時系列は気にしないでください......
常盤台中学・校舎裏
「――ねえ、ちょっとお願いがあるんだけど」
放課後の静かな校舎裏で、御坂美琴が腕を組みながら真剣な表情で立っていた。
向かい合うのは、食蜂結絆と帆風潤子。
「お願い?、何の話か知らないけどお、聞くだけなら聞くよお?」
結絆が軽く首を傾げる。
「そうですね、私も聞くだけはできますが......?」
帆風も真面目な顔で応じる。
美琴は少し居心地が悪そうに咳払いをすると、意を決したように口を開いた。
「あのさっ......水着のモデルやってくれない?」
「......」
「......」
結絆と帆風が、同時に沈黙する。
「えっと、もっかい言ってくれるかい?」
結絆は、美琴に聞き返す。
「だから、水着のモデル!」
美琴は少し声を張り上げた。
「知り合いの人に頼まれたのよ!学園都市の有名な水着ブランドが、新作のイメージモデルを探してるんだって!」
「う、うーん......」
結絆は顎に手を当てて考える素振りを見せた。
「つまり、俺や帆風に対して、水着を着てポーズを取れと......?」
「そういうこと!」
美琴は堂々と頷いた。
「それに、帆風さんも、結絆が一緒なら嬉しいと思って!」
帆風は驚いた表情を見せた後、少し考え込む。
「それは......光栄なことですが......」
帆風はちらりと結絆を見る。
「結絆さんはどうされますか?」
「んー......どうしようかなあ?」
結絆は腕を組んで考え込む。
美琴が「えっ」と不安そうに声を上げる。
「え、ちょっと、まさか断る気!?」
「いやあ、興味はあるけどねえ......」
結絆はニヤリと笑い、美琴の目をじっと見つめた。
美琴が面倒ごとを押し付けようとしているのは見え見えである。
なら、ここで言うべきことは決まっている。
「美琴も一緒にやるってなら考えてもいいけどねえ?」
「はぁぁ!?///」
美琴の顔が一気に真っ赤になった。
「な、な、なんでアタシまでやらなきゃいけないのよ!!」
「いやあ、美琴の水着姿、皆も見たいんじゃないかなあ?」
結絆はニヤニヤしながら肩をすくめる。
「そうですね、御坂さんがご一緒なら私も安心できますし......」
帆風も微笑みながら頷く。
悪意がない分、帆風の言葉の方が美琴に刺さっていたりする。
「そ、それは......」
美琴はしどろもどろになりながら結絆を睨む。
「くっ......!わかったわよ!私もやるから、あんた達もやってよ!」
「うんうん、それでいいんだよお♪」
結絆は満足そうに笑った。
「まさか御坂さんと一緒に水着モデルをすることになるとは......」
帆風も少し照れくさそうにしながら微笑む。
こうして、結絆と帆風は美琴と共に水着モデルをすることになったのだった――。
学園都市・某スタジオ
結絆、美琴、帆風の三人が水着モデルの撮影会場に到着すると、すでに数名の知り合いが待っていた。
「やっほー!」
大きく手を振って駆け寄ってきたのは佐天涙子。
「御坂さん達もモデルやるんですね!」
その隣で控えめに微笑んでいるのは初春飾利。
「こんにちは、結絆さん、帆風さん」
「ふふっ、どうもお~」
結絆は軽く手を振り、帆風は柔らかく微笑む。
「お姉様!まさかとは思いましたが、本当に水着モデルをされるのですね!」
次に現れたのは、白井黒子。
「ま、まあね......」
美琴は気恥ずかしそうに頬をかく。
美琴が水着のモデルの撮影を押し付けようとしていた理由が、わかった気がする。
そして――
「皆さん、今日はよろしくてよ!」
高らかに声を上げたのは婚后光子。
彼女は自信満々の笑みを浮かべながら優雅に歩いてきた。
「おやおや、婚后さんまで参加するんだねえ?」
結絆は楽しげに問いかける。
結絆と婚后は、すれ違えば少し話す程度の仲である。
「ええ、ワタクシにぴったりのお仕事ですもの!こういう機会にこそ、常盤台の誇りを示すべきですわ!」
「フフッ、それならば私も負けられませんね」
帆風も気合いが入った様子で微笑む。
美琴は小声で結絆に囁いた。
「ねえ、なんか......いつの間にかメンバー増えてるんだけど?」
「まあまあ、大人数の方が楽しいからねえ、いいんじゃないかい?」
結絆は軽く肩をすくめた。
そして、撮影前にそれぞれが着る水着を選ぶことになった。
「うわ~!どれも可愛いですね!」
佐天はキラキラした目で水着が並ぶラックを眺める。
「黒子はどんなのにするの?」
「ワタクシはもちろん!お姉様とお揃いのものを......お姉様!この際どい競泳水着を!」
「却下!」
美琴が即座に却下する。
「ひどいですの......」
黒子はしょんぼりする。
「う~ん、悩みますね......」
初春は少し迷った様子で水着を手に取る。
「このフリル付きのとか、可愛いですね」
「おー、初春っぽいかも!」
佐天が笑顔で頷く。
「それなら、私はこれにしようかな?」
佐天は爽やかな青と白のストライプの水着を選ぶ。
一方、黒子は......
「お姉様は、やはりこういう肌がよく見えるタイプが似合いますのよ!」
黒子が差し出したのは、布面積の小さい水着だ。
「だから、なんでアンタは露出の高い水着を推してくるのよ!?」
「フフ、御坂さんにはこれも似合いそうですよ?」
帆風が手にしたのは、ラッシュガード付きのスタイリッシュな水着。
「おっ、これは結構いいかも......」
美琴は興味を示しつつも、どこか恥ずかしそうに目を逸らした。
「結絆さんは、どのような水着を?」
帆風が結絆に問いかける。
「そうだねえ......」
結絆は色とりどりの水着を眺め、ふとクールなブラックの水着に目を留めた。
「これとか、いいんじゃないかなあ?」
「おお~!結絆さん、シックな感じで攻めるんですね!」
佐天が興味津々に覗き込む。
「うふふ、似合いそうですわね」
婚后も満足げに頷いた。
こうして、それぞれの水着が決まり、撮影が始まるのだった――。
各人が水着を選んで着替えた後に、学園都市の最新技術を駆使したスタジオは、一瞬にして美しい砂浜へと変貌した。
どこまでも広がる青空、心地よい潮風、穏やかな波の音。
「おおっ、これが学園都市の最先端技術か!」
佐天涙子は目を輝かせながら、裸足で砂の上を軽く踏みしめた。
「本当に海にいるみたいですね」
初春飾利も驚きながら、そっと砂をすくってみる。
「砂もちゃんとサラサラしてますのね!」
婚后光子も優雅に砂浜を歩く。
「こりゃ、確かに本物のリゾート地みたいだねえ」
結絆は感心しながら、少し沖の方を見渡した。
そこには、白波がキラキラと輝く人工の海が広がっていた。
「まあ!まるで現実のような再現度......!」
帆風潤子も興味深そうに辺りを見回す。
「すごいわね、これ......」
美琴も驚いた様子で砂を指でつまみながら言う。
「お姉様と一緒に海を楽しめるとは、なんと光栄な......!」
黒子はうっとりした表情で美琴を見つめていたが、美琴はそれを完全に無視した。
「よし!せっかくだし、遊びながら写真撮ってもらおうよ!」
佐天の提案に、みんなも楽しげに頷く。
「では、まずは水遊びですわね!」
婚后が嬉しそうに手を叩いた。
「それならば!」
黒子が何かを企んだように、一瞬でテレポートして美琴の背後へ――
バシャアッ!
「うわっ!?」
美琴の背中に、冷たい水がかかる。
「ちょっ......黒子おおおお!!」
「うふふ、お姉様には涼しさが必要かと!」
「こ、の、や、ろー!!」
美琴は勢いよく黒子に水をかけ返した。
「キャッ!?お、お姉様、それは反則ですわ!」
「何が反則よ!自業自得でしょうが!」
こうして、美琴VS黒子の水かけバトルが勃発。
「ははっ、いいねえ、こういうの!」
結絆も波打ち際で軽く水をすくい、帆風の方へ。
「ふふっ、私に当てるつもりですか?」
帆風は軽やかにステップを踏み、水しぶきを華麗に避ける。
「おお、さすが......」
結絆は感心しながらも、ニヤリと笑って水をもう一度投げた。
しかし、それも帆風は華麗な身のこなしで回避。
「くぅ~、普段から鍛えてるだけのことはあるねえ」
「ふふっ、結絆さんがもう少し本気を出してくだされば、避けきれませんよ?」
「むむ、負けてられないねえ......」
結絆が作戦を練っていると、後ろから突然――
「えいっ!」
バシャッ!!
「うわっ!?」
振り返ると、にこにこ顔の佐天がいた。
「これは、見事にやられちゃったねえ」
「えへへ~、隙ありですよ!」
「ならば、お返しだよお!」
結絆はすぐさま水をすくい、佐天にかける。
「きゃっ!?うわー!」
「佐天さん、大丈夫ですか?」
初春が心配そうに近寄ると――
「よ~し、初春も巻き込んじゃえ!」
佐天はニヤリと笑い、初春に水をかけた。
「えっ!?わ、私は別に......きゃぁぁ!」
初春も巻き込まれ、どんどんカオスな水かけバトルへと発展していく。
そんな賑やかな光景を、小型のカメラが遠くからシャッターを切っていた。
「いや~、いいね!自然な笑顔の写真がたくさん撮れそう!」
撮影担当の女性がそう言った。
モデルらしくポーズを取る撮影もいいが、こうして自然に遊んでいる所を撮れば、自然に楽しそうな表情を引き出せるものである。
「はい、皆さん!今度は並んでポーズを取ってください!」
スタッフの声に、全員が並んでポーズを決める。
「はい、チーズ!」
パシャッ!
楽しげな笑顔と、まるで本物の砂浜のようなスタジオの背景が合わさり、最高の一枚が撮影された。
撮影を続けていた時のこと、
「......ん?」
最初に異変に気づいたのは結絆だった。
撮影が進み、皆が海を満喫していたそのとき――
ゴォォォォォ......!
どこか遠くで、巨大な波がうねるような音が響いた。
「今の音......?」
美琴が眉をひそめた瞬間、スタッフの悲鳴が響く。
「機材が――!うわぁぁっ!!」
「うそ!何が起こったの!?」
スタッフが慌てて振り返ると、異常が発生しているのが見えた。
最先端技術で作られた人工の海――本来なら学園都市の内部で完全管理されるはずのそれが、外の本物の海とつながってしまったのだ。
「......これは、イルカかい!?」
結絆が気づくと同時に、視界の端に黒い影が次々と現れる。
イルカの群れだった。
「イルカですか!?」
初春が驚きの声を上げる。
「なんでこんなに!?これ、何百匹もいるんじゃ......?」
佐天が慌てて後ずさるほど、次々とイルカが飛び跳ねて現れる。
「ど、どういうことなのでしょう?」
婚后も目を丸くして波打ち際へと視線を向けた。
「人工海の境界が、外の海とつながったんだねえ......」
結絆は額に手を当て、状況を整理する。
「つまり、今ここは......学園都市の外と直通になっているってこと?」
美琴の言葉に、皆が息をのむ。
「えっ、じゃあこのままだと、外の海水がどんどん流れ込んでくるんじゃ......?」
帆風が心配そうに辺りを見回した。
「こりゃ、大変なことになったねえ......」
しかし、異変はそれだけではなかった。
「......あれ?」
結絆の目に、一匹だけ異様な雰囲気を纏ったイルカが映る。
通常のイルカとは違い、その肌はどこか金属的な光沢を帯びていた。
そして、その体の周囲には、まるで帆風の「天衣装着」に似た光の粒子が漂っている。
「まさか......」
結絆は、思わず息をのんだ。
「どうしたんですか?」
佐天が不思議そうに覗き込む。
「......あのイルカ、普通じゃないねえ」
結絆は目を細めながら、その異質なイルカを見つめ続けた。
「まるで......『天衣装着』みたいな光を放ってる」
「えっ......?」
帆風が結絆の視線を追うと、彼女も驚きの表情を浮かべる。
「結絆さん、あれは......!」
帆風が言いかけた瞬間――
シュバァッ!
そのイルカが突如として高速で動き、結絆の目の前にまで跳び上がった。
「――!?」
間近で見ると、そのイルカの皮膚には無数の傷跡が刻まれ、まるで歴戦の猛者のように見えた。
「やっぱり、こいつ......過去の実験で逃げた個体だねえ」
結絆は静かに呟いた。
「過去の実験......?」
美琴が訝しげに問いかける。
「......学園都市はかつて、『天衣装着』を動物に適用しようとしていた時期があったんだよお」
結絆は穏やかに語るが、その瞳の奥には冷ややかな怒りが宿っていた。
「でも、動物に『天衣装着』を組み込むのは不安定で、結局実験体のほとんどは処分された......」
「......けど、あのイルカは?」
「逃げたんだろうねえ......学園都市のどこかで、ひっそりと生き延びてたんだよお」
「......そんな......」
初春は驚き、佐天も眉をひそめた。
「結絆さん......」
帆風が心配そうに声をかける。
「まあ、当然......放っておく気はないよお」
結絆は水面を歩きながら移動し、イルカの前にしゃがみ込み、優しく手を差し出した。
「これまで大変だったねえ、お前さん、俺の言葉は......分かるかい?」
イルカは一瞬、警戒したように身を引いたが、しばらくすると結絆の手にそっと鼻先を近づけた。
「......お前も、苦労したんだねえ」
結絆は微笑みながら、イルカの頭を軽く撫でた。
「もう大丈夫。俺達が......お前を守るよお」
イルカはしばらくじっと結絆を見つめた後、静かに目を閉じ、安心したように頷いた。
「......この子を、保護しましょう」
帆風が静かに言う。
「そうだねえ。もう二度と......あんな実験を繰り返させないためにも」
結絆はゆっくりと立ち上がり、イルカを見つめながらそう誓った。
その後......
機材トラブルはスタッフの手によってすぐに修復され、人工海と外の海の接続は解除された。
しかし、その場に取り残された一匹の特別なイルカは、ドリームの拠点であるマジックシアターにある水族館で保護されることとなった。
「結絆様、名前はどうしますか?」
帆風が尋ねると、結絆は少し考えてから微笑んだ。
「そうだねえ......『アトラス』ってのはどうかい?」
相変わらずの、謎ネーミングセンスである。
「アトラス......素敵な名前です!」
帆風は結絆にべた惚れなので、結絆に賛同した。
こうして、新たな仲間――天衣装着を纏うイルカ「アトラス」が、結絆たちと共に生きることになったのだった。
水着の撮影会が無事に終わり、結絆たちは会場の一角に設置されたアウトドアキッチンへと移動した。
「いやー、なんだかんだで楽しかったですね!」
佐天が笑顔でタオルで髪を拭きながら言うと、初春も頷いた。
「そうですね!でもちょっとお腹がすきました......」
「おぉっ、ちょうどいいタイミングだねえ」
結絆は手を叩き、テーブルの上に並べられた食材を指さした。
「せっかくだから、カレーでも作ろうかねえ」
「カレー!?いいわねー!」
美琴の目が輝いた。
「お鍋とか、ちゃんとあるのか心配ですわ......」
婚后が心配そうに尋ねると、黒子がスタッフと話をつけたらしく、アウトドア用の調理器具がすぐに用意された。
「カレー作りとか、すっごく楽しそうじゃん!」
佐天はワクワクしながらエプロンをつける。
「じゃあ、皆で分担して作っていくよお」
結絆の言葉に、自然と役割分担が決まった。
「まずは材料を切るとこからね!」
美琴は包丁を握りしめ、玉ねぎをまな板の上に置いた。
「御坂さん、玉ねぎを切るときは目にしみるので気をつけてくださいね?」
初春が注意を促すが――
「え? そんなの平気――あっ、目がっ!?」
「だから言ったじゃないですかー!」
目をこすりながら涙目になる美琴。
「じゃあ、こっちは私がやりますよ」
帆風が手際よく玉ねぎを刻み始める。
「......さすが、料理慣れしてるんだねえ」
結絆が感心すると、帆風は少し照れたように微笑んだ。
「私、寮で自炊することが多いので♪」
一方、佐天はじゃがいもの皮をむいていたが――
「むむっ、このじゃがいも大きいね、むくの大変だよ......!」
「佐天さん、もうちょっとゆっくりやった方がいいですよ!」
初春がサポートしながら、なんとかじゃがいもを処理していく。
「婚后さんは料理とかするんですか?」
「え、ええ、一応......」
「......本当なの?」
美琴がじっと婚后を見つめると、婚后はむっとして手を振った。
「わ、私は優雅なティータイムのお菓子作りなら得意ですわ!」
「つまり普通の料理はダメと......」
「ちょ、ちょっと!その言い方は失礼ですわよ!」
「じゃあ、婚后さんはお米研ぎをお願いしますね!」
「お、お米研ぎ......」
戸惑いながらも婚后はボウルに水を入れ、真剣な表情でお米を研ぎ始めた。
「おぉ、いい香りがしてきたねえ」
各々が切った肉や野菜やルーを入れて、結絆が鍋をかき混ぜると、スパイスの香りが広がる。
「美味しそう~!」
佐天が目を輝かせた。
「ご飯も炊き上がりましたわ!」
婚后がふっくらと炊けたご飯を見せると、皆が歓声を上げた。
「じゃあ、盛り付けして......」
「いただきます!」
皆でカレーを皿によそい、一口食べる。
「......んっ!これ、すっごく美味しい!」
美琴が感動しながらスプーンを進める。
「肉と野菜のバランスも絶妙ですね!」
初春も満足そうに微笑む。
「おかわり自由だよお、たくさん食べるんだよお」
結絆の言葉に、皆は笑顔でカレーをおかわりするのだった。
こうして、撮影会は無事に終了したのだった。
日常会は、書いてて楽しいですね。
僕もカレーが好きなので、よくお店に行って食べたりしてます。