結絆にとっては大したことではないので、一話で完結します。
スキルアウトの襲撃
学舎の園の外でのこと、
煌びやかな街並みとは一線を画した静かな通り。
食蜂操祈の派閥に属する数人の少女達は、軽い買い物を終えて帰路についていた。
「久しぶりに学舎の園の外に出たけど、外での買い物も悪くないよね~」
「ええ、学舎の園の中ばかりだと退屈するもの」
そんな何気ない会話を交わしながら歩いていた彼女たちだったが——。
突如、路地裏から男が飛び出してきて、彼女の荷物を奪う。
「ちょっと!返しなさいよ!」
少女達は男が逃げていった路地裏に入る。
彼女達がしばらく男を追いかけていると、男の仲間と思われる人物達と遭遇した。
「お嬢様方、ちょっと遊んでいかねぇか?」
荒くれた雰囲気の男達——スキルアウト。
学園都市の無能力者(レベル0)を中心に構成された不良集団である。
だが、今回はただの絡みではなかった。
「っ......あなたたち、何のつもり?」
少女の一人が警戒を強める。
しかし、次の瞬間——。
「へへっ、さっそく使わせてもらうぜ」
スキルアウトの一人がリモコンのようなものを操作すると、周囲の空気が一変した。
「なっ......力が......出ない?」
派閥メンバーの少女達が頭を押さえて崩れこむ。
まるで能力が封じられたような感覚。
「くくっ、その様子だと効いてるみたいだな。こいつは能力者の脳波に干渉し、能力発動を妨害する特製のジャマーだ。学園都市のクソ能力者どもにどれほど苦しめられてきたか......これでやっと復讐ができるってわけだ!」
スキルアウトの男が嗤う。
「そんなっ......」
常盤台の学生は、全員がレベル3以上なので、外部の人々からは恐れられているが、能力が使えない状態では、ただの少女に過ぎない。
スキルアウトの男たちがじりじりと迫る。
だが——。
「......おいおい、俺の仲間に手を出すとは、いい度胸してるねえ?」
突如、周囲に響き渡る悠然とした声。
「な、なんだ!?」
「っ......結絆様......!」
派閥メンバーの中から安堵の声が上がる。
食蜂結絆
学園都市が誇るレベル5の一人である食蜂操祈の兄であり、聖人としての力も持つ男。
「おい、こいつってまさか、自分の仲間に手を出したやつを皆殺しにしているヤバイやつじゃねえか?」
スキルアウトの男たちは一瞬たじろぐが、すぐに強気な態度を取り戻す。
「はっ、たった一人で何ができるってんだ?こっちには、最強のジャマーがあるからなあ!」
「はぁ、やれやれ。まあ、たしかに普通ならそう思うかもねえ。でも残念だったねえ......俺は、普通じゃないんだよお」
結絆はゆっくりとスキルアウトたちを見渡し、微笑む。
「ジャマーがどうとか言ってたけど、そんなもの......」
次の瞬間——。
「無意味だねえ」
結絆の身体から圧倒的な力が放たれる。
スキルアウトの男たちはその威圧感に思わず後ずさる。
「ば、馬鹿な!? こいつ、能力が封じられているはず——」
「確かに普通の能力者相手ならそれなりに効果はあるかもねえ。でも、俺の能力は......そんなしょうもないものじゃないんだよお。特定の周波数の音波を無効化することぐらい簡単にできるんだよねえ。」
結絆が一歩踏み出したと思った次の瞬間——。
「ぐあああっ!!」
男たちが吹き飛ばされる。
目にも止まらぬ速度の蹴りが炸裂し、一瞬で数人が倒れ伏した。
「......おっと、まだ残ってたねえ?」
結絆が、怪しく微笑む。
残ったスキルアウト達は、恐怖に震えながら後退するが結絆は容赦しなかった。
「う、うわあああっ!!」
悲鳴を上げながら逃げ出すスキルアウトたち。
流石に、表の世界に住む少女達に死体を見せるわけにはいかないので、スキルアウト達は手足の骨を軽く折る程度で済ませる。
「ふう、これで一件落着、かなあ?」
結絆は軽く伸びをすると、派閥メンバーの少女たちに振り返る。
「大丈夫だったかい?」
「結絆様......! ありがとうございます!」
「まったく、君達も気をつけなきゃねえ。何かあったらすぐに俺か操祈に連絡するんだよお?」
「はい......!」
安心したように微笑む派閥メンバーたち。
結絆はふと、先ほどのジャマー装置に目を向けた。
ジャマー装置は、先ほど結絆がスキルアウトの一人をぶん投げた時に壊れてしまっている。
(能力者の脳波を妨害する装置、ねえ......ただのスキルアウトにしては、随分と高度な技術を持っていたみたいだねえ......)
結絆は装置を軽く調べていると、側面に『kihara』の文字を見つけた。
木原一族——それは、学園都市の闇の奥深くに存在する悪魔のような存在。
結絆も木原一族とは因縁があったりする。
結絆は、不審な点を感じつつも、この件については後日改めて調査することにした。
こうして、スキルアウトによる襲撃事件は結絆の活躍によって無事解決したのだった。
スキルアウトによる襲撃事件を解決して操祈の派閥のメンバーの少女達を学舎の園に送り届けた後に、結絆はすぐに裏の情報網を駆使して調査を開始した。
すると、派閥のメンバーを狙ったスキルアウトの背後には、かつて名を馳せた不良集団「ビッグスパイダー」の名が浮かび上がった。
「ビッグスパイダー、ねえ......あれは既に崩壊したはずなのにねえ......また厄介な連中が動いてるわけだ。そういえば、黒子の所属している風紀委員の支部にビッグスパイダーの元メンバーがいた気がするねえ。」
結絆は学園都市の裏社会に広がるネットワークを駆使し、彼らの拠点を突き止めた。
そして、裏の権力を使って警備員(アンチスキル)に直接働きかけ、迅速な対応を要請した。
「お兄様ぁ、さっきはうちの子達を助けてくれてありがとぉ♪」
結絆が、ビッグスパイダーの連中にケジメをつけさせようと動いていると操祈が話しかけてきた。
「あの子達は、大切な仲間だからねえ。守ってあげるのは当然だよお。」
すると操祈は微笑む。
「お兄様が次にやることは大体想像できちゃうけどぉ、少しは私にも頼ってほしいんだゾ☆」
「じゃあ、ビッグスパイダーに兵器を流してた木原の連中について、あいつらと一緒に調べておいてほしいねえ。」
「げっ......木原ねぇ......まあ、調べておくわぁ」
操祈は少し嫌そうな顔をしたが、すぐに調査に取り掛かった。
何はともあれ、ビッグスパイダーも、そこに兵器を流していた木原も、この兄妹にケンカを売った時点で詰みなのである。
夜、学園都市の外れにある廃工場。
警備員の部隊が慎重に配置され、建物の周囲を包囲していた。
結絆も現場に姿を見せ、指揮を執る。
「目標はスキルアウトの主要メンバー、特にビッグスパイダーの残党だ。できるだけ被害を抑えつつ、確実に制圧するよお。」
「了解しました。」
警備員の隊長は短く頷いた。
突入の合図とともに、警備員が一斉に建物内へと雪崩れ込んだ。
スキルアウトのメンバーたちは不意を突かれたものの、即座に応戦を開始した。
しかし、彼らの使う即席の武器や装備では、訓練された警備員の部隊には到底敵わなかった。
「チッ、こんな時に......!」
リーダー格の男が拳銃を抜いたが、結絆が指を弾くと、押しのけられた空気が彼の手を弾き飛ばした。
「悪いけどお、好き勝手暴れられるほど、学園都市は甘くないよお?」
男が怯んだ隙に、警備員が彼を拘束した。
結局、作戦開始から30分も経たないうちに、スキルアウトの大半が制圧された。
「これで一段落、かなあ。」
結絆は捕らえられたスキルアウトたちを眺めながら呟いた。
「お前は......何もんなんだ......!」
リーダー格の男が悔しそうに歯を食いしばる。
「俺は、ただの学生だよお。ただし、うちの子達に手を出しておいて笑って許せるほど......俺は甘くないんだよねえ。」
その言葉に、男は何も言い返せなかった。
こうして、ビッグスパイダーの残党は警備員によって一網打尽にされ、学園都市の平和は守られたのだった。
ビッグスパイダー編終了です()
かなりあっさり終わりましたが、一応、話のつながり的には書いておきたかった話なので書きました。
次回は、盛夏祭の話ですが、盛夏祭がいつ行われているのかわからないので、時系列は気にしないでもらえると助かります。