アウレオルスから原典をもらい、その力を我が物とした結絆、
そんな彼は、手元の銃を見つめながら、指でトリガーを撫でた。
異世界の金属を用いて作り上げたこの銃は、単なる火器ではなく、彼の科学と魔術の知識の結晶だった。
そして、タイミングよく暗部からの依頼が舞い込んでくる。
「タイミングよく試し撃ちの機会が来たねえ」
学園都市の暗部からの依頼はシンプルだった。
学園都市への侵入を試みる魔術師の集団を排除せよ、とのことだ。
能力者に干渉する魔術の脅威が増してきた昨今、外部の魔術師が学園都市に足を踏み入れることは珍しくなかった。(完全に協定違反である。)
しかし、今回の相手はただの魔術師ではない。
特定のルートから密かに侵入し、学園都市内で何かをしようとしている者たちだった。
結絆は銃をホルスターに収め、静かに外套を翻した。
「さて、この銃がどこまで使えるか楽しみだねえ」
深夜、指定された地点へと足を運ぶと、人気のない倉庫街に数人の男たちが立っていた。
そのうちの一人が周囲に魔法陣を描き、何かの準備をしている。
「結界の準備かねえ......面倒なことをしてくれるねえ」
結絆は物陰に身を潜めながら、銃の安全装置を外した。
「ん?、誰か見ているな!?」
一人の魔術師が気配を察知し、手にした杖を構えた。
結絆は無言のまま狙いを定め、引き金を引いた。
銃弾は魔術師の防御術式に触れた瞬間、歪んだ空間と共にそれを貫通し、肩を撃ち抜いた。
「ぐっ......!? なっ......防御術式が破られた......!?」
結絆の作り上げた銃で撃つのは、単なる物理弾ではない。
原典から得た知識を用いて、時を戻すことで疑似的に魔術を打ち消す効果を持たせていた。
結絆はゆっくりと足を進めながら、動揺する魔術師たちに向かって微笑を浮かべた。
「悪いねぇ、こっちも新しい玩具を試したくてねぇ」
残った魔術師たちが慌てて攻撃術式を発動させる。
炎の槍、水の刃、空気を震わせる衝撃波。
それらが結絆を襲うが、彼は軽く身体を捻るだけで回避する。
そして、魔術師の一人の額に狙いをつけ、また引き金を引いた。
「なっ!? うわあああっ!」
次の瞬間、今度は魔術師の体が金属の塊に変化し、地面に転がる。
結絆は淡々と、銃を構え直した。
「悪いねぇ、学園都市は君たちの遊び場じゃないんだよぉ」
残る魔術師たちは恐怖に震え、逃げ出そうとするが、結絆の放つ弾丸はその背を確実に捉えた。
──数分後、倉庫街には結絆一人だけが立っていた。
「うん、実戦テストは上々ってとこかねぇ」
彼はホルスターに銃を戻し、余裕の表情でその場を後にした。
次に結絆は術式を使って北の大地へ移動した。
冷たい風が頬を刺し、白銀の大地が一面に広がる。
学園都市の雑然とした風景とは異なり、静寂と冷気に包まれた世界がそこにあった。
「さて、レグルスの遊び相手のためにトナカイを捕まえに来たわけだけど......」
レグルスとは、『天衣装着を使えるトラ』の名前である。
トラなのにレグルスという名前を付けたことには、ツッコんではならない......
結絆は深く息を吸い込み、吐いた息が白く染まるのを眺めた。
そして、すぐさま能力で体を適合させる。
すると、結絆の吐く息が白くなくなった。
彼は手の中に持つ銃を軽く撫でる。
それは、異世界からこの世にない金属を取り寄せて作り上げた、彼だけの特別な武器だ。
実戦でもうまく使うことができたので、結絆は今、気分がいい。
「ま、これから仲間になってもらうトナカイ相手に撃つわけにもいかないからねえ」
そう呟きながら、彼は新たに得た原典の力を再び発動した。
空間を操る魔術を展開し、自らの感覚を周囲に広げる。
――いた。
遠く離れた雪原の奥、木々の間を歩く巨大な影。
立派な角を持ち、凛とした佇まいを見せる一頭のトナカイ。
「よし、あれにしようかねえ」
結絆はふわりと宙に浮き、雪原を舞うように進んだ。
足を雪に沈めることなく、まるで重力すら味方につけたような動きだった。
トナカイは結絆の接近に気づき、警戒するように鼻を鳴らした。
しかし、彼はすぐに念話で優しく語りかける。
「大丈夫、怖がらなくていいんだよお。ちょっとレグルスのお友達になってもらうだけだからねえ」
結絆の声がトナカイの脳内に直接響き、次第に警戒を解いていく。
彼の能力を使えば、動物の意識をある程度誘導することが可能だった。
「よしよし......さあ、一緒に来てもらおうかあ」
そう言いながら、結絆はトナカイの背に軽く触れ、空間転移を発動する。
次の瞬間、北国の寒冷地から一瞬で学園都市のドリームの拠点へと戻った。
――そして、待っていたのは巨大な白い虎、レグルスだった。
「大きい餌が来たようだな......!」
レグルスは目を輝かせ、結絆の後ろにいるトナカイを見つめる。
「おいおい、食うんじゃないよお。こいつはお前の友達になるんだからねえ」
結絆がそう言うと、レグルスは少し不思議そうな表情をしつつも、トナカイの匂いを嗅ぎ、ゆっくりと近づいた。
トナカイも最初は戸惑っていたが、結絆の能力によって次第に安心し、レグルスのそばに寄っていく。
「......ふふ、仲良くできそうじゃないかねえ」
結絆は微笑みながら二匹の様子を見守った。
「ショーの演目に、トナカイを追加するのもありだねえ。クリスマスの時期は大ウケしそうだねえ。」
結絆は呟く。
こうして、レグルスの新たな友となるトナカイがドリームの一員として迎えられたのだった。
結絆は、原典をしっかり使いこなしていますね。
結絆がトナカイを捕まえに行った理由は、半分以上が気まぐれです。