食蜂操祈のお兄様   作:とんこつスープ

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今回も帆風に関する話です。


監視者の正体と捕縛

 帆風の周囲を覆っていた不可解な視線の正体を突き止めた結絆たちは、その人物を捕まえるべく、慎重に行動を開始した。

 

監視者の能力は電撃使いに干渉し、あたかも周囲から見られているような感覚を植え付けるというものだった。

 

その影響を受けていた帆風の証言や、結絆の情報網を駆使して調査を進めた結果、ついに監視者の潜伏場所が判明した。

 

 

 

 夜の学園都市。とあるビルの屋上に監視者は潜んでいた。

 

「そこまでだよお。」

 

結絆の声が静寂を破る。

 

その瞬間、屋上の陰に身を潜めていた人物が、反射的に逃げ出そうとした。

 

「くっ......!」

 

だが、その逃走は許されなかった。

 

帆風が瞬時に能力を発動し、目にも止まらぬ速さで監視者の進路を塞ぐ。

 

「あなたが、私を監視していたのですね。」

 

冷静な口調で帆風が言う。

 

相手は戸惑いの色を浮かべながらも、電気を纏い反撃の構えを取った。

 

「邪魔をするな......!」

 

監視者が電撃を放つ。しかし、その電流が結絆の前で弾かれる。

 

操祈が精神干渉で相手の動きを鈍らせていたのだ。

 

「ふふ、君の能力、確かに厄介だけどお......私達を相手にするには力不足だったねえ。」

 

結絆が静かに言い放つと同時に、帆風が一瞬で距離を詰め、監視者の腕を捻り上げる。監視者は抵抗する間もなく地面に押さえつけられた。

 

「これで終わりですね。」

 

帆風がそう告げると、監視者は苦々しげに顔を歪めながらも、観念したように動きを止めた。

 

「さあ、話を聞かせてもらおうか......君の目的は何なのかねえ?」

 

結絆は捕らえた監視者を見下ろしながら、真意を問いただす。

 

監視者の正体とその目的。すべての真相が、今明かされようとしていた。

 

 

 

 結絆達は捕らえた監視者を、人気のない倉庫へと連れてきた。

 

薄暗い空間に微かな埃の匂いが漂い、外の街灯の明かりが窓から差し込んでいる。

 

監視者は学園都市の一般的な学生服を着た青年だった。

 

細身の体躯にメガネをかけ、どこか冷静な雰囲気をまとっていた。

 

しかし、結絆達の視線を浴びながらも動じる様子はない。

 

「さて、そろそろ話してもらおうかねえ?」

 

結絆が腕を組みながら問いかけると、監視者は微かに口角を上げた。

 

「......まさか、こんなに早く捕まるとは思わなかったよ。」

 

「さっきの戦い方を見れば、お前が、ただのストーカーってわけじゃないことは分かるよお。」

 

帆風が鋭い目で監視者を見つめる。

 

操祈も腕を組んで、念のために彼の精神に干渉できるように備えていた。

 

「いいでしょう、話しましょう。」

 

監視者は静かに息を整えると、淡々と語り始めた。

 

「僕の名前は『蓮見 冴』(はすみ さえ)。学園都市において、特定の能力者を監視・分析することを専門とする部門に所属している者です。」

 

「学園都市の監視部門......?」

 

帆風が疑問を口にする。

 

「それじゃあ、お前は何のために帆風を監視してたんだい?」

 

結絆が問い詰めると、蓮見は静かに答えた。

 

「帆風潤子——君の能力である天衣装着(ランペイジドレス)は、学園都市でも異例の存在だ。高い身体強化能力、そしてパワードスーツを遥かに凌駕するその出力......その力がどこまでの影響を及ぼすのか、僕達は知る必要があった。」

 

帆風が驚いた表情を浮かべる。

 

「つまり、私の力を調査していた......ということですか?」

 

「その通りです。そして、僕の能力『感電共鳴(エレクトロ・リゾナンス)』は、電撃使いの微弱な神経信号に干渉し、監視されていると錯覚させることができる。君が『誰かに見られている』と感じたのは、僕の能力のせいだったんだよ。」

 

結絆は納得のいかない顔をしながら、ため息をついた。

 

「ふうん......つまり、学園都市の上層部の指示で帆風を監視してたってことかねえ?」

 

結絆は、蓮見に確認を取る。

 

蓮見は微かに笑みを浮かべながら、ゆっくりと首を振った。

 

「いや......僕が動いていたのは、学園都市の正式な指示ではない。僕たちは......『裏』の存在だ。」

 

その言葉に、空気が一気に張り詰める。

 

「......裏?」

 

操祈が静かに呟く。

 

「学園都市の暗部組織の一つってことかい?」

 

結絆が警戒した様子で尋ねると、蓮見は冷静に頷いた。

 

「それは少し違うよ。僕達は、学園都市の上層部ですら把握していない組織に属している。」

 

結絆の表情が一層険しくなる。

 

「で、そいつらの目的は?」

 

蓮見は一瞬だけ沈黙し、そしてゆっくりと口を開いた。

 

「それは......『天衣装着』の完全再現だ。」

 

帆風が驚愕した表情を浮かべる。

 

「なっ......!?」

 

「君の能力は極めて特殊だ。肉体を強化し、異常なまでの攻撃力と再生力を持つ。もしこの力を完全に解析できれば、新たな兵士、そして軍隊を生み出すことが可能になる。」

 

「そんな......!」

 

操祈が不快そうに顔をしかめる。

 

「能力を人間兵器に転用するなんて、最低の発想ねぇ。」

 

「......僕は、ただ命令に従っただけさ。」

 

蓮見は淡々と答える。

 

「だが、こうして捕まった以上、僕の役目は終わった。」

 

結絆はしばらく考え込み、やがてゆっくりと口を開いた。

 

「......お前の組織について、詳しく聞かせてもらうよお。」

 

蓮見は薄く笑う。

 

「それは構わないが、果たして君達にどこまで戦えるかな?」

 

その言葉が、次なる戦いの幕開けを予感させるものとなった——。




結絆の過去編で書く予定のネタなのですが、帆風の能力使用時の反動である頭痛は、結絆と操祈のおかげで完全になくなっているので、帆風は実質レベル5のようなものです。

それと、元々、天衣装着自体には肉体強化というものはありませんが、帆風の頑張りで肉体強化もできるようになったという感じで書いています。
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