食蜂操祈のお兄様   作:とんこつスープ

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今回は、番外編です。

超電磁砲のドラマCDを参考にしてます。

1話で完結します。


番外編
美琴に懐いた猫


 テレスティーナを捕まえた後の事

 

静かな公園のベンチに並んで座る、食蜂結絆と御坂美琴。

 

「......はあ、なんだかんだで疲れたわ」

 

美琴がそう言いながら、ぐっと伸びをする。

 

今日は色々とあって、少し気を抜きたかったのかもしれない。

 

「確かに大変だったねえ。まあ、俺としては美琴の活躍を見れたから楽しかったけどねえ」

 

「もう、からかわないでよ」

 

美琴は少し照れてそっぽを向くが、結絆は気にせず肩をすくめる。

 

そんな他愛ない会話を交わしていると、不意に小さな気配が近づいてきた。

 

「......ん?」

 

足元に、ふわふわの毛並みをした一匹の猫がいた。

 

「あらら、可愛いねえ」

 

結絆が軽く手を伸ばすと、猫はひょいっと避ける。

 

だが、逃げるわけではなく、そのまま美琴のほうに向きを変えると、彼女の足元にちょこんと座った。

 

「え?」

 

美琴が驚いていると、猫はすっとベンチに飛び乗り、そのまま彼女の膝の上に収まった。

 

「ちょっ......本当に?」

 

美琴は固まったまま、恐る恐る猫の頭を撫でる。

 

猫は気持ちよさそうに目を細め、喉を鳴らした。

 

「すごいねえ。電撃使いのそばには寄りたがらないっていうけどお?」

 

『ミサカも"いぬ"と最初に出会った時は、中々懐いてくれなくて苦労したものです......』

 

どこかでドリームのメンバーの一人が、ぼやいている気がする。

 

ちなみに、"いぬ"は猫である。

 

彼女も結絆もネーミングセンスは独特である。

 

「そ、そうなのよ! 私の周りの動物、いつも避けるのに......」

 

驚きつつも、嬉しそうな表情を浮かべる美琴。

 

猫はまるで彼女を信頼しているかのように、安心しきった様子で丸くなった。

 

「ふふっ、私のこと、怖くないのかな......」

 

「やったねえ、美琴。ついに動物にも認められたんじゃないかい?」

 

「な、なんかその言い方だと変な感じなんだけど!」

 

それでも、美琴の顔には自然と笑みが浮かんでいた。

 

彼女の指先が優しく猫の背を撫でるたび、小さな喉鳴りが心地よく響く。

 

結絆はそんな美琴の横顔を眺めながら、微笑ましい気持ちになった。

 

「まあ、いいじゃないかい。猫ちゃんも美琴も幸せそうだからねえ」

 

「......うん、そうね」

 

そう言って、美琴は膝の上の猫をそっと抱きしめた。

 

美琴の膝の上で丸くなった猫は、すっかり安心しきった様子で喉を鳴らしている。

 

「ふふっ、なんか可愛いわね」

 

美琴は猫の頭を優しく撫でながら、自然と笑みをこぼす。

 

先ほどまでの驚きはすっかり消え、今はただ、この小さな生き物が寄り添ってくれることが嬉しくて仕方ないようだった。

 

「そうだ! 名前、つけてあげようかな!」

 

「おお、美琴が名付け親になるのかあ」

 

結絆が面白そうに見守る中、美琴は少し考え込む。

 

「うーん......猫だから......」

 

「うん?」

 

「ネコ太!」

 

「......」

 

結絆は一瞬、言葉を失った。

 

「......美琴、それでいいのか......」

 

「なによ、可愛いじゃない!」

 

「まあ、可愛いけどねえ......なんとも言えないネーミングセンスだねえ」

 

結絆も、トラにレグルス(獅子)と名付けているので人のことは言えない立場であるはずである。

 

「なによー! シンプルでわかりやすいし、いいじゃない!」

 

「そうだねえ、美琴らしいと言えば美琴らしいかもねえ」

 

くすっと笑う結絆に、美琴は少し頬を膨らませるが、すぐに膝の上の猫――ネコ太に意識を戻す。

 

「ネコ太、これからも仲良くしようね♪」

 

美琴がそう優しく語りかけると、ネコ太は小さく鳴いて、さらに美琴に体をすり寄せた。

 

 

 

 「......ふふっ、やっぱり可愛いわね」

 

結絆はそんな美琴の様子を見ながら、微笑ましい気持ちで肩をすくめる。

 

「ま、ネコ太も気に入ってるみたいだし、それで決まりだねえ」

 

美琴の膝の上で気持ちよさそうにくつろぐネコ太。

 

その背中を優しく撫でながら、美琴は終始ご機嫌だった。

 

「ほら、ネコ太、こっちおいでえ」

 

結絆が手を伸ばすと、ネコ太は一瞬ためらったものの、ちょこんとベンチの上に降りる。

 

結絆が指先で顎の下をくすぐると、気持ちよさそうに目を細めた。

 

「おお、懐いてきたねえ。やっぱり可愛いねえ」

 

「でしょ? やっぱりネコ太は最高ね!」

 

美琴と結絆がネコ太を交互に撫でながら、和やかに笑い合っている。

 

そんな雰囲気の中、不意に後ろから声が飛んできた。

 

「お、お姉様!? その猫は何でございまして!?」

 

「うわっ!? 黒子!?」

 

突然現れた白井黒子が、美琴の膝の上に戻ったネコ太をじっと睨んでいた。

 

その視線はまるで、恋敵を見つけたかのような嫉妬に満ちている。

 

「はぁ、なるほど......最近お姉様が私とのお戯れを避けていると思ったら、まさかそんな......!」

 

「は?」

 

「その猫め......お姉様の膝を独占するなど、許しがたいでございますの!」

 

「ちょっと黒子!? 何言ってんのよ!?」

 

黒子はネコ太をじっと見つめ、唇を噛みしめる。

 

ネコ太はドン引きしている。

 

「お姉様の膝の上は本来、この白井黒子の特等席......! それを猫ごときが......! これは由々しき事態ですわ......!」

 

「いやいや、あんたの“特等席”じゃないから!」

 

「ぐぬぬ......さっさとお姉様の膝から降りてくださいまし!」

 

そう言いながら黒子が美琴の太ももに手を伸ばした瞬間――

 

「この変態がぁぁぁぁっ!!!」

 

美琴の回し蹴りが黒子の顔面を正確に捉えた。

 

「ぶっふぉ!!?」

 

黒子は吹っ飛び、地面を転がる。

 

ネコ太は驚いてぴょんっと跳びのいたが、結絆が素早く抱き上げてなだめる。

 

「ったく......いい加減にしなさいよ、黒子!!」

 

「お姉様......ナイス回し蹴りですわ......」

 

黒子は正気を取り戻し、頭を押さえながら立ち上がる。

 

「黒子、もう少し落ち着いたら?」

 

「し、失礼しましたわ......。ですが、お姉様が猫を可愛がっている姿を見ると、つい......」

 

黒子はちらっとネコ太を睨むが、美琴の殺気を察知してすぐに視線を逸らす。

 

「......まあ、それはさておき、実はちょっと気になることがありまして」

 

「気になること?」

 

「ええ。最近、学園都市内で個人情報や研究資料が何者かに漏洩する事件が増えているのですわ」

 

結絆が軽く眉を上げる。

 

「ふうん、また事件かい、それはまた......穏やかじゃないねえ」

 

「ええ。特に、能力開発関連の研究データが狙われているようでして......風紀委員としても放っておけませんの」

 

「なるほどねえ......」

 

結絆はネコ太の背を軽く撫でながら、考え込むように視線を落とした。美琴も表情を引き締める。

 

「それって、もしかして......ただの情報流出ってレベルじゃないんじゃない?」

 

「その可能性もありますの......。お姉様と結絆さんも、何か情報を得たら教えていただけますか?」

 

「もちろん。何か分かったらすぐに知らせるわ」

 

「俺も調べてみるよお。こういうの、得意だしねえ」

 

黒子の話に、少し緊張感が漂う。

 

だが、その横でネコ太は無邪気に喉を鳴らしている。

 

「ところでお姉様、黒子とその猫......どちらが大切ですの?」

 

「うーん、どっちかというと猫かな!」

 

「ガーン!」

 

「ちょっと、冗談よ黒子、そんなに落ち込まないで!」

 

「これは、シャレになってないへこみ方だねえ」

 

 

 

 「......とりあえず、この子は何も知らないわよね」

 

美琴がネコ太を抱き直し、軽くため息をついた。

 

結絆はそれを見て、ふっと笑う。

 

「......そうだねえ。ネコ太は平和でいいねえ」

 

その後、美琴はすっかりネコ太に夢中になり、頬ずりする勢いで撫で続けている。

 

ネコ太も満更ではないのか、喉を鳴らして気持ちよさそうにしていた。

 

その様子を眺めながら、結絆はふとネコ太の首元に目を向ける。

 

「おや?」

 

「ん? どうかしたの?」

 

「美琴、ネコ太......首輪、ついてるよお」

 

「え?」

 

美琴が驚いてネコ太の首元を見ると、確かに毛並みに隠れるようにして、小さな首輪がついていた。

 

シンプルなデザインだが、よく見ると金属製のプレートも付いている。

 

「......ということは、ネコ太は野良じゃなくて、誰かの飼い猫?」

 

「そうみたいだねえ」

 

結絆は指で首輪をなぞりながら、小さく目を細める。

 

「それにしてもお、この首輪......ただのアクセサリーにしては、ちょっと妙な感じがするねえ」

 

「え、どういうこと?」

 

「んー......」

 

結絆は首輪に軽く指をかけ、金属プレートをじっくりと観察した。

 

そして、能力を発動しながら、ゆっくりと指で触れてみた瞬間――

 

「......ピピッ」

 

微かに、何かが動作するような電子音が鳴った。

 

「......え?」

 

「やっぱりねえ。これ、ただの首輪じゃないよお」

 

美琴も眉をひそめ、慎重にネコ太の首輪を観察する。

 

そして、首輪にそっと指を添えた瞬間――

 

「......なんか、微弱な電波が出てる?」

 

「だよねえ。これ、発信機か何かかなあ?」

 

結絆がそう呟いた途端、美琴の表情が引き締まる。

 

「ちょっと待ってよ......ってことは、ネコ太って......」

 

「誰かに監視されてる可能性があるねえ」

 

美琴はぎゅっとネコ太を抱きしめる。

 

「じゃあ、私が可愛がってた間も、ずっと......!?」

 

「まあ、電波の種類にもよるけどお......少なくとも、この猫を通じて何かが送られてるのは確かだねえ」

 

「っ......!」

 

美琴の表情が険しくなる。

 

さっきまでただの可愛い猫だと思っていたネコ太が、思わぬ形で彼女達を巻き込んでいる可能性が浮上したのだ。

 

結絆は軽くため息をつきながら、首輪をもう一度観察し、苦笑を漏らす。

 

「いやあ、まさか猫に監視されるとはねえ......学園都市らしいと言えばらしいけどお」

 

「冗談言ってる場合じゃないわよ!」

 

美琴が少し苛立ち気味に言うが、結絆は肩をすくめた。

 

「まあまあ、美琴。焦っても仕方ないよお。とりあえず、この首輪の発信先を調べるのが先じゃない?」

 

「......そうね。でも、どうやって?」

 

「ふふ、俺を誰だと思ってるのかい」

 

結絆は不敵に微笑みながら、ネコ太の頭に手を当てる。

 

「さて、ちょっと調べさせてもらおうかあ――」

 

果たして、この猫の背後には何があるのか。

 

結絆と美琴は、思わぬ形で事件の核心へと近づいていくことになった。

 

 

 

 結絆はネコ太の頭に触れて、ネコ太の記憶を読む。

 

操祈のように遠隔で記憶を読んだり改竄したりはできないが、直接触れていれば問題はない。

 

それと同時並行で、首輪についても調べる。

 

「ふむ......どうやら、この電波は定期的に何かの信号を送ってるみたいだねえ」

 

「発信源は?」

 

美琴が焦った様子で尋ねると、結絆はニヤリと微笑みながら、小さな端末を取り出して指を滑らせる。

 

「よし......これで解析完了。発信源は第七学区のとある研究所だねえ」

 

「第七学区の?」

 

「そうだねえ、『動物行動制御研究所』って名前だよお。責任者は碓井芳乃(うすい よしの)。動物の行動を制御する研究をしてるらしいねえ」

 

「......なんか怪しいわね」

 

美琴は腕を組み、険しい表情になる。

 

「学園都市なら動物を使った実験くらいはやってそうだけど、それにしてもネコ太に発信機をつけるなんて......」

 

「ま、行ってみれば何か分かるんじゃないかなあ」

 

「そうね。直接乗り込んで問い詰めるわよ!」

 

 

 

 研究所はひっそりとしたビルの一角にあった。

 

表向きはペットの行動研究を行う施設ということになっていたが、結絆の情報網によると、裏では動物を使った特殊な実験をしている可能性が高かった。

 

「こっそり入るかい?」

 

「いえ、堂々と行きましょ。どうせ向こうは私達のこと、もう知ってると思うからね」

 

美琴は強気な姿勢で研究所の自動ドアを開いた。

 

結絆は肩をすくめながら後に続く。

 

「お邪魔しまーす」

 

「お邪魔するよお」

 

受付には白衣を着た女性が座っていた。

 

短めの黒髪に細い眼鏡をかけ、静かな目つきをしている。

 

「......お客様ですか?」

 

「碓井芳乃はいる?」

 

美琴がストレートに聞くと、女性は一瞬だけ驚いたように眉を動かした。

 

しかし、すぐに淡々と答える。

 

「責任者の碓井は現在、研究中です。アポイントメントはお取りですか?」

 

「アポなし突撃ってやつだねえ」

 

結絆がニヤリと笑うと、受付の女性は困惑したような表情を浮かべた。

 

「申し訳ありませんが、研究の邪魔になるため――」

 

「関係ないわよ!」

 

美琴はバチバチと電気を指先に走らせながら、一歩前に出る。

 

「あなた達が管理してる猫、ネコ太の首輪から発信機が出てるのを確認したの。さっさと碓井を呼びなさい!」

 

受付の女性はしばらく躊躇した後、内線で誰かに連絡を取った。

 

「......すぐに案内いたします」

 

 

 

 数分後、結絆と美琴は研究室に通された。

 

そこには、一人の女性がデスクに座っていた。

 

碓井芳乃――知的な雰囲気を纏いつつも、気さくそうな雰囲気の女性だった。

 

「......突然の訪問してくるなんてどうしたのかしら?」

 

「そっちこそ、動物に変な首輪をつけてる理由を説明しなさいよ!」

 

美琴が声を荒げると、碓井は首をかしげる。

 

「何のことかしら?心当たりがないわねえ」

 

「とぼけても無駄だよお。ネコ太の首輪から電波が出てたんだよお。俺達がこうして突き止めたってことは、そっちのデータにも何かしら記録があるんじゃないかなあ?」

 

結絆は軽い調子で言いながら、部屋を見渡した。

 

壁際にはいくつものモニターが並び、そこには街中にいる動物達の映像が映し出されていた。

 

「......ふぅん、なかなか面白いことしてるねえ」

 

「......」

 

碓井は無言のまま結絆を見つめた後、静かに口を開いた。

 

「......確かに、私は動物の行動を研究しているわ。でも、それが何か問題かしら?」

 

「問題でしょ!」

 

美琴が机を叩く。

 

「ネコ太に発信機つけて、何をしようとしてたの!?」

 

碓井は薄く笑う。

 

碓井芳乃の研究所――そこで何が行われているのか。

 

結絆と美琴は、さらなる真実に迫ろうとしていた。

 

 

 

 碓井はため息をついた。

 

「......もう誤魔化せないわね」

 

彼女は指を組み、静かに語り始める。

 

「私の研究は、動物の行動を完全に制御すること。動物に発信機をつけ、神経信号を操作することで、遠隔から行動をコントロールできるのよ」

 

「......は?」

 

美琴の顔が険しくなる。

 

「それって、まさか......」

 

「ええ」

 

碓井は薄く微笑んだ。

 

「動物達をスパイにするのよ」

 

「......っ!」

 

「動物なら、人間の警戒網をすり抜けてどこにでも入り込める。研究所、政府機関、企業の会議室......そこに送り込んだ動物を通じて、私は情報を手に入れていたの」

 

「それで、研究成果や、個人情報......ってわけだねえ」

 

結絆は軽く首を振りながら、碓井を見つめる。

 

「そんなことして、何が目的だったの?」

 

「金よ」

 

碓井はあっさりと答えた。

 

「私はただ金が欲しかったのよ。でも、学園都市の支援だけじゃ足りない。だったら、情報を売ればいい」

 

「......最低ね」

 

美琴の拳が震える。

 

「動物達をそんなことに利用するなんて......それでも研究者なの!?」

 

「ふふ、正義感を振りかざすのは勝手だけど」

 

碓井はゆっくりと立ち上がった。

 

「私がここで大人しく捕まると思う?」

 

「......ほお?」

 

結絆が目を細めた瞬間、研究室の奥のモニターが一斉に点灯した。

 

そこには、檻の中にいたはずの動物が解放され、研究所の廊下を進んでくる映像が映っていた。

 

「研究成果を試すいい機会だわ。さあ、見せてあげる――私の『動物行動制御』の成果を!」

 

バァンッ!!!

 

次の瞬間、壁が破壊され、巨大なゾウが突進してきた。

 

「ゾウ!?」

 

「それだけじゃないわ」

 

碓井がスイッチを押すと、背後のシャッターが開き、中からウマ、ウシ、そしてナマケモノが現れた。

 

「ちょっ、ナマケモノ!? いや、それは戦力にならないでしょ!」

 

美琴が思わずツッコミを入れるが、ナマケモノはありえない速度で天井を這い回っていた。

 

「......おかしいねえ。ナマケモノってこんなに速かった記憶はないんだけどねえ?」

 

結絆が呟く。

 

「神経制御をすれば、ナマケモノだって俊敏に動けるのよ」

 

碓井が冷たく言い放つと、ゾウが咆哮しながら結絆に向かって突進した。

 

「結絆!」

 

美琴が叫ぶが、結絆は動じない。

 

「ふうん......ゾウと戦うのは久々だねえ、ちょっと試してやろうかねえ」

 

ゾウが巨体を揺らしながら、結絆に向かって鼻を振り下ろす。

 

しかし――

 

バンッ!!!!

 

結絆は、その巨大な鼻を 指一本で受け止めた。

 

「......え?」

 

碓井の表情が固まる。

 

「ま、こんなもんかなあ」

 

結絆は軽く指を押し返し、ゾウの攻撃を無効化する。

 

「......おかしい、おかしいわ! あんな巨体の力を指一本で......!?」

 

「そりゃあ、俺を誰だと思ってるんだい?」

 

結絆はニヤリと笑い、ゾウの鼻をポンと叩くと、ゾウはその場にへたり込んだ。

 

「さて、美琴。動物は俺が止めるから、あとは頼んだよお」

 

「......わかったわ! 一発ぶちかましてやる!」

 

美琴はバチバチと電撃を纏い、碓井に向かって踏み出した――。

 

果たして、碓井芳乃を止めることはできるのか!?

 

 

 

 「くそっ......!!」

 

碓井芳乃が奥の操作パネルに手を伸ばそうとする。

 

しかし、美琴が素早く前に出て、電撃を纏った右手を掲げた。

 

「もう、終わりよ!!」

 

バチバチバチッ!!!

 

美琴が空中に電撃を走らせると、それは細い光の矢となって動物の首に付けられた発信機へと向かう。

 

ピシッ! バキィン!!

 

次々に発信機がショートし、砕け散った。

 

「ブルルル......!」

 

ウシが一歩後ずさる。

 

「ヒヒーン!!」

 

ウマが首を振り、興奮したように嘶く。

 

「おいおい、美琴。ナマケモノが天井に張り付いたままだよお?」

 

「待って、最後の一つ......!」

 

美琴はナマケモノの首輪に狙いを定め、指先から電撃を飛ばす。

 

バチッ!

 

発信機が爆ぜた瞬間、ナマケモノの動きが止まった。

 

しばらくして、ゆっくりと天井から落ちてくる。

 

「うわっ、キャッチ!!」

 

美琴が慌てて受け止め、ホッと息をついた。

 

「......これで、全部ね」

 

自由を取り戻した動物達は、しばらく呆然としていた。

 

しかし――

 

「パオォンッ!!」

 

突如、ゾウが咆哮し、碓井の方を向く。

 

「ちょっ、待って! やめ――」

 

碓井の言葉を無視するように、動物が一斉に彼女へと向かう。

 

「いや、ちょっと......!?」

 

バキッ!

 

ウシの頭突きが碓井の腹に炸裂し、彼女の体が宙を舞う。

 

ドサッ!!!

 

「がっ......!」

 

そのまま地面に転がる碓井。

 

「ヒヒーン!」

 

ウマが前脚を振り上げる。

 

ドガン!!

 

「ぎゃあああ!!」

 

そこにゾウが追い討ちの鼻攻撃。さらに、ナマケモノがゆっくりと近づき――

 

ベチッ(爪でビンタ)

 

「いだぁぁっ!!? なんでナマケモノのビンタがこんなに痛いのよ!?」

 

「......ナマケモノのパワー、実はすごいんだよねえ。過去に8メートルぐらいのナマケモノと戦ったことがあるけど、なかなかのパワーだったよお」

 

結絆が呟く。

 

余談だが、巨大ナマケモノはマジックシアターの動物園で悠々自適に暮らしている。

 

碓井は完全にボコボコになり、ピクリとも動かなくなっていた。

 

「......終わった、の?」

 

美琴が息を整えながら呟く。

 

すると、ゾウがゆっくりと振り返り、結絆と美琴の前にやってきた。

 

「ブルル......」

 

ウシも、ウマも、ナマケモノも、静かに頭を下げる。

 

「......感謝、してるの?」

 

美琴が目を丸くする。

 

「ふふ、良い子だねえ」

 

結絆はゾウの鼻を撫でながら、優しく微笑んだ。

 

「さて、こいつらをこのまま放っておくわけにはいかないねえ。俺のマジックシアターで保護しようかねえ」

 

「えっ、そんなことできるの!?」

 

美琴が驚くと、結絆は肩をすくめる。

 

「まあ、動物園も水族館もあるし、大きな施設だからねえ。いまさら動物が10匹程度増えたところで、どうってことないよお」

 

「......なんか、凄いわね、アンタ」

 

美琴は呆れながらも微笑んだ。

 

こうして、自由を取り戻した動物達は、結絆のもとで新たな生活を始めることになったのだった。




以上、番外編でした。

ネコ太もマジックシアターに運ばれました。

次回からは三沢塾編になります。
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