テレスティーナを捕まえた後、結絆は冥土帰しの病院の一室にいた。
室内には無機質なベッドが整然と並び、そこには『暴走能力の法則解析用誘爆実験』によって昏睡状態に陥った子供達が横たわっていた。
木山春生の教え子であり、その後は学園都市の闇に利用された実験の犠牲者達。
「......さて、やれるだけのことはやるけど、どこまで効果があるかは保証できないねえ。脳の構造の専門家の意地でも見せるとしようか。」
結絆は軽い口調ながらも、その目は真剣だった。
「君の腕を疑ってるわけじゃないんだけどね。あの子は呼ばなくてよかったのかい?まあ、君の能力と、うちの最新医療技術を併用すれば、意識の回復は十分可能だとは思うけどね。ただし、無理は禁物だよ。」
カエル顔の医者、冥土帰しは相変わらず落ち着いた様子でそう言った。
彼が用意したのは、神経修復促進薬と、特殊な脳波安定装置。
だが、それだけでは脳に深く刻み込まれたトラウマや、異常な能力暴走によるダメージを癒やすには足りなかった。
更に、ただ起こすだけでは、ポルターガイストがおきる可能性もある。
それ故、慎重な作業が求められる。
「こっちの手も借りるとしようかあ」
結絆はそう言うと、自身の情報網を通じて闇医者達に連絡を取った。
学園都市の裏で生きる者達の中には、表では決して扱われないような治療技術を持つ者もいる。
彼らや冥土帰しの技術と医学知識、そして結絆の能力の一端である脳への直接干渉を利用した意識の再構築を合わせれば、子供達を目覚めさせることができるかもしれない。
数時間後、準備は整った。
「じゃあ、始めるよお」
結絆はゆっくりと子供達の額に指を当て、能力を発動させた。
結絆が今行っているのは精神干渉の一種だが、単なる洗脳とは異なる。
脳の神経回路に直接働きかけ、異常な部位や損傷した箇所を修復していく。
まるで絡まった糸をほどいていくような作業だった。
「ん......」
結絆達が作業を続けていると、一人の少女が微かに眉を動かした。
それに続くように、他の子供達もわずかに指を動かし始める。
「意識の回復兆候を確認。心拍、脳波ともに安定しています」
冥土帰しの助手が報告する。結絆はさらに慎重に干渉を続け、慎重に彼らの意識を引き上げた。
「......おにいちゃん?」
最初に目を開けた少女が、か細い声で呟いた。
その瞳には、まだぼんやりとした眠気が残っているが、確かに意識が戻っている。
「よく頑張ったねえ、おかえり」
結絆は、優しく微笑みながら少女の頭を優しく撫でた。
次々と目覚めていく子供達。喜びの声が病室に広がる。
「ふむ、完璧だねえ。さすがは学園都市最高の医者ってところかあ」
「君の能力や技術があってこそだね」
冥土帰しは穏やかに微笑んだ。
こうして、長らく昏睡状態にあった子供達は救われた。
しかし、これが終わりではない。
彼らが平穏な日常を取り戻すには、まだ長い道のりがある。
結絆は病室を見渡し、改めて決意を固めた。
「......まだ片付けるべき問題は山積みだねえ」
学園都市の医療施設の一室。
無機質な白い壁と、整然と並べられたベッドの上に、かつて『暴走能力の法則解析用誘爆実験』に巻き込まれ昏睡状態となっていた子供達が穏やかな表情で眠っていた。
昏睡状態からは脱したものの、結絆はカエル顔の医者とともに、子供達の様子を慎重に確認していた。
昨日意識を取り戻したばかりなので、彼らの状態を常に把握するようにしている。
「......来たみたいだねえ。」
結絆は静かに呟く。
そして、そっと手をかざすと、子供達に優しい刺激を与えるように能力を使った。
――その瞬間。
「......ん......」
かすかな声が室内に響く。最初に目を開いたのは、一人の少女だった。
彼女はぼんやりとした目で天井を見上げ、次いでゆっくりと結絆達に視線を向けた。
「......先生?」
その声が、部屋全体に静かな波紋を広げるように、他の子供達も次々と目を覚ましていった。
「......今のところは、体調は良好ですね......」
医療スタッフ達が慌ただしく動き出し、カエル顔の医者も彼らの状態を確認し始める。
結絆は安堵の息をつきながら、彼らの目覚めを優しく見守っていた。
そして、子供達の間のいる病室に、一人の女性が駆け込んでくる。
「......みんな!」
木山春生だった。
「......先生......っ!」
子供達は目を潤ませながら木山に向かって駆け寄る。木山も彼らを強く抱きしめ、そのまま涙をこぼした。
「......ごめん、ごめんなさい......っ! 私が......もっと早く......っ!」
「違うよ、先生!」
「先生のせいじゃない!」
子供達は口々にそう叫び、木山を安心させるようにぎゅっと抱きついた。
結絆はその光景を静かに見守りながら、そっとその場を離れた。
「......いい再会になったねえ。」
彼の呟きに、カエル顔の医者も静かに頷く。
「君のおかげでもあるからね。感謝するよ。」
「......当然のことをしただけだよお。」
結絆はそう言いながら、子供達の笑顔を最後に一目見て、静かにその場を後にした。
これで、乱雑解放編は終了です。
アニメ版とは違った展開ですが、子供達は無事助かりました。
次回は、番外編を書く予定です。