まずは、結絆と帆風が花火大会を見に行く話です。
花火大会
夜の帳が降りる頃、学園都市の河川敷では華やかな屋台が立ち並び、浴衣姿の学生や家族連れで賑わっていた。
どこからともなく聞こえる風鈴の音と、祭囃子の軽快なリズムが心を浮き立たせる。
「結絆さん、こちらです」
帆風潤子は、青と白の朝顔模様が入った浴衣姿で、結絆の手を引いた。
彼女の顔は普段と違い、どこか恥ずかしげな色を帯びている。
そして、いつもの制服姿の時とは違い、柔らかな雰囲気を纏っていた。
「いやあ、すごい人だねえ」
結絆もまた、浴衣姿だった。
派手すぎず落ち着いた紺地に金の桜が散る模様が施されており、帆風と並ぶと実に絵になる。
屋台の数は多く、どこからまわるか悩ましいものである。
「まずは、りんご飴が食べたいねえ。」
「いいですね!買いに行きましょう!」
二人はまず、りんご飴を買って食べることにした。
屋台で売られていたりんご飴はかなり大きく、食べるのに時間がかかるが、しばらく食べ歩きする分にはちょうどいい。
二人がりんご飴を食べ終わった後、結絆が帆風の方を見ると、口元にりんごが少しついていたので、ウェットティッシュで拭いてあげる。
すると、帆風は恥ずかしそうに頬を染める。
次は、結絆達は金魚すくいに挑戦した。
「結絆さん、金魚が沢山泳いでいますよ。かわいいですね。」
「そうだねえ、たくさん持って帰ってうちの施設にも飾りたいねえ。」
ちなみに、ドリームの拠点であるマジックシアターには、水族館が併設されている。
結絆は、そこに金魚を展示するつもりらしい。
「そうですね、たくさんすくっていきましょう。あっ......」
帆風は金魚すくいに慣れていないようで、すぐにポイを破いてしまう。
一方で......
「おっ、兄ちゃん、なかなかの腕前をしてるな!」
金魚すくいの屋台のおっちゃんが、結絆に話しかける。
結絆は、完璧なフォームで次々と金魚を捕獲していた。
「祭りの度に、操祈からよく頼まれていたからねえ。金魚すくいには慣れているよお。」
結局、結絆は沢山の金魚を持って帰ることとなった。
その後、結絆と帆風は、輪投げの屋台に足を運んだ。
遠くの的に引っ掛けることができると高得点になるようだ。
早速、二人は金を払って輪投げを始めるが、結絆は帆風がある一点を見つめていることに気付く。
「おや、帆風は、あのゲコ太のぬいぐるみが欲しいんだねえ。」
「はい......レアなグッズなので、必ず持って帰ります!」
そして、結絆達は、抜群のコントロールで、見事ゲコ太のぬいぐるみをゲットすることができたのだった。
そうやって、結絆と帆風は、二人の時間を楽しんでいた。
その間、帆風はたびたび結絆を見つめていたが、なかなか言葉にできないことがあるようだった。
「結絆さんは、こういうお祭りはお好きなのですか?」
「うん、賑やかなのは好きだねえ。それに、こうやって帆風と一緒に歩くのも、楽しいねえ」
「......!そ、それは光栄です......!」
帆風は少し俯きながら、嬉しそうに微笑んだ。
そんな彼女の様子に、結絆も小さく笑う。
やがて、夜空に大きな一発目の花火が打ち上げられた。
ドンッ
破裂音と共に、空いっぱいに大輪の花が咲き、光の余韻が観客の歓声を誘った。
帆風は目を輝かせながら花火を見上げる。
「きれい......ですね!」
「そうだねえ」
結絆は、帆風の横顔をちらりと見た。彼女の瞳には、花火の光が映り込んでいた。
「......結絆さん」
帆風は意を決したように、結絆の袖をそっと引いた。
「どうしたんだい?」
「その......今日、こうして一緒に来られて、すごく嬉しいです。結絆さんと過ごせる時間が、私にとって何よりも大切で......」
恥ずかしそうに言葉を紡ぐ帆風に、結絆は優しく微笑んだ。
「俺も楽しいよお、帆風とこうして過ごせてねえ」
次の瞬間、さらに大きな花火が打ち上がり、夜空を鮮やかに染め上げた。
その光の下、二人は並んで立ち尽くし、しばし時を忘れていた。
夜空には色とりどりの花火が打ち上がり、学園都市の夜を鮮やかに照らしている。
結絆と帆風は並んで座り、目の前に広がる光景を楽しんでいた。
「すごいですね、結絆さん。こんなに間近で見る花火は初めてです」
帆風は目を輝かせながら夜空を見上げていた。
その横顔を見つめながら、結絆は微笑む。
「帆風が楽しそうでよかったよお」
花火の音が鳴り響く中、二人は静かにその光景を楽しんだ。
やがて、ひときわ大きな花火が夜空に咲き、観客の歓声が沸き起こる。
帆風はその美しさに感動しながら、ふと結絆の方を見た。
「結絆さん、今日は本当にありがとうございました」
「突然どうしたんだい?」
「その......こうして花火大会に一緒に来てくれて」
帆風は少し頬を染めながら視線を逸らした。
結絆はクスリと笑い、夜風に吹かれながら言った。
「別に気にすることはないよお。帆風と一緒なら、どんな時間でも楽しいからねえ」
帆風の顔がさらに赤くなった。
しかし、帆風は、それを隠すように花火を見上げる。
「......綺麗ですね」
「そうだねえ」
二人は並んで花火を見上げながら、穏やかな時間を過ごした。
どこからか屋台の甘い匂いが漂い、人々の賑やかな声が聞こえてくる。
やがて、最後の大玉が打ち上がる。
夜空いっぱいに広がる黄金色の光が、二人の横顔を優しく照らした。
帆風はそっと結絆の袖を握る。
「......結絆さん」
「ん?」
「また、来年も一緒に来れますか?」
結絆は少し驚いたように彼女を見つめ、それから微笑んだ。
「もちろんだよお」
帆風は嬉しそうに微笑み、再び夜空を見上げた。
花火はすべて打ちあがったが、二人の心には温かい余韻が残っていた。
花火大会の余韻が残る夏の夜、会場付近は帰路につく人々で混雑していた。
色とりどりの浴衣姿が行き交い、楽しげな話し声があふれている。
そんな平和なひと時を一瞬で切り裂くように、大地が揺れた。
「......っ!?」
突如として足元が激しく揺れ、屋台の看板が倒れ、悲鳴が響き渡る。
人々は恐慌状態に陥り、我先にと逃げようとするが、その混乱の中で転倒する者も続出していた。
「帆風、大丈夫かい?」
とっさに帆風の腕を引き寄せながら、結絆は周囲を見渡した。
遠くで建物のガラスが砕け散り、倒壊しかけた屋台の下敷きになりそうな人影が見える。
「大丈夫です、でも......!」
帆風もまた素早く状況を把握し、すでに動き出していた。
倒れそうになった街灯の下にいる子供をすばやく抱え上げ、安全な場所へと運ぶ。
「危ないッ!」
その時、近くのビルの外壁が崩れ落ち、群衆に向かって瓦礫が降り注ごうとしていた。
しかし、その瓦礫は突如として宙に浮かび、その場で静止する。
「......助かった......のか?」
群衆達が驚いたように周囲を見回すと、そこには青年が立っていた。
ドリームのメンバーの一人である彼は、手を突き出し、念動能力で瓦礫を浮かせている。
「間一髪でしたね。皆さん、大丈夫ですか?」
「おお、君も花火大会に来てたんだねえ、ちょうどいい、ちょっと手を貸してくれるかい?」
結絆がそう言うと、青年はうなずきながら念動能力で、道を塞ぐ倒壊物を次々とどかしていった。
その間にも帆風は負傷者を救出し、安全な場所へと運び続けていた。
「皆さん、落ち着いて行動してください! こちらのルートは安全です!」
帆風が的確に指示を出し、人々を避難誘導する。
その間に結絆は、ドリームのメンバーと協力しながら、建物の下敷きになった人々を助け出していく。
「......よし、これで最後だねえ」
瓦礫の下敷きになっていた男性を引っ張り出し、安全な場所へ運んだところで、ようやく救助活動は終わった。
あたりは避難を終えた人々の安堵の声と、どっと押し寄せる疲労の気配に包まれる。
「結絆さん、状況把握お見事です......」
青年が額の汗を拭いながらそう言うと、結絆は軽く肩をすくめた。
「君も大活躍だったよお。まあ、こういう時は助け合いが大事だからねえ」
「しかし、まさかここでこんな地震が起きるとは......」
帆風が周囲を見回しながら呟いた。
彼女の視線の先には、瓦礫と化した建物と、恐怖に震える人々の姿があった。
「最近は地震が多いからねえ......何か、嫌な予感がするよお。」
結絆は空を見上げながら、そう小さく呟いた。
花火大会は楽しいですよね、屋台ではつい食べ過ぎてしまいます。
乱雑解放編は、後何話か続きます。