食蜂操祈のお兄様   作:とんこつスープ

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今回も、ほのぼのとした話です。


第二競技と昼食

 昼下がりの学園都市、陽射しはやや傾きつつも、大覇星祭の熱気は冷めることなくグラウンドを包んでいた。

 

観客席からは期待と興奮が入り混じった歓声が響く。

 

次なる種目は障害物競走。

 

並ぶ選手の中に、食蜂結絆の姿もあった。

 

金色の髪を風に揺らしながら、彼はストレッチ代わりに軽く足を鳴らす。

 

「......能力使用も妨害もアリ、かあ。まあ、面白そうではあるねえ」

 

スタートラインには能力者たちが肩を並べていた。

 

物質透過、瞬間加速、磁力操作――いずれも一筋縄ではいかない強者ばかり。

 

観客も「これは波乱がありそうだ」とざわついている。

 

しかし、結絆の表情に焦りや緊張はなかった。

 

ただ穏やかに微笑み、軽く前髪をかき上げると、静かに構えを取る。

 

「位置について――よーい......スタート!」

 

 

 

 号砲とともに、空気が一変する。

 

瞬間加速の選手が数メートル先に出たかと思えば、後方から地面を隆起させて他選手を妨害する能力も飛び交う。

 

だが、結絆はそのすべてを正面から受けず、滑るように横へ跳び、地面の隆起をステップ代わりに利用して前方へと駆けた。

 

第一の障害、「バランス・ポールゾーン」

 

細く長い平均台が複数、ジグザグに並んでいる。

 

他の選手たちは慎重に渡っていくが、結絆は迷いなく飛び乗った。

 

「ほいっ」

 

風を切るような軽快なステップで、結絆はバランスを保ちながらポールの上を渡りきった。

 

第二の障害、「回転ブロック地帯」

 

地面に埋め込まれた巨大なローラーが回転し、乗るとすぐにバランスを崩してしまう構造だ。

 

結絆が飛び乗った瞬間、隣の選手が物質操作でブロックの回転速度を急上昇させてきた。が、それすらも想定内。

 

「そんなのでバランスを崩したりはしないよお」

 

結絆はまるで宙に浮いているかのような足取りで、すべてのローラーを渡りきった。

 

第三の障害、「高低ハードル」

 

まるで遊園地のアトラクションのような、不規則な高さの壁が奥から次々と迫りくる。

 

ここで、空気操作系の能力者が突風を巻き起こし、後方から一気に選手を押し戻そうとした。

 

「ふむ、風かあ」

 

結絆は軽く屈んで風を受け流し、次の瞬間、まるで風の力すら利用するかのように跳躍。

 

人間離れしたバネのような脚力で、高さ3メートルはあろうかという壁をひょいと越えた。

 

第四の障害、「スライムプール」

 

足元を捕らえるような粘液状の物体が水面に張り詰めているゾーン。

 

「ここは足を取られると危ないってやつだねえ」

 

結絆は迷わず、水面ギリギリを走る。

 

スライム状の粘液の腕が彼の足につきそうになるが、結絆はそのたびに華麗な足運びでスライムを振り払っていった。

 

「ちょっと冷たいけど......運動で火照った体にはちょうどいいかもねえ」

 

そして、いよいよ最後の障害。

 

第五の関門は――「空中フローティングゾーン」。

 

浮遊する複数の足場を経由してゴールへと向かう。

 

もちろん、不安定な足場は触れた瞬間に回転したり、崩れたりするものも多い。

 

運営側で足場を浮遊させている能力者たちも選手を落とそうと必死である。

 

他の選手たちは遠距離攻撃や風圧、磁力で妨害し合いながら向かってくるが、結絆はそれをすべて視界の端で捉えながら、静かに息を整えた。

 

「ラストスパート、いくよお」

 

彼は助走なしで一気に跳び上がり、ひとつめの足場へ。

 

着地と同時に、別の能力者が足場を崩そうと力を放ったが......

 

「残念、それじゃ遅いよお」

 

結絆はすでに次の足場へと跳躍していた。

 

まるで空中に浮いているような軽やかさ。

 

ゴールテープが見える頃には、もはや誰も彼の背中を捉えられなかった。

 

そして

 

「ゴォォォォルッ!!」

 

結絆の体がテープを切った瞬間、グラウンドは大歓声に包まれた。

 

実況席のマイクが震えるような声で告げる。

 

「なんとぉ!!純粋な身体能力と技巧だけで全ての障害を突破し、堂々の一着ですッ!これは......これはもはや反則級のフィジカル!!」

 

本人はというと、ゴール後も息一つ乱さず、手をひらひらと振りながら言った。

 

「いやあ、いい運動だったねえ」

 

 

 

 大覇星祭の午前の競技が一通り終わり、学園都市の空は昼下がりの光に包まれていた。

 

あちらこちらから屋台の匂いが漂い、観客席の賑わいは少し落ち着いた雰囲気に変わっていた。

 

結絆は競技後の汗を軽く拭きながら、御坂美琴、白井黒子、帆風潤子の三人と連れ立って賑やかな街中を歩いていた。

 

「昼食、どうするんだい?」

 

「うちのママがファミレスのテラスでチーズフォンデュやってるらしいのよ。相変わらず自由人よね......」

 

美琴は呆れたように言いながらも、その頬はほんの少し緩んでいた。

 

「チーズフォンデュ......おお、いいねえ。俺、けっこう好きなんだよお」

 

「結絆さんたちと一緒に食事ができるのは嬉しいですの!」

 

原作と違って、結標との戦闘後に黒子は結絆の治療を受けているので、彼女は大覇星祭に普通に参加しているのである。

 

 

 

 やがて、ファミレスのテラス席が見えてきた。

 

まるでピクニックのようにパラソルが立ち並び、中央のテーブルには煌々と湯気を立てる小型コンロ。

 

その上に置かれた銀の鍋の中で、濃厚そうなチーズがとろりと溶けていた。

 

そして、その鍋の主である御坂美鈴が、ジュースを片手にくつろいだ様子で微笑んでいた。

 

「やっほー、美琴ちゃんたちー、こっちこっち~♪」

 

「......なにしてんのよ、ママ。ここファミレスよ? チーズフォンデュなんて持ち込んでる人見たことないから!」

 

美琴が眉をひそめる中、美鈴はひらひらと手を振って答えた。

 

「たまたまノリの良い店員さんがいてね。『どうぞご自由に』って言われちゃったのよ♪」

 

「......自由すぎるわよ」

 

結絆はというと、改めて美鈴の姿を見て驚いたように呟いた。

 

「......やっぱり美鈴さんは、美琴のお姉さんじゃないのかい!?」

 

「ち、ちがうからっ!ママだからっ!」

 

美琴の顔がかぁっと赤くなる。

 

黒子はくすくす笑いながら言った。

 

「お姉様、落ち着いてくださいまし。ですが結絆さんがそう思ってしまうのも無理はありませんわね。お母様、本当にお若くていらっしゃる」

 

「ありがとう♪ 若く見てくれるのって嬉しいわ~」

 

そんな中、美鈴はテーブルに串や野菜、パンなどを並べ、華やかにチーズフォンデュの準備を始めた。

 

「ほらほら、遠慮しないで。たくさんあるから。じゃがいもも、ウィンナーもバゲットもあるし、ほら、こっちのトマトとか意外と合うのよ♪」

 

結絆は嬉しそうに串を手に取ると、鍋にとろけるチーズを絡めながら一言。

 

「いやあ、こういうの、楽しいねえ。美鈴さん、やるねえ」

 

「ふふ、気に入ってくれて嬉しいわ」

 

一方その頃、黒子はじっと美鈴のスタイルを見て、ぽつりと呟いた。

 

「将来、お姉様もあんなナイスバディになるのですわね......ぐへへへへ......」

 

「黒子、あんた今なんか変な想像したでしょ!?変な笑い方やめなさいよっ!」

 

そんな騒ぎの中、帆風がふと、チーズをたっぷりつけたウィンナーを結絆に差し出した。

 

「結絆様、あーん♡」

 

「おぉ、それは嬉しいねえ。じゃあ、もらおうかなあ。」

 

結絆が笑顔で口を開け、帆風がチーズフォンデュを食べさせる。

 

あたりの空気が一瞬ふわっと温まるような、甘いやり取りだった。

 

それを見て、美琴が顔を赤らめつつも、どこか負けじと同じようにチーズを絡めたパンを取り出した。

 

「ちょ、ちょっと結絆、私のも食べなさいよ!私だってできるんだから!」

 

「おお、ありがと、美琴。ん、おいしいねえ」

 

結絆がにこにこと笑って応じると、黒子もすかさず参戦した。

 

「わたくしも!お二人だけに良い思いはさせませんわ!結絆さん、食べてくださいまし!」

 

次々とチーズフォンデュを食べさせられ、結絆は少しだけ困ったように笑ったが、どこか嬉しそうでもあった。

 

そんな微笑ましい光景を見て、美鈴はくすくすと笑いながらジュースを一口。

 

「ふふ、本当に賑やかでいいわねえ。」

 

午後の競技が始まるまでは、まだ少し時間がある。

 

結絆たちはテラス席の陽だまりの中で、のんびりと、しかし心から楽しそうにチーズを頬張っていたのだった。




原作では昼食のシーンは大覇星祭二日目でしたが、一日目にもってきています。

事件が起こっていないときは、結絆たちはほのぼのとした日常を過ごしていますね。
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