食蜂操祈のお兄様   作:とんこつスープ

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今回は、土御門元春が出てきます。


土御門元春

 朝日がカーテンの隙間から差し込み、室内をぼんやりと照らしていた。

 

結絆はソファに座り、欠伸を噛み殺しながらリモコンを手に取る。

 

「おはよう、当麻。操祈も、ちゃんと起きてるかい?」

 

「ん......もうちょっとぉ......」

 

操祈は、気持ちよさそうな顔で爆睡しているようだ。

 

「おい、朝だぞ。寝ぼけてる場合じゃねぇって......」

 

当麻は目をこすりながら、なんとか操祈を起こそうと努めていた。

 

 

 

 結絆は適当にテレビをつけた。

 

ニュース番組が流れ、画面には一人の男が堂々と演説をしている姿が映し出される。

 

「――Yes We Can!!」

 

アメリカ大統領、ロベルト=カッツェ。

 

その特徴的な口調と身振りを交えたスピーチが、テレビを通じて伝わってくる。

 

しかし、異変のせいで、彼の姿は白井黒子になっていた......

 

「......相変わらず風格だけは一流だねえ」

 

 結絆は肩をすくめ、呆れたようにため息をついた。

 

「あの大統領、カリスマ性はあるけど、知性はどこかに置き忘れてるんだよねえ」

 

「え、お前......あの大統領と知り合いなのか?」

 

当麻が驚いた様子で結絆を見た。

 

「まあねえ。ちょっと前に、会ったことがあるんだよお」

 

「マジかよ......いや、待て。お前、なんでアメリカの大統領と会うような立場にいるんだ?」

 

結絆はニヤリと笑い、当麻の肩を軽く叩いた。

 

「秘密だよお。当麻にはまだ早いかなあ?」

 

「うわぁ、絶対ロクなことじゃねぇ......」

 

「当麻も、そのうち彼と会うことになると思うよお」

 

「お前が言うと冗談に聞こえないんだよ!」

 

結絆が楽しげに笑う中、テレビの中ではロベルト=カッツェがまだ熱弁をふるっていた。

 

そして、当麻とロベルト=カッツェが本当に会うことになるのは、もう少し先のお話......

 

 

 

 「......やれやれ、面倒くさいことになったな」

 

額に手を当てながら、海の家へと続く道を歩いてくる男がいた。

 

金髪にサングラス、そしてどこか軽薄な雰囲気を持つ男——土御門元春だった。

 

「妙な話を聞いたぜ、カミやん」

 

旅館の前で困惑した表情を浮かべる当麻達を見つけるなり、元春は溜息をついた。

 

「土御門?なんで、お前がここにいるんだ?」

 

当麻が首をかしげる。

 

一方で、結絆はおおよその理由を察する。

 

「それは後で話すとして、お前ら、何かとんでもねぇことに巻き込まれてるんじゃないのかにゃー?」

 

「やっぱり土御門、お前も気付いたのか」

 

当麻が腕を組みながら呟く。

 

「......つっても、科学サイドの住民で気付いてるのは俺達だけみたいってことぜよ。」

 

元春の視線が、当麻、操祈、結絆へと移る。

 

そして、周囲に目を向けると、他の人々はまるで異変などないかのように、日常を過ごしていた。

 

「ほお......これはどういうことだい?」

 

結絆は疑問を隠せない様子で腕を組む。

 

「姿が変わったのは、おそらくお前達以外の全員。でも、変わった本人達はそのことにまったく気付いていない......って感じだにゃー」

 

「つまりは記憶や認識にも影響があるってことかしらぁ?」

 

操祈が指を顎に当てながら考える。

 

「それもあり得るな。ってことは、誰かが意図的にこの現象を引き起こしてるってことか?」

 

当麻もわからないなりに推測する。

 

「......まあ、それを探るのが俺っちの役目ってワケだにゃー」

 

元春は軽く肩をすくめながら、サングラスを外した。

 

「カミやん、結絆、ちょっといいかにゃー?」

 

彼は周囲を気にしながら、結絆と当麻を人目の少ない場所へと誘導した。

 

ついでに操祈もついてくる。

 

「......どういうことだ、土御門?」

 

当麻が訝しげに尋ねると、元春はいつもの軽い口調を封印し、真剣な声で答えた。

 

「俺はな、魔術サイドの人間だ」

 

「......は?」

 

「知ってるよお?」

 

当麻がポカンとした顔をする。

 

「おいおい、カミやん、お前さんも色々な魔術師と関わってるってのに、今さら驚くなよ。結絆、お前は知っていたのか......」

 

「いや、まぁ......そうだけど、お前がそうだったとは......結絆については、もう驚かないぞ!」

 

「俺も元春も、科学と魔術の闇に関わっているからねえ、だからといって俺達の関係が変わるわけじゃないから気にすることでもないねえ」

 

元春はため息をつく。

 

「ふぅん......つまりは、元春さんは科学ではなく魔術の世界に生きる人間ってことかしらぁ?」

 

操祈は腕を組みながら考えるような仕草を見せた。

 

「半分正解だな。」

 

元春は軽く肩をすくめた。

 

「俺はな、学園都市のスパイをやりながら、裏で魔術サイドのスパイもやってる。言ってみりゃ、二重スパイってやつだ。」

 

「なるほどねえ......」

 

それは言っていい情報なのだろうか......結絆が目を細めながら、じっと元春を見つめる。

 

「さて、本題に戻るが......この異変、間違いなく魔術の仕業だ」

 

元春の言葉に、当麻達はさらに表情を引き締める。

 

「何か心当たりがあるのか?」

 

当麻が問うと、元春は小さく頷いた。

 

「まぁな。ただし、ここから先は下手に口に出すのも危険な領域だぜ?」

 

「そんなこと言われても、もう巻き込まれてるんだ。詳しく教えてくれ」

 

当麻が真剣な眼差しで訴えると、元春は一度深く息を吐いた。

 

「......わかった。ただし、場所を変えよう。さっきの話よりも重要度は上だ。」

 

「なら、俺の拠点の一つを使うとしようかねえ?」

 

結絆がにやりと笑い、背後の空間を指でなぞった瞬間——

 

バシュッ!!

 

そこに新たな扉が現れた。

 

「さぁて、これからじっくり話を聞かせてもらうとしようかねえ?」

 

不敵に微笑む結絆の誘いに、元春は苦笑しながら扉の向こうへと足を踏み入れた。

 

 

 

 

 結絆の力によって転移した先は、学園都市内にあるドリームの拠点の一つだった。

 

外見はただの古びたビルの一室だが、内部は情報収集や作戦会議のために改造されたハイテクな空間になっている。

 

「さて、話の続きといこうかねえ?」

 

結絆は椅子に腰掛けながら、腕を組んで元春を見た。

 

元春は溜息をつきながら、適当な椅子に腰を落ち着けると、話し始めた。

 

「......今回の入れ替わり現象の原因だがな、これは魔術によるものだ。科学じゃ説明がつかない」

 

「それはさっき聞いたけどぉ、それで? いったいどんな魔術が原因なのかしらぁ?」

 

操祈が髪をいじりながら尋ねると、元春は神妙な表情になった。

 

「この異変を引き起こしてるのは、『御使堕し(エンゼルフォール)』と呼ばれる術式だ」

 

「......エンゼルフォール?」

 

当麻が眉をひそめる。

 

「おそらく、発動したのはこの付近だ......候補地は、カミやんの実家の近くだな」

 

「は? ちょっと待て! 俺の実家の近くってどういうことだよ!?」

 

「言葉通りの意味だ。カミやんの実家の周辺が発動地点になった可能性が高い」

 

元春は、真剣な目で当麻を見つめた。

 

「御使堕しは、天使に関わる超大規模な魔術だ。その影響で、世界中の人間の見た目が入れ替わっちまった。ただし、術式の影響を受けない特殊な条件を持つ人間——確認できてる範囲だと、カミやん、結絆、操祈ちゃん、その三人だけが無事だったってわけだ」

 

「な、なんで私達だけ影響を受けなかったのかしらぁ?」

 

操祈が不思議そうに首を傾げると、結絆は自らの推測を話す。

 

「昨日、乙姫ちゃんと喋ってた時に、操祈は当麻と手をつないでいたよねえ。幻想殺しの効果で御使堕しの影響を受けなかったんじゃないかい?」

 

「なるほどな。御使堕しは"天使"に関わる術式だ。カミやんはその右手が、そしてカミやんと手をつないでいた操祈ちゃんは影響を受けなかった可能性がある。原理はわからないが、おそらく結絆も、何らかの理由で影響を受けなかったんだろうな」

 

結絆の規格外っぷりには、流石の元春も匙を投げたらしい。

 

「ふーん......まあ、どんな術式かは大体わかったけどぉ、それで何か問題でもあるのかしらぁ?」

 

「ある。大問題だ」

 

元春は重々しく頷いた。

 

「御使堕しの影響で、"本物の天使"が現世に降りてきちまってる」

 

「——っ!」

 

場の空気が一気に張り詰めた。

 

「天使が降りてきてる、だと?」

 

結絆は興味深そうに目を細めた。

 

「おいおい、マジかよ......。天使っていわゆる"神の使い"ってやつだろ? それが現世に?」

 

当麻も驚きを隠せない。

 

「そういうことだ。普通、天使が人間界に干渉することは許されてねぇ。だが、御使堕しが発動したことで、その境界が曖昧になっちまった。しかも、今のところ何体の天使が降臨しているのかもわかってないんだ」

 

「ふぅん......つまり、御使堕しを解除しないと、天使が暴れ回るかもしれないってことかしらぁ?」

 

操祈は面白がるような口調で言ったが、その表情はどこか緊張していた。

 

「最悪の場合、そうなるな」

 

元春は真剣な表情で続ける。

 

「御使堕しの影響で、今の世界は本来の"法則"が崩れ始めてる。天使は圧倒的な力を持つ存在だが、本来この世に存在するべきじゃない。長く居座れば居座るほど、世界そのものに異常が出る可能性がある」

 

「それを防ぐにはどうすればいいんだ?」

 

当麻が問いかけると、元春は一瞬だけ躊躇った後、答えた。

 

「単純な話だ。術式を発動させた術者を見つけて、止めるしかねぇ」

 

「......発動させた奴を探し出す、か」

 

結絆は考え込むように顎に手を当てた。

 

「どんな奴がやったかの見当はついてるの?」

 

「それが、まだ確証がねぇんだ。ただ、御使堕しは発動するだけでも高度な魔術知識と膨大な魔力を必要とする。普通の魔術師にできるようなもんじゃない」

 

元春は腕を組み、険しい表情を浮かべた。

 

「......とはいえ、俺達には時間がねぇ。天使の力が完全に解放される前に、何とかしないといけねぇな」

 

「つまり、さっさと発動地点に向かって、術者を見つけてぶっ飛ばせばいいってことねえ?」

 

結絆は軽く笑いながら立ち上がった。

 

「それができれば話は早いが......問題は"天使"がそれを許すかどうか、だ」

 

元春の言葉に、当麻達は一瞬沈黙した。

 

「......なるほどな。つまり、天使そのものとも戦う覚悟が必要ってことか」

 

当麻は拳を握りしめる。

 

「まっ、どうせ巻き込まれちまったんだ。最後まで付き合ってやるよ」

 

「ふふっ......まぁ、退屈しなくていいんじゃないかしらぁ?」

 

操祈も不敵に微笑む。

 

「それじゃあ、早速向かうとしようかねえ。ひとまずの目的地は当麻の実家......ってことでいいんだろう?」

 

結絆は元春を見た。

 

「そういうことだ。......頼むぜ、カミやん、結絆、操祈ちゃん」

 

元春は力強く頷いた。

 

こうして、御使堕しの発動地点へと向かうため、結絆達は動き出した——。




当麻が操祈や結絆とよくつるんでいる結果、元春を出しにくくなってしまってます......

次回も、元春はちゃんと出てきます。
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