食蜂操祈のお兄様   作:とんこつスープ

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結絆と猟虎や入鹿や悠里との出会いです。


弓箭姉妹と悠里千夜

 学園都市の一角にある研究施設「才人工房」に、二人の新たな少女が加わることになった。

 

「弓箭猟虎(ゆみや らっこ)、そして妹の弓箭入鹿(ゆみや いるか)だねえ」

 

食蜂結絆は、目の前に立つ二人の少女に目を向ける。

 

入鹿は結絆よりも一つ年下で、小柄ながらもしっかりとした雰囲気を持つ少女だった。

 

一方、姉の猟虎は長い黒髪を揺らしながら、不安そうな表情で入鹿の背後に隠れるようにしている。

 

「お、お姉ちゃん、挨拶......」

 

「う、うん......」

 

猟虎は震えた声を出しながら、小さく会釈した。

 

才人工房の研究員達や能力者達に囲まれる環境が怖いのか、それともただ単に人見知りなのか。

 

いずれにせよ、彼女は新しい環境に圧倒されているようだった。

 

「そんなに緊張しなくていいんだよお」

 

結絆はにこやかに言いながら、ゆっくりと手を差し出した。

 

しかし、猟虎はぴくっと肩を震わせると、入鹿の背後にさらに身を寄せる。

 

「お姉ちゃん、大丈夫だよ。みんな優しい人だから」

 

入鹿は姉をなだめるように優しく言いながら、結絆の方を見た。

 

「ごめんなさい、お姉ちゃんは昔から知らない人が苦手で......」

 

「大丈夫、気にしなくていいよお」

 

結絆がそう言うと、傍にいた操祈が微笑んだ。

 

「大丈夫よぉ、猟虎さん。すぐに慣れると思うわぁ」

 

「そ、そうかな......?」

 

猟虎はおずおずと顔を上げる。

 

蜜蟻も優しく微笑みながら、猟虎の隣にそっと寄った。

 

「私もねえ、最初はここに来たとき不安だったの。でも、みんなと過ごしてるうちに楽しくなってきたわよお」

 

帆風潤子も力強く頷く。

 

「そうですね。才人工房はただの研究施設じゃない。私達の第二の家みたいなものですから」

 

警策看取は少しぶっきらぼうな様子で腕を組みながら言った。

 

「ここは悪くない環境だよ。研究員はムカつくやつもいるけど......」

 

その言葉に、猟虎は少しだけ口元をほころばせた。

 

「みんな......」

 

そして、ゆっくりと結絆の差し出した手を取り、小さく頷いた。

 

「よろしく......お願いします......」

 

結絆は嬉しそうに微笑んだ。

 

「うんうん、これからよろしくねえ」

 

こうして、才人工房に新たな仲間が加わったのだった。

 

 

 

 才人工房の広い訓練場に、数人の少年達が集まっていた。

 

普段は研究員達に能力開発を促される日々だが、今日は特別に自由時間が与えられていた。

 

そのため、彼らは互いの能力を見せ合う遊びに興じていた。

 

「結絆も遊ぼうぜ!」

 

誘ったのは神野悠真(かみの ゆうま)。

 

彼の能力は『電磁手刀(エレクトロブレード)』

 

手のひらに電磁場を発生させ、高熱の刃を作り出すことができる。

 

高い戦闘能力を持ち、すでにレベル4まで上り詰めている。

 

「ふふ、いいねえ。でも、手加減しないとみんな怪我しちゃうかもよお?」

 

結絆は軽く肩をすくめると、ほかの少年達を見渡した。

 

「手加減できるもんならしてみなよ!」

 

そう言って笑うのは村瀬景斗(むらせ けいと)。

 

彼の能力は『流影疾風(スリップストリーム)』

 

自身の周囲に特殊な風の流れを作り出し、加速しながら移動できる能力である。

 

素早さには自信があり、彼ももうじきレベル4になるという。

 

「じゃあ、僕も混ざろうかあ」

 

西条真一(さいじょう しんいち)が歩み出る。

 

彼の能力は『鋼鉄化(アイアンフィスト)』。

 

自分の腕を鋼のように硬化させ、高い防御力を得られる能力である。

 

実際に戦闘になれば、その拳の一撃は相当な破壊力を持つ。

 

「そっちがその気なら、俺もやるぜ!」

 

最後に名乗りを上げたのは滝川陣(たきがわ じん)。

 

彼の能力は『振動波(レゾナンス)』

 

物体に振動を与え、破壊する能力を持っている。

 

「さあ、みんな準備はいいかい?」

 

結絆はにこやかに言いながら、軽く指を鳴らす。

 

その瞬間、彼の周囲の空気が変わった。

 

自己制御(セルフマスター)を発動し、反射神経を向上させる。

 

「行くぜ!」

 

最初に動いたのは村瀬だった。

 

流影疾風を使い、一瞬で結絆の後方へ回り込む。

 

しかし、結絆はそれを察知し、振り向きざまに指を軽くはじいた。

 

わずかな衝撃波が発生し、村瀬の動きが止まる。

 

「ぐっ......速いな!」

 

「まだまだあ」

 

神野が手のひらに刃を形成し、結絆に斬りかかる。

 

しかし、結絆は自己制御を使って筋力を微調整し、指先でその攻撃を受け流す。

 

「ははっ、さすがだねえ」

 

そこへ、西条が硬化した拳を振り下ろす。

 

しかし、結絆はすでに彼の動きを読んでおり、一歩後ろに下がることで回避した。

 

「おっとお、そんなのじゃ俺には当たらないよお?」

 

滝川が横から拳を振るい、振動波を放つ。

 

しかし、結絆は自己制御で皮膚の密度を瞬間的に調整し、振動波の影響を最小限に抑えた。

 

「すごいな......結絆」

 

神野が驚いた表情を浮かべる。

 

「これがレベル5の実力か......」

 

村瀬が息を切らしながら言うと、結絆は微笑んだ。

 

「みんなも強くなってるねえ。いずれレベル5になる日も近いんじゃないかなあ?」

 

少年達はその言葉を聞き、それぞれ拳を握りしめた。

 

「俺達ももっと強くなる!」

 

こうして、才人工房の能力者達は互いを高め合う一日を過ごしたのだった。

 

 

 

 才人工房の研究施設の一角にある医療棟。

 

その静かな部屋の中で、悠里千夜はいつものように白いシーツの上に横たわっていた。

 

彼女の呼吸器が一定のリズムで小さな音を立てている。

 

肺に抱えた難病のせいで、彼女は外で活発に動き回ることができない。

 

それでも、結絆達が訪れてくれるのを楽しみにしていた。

 

扉が軽くノックされる音がして、結絆が顔をのぞかせる。

 

「やっほう、悠里。調子はどうかなあ?」

 

悠里は微笑みながら、そっと頷いた。

 

「うん、今日はバッチリだよ!結絆さんが来てくれたから、嬉しいよ。」

 

結絆は彼女のベッドのそばに置かれた椅子に腰掛け、持ってきた紅茶の香りを漂わせたカップを手渡した。

 

「今日は特別にねえ、おいしい紅茶を持ってきたんだあ。蜜蟻ちゃんが選んでくれたんだよ。」

 

「わあ、いい香り......ありがとう。」

 

悠里はそっとカップを受け取り、一口含む。

 

香ばしい香りが彼女の緊張を解きほぐすようだった。

 

しばしの静寂の後、彼女はぽつりと呟いた。

 

「ねえ、結絆さん。外の世界ってどんな感じ?」

 

結絆は顎に指を当てて考える。

 

「んー、そうだねえ。風は思ったより強いし、日差しは暖かくて、街の音はごちゃごちゃしてる。でも、それがまた楽しいんだよねえ。」

 

悠里は遠い目をしながら、静かに頷く。

 

「いいなあ......私も、もっと外に出られたらいいのに。」

 

「悠里の病気が治るまで、色んな話を聞かせてあげるからねえ」

 

彼女は結絆の優しい声を聴いて、少し驚いたように目を丸くして頬を染める。

 

「うん......そうだね。結絆さんや操祈ちゃん、蜜蟻ちゃん達の話を聞くのが、私の生きがいみたいなものだから。」

 

結絆は優しく微笑む。

 

「それならさあ、これからもいっぱい話してあげるよ。悠里がここにいても、退屈しないようにねえ。」

 

「本当?」悠里の顔にぱっと笑顔が広がった。

 

「もちろんさあ。」

 

こうして、才人工房の小さな一室での穏やかな時間が流れていく。




オリキャラが出てきましたが、本編に出てくることはないと思います。

次回からは、平和が崩れていく話です。

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