食蜂操祈のお兄様   作:とんこつスープ

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今回で、御使堕し編はおしまいです。


戦いの後の休息

 御使堕しを解決した結絆達、彼らは改めて海に来ていた。

 

「ふぅー......やっぱり海はいいねえ」

 

結絆は波にぷかぷかと浮かびながら、目を細めて空を見上げた。

 

昨日、天使が降臨したことが嘘であるかのように、今日は静かで穏やかな海が広がっている。

 

「なんかにゃー、あんなことがあった後にのんびりしてると逆に落ち着かないんだけどにゃー」

 

隣で腕を組んで浮かんでいるのは土御門元春。

 

彼は、魔術の使用で重傷を負っていたが、結絆の力で時間を巻き戻したおかげで、ほぼいつも通りの調子を取り戻していた。

 

「うん?それはどういう意味かい?」

 

「深い意味はないぜよ。ただ、たまにはこういう時間も悪くないってことだにゃー」

 

元春は腕を枕代わりにして仰向けになり、心地よさそうに海に体を預ける。

 

 

 

 少し離れたところでは、天衣装着を使うイルカ「アトラス」が波間を跳ねていた。その背中には、当麻が恐る恐る掴まっている。

 

「お、おい、アトラスって本当に大丈夫なのか!?」

 

「心配しすぎじゃない? ねぇ、アトラスちゃん?」

 

当麻の後ろにいる操祈が、にこやかにイルカの背を撫でると、アトラスは嬉しそうに鳴いた。その直後――

 

バシャーン!

 

「うおぉっ!? 速ぇ!」

 

アトラスは一気に海の中を駆け抜け、当麻と操祈を乗せたまま水面を滑るように泳ぎ回った。

 

その姿はまるで波を切る魚のようで、見ているだけで爽快な気分になる。

 

「ははっ、いいねえ! アトラス、その調子だよお!」

 

結絆が声をかけると、アトラスは更にスピードを上げた。

 

「ちょ、ちょっと待てぇ!速すぎるだろ!」

 

当麻の叫び声が響くが、それを見た操祈はクスクスと笑う。

 

「焦ってる当麻も、魅力的なのよねぇ」

 

 

 

 「お兄様もアトラスちゃんと泳がない?」

 

「んー......まあ、せっかくの機会だからねえ」

 

 結絆は軽く息を吸い込み、アトラスに合図を送ると、するりとその背中に飛び乗った。

 

当麻はアトラスに翻弄されて、ダウンしている。

 

「よし、じゃあ......いこうか、アトラス」

 

アトラスは元気よく鳴き、次の瞬間、強く水を蹴った。

 

水しぶきを上げながら、アトラスは一気に沖へと向かう。

 

結絆はその背にしっかりとしがみつきながら、疾走感を味わった。

 

海の中を覗くと、透き通るような青の世界が広がっている。

 

「ははっ、いいねえ......!」

 

アトラスは結絆を乗せたまま、波の下をくぐり、時には水面から飛び出すように跳ねた。

 

結絆は風を感じながら、ふと振り返る。

 

操祈は軽く浮き輪に掴まりながら、優雅に海を漂っていた。

 

「お兄様~、私のこともエスコートしてくれないかしらぁ?」

 

「はいはい、少々お待ちを」

 

結絆はアトラスを操りながら、操祈のそばに寄る。

 

そして、そのまま優しく手を差し出した。

 

「ほら、しっかり掴まるんだよお」

 

「うふふっ、ありがとう」

 

操祈が手を取ると、アトラスは再び軽やかに泳ぎ出す。

 

二人を乗せたまま、水面を滑るように進んでいった。

 

それを見ていた元春は、やれやれと肩をすくめながら、当麻の方へ視線を向ける。

 

「で、カミやん、お前はまだダウンしてるのかにゃー?」

 

「いや、なんとか調子が戻ってきたぞ......!」

 

「ははっ、セリフと表情がかみ合ってないぜよ」

 

元春はそう言いながら、ゆっくりと海に潜り、ひんやりとした水の感触を楽しんだ。

 

 

 

 やがて、日が傾き始め、海の色がオレンジに染まる頃、結絆たちは砂浜へと戻ってきた。

 

「いやぁ、楽しかったなぁ......!」

 

当麻が腕を伸ばしながらそう言うと、操祈も満足げに微笑んだ。

 

「こんな穏やかな時間が、ずっと続けばいいわねぇ」

 

「そうだねえ」

 

結絆は海に目を向けながら、アトラスの背を優しく撫でた。

 

戦いのない、平和な夏の一日。

 

こんな日が、また来ることを願って。




これで、御使堕し編はおしまいです。

ストックが切れてきたので、ここからは更新頻度を落として、ゆっくり投稿していこうと思います。

次回は、結絆達がお茶会をする話です。
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