「わあっ!すごい、まるで海の中みたい!」
蜜蟻が目を輝かせながら水槽に駆け寄る。
「クラゲの展示はどこかしらぁ?」
操祈が館内マップを広げて調べる。
「奥の方みたいだねえ。先にイルカのショーでも見てみようかあ?」
結絆が提案すると、皆は賛成した。
イルカショーの会場では、トレーナーの合図に合わせてイルカ達が華麗なジャンプを決める。
観客席では子供達の歓声が響き渡っていた。
「すごいねえ、イルカの運動能力って、帆風に匹敵するよねえ?」
「さすがにそんなに早くは泳げないです......」
結絆が冗談めかして言うと、帆風は苦笑した。
「水上戦ならいけるんじゃなあい?」
蜜蟻が冗談交じりに言う。
「液体操作の練習に応用できるかもしれない」
警策は静かにイルカ達を見つめながら、小さく呟いた。
ショーが終わった後、五人は館内を回りながら様々な海の生き物を見て回ることにした。
「わぁ~!ペンギン可愛いわねぇ!」
操祈がガラス越しにペンギンを見つめる。
「ペンギンって意外と素早いんだねえ」
結絆はペンギンたちが泳ぐ姿に見入っている。
結絆たちは水族館を満喫しながら、次は深海魚のコーナーへ向かうことになった。
五人は薄暗い深海コーナーに足を踏み入れた。
幻想的な青い光が水槽から漏れ、神秘的な雰囲気を醸し出している。
「深海魚って、ちょっと怖い感じもするけど、綺麗ねえ」
蜜蟻が感嘆の声を上げる。
「おお、不思議な生き物がいっぱいだねえ」
結絆も頷いた。
「アンコウの提灯みたいな発光器官、どういう仕組みなのかな?」
警策が興味深そうに観察する。
「研究員みたいなこと言ってるねえ」
結絆がからかうように微笑む。
「......興味があるだけです」
警策はそっけなく返したが、その頬はわずかに赤かった。
その後、五人は休憩スペースで少し休むことにした。
カフェで軽食を買い、それぞれのテーブルに座る。
「こうしてみんなで遊びに行くのって、楽しいわねえ」
蜜蟻が嬉しそうに言う。
「そうねぇ。普段は能力開発ばっかりだものねぇ」
操祈も満足そうに紅茶を啜る。
「たまにはこういう息抜きも必要ですよね」
帆風が頷く。
「確かに......リラックスするのも大事ですね」
警策も珍しく同意した。
「ふふ、なんだかんだ言って、警策も楽しんでるねえ?」
結絆がにやりと笑う。
「......別に、普通です」
しかし、警策の表情はどこか穏やかで、彼女が本当に楽しんでいることを物語っていた。
その後、最後にクラゲの展示を見に行くことになった。
「わぁ~!これが見たかったのよぉ!」
操祈が歓声を上げる。
青白い光に照らされたクラゲがゆらゆらと漂い、まるで夢の中のような光景だった。
「......なんだか、時間がゆっくり流れてるみたい」蜜蟻がうっとりとした表情で呟く。
「綺麗だけど、意外と毒を持ってる種類も多いんだよねえ」
結絆は、能力の実験でクラゲの毒を解毒したことがあったりする。
「確かに、舐めてかかると痛い目を見ますね」
帆風が真剣に頷いた。
「帆風さん、クラゲと戦うつもりなの!?」
警策は驚きながらそう言った。
こうして、水族館での楽しい時間はあっという間に過ぎていった。
五人は出口へ向かいながら、それぞれに満足そうな表情を浮かべていた。
「また、みんなでどこかに行きましょお」
操祈が明るく提案する。
「いいねえ、今度はどこにしようかなあ?」
結絆が楽しげに応じた。
こうして、彼らの楽しい休日は幕を閉じたのだった。
警策は、超電磁砲とか心理掌握で出てくるたびにいろんな服を着ているのでかわいらしいと思ってます。