食蜂操祈のお兄様   作:とんこつスープ

34 / 221
今回は、アニメでカットされたあいつが出てきます。


偽物

 結絆と当麻は、先ほど倒した塾講師を名乗る魔術師から抜いた情報を頼りに三沢塾の上階へと足を踏み入れた。

 

しかし、次の瞬間、廊下を歩いていた生徒達が虚ろな目をしながら何かを唱え始めた。

 

「能力者が魔術?完全に自殺行為だけど、操られている感じかねえ」

 

結絆のような例外を除いて、能力者は魔術を使うと肉体に深刻なダメージを負うのである。

 

案の定、生徒達の体から血が噴き出る。

 

そして、大小様々な魔術が結絆達を襲う。

 

「当麻、出番だよお」

 

結絆は、当麻を前に行かせて囮にする。

 

「うおおぉ!いきなり囮にするなよ、びっくりした......」

 

当麻は文句を言いつつも、すべての魔術を無力化した。

 

「ナイスだよお当麻、......っ!これはどういうことなんだい?」

 

目の前にいる血まみれの生徒達の傷が、一瞬にして塞がる。

 

そして、まるで何も無かったかのように生徒達は談笑を始める。

 

「おい......どうなってるんだよ」

 

当麻が呟く。

 

「相手は時間に干渉する魔術でも使っているのかねえ、とりあえず、先に進むよお。」

 

結絆達は先へ進んでいく。

 

 

 

 結絆達がさらに奥に進んでいくと、前の方から、冷たい金属音が響いた。

 

薄暗い廊下の奥に立っていたのは、高そうなスーツに身を包んだ緑髪の男。

 

彼は薄く笑みを浮かべながら、手にしたナイフ大の黄金の鏃をゆっくりと動かす。

 

「やはり来たか。学園都市のイレギュラーたちよ」

 

 男――『アウレオルス=イザードを名乗る人物』は、その目を細め、結絆と当麻を観察するように見つめた。

 

「お前がアウレオルス=イザードなのか......」

 

当麻が警戒しながら言うと、男は小さく笑った。

 

「如何にも。だが、それを知ったところで貴様らがここで終わるという事実に変わりはない」

 

その言葉と同時に、男は鏃を結絆に向けて投げた。

 

結絆は嫌な予感がしたので、その場から飛びのく。

 

目標を失った刃は遠くにいた生徒に当たった。

 

そして、その刃が触れた瞬間に異変が起きた。

 

「......っ!?」

 

生徒の体が一瞬で輝きを増し、黄金へと変質していく。

 

結絆はすぐに様子を確認しに行くが、生徒だったものは、完全に黄金の塊となっていた。

 

当麻は状況を理解できずに呆然としている。

 

「なるほど......触れたものを黄金に変える魔術ってわけか、こいつはやっかいだねえ」

 

結絆は素早く推測し、周囲の状況を確認する。

 

相手の武器に触れてしまえば一巻の終わりである。

 

近づくには、リスクが高すぎる。

 

「なんだよそれ......こんなのどうやって戦えってんだよ!」

 

当麻が拳を握りしめる。

 

幻想殺し(イマジンブレイカー)ならば魔術そのものは打ち消せるが、拳を当てるまでの間に、右手以外の部分に攻撃されてしまえばおしまいである。

 

しかし、ここで結絆は違和感を覚えた。

 

「だけど、妙だねえ。人間なら誰しも微弱な電磁波とか熱とかを発してるはずなのに、お前からはそれらを感じられないねえ。」

 

「どういうことだ......」

 

アウレオルスを名乗る男は結絆に問いかける。

 

「お前は、アウレオルス=イザードを名乗っているけどお......実際のところ、アウレオルスに作られた人形のような存在なんじゃないかい?」

 

男の表情が歪む。

 

そして、彼は、鏃を結絆に向けて何度も高速で投げた。

 

そのうちの何発かが結絆に直撃する。

 

「結絆!」

 

当麻が叫ぶ。

 

「流石に、聖人の移動速度は目で追えないよねえ」

 

アウレオルスを名乗る男が攻撃した場所は、結絆の残像の場所である。

 

結絆は、既に男の背後に回っていた。

 

「隙だらけだねえ、当麻、右手を構えておいてくれよお」

 

結絆はニヤリと笑い、男を軽く蹴り飛ばす。

 

しかし、男も蹴られながらも、とっさに天井にある壁画を黄金に変えて、結絆に向けて落とす。

 

それに対して、結絆は落ちてきた黄金の塊を片手で受け止めた後に、それを男に向かって投げつけた。

 

「馬鹿な......純金だぞ......」

 

結絆に蹴られて体勢を崩した男は、黄金の塊に潰されて、一時的に身動きが取れなくなる。

 

「当麻、今だよお!」

 

結絆がそう告げるよりも先に、当麻の拳が突き出された。

 

「オラァァァァッ!!」

 

幻想殺しが炸裂し、男の体の一部がはじけ飛ぶ。

 

男は、苦しそうにうめきながらも、なお、立ち上がろうとしていた。

 

しかし――

 

「もう終わりだねえ。最後に、本体の位置を教えてほしいんだけどねえ」

 

結絆は、黄金の塊を担ぎながら話す。

 

男は結絆に対して怯えを抱いた。

 

「笑止、我が負けることなど......」

 

しかし、その言葉の途中、男の体が徐々に崩れ始める。

 

いや、それはまるで何者かによって“解体”されるかのような光景だった。

 

結絆と当麻はすぐに察した。

 

「まいったねえ......本体が動いたかあ......」

 

完全に崩壊し、ただの黄金の塊と化した男を前に、二人は息を整える。

 

「ってことは、本物のアウレオルス=イザードがこの上にいるってことか......」

 

当麻の言葉に、結絆は小さく頷いた。

 

「そういうことだねえ......さあ、本物に会いに行くよお」

 

二人は警戒を強めながら、さらに上階へと進んでいった。




今回は、ほぼアウレオルス=ダミーとの戦闘だけなので短めになりました。

黄金に変える魔術は羨ましいですね。

そして、純金の塊を軽々と持ち上げる結絆は、やはり化け物ですね。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。