食蜂操祈のお兄様   作:とんこつスープ

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今回は、ドリームとアイテムの共闘です。


アイテムとの共闘

 学園都市・第十学区、某研究施設跡地

 

『偽りの才人工房』を消した後、夜の闇に紛れ、結絆達はゆっくりと廃れた施設の前に降り立った。

 

「ふーん、これがターゲットの施設ってわけかねえ......」

 

周囲を見渡しながら、無造作に髪をかき上げる。

 

ドリームのメンバーも静かに配置につき、それぞれの役割を果たす準備をしていた。

 

今回の任務は単純だった。

 

「学園都市の裏で行われていた人体実験の痕跡を消す」――つまり、この施設を破壊するというもの。

 

だが、どうにも引っかかる。

 

依頼の詳細を解析したミサカの分析によれば、結絆達が先ほど偽りの才人工房を襲撃していた時に、この施設にはすでに何者かの手が入っている可能性が高いとのことだ。

 

(他の暗部組織が動いている......ってとこかねえ)

 

結絆は慎重に中へ踏み込むと、違和感を覚えた。

 

「......随分と静かすぎるねえ」

 

警備の類がまったくいない。

 

嫌な予感がした次の瞬間――

 

「ようこそ、ドリームのリーダーさんよ」

 

施設の奥から聞こえてきたのは、挑発的な女性の声。

 

結絆が視線を向けると、そこに立っていたのは学園都市の暗部組織『アイテム』のリーダー、麦野沈利だった。

 

「予想が当たったねえ......やっぱり、他の組織も呼ばれてたってわけかい」

 

「は?何一人で納得してるのか知らないけど、お前はなんでここにいるのよ」

 

麦野は鋭い視線を結絆に向ける。

 

その背後には、アイテムのメンバーである滝壺理后、フレンダ=セイヴェルン、絹旗最愛の姿もあった。

 

(やれやれ、厄介な連中と鉢合わせしちゃったねえ)

 

結絆は内心ため息をつきながら、警戒を緩めずに麦野を見据えた。

 

「聞いてないんだけど?ドリームがこの仕事を請け負ってるなんてな」

 

麦野は苛立たしげに腕を組みながら言う。

 

結絆は肩をすくめた。

 

「こっちも聞いてないよお? アイテムがこの施設を潰しに来てるなんてねえ」

 

「......ってことは、アレか?」

 

麦野が不敵に笑う。

 

「私達は、誰かに仕組まれたってわけだ」

 

「そういうことみたいだねえ」

 

結絆は冷静に頷く。

 

「おそらく、俺達をこの施設でぶつけさせ、共倒れさせるつもりだったんだろうねえ。依頼人は最初から、ドリームとアイテムを潰すつもりだったんじゃないのかい?」

 

「なるほど、ありそうな話ね......」

 

麦野の表情が険しくなる。

 

すると、背後のフレンダが肩をすくめながら言った。

 

「いやいや、いくらなんでも雑すぎるって話じゃない? 私達が戦ってもメリットはないって、流石に依頼人も分かってるはずなんだけど」

 

「むしろ、それでも構わないと考えてるんじゃないかねえ」

 

結絆は鋭く言い放つ。

 

「アイテムか、ドリームか、あるいは両方か......どちらかが消えれば、それで依頼人の目的は達成される。この施設の破壊も、証拠隠滅のための口実に過ぎないんじゃないかねえ?」

 

「......はあ......本当にふざけんなって感じなんだけど?」

 

麦野が舌打ちをする。

 

「だったら、ここで私達が戦ってる場合じゃないわね」

 

「そういうことだねえ。......共闘しようかあ」

 

結絆が手を差し出すと、麦野は一瞬ためらった後、ニヤリと笑ってそれを握り返した。

 

「いいじゃない、面白くなってきたわね」

 

「依頼人を炙り出して、逆にぶっ潰すとしようかねえ」

 

こうして、ドリームとアイテムによる異例の共闘が成立したのだった。

 

 

 

 学園都市・某施設、ドリームのアジトの一つ

 

「さて、依頼人の正体を暴くとしようかねえ」

 

結絆は、暗がりの中で光るモニターを眺めながら呟いた。

 

ドリームの電子部門を担当するミサカが、得意の情報収集能力を駆使し、依頼人の正体を洗い出していた。

 

「解析完了、とミサカは報告します」

 

無機質な声と共に、モニター上に映し出されたのは――学園都市の研究機関「ギフト・フォージ」。

 

「......ギフト・フォージ?」

 

滝壺理后が小さく呟く。

 

「確か、能力開発とは別路線で、戦闘用クローンの研究を進めていたって噂の施設だよねえ」

 

結絆は腕を組みながら言った。

 

「なるほどねえ......学園都市の暗部を整理するために、強力な組織同士をぶつけさせるのが狙いってわけかい?」

 

「......クソみたいな計画ね」

 

隣でモニターを睨みつけていた麦野沈利が、苛立たしげに呟く。

 

「暗部同士で潰し合いをさせて、最後に残った方を始末する......そんなところかねえ」

 

結絆は軽く首を鳴らしながら、画面を指で弾いた。

 

「そんじゃ、反撃といこうかねえ」

 

 

 

 学園都市・第十学区、ギフト・フォージ本部

 

「警報鳴らせ、侵入者だッ!」

 

施設の警備員が叫ぶが――

 

「超遅いです!」

 

絹旗最愛の窒素をまとった拳が、警備システムの制御装置を正確に破壊した。

 

そして結絆が銃を警備員に向ける。

 

そして、

 

パァン!

 

銃声が響くと同時に、フレンダの設置した爆薬が誘爆して、施設の壁を吹き飛ばす。

 

「おっと、思ったよりド派手にやってくれるねえ。まあ、今はこの共闘を楽しむとしようかあ」

 

結絆は銃をクルクル回す。

 

一方、麦野はにやりと笑い、自らの周りに球体状にした電子を留めながら移動する。

 

「それじゃ、さっさと片付けるわよ!」

 

ドリームとアイテムの共同戦線が、本格的に始動した瞬間だった。

 

 

 

一方、その背後ではミサカが端末をハッキングし、施設のセキュリティを無効化していた。

 

「ターゲットの能力解析開始、とミサカは報告します」

 

画面には、ギフト・フォージが雇った能力者のデータが表示される。

 

『Aランク能力者:念動使い(テレキネシスト)』

 

『Bランク能力者:振動波操作(ヴァイブレーション)』

 

「おっとお、少し厄介な連中がいるみたいだねえ」

 

結絆は肩をすくめながら、手元の銃を弄ぶ。

 

「さて、能力者相手の試し撃ちにはちょうどいいかねえ」

 

そう呟くと、彼は異世界金属製の銃を構えた。

 

「念動力なら、手を触れずに弾丸を操作されるリスクもあるけどお......ま、試してみようかねえ」

 

結絆の銃弾が空間を引き裂きながら発射される。

 

「そんなもの!」

 

念動使いが、弾丸を空中で止めようとするが――

 

ズバァン!!!

 

「ぐあっ......!? な、なんだこれは......!?」

 

銃弾は空間の概念ごと貫通し、能力を無効化したまま、念動使いの頭部に突き刺さる。

 

「おっと、この銃から発射される弾丸は、君達の能力を無視する仕様でねえ、ってもう聞こえてないか」

 

結絆が微笑みながら、次の弾を装填する。

 

「悪いけど、今夜はこっちの圧勝だよお」

 

 

 

 『それじゃ、そっちも派手に頼んだよお』

 

結絆が遠隔で合図を出す。

 

すると弓箭入鹿(ゆみやいるか)が軽く首を鳴らしながら、手のひらに握ったレーザーポインターを天井へ向けた。

 

シュボッ!

 

赤いレーザーが一直線に伸び、次の瞬間――空間に固定された。

 

「テメェ、レーザーの光を......固定しやがった!?」

 

雇われの能力者達が驚愕する間もなく、入鹿は軽く手を振る。

 

すると――

 

ギュンッ!!!

 

固定されたレーザーの光が、刀のように振り下ろされ、前衛の一人が真っ二つになった。

 

「げ、ぎゃああああっ!!!」

 

入鹿は満足げにレーザーの「刃」をクルクルと回す。

 

「さて、あなた達は何人まとめてスライスされたいんですか?」

 

残された敵兵が青ざめながら後退していく。

 

「う、撃てぇえええ!!」

 

ババババッ!!!

 

銃弾が一斉に発射されるが――

 

「遅いです」

 

入鹿の手が再び振られた。

 

ギュン!ギュギュン!!

 

レーザーの光が次々と敵兵を切り裂き、スーツごと肉体を両断していく。

 

「はあ、せっかくの最新装備なのに、あまり使えませんでしたね」

 

ため息をつく入鹿の後ろから、最後の敵兵が不意打ちをしようとする。

 

しかし、入鹿はニヤリと笑うと、レーザーポインターを後ろに振るう。

 

フォン!!

 

彼女の放ったレーザーの刃が最後の一人の首を刈り取った。

 

「はい、終わりました♪」

 

 

 

 一方、別エリア

 

「チッ、前線がやられてる! 後方支援、応答しろ!」

 

ギフト・フォージの部隊が通信機を叩くが――

 

「ねぇねぇ、あんた達ってさ、ドアの前に『立入禁止』って書いてたら、逆に入りたくなったりしない?」

 

突然、頭上から軽い口調の声が降ってきた。

 

「......誰だ!?」

 

敵兵が上を向いた瞬間――

 

ゴロゴロ......

 

小さな人形のような物体が目の前に転がった。

 

「っ!? 何だ!?――」

 

ズドォォォォォォン!!!!

 

爆風が一瞬で敵部隊を吹き飛ばす。

 

「ひゃっはー! やっぱ爆弾はこうでなくちゃね!」

 

アイテムのフレンダが楽しげに笑いながら、次の爆弾を取り出した。

 

「さて、どこに投げようか......ん? おっ、ちょうどいいのがいるじゃん♪」

 

彼女の視線の先には、防衛の最後の砦として構える重装備の兵士達。

 

「それっ!」

 

シュッ!

 

フレンダが軽く投げた爆弾が、敵陣のど真ん中に吸い込まれるように落ちた。

 

「うおおおお!! バリア展開!!」

 

敵が慌てて防御態勢を取るが――

 

ズガァァァァァン!!!!

 

爆弾が爆裂し、次の瞬間、敵兵ごとバリアが粉砕された。

 

「結局、全員消し飛ばせばいいってわけよ」

 

敵部隊は跡形もなく吹き飛ばされ、地面には焼け焦げた装甲片だけが転がる。

 

フレンダは爆弾をクルクル回しながら、倒れた敵を見下ろす。

 

「さーて、そろそろトドメ刺す?」

 

 

 

 ギフト・フォージ本部は、ドリームとアイテムの猛攻により完全制圧された。

 

爆風の余韻が残る施設の中で、結絆が冷静に戦況を見渡す。

 

「ふう、思ったより時間がかかっちゃったねえ」

 

彼が呟いた瞬間――

 

「だけど、これで依頼人の隠れ家も割れた」

 

麦野沈利が不敵に笑い、炎上する施設を背に結絆へと歩み寄る。

 

「どうするよ? そろそろ報復戦といこうじゃねぇか?」

 

結絆は無言で、異世界金属の銃を構え――

 

「......当然だねえ」

 

暗闇に消えていく。

 

 

 

 ギフト・フォージ本部・崩壊跡地

 

炎上する施設の瓦礫の上で、滝壺理后は静かに目を閉じた。

 

AIMストーカー――学園都市に存在する能力者のAIM拡散力場を感知し、特定する能力。

 

「......見つけた」

 

滝壺の瞳がゆっくりと開く。

 

「依頼人は、こっから北西のエリアU-16にある廃ビルにいる」

 

「おっ、さっすが滝壺!」

 

フレンダが嬉しそうに跳ねる。

 

「追跡までしてくれるなら、ミサイルタイプの爆弾ぶち込んで一気に......」

 

「いや、こっからは俺がやるよお」

 

そう言って前に出たのは――食蜂結絆。

 

「......?」

 

麦野が彼の様子を見て、僅かに眉をひそめた。

 

結絆の手には、小さな黒い手帳――原典が握られている。

 

彼の瞳が淡く輝き、周囲の空間がわずかに歪んだ。

 

「それじゃ、俺はちょっと先回りしてくるよお」

 

シュッ――

 

次の瞬間、結絆の姿は掻き消えた。

 

 

 

 「クソッ......クソッ......!!!」

 

スーツ姿の男が、荒れ果てたビルの中を息を切らしながら駆けていた。

 

ギフト・フォージの黒幕にして、ドリームとアイテムを共倒れさせようと画策した依頼人。

 

「なんで......なんでこうなる......!!」

 

最強の暗部組織同士をぶつけることで、自分だけが生き延びるはずだった。

 

そして、つぶれた暗部組織の代わりとして、己の作った兵士を使って金儲けをする。

 

完璧な計画であったはずだった。

 

それが、どうしてこんな結末になったのか――。

 

「もう逃げ場なんてないよお」

 

突如として、目の前の空間が揺らいだ。

 

そこに立っていたのは――

 

「食蜂......結絆......!!」

 

男の顔が恐怖に歪む。

 

「なっ......なんでここに!?」

 

「んー? 俺がどうやって来たのか知りたいのかい?」

 

結絆は、革製の手帳を指先で軽く撫でる。

 

「まあ、知る必要はないけどねえ」

 

ガチャッ

 

結絆の手には、異世界金属で作られた銃が握られていた。

 

「お、おい待て!! 交渉しよう!! 俺は金なら――」

 

バンッ!!

 

乾いた銃声が響き、男の左足が吹き飛んだ。

 

「ぎゃああああああっ!!!」

 

「交渉とか、そういうのはどうでもいいんだよお」

 

結絆は淡々と銃を構え直し、男の顔に銃口を向ける。

 

「じゃあ、次はお前の眉間に風穴を開ける番だねえ」

 

男の顔が恐怖で引き攣る。

 

「ま、待っ――」

 

バンッ!!!

 

銃弾が男の眉間を正確に貫いた。

 

男の身体はそのまま後ろへ崩れ落ち、微動だにしなくなった。

 

ギフト・フォージの黒幕は死んだ。

 

結絆は銃をホルスターに戻し、淡々とその場を後にした。

 

 

 

 再び空間が歪み、結絆はギフト・フォージ本部の跡地へ戻ってきた。

 

「......終わったよお」

 

「やるじゃない」

 

麦野がニヤリと笑い、滝壺が静かに頷いた。

 

「これで、今回の依頼は終了ね」

 

「いやあ、助かったよお、今後もいい関係を築いていきたいねえ」




ドリームやアイテムのメンバーの戦闘シーンを書いてみました。

敵側の振動波操作は、ミサカが瞬殺したので出番がありません。

上条さんがいない話では、どんどん人が死んでいきますね。

次回は、暗部から少し離れて、もっと明るい話です。
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