食蜂操祈のお兄様   作:とんこつスープ

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今回から、大覇星祭編です。



大覇星祭編
開会式


 学園都市最大の祭典——大覇星祭。

 

その開会式の舞台に、三人の姿が並ぶ。

 

中央に立つのは食蜂結絆。彼の右に妹の食蜂操祈、左に御坂美琴。

 

彼らは、今年の選手宣誓の大役を担っていた。

 

開会式にレベル5が3人参加するというだけあって、観客席はすでに大歓声に包まれている。

 

そして、アナウンサーが彼らの名前を呼ぶと、一層の熱気が広がった。

 

結絆が一歩前に出る。

 

彼の持つ堂々とした雰囲気に、会場が自然と静まり返る。

 

「俺たちは、ここに誓う。己の全力を尽くし、フェアプレーを貫き、互いに競い合い、讃え合うことを」

 

結絆の声がマイクを通じて響く。

 

彼の言葉は、ただの形式的なものではなく、どこまでも誠実で力強かった。

 

「私たちは、この学園都市の名に恥じぬよう——」

 

操祈が続く。その声音は柔らかいながらも、確かな意志を宿している。

 

「全力でこの祭典を楽しみます♪」

 

最後に、美琴が一歩前へ。

 

「そして、すべての挑戦者たちにエールを送ります!皆で最高の大覇星祭にしましょう!」

 

三人が声を合わせ、拳を掲げる。

 

「誓います!」

 

観客席から割れんばかりの歓声と拍手が沸き上がる。

 

だが、ここで終わりではない。

 

選手宣誓の後、彼らにはもう一つの大役——オープニングパフォーマンスが待っていた。

 

結絆が手をかざす。

 

すると、重厚な金属球が空中に浮かび上がった。

 

直径一メートルほどの球体が、ゆっくりと美琴の頭上へと移動する。

 

観客たちが息を呑んだ。

 

次の瞬間、美琴の右手が光を帯びる。

 

「行くわよ!」

 

超電磁砲の応用で、美琴は金属球を打ち上げる。

 

通常ならば摩擦熱で金属球が溶けるところを——

 

「御坂さんとの合わせ技、うまくやってみせるわよぉ♪」

 

操祈が能力を発動。彼女の心理掌握(メンタルアウト)の応用により、金属球を取り巻く大気中の水分を制御し、過熱を抑える。

 

眩い閃光と共に、金属球が空へと打ち上がる。

 

青空を切り裂きながら、遥か高みへと昇っていった。

 

観客の視線が一点に集中する。

 

そして、結絆がゆっくりと指を鳴らした。

 

その瞬間——

 

高空で金属球が炸裂し、無数の光の粒が四方八方に散らばる。

 

まるで、夜空に降る流星群のように。

 

無数の輝きが、学園都市の空を彩った。

 

会場は一瞬の静寂を迎え——

 

そして、次の瞬間、割れんばかりの歓声と拍手が爆発する。

 

「すっご......」

 

「きれい......!」

 

「最高の開会式だ!」

 

結絆は、満足そうに笑った。

 

「さあ、大覇星祭の始まりだねえ」

 

こうして、学園都市最大の祭典・大覇星祭は、最高の幕開けを迎えた。

 

 

 

 開会式が終わり、会場は大覇星祭の熱気に包まれていた。

 

生徒たちはすでに各競技へと向かい、観客もそれぞれのイベントを楽しむために動き始めている。

 

その喧騒の中、食蜂結絆はふと校舎の影へと歩いていった。

 

そこには、彼の担任である月詠小萌がいた。

 

小柄な体を精一杯伸ばしながら、持っていた資料を整理している。

 

「あ、小萌先生」

 

結絆が声をかけると、小萌は嬉しそうに顔を上げた。

 

「おお、食蜂ちゃん!選手宣誓、素晴らしかったのです!」

 

「そうかい?まあ、ちゃんとしたセリフを言うのは得意だからねえ」

 

結絆は肩をすくめるが、小萌は真剣な眼差しで彼を見つめる。

 

「本当に立派でしたよ。言葉だけじゃなく、気持ちがこもっていたのが伝わったのです。食蜂ちゃんの宣誓を聞いて、みんながやる気になったと思うのですよ」

 

「......そういうなら、まあ、やった甲斐はあったのかなあ」

 

結絆は照れ隠しのように髪をかき上げる。

 

普段は飄々としている彼も、こうやって真面目に褒められるのには慣れていない。

 

「それに、パフォーマンスもすごかったのです!」

 

「お、そっちも?」

 

「はいなのです! もう、あの金属球が飛んで、キラキラが降ってきた時、先生もちょっと感動しちゃったのです!まるで流れ星みたいでしたよ!」

 

小萌は身振り手振りを交えて興奮気味に語る。

 

結絆はふっと微笑んだ。

 

「まあ、せっかくの開会式だからねえ。ただ盛り上げるだけじゃなくて、みんなの記憶に残るものにしたかったんだよお」

 

「十分すぎるほど残ったと思うのです!」

 

小萌は満面の笑みを浮かべる。

 

そして、少し声のトーンを落として言った。

 

「食蜂ちゃんは、本当に頼もしいのです」

 

その言葉に、結絆は目を瞬かせる。

 

「先生はね、いつも思うのです。食蜂ちゃんは、ただ強いだけじゃなくて、ちゃんと周りのことを考えて行動できる子なのです。だからこそ、みんなに慕われているのですよ」

 

「......そういうふうに見えてるなら、ちょっと安心かなあ」

 

結絆は、どこか嬉しそうだった。

 

「よーし、それじゃあ、先生もお仕事頑張るのです!食蜂ちゃんも、大覇星祭を存分に楽しんでくださいね!」

 

「了解。先生も、無理しないようにねえ」

 

そう言って、結絆は踵を返す。

 

そして、熱気に包まれた校庭へと歩き出した。

 

こうして、大覇星祭の本番が本格的に幕を開けた。

 

 

 

 大覇星祭が始まって少しして、結絆と美琴は、会場の隅にあるナンバーズ受付のテーブルに向かって歩いていた。

 

大覇星祭の総来場者数を当てるイベントに結絆と美琴は参加しており、勝った方が負けた方に何でも一つ好きなことを頼めるという賭けをしていたりする。

 

「ねえ、結絆、これ、ちゃんと書いたの?」

 

美琴が結絆に話しかける。

 

「もちろんだよお」

 

結絆はにっこりと微笑みながら、手に持ったペンを振った。

 

「俺は大体予想してあるけど、美琴はどうかなあ?」

 

「去年よりも結構多めにしたわよ、今年は外部者の呼び込みを増やしてるらしいし」

 

美琴は少し考え込むようにしてから、数字を書いた紙を受付に提出した。

 

「なるほどねえ。俺は、去年よりちょっと多いくらいにしたよお。」

 

結絆はそう言って、自分の予想を書き込んだメモを受付の人に渡した。

 

「7日間の来場者数予想か......なんだかドキドキするわね。結果が出るのはまだ先だけど。」

 

美琴は少し興奮気味に言った。

 

「結果がどうなるか楽しみだねえ、勝ったら美琴に何をお願いしようかなあ」

 

結絆も少しワクワクした様子で返すと、美琴は何を想像したのか顔を赤くする。

 

 

 

 そのまま会場の中を歩いていると、美琴の肩が突然震え、少し顔を赤くして立ち止まった。

 

「おや?」

 

結絆が振り向くと、美琴の目線の先には美琴を少し成長させたような女性の姿があった。

 

「美琴ちゃん、ちょうどよかったわ。」

 

その女性は美琴を見て、笑顔を浮かべた。

 

「あの人は、美琴のお姉さんかい?」

 

「あら、嬉しいわね。でも残念!美琴ちゃんのお母さんでした!」

 

美琴の母である御坂美鈴は、あまりにも若すぎた。

 

結絆が衝撃を受けていると、横で美琴が少しいやそうな顔をしている。

 

「マ、ママ!来るなら先に言ってよ!」

 

「ごめんなさいね、美琴ちゃんのデートを邪魔しちゃって」

 

「デートじゃないってば!」

 

あたふたする美琴とは対照的に、美鈴は楽しそうである。

 

「俺はデートだと思ってたんだけどねえ」

 

結絆がいたずらっぽい笑みを浮かべながら言うと、美琴は顔を赤らめながら結絆の背中をポカポカ叩いた。

 

「二人とも仲良しね、付き合うきっかけはどうだったのかしら?」

 

「これまで美琴と協力していろんな行事を盛り上げてきたからねえ。その過程で自然と仲良くなって付き合う感じになったんだよお」

 

レベルアッパーや人工地震や美琴の命の危機があったことを伝えるわけにはいかないので、結絆はぼかしながら美鈴に伝えた。

 

「まさに青春ね!結絆君は美琴ちゃんとはキスはしたの?」

 

横で美琴が"それ以上は言うな"という視線を向けてくるが、結絆はあえて

 

「美琴から毎日されてるよお」

 

普段はツンデレだが、二人きりの時は美琴は結絆にデレデレなのである。

 

美鈴はそれを聞いて大笑いしているが、美琴が少し涙目になっているので結絆は美琴を抱き寄せて頭をなでる。

 

「若いって素敵ね、結絆君、美琴ちゃんをよろしくね」

 

「もちろん、美琴のことは大切にするよお」

 

 

 

 美鈴が去った後、結絆と美琴は再び手をつないで歩き出した。

 

「ほんと、うちのママ、いきなりあんなこと言うんだから......」

 

美琴は少しだけ恥ずかしそうに言った。

 

「でも、それって、美琴のことが大切だって思ってる証拠だよお。」

 

美琴は結絆の言葉を聞いて、少し落ち着いたように頷いた。

 

「うん、そうよね。でも......あんなこと言われたら、恥ずかしいわよ。てか、あんたも何で毎日キスしてることをばらすのよ!」

 

「美琴の慌てる姿を見たかったからだよお」

 

美琴は頬を膨らませながらも結絆の手を離すことはなかった。

 

そして、二人は手をつないだまま、学園都市の賑わいの中を仲良く歩き続けたのだった。




過去編の最後の方が暗めの話だったので、今回は明るい話にしました。
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