ある日の午後、結絆は操祈に連れられてショッピングモールの服屋に来ていた。
操祈から、当麻が好きそうな服を選んでほしいというお願いをされて、結絆は妹の買い物に付き合うことになったのである。
店内には色とりどりの服が並び、ファッションに興味のある操祈は目を輝かせていた。
「ねえねえ、お兄様ぁ。この服とかどうかしらぁ?」
操祈は淡いピンクのワンピースを手に取り、鏡の前で合わせてみせた。
「うーん、似合ってるとは思うけどねえ......」
結絆は少し考え込むように顎に手を当てた。
「でも、それって当麻が喜びそうな服なのかなあ?」
操祈はその言葉にハッとし、視線を落とした。
「そうよねぇ......当麻に可愛いって思ってもらえるのが一番大事よねぇ。」
結絆と操祈と当麻は、明日から学園都市を離れて海へ遊びに行くので、操祈はやる気にあふれている。
結絆は店内をぐるりと見渡し、いくつかの服を選び始めた。
そして、シンプルで清楚な白のブラウスと、ふんわりとした青のスカートを手に取る。
「これなんてどうだい?爽やかだし、当麻好みの清楚系って感じじゃないかい?」
操祈は受け取った服をじっくり眺めると、ふわりと微笑んだ。
「うふふ、いいかもぉ。当麻って、こういうの好きそうよねぇ。」
「まあ、アイツのことだから、どんな服でも照れながら『似合ってるぞ!』とか言いそうだけどねえ。」
結絆が肩をすくめると、操祈はクスクスと笑った。
「でもぉ、やっぱり特別に気に入ってくれる服を選びたいじゃない?」
「ま、それもそうだねえ。」
操祈は選んでもらった服を抱きしめ、嬉しそうに試着室へと向かった。
結絆はそんな彼女を見送りながら、微笑ましく思うのだった。
しばらくして、試着室のカーテンが開き、操祈がゆっくりと姿を現した。
白のブラウスとふんわりとした青のスカートが彼女の雰囲気にぴったりと馴染んでいる。
「お兄様ぁ、どうかしらぁ?」
操祈はくるりと一回転し、スカートの裾を軽く揺らした。
その仕草がなんとも愛らしく、結絆は思わず笑みがこぼれる。
「うん、凄く似合ってるよお。」
結絆は素直にそう言い、操祈も満足そうに微笑んだ。
「うふふ、お兄様にそう言ってもらえるなら、当麻も気に入ってくれるかしらぁ?」
「多分気に入ってくれると思うよお。早速、明日から着たらいいと思うよお」
結絆がそう言うと、操祈は満足げに鏡の前で再び服をチェックしながら、嬉しそうに頷いたのだった。
ショッピングモールでの買い物を終えた結絆と操祈は、夕暮れの街を並んで歩いていた。
操祈は満足げに袋を抱え、軽やかな足取りで結絆の横を歩く。
「お兄様ぁ、今日は付き合ってくれてありがとぉ♪感謝してるんだゾ☆」
「まあ、操祈の喜ぶ顔を見られるのは嬉しいからねえ。」
結絆は肩をすくめながら、夕日に染まる通りを見渡す。
すると、操祈がふと立ち止まり、にっこりと微笑んだ。
「お兄様、お礼としてぇ、晩ご飯は私のおごりでいいわよぉ♪ 何か食べたいものあるかしらぁ?」
「いいのかい? じゃあ遠慮なく......って言いたいところだけどお、折角だから、操祈のおすすめの店にしようかなあ。」
「うふふ、お兄様ったら、いい選択するじゃなぁい♪じゃあ、私の行きつけのお店に案内してあげるわよぉ。」
操祈は楽しそうに笑いながら、モール近くの飲食店が立ち並ぶエリアへと足を向けた。
二人が最初に訪れたのは、オシャレな雰囲気のカフェレストラン。
しかし、店の前にはすでに長蛇の列ができており、店員が申し訳なさそうに頭を下げる。
「申し訳ありません。ただいま満席で、1時間以上お待ちいただくことになりますぅ。」
「ええ~、そんなにぃ?」
操祈は不満げに唇を尖らせたが、仕方なく次の店へ向かった。
二軒目は、隠れ家的なイタリアンレストラン。
操祈のお気に入りの一つらしく、期待を込めてドアを開けたものの......
「申し訳ありません。予約でいっぱいでして......。」
「うそぉん......。」
操祈は肩を落としながら、再び店を後にした。
三軒目は、操祈が当麻と時々食べに行ってる、学園都市の学生たちに人気のあるボリューム満点の定食屋。
しかし、ここも店の外まで人が並び、すぐに入るのは難しそうだった。
「な、なんでどこもこんなに混んでるのよぉ......。」
操祈は困惑した様子で、結絆を見上げる。
結絆は苦笑しながら、混み合った通りを見渡した。
「今日は特に混んでるみたいだねえ。どうする? もう少し探すかい?」
「うぅ~......ここまで来たら、意地でも美味しいものを食べるわよぉ!」
そう意気込む操祈だったが、果たして二人は無事に晩御飯にありつけるのだろうか。
二人はさらに店を探して歩き始めた。
操祈はスマートフォンを取り出し、行きつけの店がどこも満席である理由を探り始めた。
予約サイトやレビューを確認するうちに、ある事実に気が付いた。
「......あらぁ?」
画面に映るのは自身のSNSアカウント。
そこには数日前に投稿した『今日の夜は〇〇でご飯食べよっと♪ ここの〇〇が最高なのよねぇ』という呟きが表示されていた。
さらにリプライ欄には、『蜂の女王さんのおすすめなら間違いない!』『行ってみます!』といったフォロワーたちのコメントがずらりと並んでいる。
補足だが、操祈は『蜂の女王』という名前でSNSをしている。
操祈の派閥のメンバー達は、操祈の投稿によくコメントを付けていたりする。
「もしかして、私のせい......?」
操祈は呟きを遡りながら、過去にも同じような現象が起きていたことに思い当たった。
自らの影響力の大きさを改めて痛感し、ため息をつく。
「お兄様......どこも入れないわぁ......」
「なるほどねえ。操祈の呟きが原因だったとは......これは予想外だったねえ」
結絆は苦笑しながらスマートフォンを操作し、何かを調べ始めた。
「まあ、これも操祈が人気である証拠だねえ。でも、せっかくお礼にごちそうしてくれるって話だったのに、どこにも入れないんじゃ困るなあ......よし、任せて」
「え?」
操祈が不思議そうに結絆を見つめる中、結絆は電話をかけた。
落ち着いた口調で店員と会話し、数分後にはにっこりと笑う。
「予約完了。フレンチだけど、大丈夫かい?」
「お兄様......!さすがだわぁ!」
操祈は結絆の腕にしがみつきながら、満面の笑みを浮かべた。
「うふふ、期待しちゃうわねぇ♪」
こうして、操祈の呟きによる混雑という予想外の事態を乗り越え、二人は結絆が予約したフレンチレストランへと向かうのだった。
レストランに到着すると、柔らかな照明が落ち着いた雰囲気を醸し出し、店内には心地よいクラシック音楽が流れていた。
操祈は目を輝かせながら席に着き、メニューを広げる。
「わぁ......どれも美味しそうねぇ」
「フレンチだから、コースで楽しめるよお。せっかくだし、じっくり味わおうかあ」
「そうねぇ♪」
二人はそれぞれ、自分の食べたいコースを頼んだ。
少し待っていると、まずは前菜のカルパッチョが運ばれてきた。
新鮮な魚とハーブが美しく盛り付けられており、操祈は一口食べると幸せそうに微笑んだ。
「うん、おいしいわぁ......お兄様、やっぱりフレンチを選んで正解ねぇ」
「だろう? こういう店は頻繁には来られないし、たまにはこういうのもいいよねえ」
続いて運ばれてきたのは、濃厚なフォアグラのソテーにトリュフソースがかかった一皿。
操祈はフォークで一口分を切り取り、口に運ぶ。
「ん......ふふっ、これは最高ねぇ♪」
結絆も同じように味わいながら、満足げに頷いた。
「フレンチの魅力は、素材の味を引き出す技術にあるんだよねえ。こういう料理を食べると、シェフの腕の良さがよくわかる」
やがてメインディッシュとして、牛フィレ肉のステーキが提供された。
ナイフを入れると柔らかく、ジュワっと肉汁が溢れ出す。
操祈は感嘆の声を漏らしながら、ソースと共に味わった。
「これはもう......幸せすぎるわぁ......」
「満足してもらえたなら、俺としても嬉しいよお」
最後は、デザートとして、華やかに盛り付けられたフルーツタルトと濃厚なチョコレートムースが運ばれてきた。
操祈は最後の一口までじっくり堪能し、満足げに微笑む。
「お兄様、本当にありがとう。今日は最高の一日になったわぁ♪」
「お礼を言うのはこっちの方だよお。操祈が楽しんでくれたなら、それが一番だからねえ」
こうして、美味しい料理と楽しい会話を堪能した二人は、満足感に包まれながらレストランを後にしたのだった。
前半は買い物、後半はディナーという形になりました。
フレンチのコースはいいですよね!
次回からは、御使堕し編になります。