今回含めて数回で、乱雑解放編を書き切ろうと思います。
翌朝、結絆は学園都市の青空を眺めながら、喫茶店のテラス席でくつろいでいた。
昨日の花火大会の余韻がまだ残る中、当麻や操祈とも軽く連絡を取り合い、無事を確認し合った。
しかし、昨晩の地震――いや、ただの地震ではなかった現象――が気にかかっていた。
そんな思案にふける結絆の前に現れたのは、御坂美琴だった。
「ねえ、結絆」
「おや、美琴か、どうしたんだい?」
彼女はいつもの常盤台の制服姿で、真剣な表情をしていた。
「昨晩の地震、ただの自然現象じゃなかったって知ってる?」
結絆は美琴の言葉を受けて、軽く頷いた。
「まあ、詳しいことはわからないけどねえ。ただ、やけに妙な揺れだったとは思ったからねえ......やはり、何かしらの能力が関係してる、ってことかい?」
「そうよ......結絆、あれは自然の地震じゃない。実は、これは『乱雑開放(ポルターガイスト)』って呼ばれてるの。能力者の能力が暴走して起こる現象みたいね」
美琴の説明によれば、乱雑開放は無意識のうちに能力が暴走し、大規模な異常現象を引き起こすものだった。
しかも、その原因は特定の能力者個人だけでなく、複数の能力者が関与している可能性があるという。
「......ほお、じゃあ昨晩の地震も、その乱雑開放によるもの、ってわけだねえ」
「そうよ。しかも、今回の乱雑開放は今までにない規模だったのよ。それで、アンタなら何か情報を持ってるんじゃないかと思って」
美琴は結絆の情報網の力を期待しているようだった。
結絆は微笑を浮かべながら、軽く肩をすくめる。
「わかったよお。ちょっと俺も調べてみるよお」
「お願い。私も引き続き調べるから、何かわかったら連絡ちょうだい」
その後、結絆は早速、暗部の情報網を駆使して動き始めた。
ドリームのメンバーを通じて、昨晩の地震が発生した地域の監視カメラ映像や、能力者に関連するデータを集める。
数時間後、結絆は興味深い情報をいくつか手に入れた。
その中でも、結絆の目を引いたのはある名前。
「......木原、ねえ」
学園都市の闇に関わる者なら誰もが知る、『木原一族』。
彼らは学園都市の科学技術の最前線を担う一方で、危険な人体実験や非倫理的な研究を繰り返すことで知られていた。
科学サイドの中心である学園都市に発生する異質な研究者たちの集団。
それが『木原』の名を冠する者たちだ。
「なるほど、......この前の事件も含めて、やっぱり厄介な連中が絡んでるってわけかねえ」
結絆は苦笑しながら、スマートフォンを操作し、操祈や帆風に連絡を入れる。
「どうやら、ただの能力暴走事件ってわけじゃなさそうだねえ。木原の連中が関与してるとなると、放っておくわけにはいかないねえ」
やつらが事件に関与しているとなれば、これはただの事件ではない。
結絆はすぐに動くことを決めた。
「帆風、操祈。ちょっと話があるんだけどねえ」
結絆はまず、信頼できる仲間たちと情報を共有することにした。
結絆は手元の端末に集めたデータをスクロールしながら、改めて昨晩の地震――乱雑開放の発生源となった能力暴走の記録を確認していた。
「......これは、前にも似たようなケースがあったねえ」
思考を巡らせながら、美琴にメッセージを送り、すぐに彼女と落ち合うことになった。
指定した場所に向かうと、美琴は腕を組みながら待っていた。
「で、その感じだと何かつかめたみたいね?」
「単刀直入に言うよお。木山春生の『暴走能力の法則解析用誘爆実験』って覚えているかい?」
美琴の表情がわずかに曇る。
かつて木山が教え子を巻き込んでしまった実験のことを思い出したからだ。
「......もちろん。あれが今回の事件と関係あるって言いたいの?」
「そうだよお。その実験で暴走能力者の能力が誘爆し、同じように局所的な地震や衝撃波が発生したことがあるからねえ。今回の乱雑開放と一致してると思ってねえ」
美琴は考え込むように目を伏せたが、すぐに顔を上げた。
「じゃあ、木山はこの件に関係してるってこと?」
「いや、それは少し違うねえ。木山春生はもう実験を止めたし、今回の乱雑開放は彼女の研究とは無関係だよお。だけど、誰かが彼女の研究を悪用してる可能性はあるねえ。昏睡状態の子供達を利用しているとかねえ。」
美琴は拳を握りしめた。
「......また、そんなことをする奴がいるのね」
結絆はゆっくりと頷き、もう一つの情報を伝えることにした。
「それとねえ、最近の調査である名前が浮かび上がったよお。『木原』だねえ」
「木原......?」
美琴は驚いた表情を見せた。
木原と名のつく人物が関わるとなると、碌でもない事態であることは明白だった。
その後、結絆はさらに情報を求め、裏の情報網を駆使して調査を進めた。
そして、とうとう『テレスティーナ=木原=ライフライン』という名に辿り着いた。
テレスティーナは、結絆が個人的に行方を追っている木原幻生の孫である。
彼女は、レベル6を誕生させるための実験をしていた。
対象となった能力者は春上衿衣であり、美琴の友人でもあるらしい。
かつて、木山の実験で昏睡状態になってしまった能力者達の脳内で分泌されるとある物質を使うことで能力体結晶を完成させ、それを春上に投与することでレベル6にするという実験であった。
しかし、過去に樹形図の設計者から、実験の成功確率は0であるとの計算結果が出ているのだが......テレスティーナは諦めが悪いらしい。
余談だが、この二次小説内で樹形図の設計者は無事である。
「こいつが事件の背後にいるってこと?」
「まあ、まだ断定はできないけどねえ......とはいえ、奴はこの件に関与してる可能性が極めて高いねえ」
そうして結絆は、テレスティーナの居場所を突き止め、直接会うことにした。
テレスティーナは豪華なラウンジのソファに座り、余裕たっぷりに笑っていた。
「へえ?学園都市の暗部を牛耳る少年が、わざわざ私に会いに来るとはね」
「話があるよお、テレスティーナ=木原=ライフライン」
彼女はワイングラスを傾けながら、興味深げに結絆を見た。
「話?私に何の用かしら?」
結絆は端末を取り出し、あるデータを彼女の目の前に表示した。
「ビッグスパイダーへの兵器供給の記録だよお。ここにある通り、君はスキルアウトに最新兵器を横流ししていたねえ」
テレスティーナの表情が一瞬険しくなったが、すぐにまた笑みを浮かべた。
「そんな証拠を持ってるのね?でも、それが私の仕業だって証明できるのかしら?」
「証拠は十分あるよお。それに......君の悪行を裏付ける証人も、とある施設に何人もいるからねえ」
結絆は冷静な口調で告げた。
その場には警備員たちがすでに待機しており、テレスティーナの逮捕の準備が整っていた。
「さて、ここからどうするかは君次第だよお?」
テレスティーナはわずかに目を細め、笑みを深めた。
「ふふ......面白くなってきたわね」
こうして、結絆はテレスティーナの暗躍を暴き、事件の核心へとさらに迫っていくのだった。
結絆とテレスティーナが接触しました。
次回は、テレスティーナとの戦いです。