食蜂操祈のお兄様   作:とんこつスープ

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前回の続きです。


恋人たちとの海、その2

 一方、結絆と入鹿と猟虎と蜜蟻は島の裏側にある小さな入り江へ移動していた。

 

小型船を走らせて四人は南国の景色を楽しんでいた。

 

「ふふ、こんないい環境で釣りなんて......たくさん釣れそうですね」

 

弓箭入鹿は頬に手を当て、楽しげに笑う。

 

彼女は水面を覗き込みながら、釣りをする準備をしていた。

 

「獲物の匂いを感じます、近いですね」

 

対照的に弓箭猟虎は腕を組み、海を睨むように真剣な眼差しを向けている。

 

けれど、その声色にはどこか期待が混ざっていた。

 

「猟虎ちゃんったらあ、結絆クンから釣りの誘いを受けて一番喜んでたわよねえ」

 

蜜蟻愛愉が笑いながら茶化すと、猟虎はむっとしながらも否定はしない。

 

「皆で楽しめるのが一番だからねえ、今日は沢山釣るよお」

 

 

 

 やがて少し沖に出ると、風が心地よく頬を撫でる。

 

「よし、この辺で止めようかなあ」

 

船が止まると四人は釣り竿を垂らした。

 

最初に釣り上げたのは蜜蟻だった。

 

「結絆クン!かわいいのが釣れたわよお」

 

竿を軽く引き上げると、手のひらサイズの魚がばしゃばしゃと暴れている。

 

「愛愉ちゃん、凄い」

 

猟虎が評価するように言うと、蜜蟻は嬉しそうにする。

 

「私にも来ましたわ!」

 

今度は入鹿が声をあげる。

 

揺れる竿を楽しそうに扱いながら、魚を海面から引き上げる。

 

「ふふ、可愛いサイズですね。持って帰って素揚げにでもしましょうか」

 

「入鹿は料理上手だからねえ。楽しみにしてるよお」

 

結絆の言葉に入鹿は少し照れて微笑んだ。

 

その次に釣れたのは猟虎だった。

 

「......悪くないですね」

 

猟虎は釣った魚を針から外し、バケツに入れる。

 

その表情にはごく僅か、子供のような誇らしさが滲んでいた。

 

「結絆クンの方はどうかしらあ?」

 

蜜蟻は釣った魚を眺めながら結絆の隣に座る。

 

「結絆さん、結構釣れてますね」

 

結絆の足元のバケツには、多種多様な魚たちが入っていた。

 

「そろそろデカいのが来そうなんだよねえ」

 

結絆は海面を覗き込む。

 

大きな影が泳ぎ回っているのが見える。

 

そして。

 

「......おや?」

 

結絆の竿が、突然ぐっと引き込まれた。

 

まるで海の底から力強い手が引っ張ったような衝撃。

 

舟が揺れ、三人が思わず身構える。

 

「ちょっとお、大物じゃなあい」

 

蜜蟻が叫ぶ。

 

「結絆さん、気をつけてください!」

 

猟虎が立ち上がり、身を乗り出す。

 

「手伝いますね!」

 

入鹿が慌てて支える。

 

結絆は竿を握り直し、柔らかく微笑んだ。

 

「大丈夫だよお。魚の動きは読めてるからねえ」

 

力任せに引くのではなく、相手の動きに合わせて調整しながら、時間をかけて引き寄せる。

 

海面が泡立ち、巨大な影が浮かび上がる。

 

やがて、結絆が一気に引き上げた。

 

どんっ。

 

舟の上に伸びる魚影は、船が揺れるほどのサイズだった。

 

普通の魚とは思えないほど立派な体格。

 

鱗が太陽を反射し、黄金色に輝いている。

 

「大きすぎるわよお......」

 

「おっきいです」

 

「ふふ、お見事ですね!」

 

蜜蟻、猟虎、入鹿が言葉を失う中、結絆は汗を拭いながら笑った。

 

「よかった。後でさばいて皆で食べようねえ」

 

舟の上で風が吹き抜け、皆の笑い声が重なった。

 

海の匂い、陽光、潮騒。

 

まるで時間が緩やかに溶けていくようだった。

 

「さあ、結構釣れたし、そろそろ戻ろうかあ。この後の食事は豪華にできそうだねえ」

 

結絆の言葉に、三人はそれぞれ喜びと期待の表情で頷いた。

 

小舟は静かに砂浜へ戻っていく。

 

空はまだ青く、海にはきらきらと光が揺れていた。

 

こんな日がずっと続けばいい、そんな風に思えるほど、穏やかで暖かい時間だった。

 

 

 

 南国の島の奥へ向かう道は、濃い緑と湿った風とで満たされていた。

 

海側と違って、森の中は静かで落ち着いている。

 

結絆と一緒に進むのは、ミサカ00000号、悠里千夜、そして警策看取の三人。

 

「こうやって歩いていると、まるで探検隊みたいですね、とミサカはわくわくしながら周囲を観察します」

 

ミサカは目を輝かせ、木々の隙間から差し込む光を見上げた。

 

「見て見て結絆さん、すっごくおいしそうな木の実があるよ」

 

悠里が柔らかい声で指を差す。

 

果実は赤く熟し、甘い香りを漂わせていた。

 

「動物の足跡が新しい......何か出るかも」

 

警策は地面にしゃがみ込み、指先で跡をなぞる。

 

「大丈夫だよお。争う気なんてないって伝われば、向こうも安心してくれるからねえ」

 

「結絆は動物に好かれますよね、とミサカは以前あったことを思い出します。」

 

ミサカはため息をつく。

 

結絆とミサカが遊園地のふれあいゾーンに行ったときに、結絆の周りにたくさんの動物が寄ってきたことがあったのである。

 

そして、森の奥からぱたぱたと羽音が聞こえた。

 

カラフルな羽を持つ南国の鳥たちが木々から飛び立ち、まるで誘われるように結絆へと寄ってくる。

 

肩、腕、頭上。

 

次々と鳥が止まり、好奇心たっぷりに鳴き声を上げる。

 

さらに、草むらから顔を出したのは小動物たち。

 

丸まった小ウサギ、尻尾のふわふわした子鹿、見たことのない小さな猿までが、結絆の足元に集まった。

 

「......嘘でしょ?」

 

警策が一瞬だけ固まる。

 

「わ、わあ......結絆さん人気者だね」

 

悠里が目を丸くした。

 

「......結絆はなんでそんなに人気者なんですか!?動物界のスターなんですか!?、とミサカは半分呆れながら結絆を褒めます。」

 

「スターっていうのは大げさだよお。ちょっと仲良くなりたいって思っただけだよお」

 

結絆がそっと手を差し出すと、鳥がくちばしでつつき、小動物が頬を寄せてくる。

 

その様子は、まるで童話の主人公のようだった。

 

「結絆さんが好かれるのは嬉しいけど、なんか嫉妬しちゃうかも」

 

警策は苦笑いしながら結絆を眺める。

 

鳥たちはぴいぴいと鳴き、何かを伝えるように飛び去っては戻ってくる。

 

そしてやがて、口に木の実や果実をくわえて落としていった。

 

「鳥さんたち優しいんだね」

 

「え、えぇ......」

 

「結絆は人気者ですね、とミサカは改めてあなたの存在の大きさを再認識します」

 

みんなから一斉に言われ、結絆は頬をかきながら微笑む。

 

「人気者って言われると照れるけどお......悪い気はしないねえ」

 

しばらく果実を収集し、森の奥で野菜やハーブを見つけた。

 

小動物たちは危険な場所を避けるように先導し、鳥たちは上空から道を示してくれる。

 

結絆たちはまるで島そのものに歓迎されているかのようだった。

 

帰り際、結絆は集まってくれた動物たちに手を振る。

 

「ありがとうねえ。また遊びに来るよお」

 

鳥たちは羽音を重ね、動物たちは短い鳴き声で返事をして森の奥へ帰っていく。

 

風が吹き、葉が揺れ、柔らかい余韻だけが残った。

 

「結絆さん、流石に動物たちに好かれすぎ」

 

警策が静かに告げる。

 

「......結絆は本当にとんでもない人です」

 

ミサカは呆れたように、でもどこか誇らしげに言った。

 

「みんなに好かれるって、すごいよね。」

 

悠里は微笑みながら荷物を抱えた。

 

そんな三人の声を聞きながら、結絆はただ穏やかに笑った。

 

「俺はねえ......こうやって、皆と仲良く過ごせる時間が一番好きなんだよお」

 

その言葉が、風に乗って島へ溶けていった。

 

 

 

 何組かのグループに分かれて海を楽しんでいるため、海岸沿いでは静けさが戻っていた。

 

波は穏やかに砂を撫で、潮の香りが柔らかく漂っている。

 

結絆は浜辺に腰を下ろし、水平線を眺めていた。

 

その隣では、美管が拾った貝殻を並べながら、何やら楽しそうに鼻歌を歌っている。

 

「ねえねえ、お兄ちゃん」

 

美管は急に顔を上げ、きらきらした瞳で結絆を見た。

 

「美管ね、みんなでキャンプがしたいの!夜はお星さまを見て、一緒に寝て、朝は海の音で起きたい!」

 

「キャンプかあ......」

 

結絆は少し考える素振りを見せたあと、ふっと優しく笑った。

 

「それならせっかくだし、本格的にしようかあ。どうせなら、皆が泊まれるちゃんとした小屋を作りたいねえ」

 

その言葉に反応したのは、近くで準備をしていたフレンダと絹旗だった。

 

「ちょ、ちょっと待って結絆!なんか面白そうじゃない!?」

 

「10人以上泊まれるなら、拠点としても超便利です。ちゃんと作るなら、超やりがいありますね」

 

二人は驚きつつも、楽しそうだ。

 

「わあ......本当に作ってくれるの?」

 

美管は嬉しそうに結絆の袖を引っ張る。

 

「ありがとうお兄ちゃん、フレンダさん、最愛さん!美管、いっぱいお手伝いするね!」

 

「じゃあ決まりだねえ。役割分担しようかあ」

 

結絆が立ち上がると、自然と全員の視線が集まった。

 

  

 

 まずは素材集めだ。

 

フレンダと絹旗は森側へ向かい、丈夫そうな木材、蔓や葉を探しに行く。

 

「こういうのは宝探し感覚でやると楽しいんだよね!」

 

「フレンダ、危ないのには触らないでください。超トゲがあります」

 

「はいはい、わかってるって~、ってぎゃぁ!?」

 

フレンダが拾った流木の下から小さなイカが現れて、フレンダに墨を吐いた。

 

「ぶふっ、超わかってないじゃないですか」

 

墨まみれになったフレンダを見て、絹旗は笑いをこらえるのに必死だった。

 

 

 

 一方、結絆と美管は浜辺で基礎作りを始めていた。

 

砂を踏み固め、潮位を考えた位置に杭を打つ。

 

「お兄ちゃん、ここ持つ?」

 

「ありがとう美管。じゃあ、まっすぐお願いねえ」

 

美管は小さな体で一生懸命杭を支え、結絆の指示に合わせて動く。

 

その表情は真剣そのものだった。

 

「みんなが泊まれるなら、柱は多めがいいよね!」

 

「柱は大事だねえ」

 

しばらくして、フレンダと絹旗が大量の素材を抱えて戻ってきた。

 

「見て見て!使えそうなのいっぱい見つけたよ!」

 

「流木、葉、蔓、全部超良質です」

 

「助かるよお。じゃあ、壁から組んでいこうかあ」

 

結絆は集めた木材を組み合わせ、迷いなく構造を作っていく。

 

その動きは慣れていて、まるで最初から完成図が見えているかのようだった。

 

「......結絆、あんた本当に何者なの?」

 

フレンダが思わず呟く。

 

「超手際いいです」

 

絹旗も素直に感心していた。

 

「これ、普通に10人どころかもっと泊まれそうですね」

 

屋根は大きく、内側は広々とした作りにした。

 

風を適度に通しつつ、雨を防ぐ角度も計算されている。

 

最後に床板を敷き終えた頃、空は夕焼けに染まっていた。

 

「完成だよお」

 

結絆の一言に、全員が小屋を見上げる。

 

「すごい......!」

 

美管は目を輝かせ、小屋の中を駆け回った。

 

「これなら、みんなで寝られるね!お兄ちゃんたちとキャンプできる!」

 

「......なんか感動したかも」

 

フレンダは達成感に浸りながら、口元を緩める。

 

「超いい拠点ですね!夜はここで見張りもできますし、朝は海が超すぐです」

 

絹旗は頷いた。

 

小屋の前で潮風を受けながら、結絆は仲間たちを見渡した。

 

「皆で楽しめるなら、それが一番だよお。さあ、夜はここでキャンプだねえ」

 

波の音と笑い声が重なり、新しい思い出が、また一つ島に刻まれていった。




結絆のハーレムメンバーの中だとどうしても帆風と美琴の出番が多くなりがちなので、番外編ではいろんなキャラを登場させています。
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