食蜂操祈のお兄様   作:とんこつスープ

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今回は、結絆がアウレオルスからもらった原典と向き合うという話です。


原典との向き合い方

 三沢塾での激闘の後、

 

結絆は手にした古びた手帳――アウレオルスから託された原典をじっと見つめた。

 

その表紙は革張りでありながら、不気味なまでに生々しい質感を持ち、ただ触れるだけでぞわりとした悪寒が背筋を走らせる。

 

「ほお......これが原典、ねえ......」

 

結絆は慎重にページをめくった。

 

瞬間、膨大な情報が脳内へと流れ込んでくる。

 

文字として認識できるものもあれば、全く未知の概念として、脳や魂に直接刻み込まれるものもある。

 

その圧倒的な情報量に、脳が焼き切れそうな感覚が襲いかかってきた。

 

視界が歪み、耳鳴りが響く。

 

そして、指先が痙攣し、思考が途切れそうになる。

 

「ぐ......っ! これは......思った以上に......ッ!」

 

結絆は両手で頭を抱え、必死に意識を保とうとした。

 

原典を読むという行為は、脳への膨大な負担を伴う。

 

通常の人間なら即座に精神崩壊を起こしてしまうだろう。

 

だが、彼は違った。

 

「俺の......能力を......使う......!」

 

自らの能力である自己制御(セルフマスター)を使い、脳の構造を組み替える。

 

流れ込んでくる情報の整理、耐え切れない負荷の軽減、魔術的汚染の除去。

 

その全てを同時に行い、少しずつではあるが、確実に原典の知識を受け入れていく。

 

意識が飛びそうになるたびに、己の能力で調整し、正常を保つ。

 

 

 

 どれほどの時間が経ったのか。

 

やがて、結絆の目がゆっくりと開かれる。

 

彼の瞳には、今までとは異なる光が宿っていた。

 

「......成功、か」

 

彼の頭の中には、原典の知識が刻み込まれていた。

 

それは、時間や空間へ干渉する魔術。

 

過去・未来を垣間見、物理法則を歪ませることすら可能な力――アウレオルスは、かつてこの力を使って過去に行きインデックスを助けようとしたのかもしれない......

 

結絆は静かに手をかざした。

 

「試しに、やってみるかねえ......」

 

指を軽く弾くと、目の前の空間が歪む。

 

まるでガラスに波紋が広がるように、現実そのものが揺らぎ、ほんの一瞬ではあったが、異なる時間軸の風景が映し出された。

 

「......なるほど、こりゃあ面白いねえ」

 

学園都市の闇の深さを知る者として、そして今や魔術の深奥に触れた者として、彼の手に新たな力が宿った。

 

これがどんな影響をもたらすのか、結絆自身にもまだ分からない。

 

だが、一つだけ確信していることがあった。

 

「俺は、君からもらった力を......使いこなしてみせるよ」

 

彼は原典を優しくなでた後に、静かに原典を閉じ、深く息を吐いた。

 

新たな力を得た今、彼の戦いはさらに深みを増していくことになるだろう。

 

 

 

 結絆は原典から得た知識を活用し、異世界の物質に干渉するための術式を組み上げていた。

 

彼の目の前には魔法陣が浮かび上がり、その内部には未知の文字や図形が描かれている。

 

それらは通常の魔術体系とは異なる、まるで時間と空間そのものを直接改変するかのような特異な構造を持っていた。

 

「さて、異世界に存在するこの世にない金属を引っ張ってくるって話だけどお......」

 

結絆は冷静に計算を重ね、魔術陣に手をかざした。

 

すると、魔術陣の中心部が歪み始め、まるで水面に波紋が広がるように揺れ動く。

 

そして、そこから徐々に銀色とも青色とも言えぬ怪しげな輝きを放つ鉱石が現れた。

 

「成功だねえ......」

 

結絆はゆっくりとその金属を手に取る。

 

手にした瞬間、通常の金属とは異なる感触が指先に伝わった。

 

温度を感じさせず、まるで自身が生きているかのように微細な振動を繰り返している。

 

「これは......想像以上に面白い素材だねえ。」

 

 

 

 彼はさっそくこの金属を加工するため、暗部の拠点へと戻った。

 

そこには最新鋭の加工機器が揃っており、結絆が望む通りの武器を作ることが可能だった。

 

「結絆さん、その金属っぽい物体って何なんですか?なんか不気味なんですけど......」

 

『ドリーム』の構成員の一人が結絆に尋ねる。

 

「さっき戦った魔術師から、土産をもらってねえ。それを利用して手に入れたんだよお」

 

――数時間後。

 

結絆は完成した銃を手に取り、その造形を確かめる。

 

異世界の金属によって作られたそれは、通常の銃とは異なり、まるで一体成型されたかのような滑らかさと頑強さを持っていた。

 

「きれいに仕上がりましたね、流石は結絆さんです。」

 

「素材もよかったからねえ、さて、早速試し撃ちといこうかねえ。」

 

結絆は銃を構え、試験場の標的に向けて引き金を引いた。

 

発砲音とともに、銃口から放たれた弾丸が空間を歪ませるように進み、標的に到達した瞬間、衝撃波が発生して標的が粉砕された。

 

「......ほう、弾速も通常の銃とは比べ物にならないねえ。異世界の金属がどんな性質を持っているかはこれから詳しく調べる必要があるけど、とりあえずは十分な成果だねえ。」

 

結絆は満足げに銃を見つめ、次なる活用方法を思案するのだった。




結絆が魔術を使っても反動が来ないのは、能力で体の構造をいじっているからです。

レベル5と聖人と原典保有というチート要素の塊になっていますが、これからも結絆には強化イベントがある予定です。

次回も原典絡みの話です。
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