今回もいつも通り結絆が無双します。
木山春生が空間移動で消えた直後、結絆たちはすぐに行動を開始した。
「黒子、木山の行き先を追えるかい?」
結絆が尋ねると、黒子は悔しげに首を振った。
「いえ......!ですが、彼女が使った空間移動は単独の能力者によるものではなく、レベルアッパーを通じて得た力のはずですの。慣れていない分、連続して使用するのは難しいはずですわ!」
「じゃあ、すぐには遠くへは行けないってことね」
美琴が電撃を指先にまとわせながら周囲を見渡す。
「どうしよ...、早く初春を助けないと!」
佐天が焦るのも無理はない。
初春が人質に取られてしまった以上、一刻の猶予もない。
結絆は冷静に考えを巡らせた。
「木山春生の目的がレベルアッパーの使用者に関わるものなら、彼女は昏睡状態の能力者たちが集められている場所へ向かう可能性が高いねえ」
「つまり......病院か、あるいは隠れた研究施設のような場所?」
美琴がすぐに推察する。
「そのどちらかだと思うよお。情報網を使って可能性のある施設をすぐに割り出すとしようかねえ。」
結絆はポケットからスマホを取り出し、仲間へ指示を送る。
「木山春生の現在位置を探ってくれ。使用できる監視カメラのログを解析して、空間移動後の痕跡を洗い出してほしいよお」
「了解しました、とミサカは仕事に取り掛かります。」
通信の向こうで仲間が即座に作業を開始する。
数分もしないうちに、結果が届いた。
「木山春生は隣の学区にある研究施設へ向かった可能性が高いです。旧廃棄研究棟、レベルアッパー使用者の搬送記録が残っています。」
「そこか......!」
結絆達は廃棄された研究施設へと急行した。
建物の奥深くへ進むと、そこには木山春生の姿があった。
「ここまで追ってくるとはね......本当にしつこいな、君達は...」
木山が嘆息するように言う。
「初春さんをどこにやったのよ!」
美琴が詰め寄るが、木山は静かに手を上げた。
「交渉する気はないってことね......なら、力ずくで行かせてもらうわ!」
美琴が雷撃を放とうとした瞬間——
「無駄だよ」
木山が手をかざすと、突如として空間が歪んだ。
「っ!?これは......!」
結絆が咄嗟に身を引くと、次の瞬間、強烈な水流が通路を塞いだ。
「なっ、水流操作......?」
黒子が驚く間もなく、今度は空間を歪めるような力が働き、周囲の壁が念動力で崩れ落ちる。
「多重能力......まさか、やってのける人がいるとはねえ......!」
「少し違うな、私の能力は理論上不可能と言われたあれとは違う。言うなれば多才能力だ。」
結絆は冷静に分析しながらも、戦闘態勢を取る。
木山春生はレベルアッパーを介して多数の能力を操っている。
しかし、それは本来の能力者たちと違い、完全に使いこなせるわけではない。
そこに付け入る隙がある——
「......面白い。なら、俺も面白いものを見せてあげようかねえ!」
結絆は自身の能力を発動させる。
「俺の能力は自分自身の神経構造を改変し、一時的に異なる能力の適性を得ることもできる......」
結絆の身体がわずかに震え、次の瞬間——
「......例えば、こんなこともできるんだよお」
結絆は手のひらに電磁場を発生させ、高熱の刃を作り出して木山に向けて飛ばす。
「なっ......!?」
木山が急いで回避するが、結絆はさらに能力を変化させる。
「次はこんなのとか...」
周囲の物質を硬化させ、鋭い刃を作り出して飛ばす。
「まだまだ、手札は尽きないよお!」
今度は、指先に小さな風を発生させて、目の前の敵を威嚇するように揺らめかせる。
「っ......! まさか......!君は、あの施設の......」
木山が初めて驚愕の表情を浮かべる。
「俺の能力は自分自身の制御。ならば、脳の神経伝達を一時的に変えれば、適性を持たない能力も、一時的には扱える」
「そんなこと......できるわけ......!」
「元々、あなたがやってみせたんだからねえ、俺だけ見せないってのもルール違反だよねえ?」
結絆が冷静に言い放ち、木山へと歩を進める。
「......くっ!」
木山は苛立ったように舌打ちし、空間を歪める。
しかし、次の瞬間——
「っ!? これは......!」
突如、木山の周囲に膨大なAIM拡散力場が発生し、異様な気配が満ちた。
「何が起こってるの......!?」
美琴が驚く中、木山の身体の周囲に人間の胎児のようなものが形作られ、次第に巨大な異形の姿へと変わっていく。
「能力の制御が......まずい、まさか......AIMバーストが......!?」
結絆が警戒を強める。
木山の能力の制御が効かなくなり、無意識のうちに周囲のAIM拡散力場を暴走させ、異形の怪物を顕現させてしまったのだ。
「......私は、ただ......」
木山の表情が苦悶に歪む。
「私はただ、教え子たちを......救いたかっただけなのに......!」
その言葉と共に、AIMバーストが完全に顕現し、結絆たちへと牙を剥いた——。
AIMバーストが完全に顕現すると、周囲の空間が歪み、異形の怪物が吼えるような音を発した。
謎の光のようなエネルギーが辺りを包み込み、その近くには木山春生の影が揺らめいていた。
「これは......想像以上にヤバいわね......!」
美琴が身構えながら、額に汗を浮かべる。
「レベルアッパーの影響で生まれたAIM拡散力場の暴走体......このままじゃ、学園都市中に影響を及ぼしかねないねえ」
結絆は冷静に分析しつつも、目の前の脅威に対処するために能力を最大限に活用する覚悟を決めた。
AIMバーストは巨大な腕を振り上げ、床を砕くほどの一撃を放った。
結絆と美琴は即座に跳躍し、それを回避する。
「手加減はできなさそうね......!」
美琴は空中で電撃を纏い、目の前の怪物に向かって雷撃を放つ。
稲妻が空間を裂き、AIMバーストの体表に直撃する。
しかし、その体には一瞬傷がつくものの、ほぼダメージを受けていないかのように再生し、動きを止めなかった。
「やっぱり......単純な攻撃じゃダメみたいね......」
美琴が歯を食いしばる。
「なら、いろいろ試してみるかあ」
結絆は自らの能力を発動し、脳の神経構造を調整する。
次の瞬間、彼の手から念動力が放たれ、周囲の瓦礫が宙に舞い、AIMバーストへと猛スピードで叩きつけられる。
しかし、それすらも決定打にはならなかった。
「やっぱり再生能力を持っているのが厄介だねえ」
「なら、どうするの?」
美琴が結絆を見やる。
「AIM拡散力場の集合体なら、その場を乱せば制御を崩せるかもねえ」
結絆は再び脳の構造を調整し、今度はAIM拡散力場に干渉する。
そして、更に水流操作を発動させた。
彼の手のひらから渦巻く水流が放たれ、AIMバーストの身体を巻き込んでいく。
怪物の形状が揺らぎ、木山の意識が反応するように苦悶の声を漏らした。
「効いてる......?」
「いや、まだだねえ。でも、可能性はある」
結絆が答えた瞬間、AIMバーストが再び動きを激しくし、広範囲にエネルギー波を放った。その衝撃で結絆と美琴は吹き飛ばされる。
「くそっ......何か手は......!」
その時、木山が苦しみながらもかすれた声で言った。
「......初春......解除プログラムを......託す......」
「えっ......!?」
驚く美琴たちの前で、木山は懐から小型のデバイスを取り出し、それを初春の元へと渡した。
「レベルアッパーの......解除プログラム......?」
「私の......最後の......責任だ......!これを学園都市全体に拡散させれば......AIMバーストを......弱体化できる......!」
初春はデバイスを受け取り、即座に解析を始めた。
「......できます!これをネットワークに流せば、レベルアッパーを使用した人たちのAIM拡散力場が正常化されるはずです!」
「そうかい、なら任せたよお、初春!」
初春は震える指で素早く端末を操作し、学園都市中のネットワークへとプログラムを送信した。その直後——
AIMバーストの身体が揺らぎ始める。
「......これは......!?」
結絆と美琴が警戒する中、AIMバーストから出ているエネルギーが徐々に消えていき、動きも次第に鈍くなっていった。
「効果が出てる......ってことよね」
「今がチャンスだねえ!」
結絆は発火能力を発動し、AIMバーストへ巨大な火炎を叩き込んだ。
するとAIMバーストの中心にコアのように物が見える。
そして、そこに向けて、美琴の超電磁砲が放たれた。
美琴の一撃が決まると、AIMバーストは断末魔のような叫びを上げながら、完全に霧散した。
戦いは、終わった。
木山春生はその場に崩れ落ち、静かに目を閉じた。
「......ありがとう......だが......教え子たちを......どうすれば......」
彼女の呟きが虚空に消えていく中、結絆たちはようやく肩の力を抜いた。
「......やれやれ、なんとか終わったねえ」
「まったく......大変な事件だったわね......」
こうして、レベルアッパー事件は幕を閉じたのだった——。
美琴と結絆がAIMバーストを撃破しました。
書いてはいませんが、黒子は木山や初春を戦いの場から遠ざけたりしていたので、彼女もしっかり自分の役目を果たしています。
結絆が複数の能力を使えるのは、あの施設での能力開発の賜物です。