銀行強盗事件から一夜明けた翌日。
食蜂結絆(しょくほう ゆはん)は、第七学区の公園にいた。
目の前に立つのは、学園都市の誇るレベル5の一人『超電磁砲(レールガン)』、御坂美琴。
「ほお、まさか本当に来るとはねえ」
「言ったでしょ? あんたの戦い方、気になったんだから」
昨日の事件(銀行強盗事件)の後、美琴は結絆にこう言った。
「ねえ、ちょっと手合わせしない?」
美琴は明らかに戦闘慣れしているし、昨日の動きも洗練されていた。
結絆としても、レベル5同士の手合わせは貴重な機会であるので、誘いを受けたのである。
「ルールはどうするのかなあ?」
「お互いに重傷を負わせない範囲でやるってことでいい?」
「了解。俺も手加減するけど、遠慮はしないよお」
「ふふっ、その余裕、いつまで持つかしらね?」
美琴がニヤリと笑うと、次の瞬間
バチバチバチッ!!
放電が迸り、空気が震える。
さて、どう迎え撃つか。
「喰らいなさい!」
美琴が右手を振り下ろし、電撃を放つ。
が、結絆はその軌道を完全に見切っていた。
結絆は紙一重で横に跳び、回避。
「へぇ、避けられるのね」
「君の肩の動きが、発射の合図になってたからねえ」
「チッ、じゃあこれはどう?」
今度は無数の電撃が結絆を取り囲むように撃ち込まれた。
囲まれたら、普通は避けられない。
だが、結絆の『自己制御(セルフマスター)』は、筋力、神経伝達速度、視覚処理を最適化できる。
結絆は視覚処理速度を限界まで引き上げ、電撃の密度が最も薄い部分を瞬時に解析。
そして——最小限の動きでその隙間をすり抜ける。
スッ——!
「なっ......!?」
美琴が驚愕する。
「まさか、電撃の間を正確に抜けるなんて......!」
「君の攻撃は直線的すぎる。電撃は光速でも、君の発射動作は一瞬の隙があるからねえ。その一瞬を見極めれば、避けるのは難しくないよお」
「ふぅん......なら、これならどう?」
美琴がスカートのポケットから1枚のコインを取り出す。
『超電磁砲(レールガン)』、彼女の能力名にもなっている強力な技である。
コインが回転しながら結絆に向かって発射される。
音速の3倍、つまり秒速1020メートルを超える超高速射撃。
普通なら回避は不可能である。だが......
「ふん......」
結絆は集中力を限界まで高める。
そして、レールガンの軌道を読む。
超電磁砲が迫る——その瞬間。
結絆はわずかに体を傾けた。
シュンッ......!
コインが結絆の頬をかすめ、後方の地面をえぐる。
「なっ......!?」
美琴が言葉を失う。
「うそ......避けた......?」
「ふう......ギリギリだったかなあ」
結絆は頬を軽く撫でる。
かすかに火傷したような熱を感じたが、すぐに皮膚の再生が始まり元に戻る。
「美琴。君のレールガンは確かにすごいけど、予備動作が大きいねえ。右手を振る動きが少しでも見えたら、それが発射の合図になる」
「くっ......!」
美琴は悔しそうに歯を食いしばるが、やがて小さく笑った。
「......負けたわ」
「へぇ、意外と素直に認めるんだねえ」
「悔しいけど、これは認めるしかないでしょ。でも、次は負けないわよ?」
「その時はまた相手してあげるよお」
そう言って結絆は微笑んだ。
こうして、結絆と美琴の模擬戦は幕を閉じたのだった。
戦いの後、二人は公園のベンチに腰を下ろしていた。
「ねえ、結絆」
「どうしたんだい?」
「......最近、妙な事件が増えてるのよ」
「妙な事件?」
「ええ。普通のレベル2やレベル3が、急にレベル4並みの力を出して暴れるケースが相次いでるの」
「......能力の急激な成長、かい?」
「そう。でも、その成長が不自然すぎるのよね。今までは普通の能力者だったのに、ある日突然、制御できないほどの力を手に入れる。そして、暴走する。まるで......」
「まるで、何かの影響を受けているようだ......ってことかい?」
「そういうこと」
美琴の表情は険しい。
「今、初春さんたちが調べてるけど、どうにも胡散臭いのよね。結絆も、もし何かわかったことがあったら教えてくれない?」
「......わかったよお」
能力者が急激に成長し、暴走する。
それが何を意味するのかはまだわからない。
だが、何か良くないものの予感がする。
そう結絆は感じながら、拠点に戻るのであった。
これから結絆はレベルアッパー事件に首を突っ込んでいく感じになります。
結絆の能力は脳をいじってホルモンバランスなどを調整して、物理的に筋肉を増やしたり細胞を活性化させるという仕組みになっています。
つまり幻想殺しの効果を受けません。