海の家での出会い
夏の日差しが照りつける中、結絆、当麻、そして操祈の三人は、海沿いの道を歩いていた。
潮風が心地よく吹き抜け、遠くには波打ち際で遊ぶ人々の姿が見える。
「まさか、当麻の実家の近くまで遊びに来ることになるなんてねえ」
結絆が軽く伸びをしながら言うと、当麻は苦笑いしながら肩をすくめた。
「まぁ、せっかくだし、うちの近くの海の家でも楽しんでってくれよ」
「それにしても、当麻やお兄様とこうして海に来ることになるなんてねぇ。ふふっ、楽しみだわぁ」
操祈は笑いながら当麻の腕に軽くしがみつく。
当麻は少し照れながら、海の家の方へと歩みを進めた。
結絆達は、海の家に到着した。
海の家は木造のシンプルな作りで、焼きそばやかき氷を売るカウンターの前には多くの客が列を作っていた。
「わぁ~、思ったより賑やかねぇ」
操祈が周囲を見渡しながら言う。
「夏休みだし、やっぱ賑わってるな!そうだ、ここの焼きそばとか結構美味いんだぜ」
当麻が自慢げに言いながら席を探していると、ふと後ろから懐かしい声が聞こえた。
「......あれ? 当麻か?」
振り返ると、そこには穏やかな表情の若々しい女性と、少し驚いた様子の男性が立っていた。
当麻の両親とはもう少し後の時間に会う予定だったが、思いのほか早く会うことになったなと、結絆は思う。
「......えっ!? 父さん!? 母さん!? なんでここに!?」
当麻が驚いて声を上げると、当麻の母・詩菜は微笑みながら言った。
「だって、ここは家からすぐ近くなんですもの。当麻さん達に会う前に海を見に来たいなって思って」
「お前こそ、久しぶりに帰ってきたと思ったら、友達を連れてきたのか?」
当麻の父・刀夜は腕を組みながら息子を見つめる。
「ま、まぁな。紹介するよ。こっちは食蜂結絆、こっちは食蜂操祈」
「ふふっ、はじめましてぇ」
操祈が軽く手を振ると、詩菜は目を輝かせながら「まぁ、可愛いお友達ね!」と嬉しそうに言った。
「よろしく頼むよお」
結絆も軽く会釈するが、当麻の父は彼をじっと見つめていた。
「......ん? 二人とも食蜂......ってことは、君は、食蜂操祈ちゃんの兄さんってことか?」
「そういうことだよお」
「なるほど......道理で似ているというわけだな」
当麻の父は興味深そうに結絆を見た後、にやりと笑った。
「せっかく来てくれたんだ。何か奢ってやろう。遠慮せずに好きなもの頼んだらいいよ!」
「いいんですかぁ? じゃあ、かき氷と焼きそばと、たこ焼きもお願いしちゃおうかしらぁ?」
「おいおい、欲張りすぎだろ......」
当麻が呆れたように言うが、詩菜は「あらあら、いっぱい食べてね」と微笑んだ。
こうして、結絆達は当麻の両親と共に、海の家で楽しいひとときを過ごすことになるのだった。
海の家のテーブルに並んだ料理の香ばしい匂いが潮風に混じる中、結絆達は当麻の両親と和やかに談笑していた。
「それにしても当麻、男友達だけじゃなくてこんな綺麗な女の子まで連れてくるなんて、やるじゃないか!」
当麻の父はにやりと笑いながら息子をからかった。
「そ、そんなんじゃねぇって......!」
当麻は慌てた様子で手を振るが、隣に座る操祈はそんな彼の腕に絡みつき、にこりと微笑んだ。
「ふふっ、でもぉ、そろそろちゃんと言った方がいいんじゃなぁい?」
「えっ?」
「ほらほらぁ、ごまかさないで?」
操祈が意地悪く微笑むと、当麻は観念したように息を吐いた。
そして、少し照れくさそうに両親の方を向き、真剣な表情で口を開いた。
「......あのさ、父さん、母さん。実は俺、操祈と付き合ってるんだ」
その言葉に、一瞬の静寂が訪れる。
「......えっ?」
最初に驚いた声を上げたのは詩菜だった。
ぱちぱちと目を瞬かせながら、操祈と当麻を交互に見つめる。
「本当なの、当麻さん?」
「本当だよ。俺、操祈と付き合ってる」
当麻がはっきりとそう言うと、操祈は「当麻は本当にかっこいいんだゾ☆」と嬉しそうに微笑みながら当麻の腕にぎゅっとしがみついた。
「なのでぇ、これからよろしくお願いしまぁす、お義父さん、お義母さん」
にっこりと笑う操祈に、詩菜は「まぁ!」と目を輝かせた。
「素敵だわ~! こんな可愛くて素敵な子が当麻さんの彼女だなんて、お母さん嬉しい!」
「おいおい、母さん......」
当麻の父は苦笑しながら腕を組んだ。
そして、操祈をじっと見つめ、少し真剣な表情になる。
「......当麻のこと、本当に大切に思ってくれているかい?」
「もちろんよぉ。私はぁ、当麻のことが大好きよぉ!」
操祈は少しも迷うことなく、柔らかな笑顔でそう答えた。
その言葉に、当麻の父はしばらく彼女を見つめた後、ふっと小さく笑った。
「......よし。だったら、息子を頼む」
「んふふっ、ありがとうございますぅ♪」
操祈が嬉しそうに微笑むと、詩菜もニコニコと満面の笑みを浮かべた。
「じゃあ、お祝いにかき氷おかわりしちゃいましょうか!」
こうして、当麻の両親に正式に操祈を紹介するという一大イベントは、温かな雰囲気の中で幕を閉じたのだった。
その日の夜、結絆達は、予約をしていた旅館でくつろいでいた。
「当麻ぁ、今日の私の服装はどうだったかしらぁ?」
操祈が、上目遣いで当麻を見つめる。
「あぁ、めっちゃ似合ってたぞ!」
当麻が照れながらそう返す。
そして、それを聞いた操祈の顔も赤くなる。
「二人とも付き合い始めてから2年はたってると思うけど、まだまだ初々しいねえ」
二人の様子を見ながら、結絆はそう呟いた。
翌朝、夏の陽射しがじりじりと降り注ぐ中、結絆達は今日も海へ向かっていた。
潮の香りが心地よく、朝の静かな浜辺に波の音が響いている。
「ん~、今日もいい天気ねぇ♪」
操祈が伸びをしながら微笑み、隣を歩く当麻も「だな」と軽く頷く。
「今日は当麻の従妹が来るんだって?」
「竜神乙姫、だっけ? どんな娘なんだい?」
結絆が尋ねると、当麻は少し困ったような表情を浮かべた。
「まぁ、ちょっと変わった奴だけど、根はいい奴だよ。元気で、おしゃべりで、なんか妙にお転婆な雰囲気を醸し出してるんだけどな」
「なるほど......美琴と似た雰囲気を感じるねえ。それはそれとして、会うのが楽しみだねえ」
結絆が興味深そうに頷いたところで、待ち合わせ場所に着いた。
「おーい! お兄ちゃーん!」
明るい声が響き、一人の少女が駆け寄ってきた。
当麻よりも少し薄い黒の髪色をした小柄な彼女は、元気いっぱいの笑顔を浮かべている。
「よぉ、乙姫。久しぶりだな」
当麻が手を挙げると、乙姫はパッと表情を輝かせた。
「本当に久しぶり! それにしてもお兄ちゃん、相変わらず元気そうで何より!」
そして、彼女の視線が結絆や操祈に移る。
「ん? そちらの方々は?」
「ああ、こっちは食蜂操祈、俺の彼女で——」
「よろしくねぇ、乙姫ちゃん♪」
操祈がウインクをすると、乙姫は「おおっ!」と感心したように頷く。
「すごい美人! やるじゃない、お兄ちゃん!」
「ほら、びっくりするほど元気いっぱいだろ......」
当麻が苦笑する中、乙姫の視線は結絆に向いた。
「それで、そっちの綺麗な人は?」
「俺は食蜂結絆、操祈の兄だよお。そんなに見つめられると照れるねえ?」
結絆が、冗談を言いながら肩をすくめると、乙姫は目を丸くする。
「......え、ちょっと待って。お兄ちゃん、この人って——」
しかし、乙姫の疑問が言葉になるよりも早く、異変は起こった。
結絆は、それを第六感で事前に察知して、原典の力で防いだ。
「お、おい!? なんだこれ......?」
当麻の声が驚きに満ちたものに変わる。
操祈が不思議そうに周りにいる人達を見た瞬間、彼女の表情が固まった。
周囲の人々の姿が、変わっているのである。
乙姫の姿が美琴に変わっているのを見て、結絆も異変に気付く。
「......なるほどねえ、これはまた厄介なことになったねえ」
「いやいや、そんな悠長に言ってる場合じゃねえだろ!?」
当麻がツッコミを入れるが、彼自身の姿は変わっていない。
そして、驚くべきことに、近くで海を楽しんでいた刀夜の姿も、普段のままだった。
「俺達の姿はそのままなのに、他の皆は......誰かと入れ替わってる?」
「ふむ......どうやら、そのようだねえ」
結絆は冷静に周囲を見渡す。
そこには普段の姿とは全く異なる人々が、普段と変わらない生活を送っていた。
「いったい何が起こってるのよぉ!?」
操祈の悲鳴が響く中、異変の原因を探るための調査が始まるのだった——。
御使堕しが発動しました。
当麻が記憶喪失じゃないので、原作と流れがかなり変わっていますが、大枠は原作に合わせていこうと思います。
結絆については、原典の自己防衛機能を利用して、御使堕しの範囲から外れたと思ってもらえたら大丈夫です。