植物園での案内を終え、色とりどりの花々の香りがまだ漂う中、結絆はクラスメイトたちを次の目的地へと誘った。
「さあて、次は動物園エリアだよお。ここはマジックシアターの中でも人気の高い場所だよお。可愛いのも、すごいのも、ちょっと怖いのも全部いるから、覚悟してねえ?」
「えっ、覚悟って......そんなに!?」
吹寄が苦笑する。
「まあまあ、百聞は一見にしかずだねえ」
結絆が微笑むと、厚いガラスの自動扉がゆっくりと開いた。
その瞬間、空気が一変する。
どこか野生の匂いが混じった風が吹き抜け、遠くからは獣の咆哮が響いた。
まるで学園都市とは思えないほど自然豊かな光景、木々の間を流れる人工の川、広大な草原、そして岩山。
「......本物のサファリみたいです!」
小萌先生が目を輝かせる。
「本当にここ、建物の中じゃんよ?」
黄泉川が呆れたように言った。
「最新技術で空間を拡張してるからねえ。かなり広いよお」
まず一行を出迎えたのは、小さな動物たちのゾーンだった。
白いウサギやフェレット、リス、ハリネズミたちが木の上や芝生の上を走り回っている。
「きゃー、可愛い!」
「ほら、見てください先生、こっちのハリネズミ! 丸くなって寝てますよ!」
小萌先生や女生徒たちは大喜びで駆け寄り、慎重に手を伸ばして撫でる。
「ふふ、癒やされるでしょお? この子たちはねえ、ストレスを感じ取ると近づいてきてくれるんだあ。心理センサー付きだから、落ち込んでる子には特に優しいよお」
結絆の説明を聞いて、そんな仕組みまであるのかと男子生徒たちが感心していた。
続いて案内されたのは広大な草原エリア。
そこにいたのは、圧倒的な存在感を放つ巨大な影。体長七メートルを超えるトラたちが、ゆったりと尾を振っている。
結絆の飼っているトラたちは、普通のトラよりもかなり大きいのである。
「うわっ、トラだ!本物!?近い近い近い!!」
「安心していいよお、悪い奴じゃなければ攻撃してこないからねえ」
そのトラの群れの中心にひときわ大きく、黄金色の瞳を輝かせる一頭がいた。
「あれが、レグルスだよお」
結絆の声が少しだけ低くなる。
クラスメイトたちが息を呑む中、レグルスは悠然と立ち上がり、結絆を見つめた。
「差し入れだよお、レグルス」
すると、レグルスは重厚な咆哮を響かせ、その背後に何匹ものメスのトラを従えながら歩み寄ってくる。
クラスメイトたちは思わず後ずさったが、結絆は微笑んだまま、ゆっくりと前に出た。
その手には巨大な肉塊があった。
「今日のご褒美だよお。最近、ほかのトラたちの面倒をよく見てたみたいだからねえ」
結絆が軽く手を振ると、肉塊がふわりと宙に浮き、レグルスの前に落ちた。
「美味そうだな、礼を言う」
レグルスはしばし結絆を見つめ、低く唸るように喋る。
「ふふ、どういたしましてえ」
次の瞬間、レグルスは豪快に牙を立て、肉を真っ二つに引き裂いた。
その迫力に、クラスメイトたちは「うわぁ......!」と一斉に声を上げる。
メスのトラたちも周囲に集まり、堂々たる群れの食事が始まった。
血の匂いと肉の音が響くのに、不思議と恐怖ではなく、雄大さと秩序を感じさせた。
「......なんか、かっこいいわね」
吹寄が呟く。
「レグルスはねえ、動物園エリアの守護者なんだよお。レグルスがいるところでは悪いことはできないよねえ」
結絆の説明に、クラスメイトたちはさらに驚嘆の色を浮かべた。
さらに奥へ進むと、別のエリアで巨大な影がのそりと動いた。
「な、なんだあれ!? ......動いてる!?」
木々を押し分けて現れたのは、体長十メートルを超える、信じられないほど大きなナマケモノだった。
長い手足をゆっくり揺らしながら、葉を食べている。
「......これ、人工生命体じゃないの?」
「ちゃんとした生物だよお。テリーって名前だから覚えて帰ってねえ」
結絆が紹介すると、ナマケモノのまぶたがわずかに開き、手を振ってくる。
「......お、おお?今、手振りました!?」
「ゆったりしてて可愛い......!」
「普段は動くの、遅いけどねえ。緊急時は俊敏になるよお」
その後もクラスメイトたちは、ミーアキャットやカピバラ、リスザル、フクロウなど、さまざまな動物たちと触れ合っていった。
「先生も寝そべりたくなりますね」
小萌先生は寝そべるカピバラの隣にちょこんと腰を下ろし、うっとりと頬を緩めている。
黄泉川先生はリスザルに肩を占拠され、「こら、髪引っ張るなじゃん!」と苦笑していた。
そんな穏やかな光景を見つめながら、結絆は静かに息を吐いた。
「みんな、楽しんでくれてるみたいだねえ......」
「当たり前だよ、こんな動物園、世界中探してもないって!」
「結絆君、すごい......」
クラスメイトたちからの称賛を受けて結絆は照れくさそうにした。
水族館、植物園、動物園と続いたマジックシアター見学も、いよいよ終盤。
一行が、ライトアップされたエントランスに戻ってくると、クラスメイトたちは一様に満足そうな顔をしていた。
そんな中
「なあ、結絆!最後はやっぱりカジノ見たいでぇ!」
元気な声でそう言い出したのは、青髪ピアスだった。
彼は目を輝かせながら身を乗り出す。
「確かににゃー。オレも興味あるぜい」
元春が腕を組みながら頷く。
「......見てみたい。大人の世界」
姫神もぽつりと呟いた。
その一言で、周囲のクラスメイトたちもざわつき始める。
「えっ、カジノって未成年でも入れるの?」
「ちょっとだけなら大丈夫だよお。せっかくだし、マジックシアターの“煌びやかさ”を見せてあげるよお」
彼の一言に、クラスメイトたちは一斉に歓声を上げた。
カジノエリア。
その扉を抜けた瞬間、全員の目が見開かれた。
金色と深紅の照明が交錯し、シャンデリアが煌めく空間。
床には絨毯が敷き詰められ、スーツ姿の客たちが談笑しながらテーブルを回っている。
ルーレット、ブラックジャック、ポーカー、そしてずらりと並ぶスロットマシン。
どれも電子制御と幻想的な装飾が融合した豪奢な造りで、音と光が心を踊らせた。
「うおおお......!マジで映画の世界じゃん!」
「人多っ!夜なのに全然疲れてる感じしないね!」
「すごい、まるで別世界だよ......」
クラスメイトたちは圧倒されながらも、興味津々に視線を走らせていた。
客たちは楽しげに笑いながらも、どこか張り詰めた空気を纏っている。
金の音が鳴るたび、歓声とため息が交互に響く。
「ここはカジノエリア。勝てば夢が叶う、負ければ現実が牙を剥く、そんな場所だよお」
結絆の口調は柔らかいが、その声にはどこか含みがあった。
「へぇー、結絆が経営してるだけあって、かなり洗練されてるのね......」
吹寄が感嘆する。
「うんうん、なんかこの空気だけで高級感すごい......」
「ふふ、ありがと。ここではねえ、“運”と“覚悟”のどっちも試されるんだよお」
そんな中、一人の女子生徒、小柄な黒髪の少女が、興味深そうにルーレット台を覗き込んでいた。
「......これ、テレビで見たことある。ボールが入るところの数字を当たるやつでしょ?」
「そうそう、それだよお。ルーレットは人気ゲームのひとつだねえ」
「やってみたいな......!一回だけでも!」
その純粋な瞳を見て、結絆は柔らかく微笑む。
「いいよお。ただし、特別体験だからねえ」
彼が軽く指を鳴らすと、黒服のディーラーが静かにやってきた。
「お客様、こちらのテーブルをお使いください」
礼儀正しく案内され、女子生徒は少し緊張した面持ちで着席した。
結絆が近くに立ち、優しく声をかける。
「好きな場所にチップを置いてみようかあ。考えて置いてもいいし、勘で置いてもいいよお」
「う、うん......じゃあ......赤の“17”で!」
チップを置くと、ディーラーが手慣れた動作でホイールを回す。
ボールがカラカラと音を立て、円を描いて跳ねた。
カチン。
止まった場所は、赤の“17”。
「えっ......当たった!?」
「おおおおおおっ!!!」
周囲のクラスメイトたちがどよめく。
女子生徒は驚きの表情のまま、口をぱくぱくとさせた。
「おめでとお、すごいじゃない」
結絆が笑いかけると、少女は顔を赤らめて嬉しそうに頷いた。
「も、もう一回やってみてもいい?」
「もちろんいいよお。好きに選んでごらん」
次の回。少女は少し考えてから、「今度は黒の“2”!」と宣言した。
ボールが回る。跳ねる。光が反射し――。
カチン
黒の“2”にボールが落ちる。
「えっ、また!?」
「二連続!? やばっ!」
歓声と拍手が広がる。
少女は信じられないという顔で結絆を見上げた。
「じゃ、じゃあ......もう一回赤の“17“」
結絆はその視線に微笑みながら、静かにディーラーへ目配せする。
ディーラーがわずかに頷き、三度目の回転が始まった。
再び赤の“17”にボールが落ちる。
「三連続!?奇跡だよ!!!」
「な、なんだよこれ、映画じゃん!」
クラスメイトたちが大騒ぎする中、少女は興奮を抑えきれず笑いながらチップを握りしめていた。
「すごい......わたし、才能あるのかも!」
「ふふふ、もしかしたらそうかもねえ」
結絆は軽く笑った。
だがその笑みの奥に、どこか静かな光が宿っていた。
「ただねえ......カジノってのは、勝った瞬間が一番危ないんだよお」
「え?」
少女が首を傾げると、結絆は視線を少しだけ奥へ向けた。
そこには、違う光景があった。
結絆が視線を向けた先。
煌びやかな照明の奥、ひときわ静かな一角で、黒服たちが何やら動いていた。
数人の黒服たちが、ひとりの客を囲んでいる。
その客は顔面蒼白で、ふらつきながら懇願していた。
「ま、待って!次は勝てるわ、もう一度だけチャンスを......!」
「申し訳ありません。与信限度額を超過しております」
「お願い!少しだけでいい、もう少しだけ......!」
声は必死だったが、黒服たちは一切表情を変えず、冷静に女の腕を取った。
「うわ......な、なにあれ......」
「まさか、あの人......」
青髪ピアスが思わず言葉を詰まらせる。
黒服たちは女の肩を抱えるようにして、奥の通路へと静かに連れ去っていった。
周囲の客は誰も気に留めない。
ルーレットの音と笑い声が、まるでそれを“日常”として飲み込んでいく。
結絆は小さく息を吐いた。
「ねえ、さっき言ったでしょ。カジノでは、勝った瞬間が一番危ないって」
その声には、いつもの穏やかさの裏に、鋭い冷たさがあった。
「“勝てる”って思い込んだとき、人はもう冷静じゃなくなる。さっきの人も、最初はきっと勝ちまくったんだろうねえ。でも......“もう一度”が、地獄への片道切符になっちゃう」
ルーレット台の前で固まっていた女子生徒は、はっとしたようにチップを握りしめた。
「わ、わたし......もうやめとく」
「うん、それが正解だよお」
結絆は優しく微笑み、彼女の頭を軽く撫でた。
「さっすがだにゃー。ただのカジノ案内じゃなくて教訓入りだぜい」
元春が苦笑しながら肩をすくめる。
「ふふ、教育の一環だよお。人生勉強、ってやつだねえ」
結絆は友人思いなのである。
「うっひゃー、こえーわこの場所!でも、スリルあるな!」
青髪ピアスが笑ってごまかす。
「......夢のある場所。でも、少し怖い」
姫神がポツリと呟く。
彼女の静かな感想に、吹寄がこくりと頷いた。
「そうね。でも......それでも、結絆が運営してるからか、なんだか秩序を感じるわ」
カジノの照明が黄金色に瞬き、軽快なBGMが再び空間を満たしていく。
結絆の案内で一行はテーブルゲームエリアからスロットマシンの並ぶ通路へと進んだ。
煌めくモニターが数千台、リズムに合わせて光を放ち、電子音の洪水が押し寄せる。
「ここは......圧巻ですね」
小萌先生が目を細める。
「先生も興味あるのかにゃー?」
「せ、先生はやってみたいなんて一言も言ってないのですよ!?」
小萌先生は、元春にからかわれてあたふたしている。
「じゃあ、先生にも特別に......一回だけねえ」
結絆が笑って一枚のメダルを差し出すと、小萌先生は「えへへ......」と嬉しそうに受け取った。
スロットマシンのレバーを引く。
カランカランカラン......ピカッ。
「おっ!? 揃った!」
「先生、すげぇ!一発で当てた!」
「えっ、うそ!?わぁ~!コインがいっぱいです!」
小萌先生は子どものように喜び、周囲も笑顔に包まれた。
結絆はそんな光景を少し離れた場所から眺め、柔らかく目を細めた。
煌びやかな光の中で、クラスメイトたちは笑い合い、夢中で遊び、そして、ちゃんと“節度”を守っている。
(いい雰囲気だねえ。これくらいが一番平和で、楽しいんだよお)
ほどなくして一行はVIPラウンジへと移動した。
カジノフロアを一望できるガラス張りの空間。
ソファが並び、夜景の向こうには学園都市の街灯りが広がっている。
「ここ、すごい眺め......!」
「さっきのフロア、下に見える!」
興奮するクラスメイトたちをよそに、結絆はグラスにジュースを注ぎながら、少しだけ真剣な声で言った。
「カジノってねえ、運を使う場所でもあるけど......“自分を試す場所”でもあるんだよお。勝っても負けても、どう受け止めるかが大事だよねえ」
クラスメイト達は深く頷いた。
結絆は満足げに頷いた。
「わかってもらえたなら、案内した甲斐があったねえ」
そして、ワイングラスを手に取る。
「じゃあ最後に、大覇星祭をよく頑張った皆に乾杯しようかあ」
「「「かんぱーい!!」」」
グラスの音が重なり、夜のマジックシアターに響く。
笑顔と笑い声が、カジノの金色の光に溶けていった。
それは、学園都市のどんなイベントにも負けない最高の打ち上げの夜だった。
煌びやかなカジノの喧騒を背に、結絆たちはゆっくりと通路を歩いていた。
時刻は既に21時を回っているが、マジックシアターの外はまだ人々の笑い声や音楽が遠くで響いている。
通路の先には、大きなガラス張りの展望デッキがあった。
そこからは学園都市の夜景が一望でき、無数の光がまるで星の海のように瞬いていた。
「......すごい、きれい」
姫神が小さく息を漏らす。
その隣で青髪ピアスが腕を広げて叫んだ。
「これがマジックシアターの夜景かいな!カジノもすごいけど、こっちも反則やなぁ!」
彼らの笑顔を見ながら、結絆はゆるやかに微笑んだ。
カジノでは、皆が思い思いに遊び、驚き、歓声を上げ、まるで夢の国のような時間を過ごした。
今、その余韻を抱えたまま、静かに輝く夜景を見上げている。
「なんか......終わっちゃうのが寂しいね」
誰かがそう呟いた。
結絆は空を見上げ、ゆっくりと息を吐く。
「またいつでも来てくれたらいいよお。マジックシアターは皆を歓迎してるからねえ」
彼の穏やかな声に、クラスメイトたちはしばし黙り、やがて柔らかく笑った。
まるでその言葉が、現実と夢の境界線をやさしく溶かしていくようだった。
さて、もう帰る時間だ。
結絆は皆を振り返り、手を軽く上げた。
「それじゃあ......送っていくよお。ちょっと眩しいかもしれないけど、我慢してねえ」
そう言うと、彼の周囲に淡い金色の光が浮かび上がる。
光は波紋のように広がり、クラスメイトたちを包み込んだ。
一瞬の閃光。
次の瞬間、彼らはそれぞれの寮の前に立っていた。
「うわっ、本当に一瞬で!」
「これが空間移動、ってやつか」
「なんか......夢みたいだったね」
そう言って笑う彼らに、結絆は小さく手を振り、優しい声で告げた。
「おやすみ。今日は来てくれてありがとう!」
クラスメイトたちが次々に寮の中へ消えていく。
最後に残ったのは、夜風と、ほんのり温かな満足感だった。
マジックシアターのテラスに戻ると、当麻と元春が待っていた。
「やれやれ、今日も派手だったな。お疲れさん、結絆」
元春がニヤリと笑いながら言う。
当麻は苦笑いしつつ、肩をすくめた。
「カジノとかルーレットとか、あんな世界初めて見たぞ......。つか、あれほんとに全部結絆の管理下なんだよな?」
「まあねえ。結構儲かってるよお」
結絆は軽く笑いながら答えた。
そんな空気を破るように、元春が大きな鞄をテーブルに置いた。
「さて、二次会といこうかにゃー。こいつはとっておきの一本だぜ。スコッチの中でもかなりレア物」
元春が取り出したのは、金色のラベルが輝くウイスキーのボトルだった。
当麻が思わず目を丸くする。
「おいおい、これ絶対高いやつだろ......!」
「ふふっ、そう来たかあ」
結絆は嬉しそうに手を叩くと、奥の棚から高級チョコレートと、透明なグラス、そしてバニラアイスの乗った皿を持ってきた。
「ウイスキーにはねえ、チョコがよく合うんだよお。それと、バニラアイスにウイスキーをかけるのも最高だよねえ」
そう言って結絆は、ゆっくりと琥珀色の液体をアイスに垂らす。
氷のような冷たさと、ウイスキーの香りが溶け合い、甘くも刺激的な香気が立ち上る。
当麻が恐る恐るスプーンを口に運ぶと、目を丸くした。
「......うまっ!?なんだこれ、スイーツなのに大人の味って感じだ!」
「だろお?」
結絆が嬉しそうに微笑むと、元春がチョコをつまみながらグラスを掲げた。
「んじゃ、今夜の成功に、乾杯だにゃー」
三人のグラスが軽く触れ合い、澄んだ音を響かせる。
夜風が窓を通り抜け、遠くで街の明かりがきらめいている。
元春はウイスキーを喉に流し込みながら、ふっと真顔になった。
「結絆はよくやってるにゃー。あれだけの空間をまとめて、客も、仲間も笑顔にして......。正直、尊敬するぜよ」
「ははっ、そんな大げさなもんじゃないよお。ただ、皆が楽しそうにしてくれたなら......それで十分だよお」
結絆はグラスを軽く揺らしながら言った。
琥珀色の液体が、月の光を受けて柔らかく輝く。
当麻は少し顔が赤くなりながらも、二人を見て笑った。
「なんか......いいな。こういう時間、大人になった感じがして」
「これでカミやんも不良の仲間入りだな」
笑いながら元春はさらにウイスキーを注ぎ、結絆も頷いた。
グラスを傾ける音、遠くの風の音、そしてわずかな笑い声。
マジックシアターの夜は、いつになく静かで、心地よい。
やがて時計が深夜三時を告げた。
「そろそろ眠たくなってきたにゃー......結絆、泊ってってもいいか?」
元春が大きく伸びをして言う。
「高くつくよお?」
「うぐっ、一気に酔いが冷めていくぜよ」
「冗談だよお。親友から金をとる気はないからねえ。今日はゆっくり休んでいったらいいよお」
結絆は穏やかな笑みを浮かべ、黒服に部屋を手配させる。
「当麻は......ダウンしてるねえ。操祈の部屋に運ぼうかあ。ふあぁ、今日は白羽に癒してもらおうかなあ」
そう言って結絆は白羽の部屋に向かったのだった。
こうして長い一日は終わった。
七日間の大覇星祭、結絆たちは友情を育み、いくつもの困難を乗り越えられたのだった。
次回からは、結絆たちが海外に行く話になります。