食蜂操祈のお兄様   作:とんこつスープ

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今回でレベルアッパー編はおしまいです。最後におまけも書いてます。


レベルアッパー事件の終息

 AIMバーストが消滅し、学園都市の夜はようやく静寂を取り戻した。

 

結絆たちは崩れた施設の中で、倒れ込む木山春生を取り囲んでいた。

 

木山は床に座り込み、息を整えながらも、どこか虚ろな目をしていた。

 

美琴が一歩前に出て、問いかける。

 

「......ねえ、あんたの目的について詳しく聞かせてくれない?」

 

木山は静かに目を閉じ、わずかに口元を歪ませた。

 

苦しげな笑みとも取れる表情だった。

 

「......私の目的は......教え子達を救うことだった。」

 

「教え子達......ですか?」

 

初春が驚いたように声を上げる。木山はゆっくりと頷いた。

 

「数年前、私は特殊な教育プログラムに関わっていた。......そこで育成されていたのは、極めて高い能力を持つ子供たちだった。」

 

彼女の言葉に、美琴の表情が強張る。

 

「......その実験って、まさか、やばい感じのやつじゃないわよね......」

 

木山はゆっくりと視線を上げた。

 

その目には、深い悲しみが滲んでいた。

 

「『暴走能力の法則解析用誘爆実験』。それが、私が関わっていた研究の名前だ。」

 

結絆は無言で聞きながら、木山の言葉を脳内で整理していく。彼女は続けた。

 

「彼らは、学園都市の最先端の技術を使い、能力を極限まで引き上げられた......。しかし、その代償として、彼らの脳は限界を超え......ある日、昏睡状態に陥った。」

 

「昏睡......?」

 

初春が呟くと、木山は深く頷いた。

 

「そう。彼らは二度と目を覚ますことはなかった......。それでも私は諦めなかった。彼らを救う方法を探し続けた。」

 

「それが......レベルアッパー?」

 

佐天が小さく声を震わせながら尋ねる。

 

「そうだ。」

 

木山は肩を落とし、床に目を落とした。

 

「レベルアッパーを使えば、使用者の演算能力を利用して並列演算ができる。これを利用すれば、彼らを目覚めさせる方法を探すことができると考えた......。だが、それは単なる机上の空論に過ぎなかった。そして、そのために多くの学生たちを巻き込んでしまった......」

 

「......だったら、なんで最初から話さなかったのよ!」

 

美琴の声が、沈黙を破るように響く。

 

「こんな方法じゃなくても、もっと他のやり方があったかもしれないじゃない!」

 

木山は苦しげに笑った。

 

「......私は、時間がなかったんだ。彼らを救うためには、一刻も早く答えを見つけなければならなかった......過去にツリーダイヤグラムの申請を何回もしたが却下され......私にはこうするしかなかったんだ......」

 

「......なるほど......でも、結果として、もっと多くの人が苦しんだんだよ」

 

結絆の脳裏に一人の少女の顔がよぎる......

 

そして、結絆は静かに重々しく言葉を紡ぐ。

 

「レベルアッパーを使った生徒たちは皆、昏睡状態になった。もし初春が解除プログラムを流さなかったら、もっと大勢が危険な目に遭っていたかもしれないね。」

 

木山は、ただ静かに頷いた。

 

「......私は、罪を償わなければならない。それは分かっている。」

 

その言葉に、美琴も、黒子も、初春も、言葉を失った。

 

結絆は木山の表情をじっと見つめながら、小さく息を吐いた。

 

「......どうする? 彼女をこのまま、警備員に引き渡すのかい?」

 

結絆の問いかけに、美琴は迷いながらも、ゆっくりと頷いた。

 

「......うん。これ以上、犠牲者を出さないためにも。」

 

木山は何も言わず、ただ静かに目を閉じた。

 

こうして、レベルアッパー事件は終息を迎えた。

 

しかし、結絆の胸には、まだやり切れない感情が残っていた——。

 

 

 

 レベルアッパー事件が終息した直後、結絆の情報網が不穏な動きを捉えた。

 

「レベルアッパーのデータを学園都市外に持ち出そうとしている連中がいるらしいわ。」

 

結絆は暗部組織「ドリーム」のリーダーとして、仲間の弓箭入鹿と共に暗闇の中を進んでいた。

 

標的は学園都市の外れにある倉庫群。

 

そこに、レベルアッパーのデータを国外に流出させようとする工作員たちが潜んでいるらしい。

 

「結絆さん、さっさと終わらせましょうね。」

 

弓箭入鹿は静かに言い、指を軽く鳴らす。

 

「波動操作(ウェイブコンダクター)、発動。」

 

彼女が能力が発動すると、音波が空間を震わせ、敵の位置を正確に感知する。

 

結絆はその情報をもとに、高速で動いた。

 

「そこだねえ。」

 

結絆の身体が影のように滑り込み、工作員の背後を取る。

 

一瞬の隙を突き、鋭い打撃が敵の顔面を貫く。

 

「くっ......!」

 

残った工作員たちが銃を構えるが、入鹿が手に持った懐中電灯を光らせ、そこから出た光が工作員達の手を溶かした。

 

「無駄だよお。」

 

結絆は冷静に呟くと、残る敵を一瞬で殲滅した。

 

こうして、レベルアッパーのデータは守られた。

 

だが、結絆はふと考える。

 

「ひとまず、一件落着だねえ。まあ......木山の教え子については後で調べてみようかねえ。」

 

仕事が終わったので後始末を部下に任せて結絆達は倉庫から去った。

 

「入鹿もお仕事お疲れ様、今からかき氷でも食べに行かないかい?」

 

「お供しますよ!結絆さん!」




レベルアッパー編終了です。

次からは魔術の方に戻ります。

弓箭入鹿の能力は、汎用性に優れているのでいい能力だと思いますね。
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