セブンスミストでの虚空爆破事件。
その被害は、上条当麻の幻想殺し(イマジンブレイカー)と結絆の能力で最小限に抑えられた。
しかし、問題はここからである。
「......このまま犯人を野放しにするわけにはいかないねえ」
ぬいぐるみに爆弾を仕掛け、小さな子供を利用して初春飾利を狙った黒幕。
そいつを捕まえない限り、また同じような事件が起こる可能性がある。
結絆は、隣にいる帆風に目を向けた。
「帆風、いけるかい?」
「もちろんです、結絆さん!」
帆風は力強く頷いた。
彼女の能力である天衣装着(ランペイジドレス)は、身体能力を飛躍的に強化する。
この場において、最適な戦力のひとりだ。
そして——
「犯人の足取りはつかめそうかい?」
「それなら、私が」
結絆たちの横で、初春が手持ちの端末を操作していた。
「防犯カメラの映像を確認しました。あのぬいぐるみを少女に渡したのは——」
彼女は画面を結絆たちに見せる。
そこに映っていたのは——
フードを目深に被った不審な男。
「この男が、ぬいぐるみを渡していました」
......こいつが、犯人かあ。
「カメラの映像を追ったところ、事件後すぐにセブンスミストを出て、近くの路地裏に入ったみたいです!」
「それなら、まだ遠くに行ってはいないねえ!」
「行きましょう、結絆さん!」
結絆と帆風は、一気に駆け出した。
セブンスミストの裏手、人気のない路地裏。
結絆たちは、そこで目当ての人物を発見した。
「......逃げられると思っているのかい?」
フードを被った男が、焦ったように振り向く。
「な、なんでさっきの爆発で傷一つついてないんだ......」
結絆は静かに答えた。
「自分からあっさり白状するとはねえ...さっきのぬいぐるみ爆弾、君が仕掛けたんだろう?」
「......っ!」
男の目が泳ぐ。
間違いない。
こいつが、犯人だ。
「くそっ、こんなところで捕まってたまるか!」
男がポケットから何かを取り出そうとした。
「帆風!」
「はいっ!」
結絆が指示を出すより早く、帆風が動いた。
バシュッ!!
帆風が能力を発動し、一瞬で男との距離を詰める。
「遅いですよ!」
ドガァッ!!
帆風の強化された膝蹴りが、男の腹部に炸裂した。
「ぐ、が......!?」
男はその場に崩れ落ちる。
天衣装着の強化速度に、反応できる人間はそう多くない。
「......やるねえ、帆風」
「お褒めいただき光栄です、結絆さん!」
結絆は倒れた男を見下ろす。
「さて、ここからは風紀委員の仕事だねえ」
結絆はスマホで、初春に連絡を入れた。
「初春さん、犯人を捕まえたよお。場所を教えるから後は任せたよお」
「すごいです! すぐに向かいます!」
こうして、結絆たちは虚空爆破事件の犯人を確保したのだった。
場所は変わって風紀委員177支部
「お疲れ様です! ありがとうございます、食蜂さん、帆風さん!」
風紀委員の177支部。
初春たちが所属するこの支部で、結絆と帆風は報告を終えたところだった。
「......にしても、随分あっさり捕まえましたのね」
そう言いながら、白井黒子が呆れたように肩をすくめる。
「白井さん、それは食蜂さんと帆風さんが優秀だったからですよ!」
「ええ、そうですわね......それにしても、またレベルアッパー絡みの事件とは...」
黒子の言葉に、結絆は反応した。
「......また?」
「ええ。最近、低レベルの能力者の能力が妙に増幅したような事件が多発しているんですの」
「今回の犯人も、もしかして......?」
結絆の問いに、初春が頷く。
「はい。まだ確定ではありませんが、調べてみる価値はあるかと」
レベルアッパー。
能力を急激に強化させる何かがあるのかもしれない。
「......これは、いよいよ本格的に調べる必要があるねえ」
結絆は、事件の背後にあるものを感じながら、静かに息を吐いた。
ひとしきり話が終わり、初春や佐天たちと軽く雑談をしたあと、二人は支部を後にした。
「結絆さん、お疲れさまでした!」
「帆風も大活躍だったね。あの場で機転を利かせてくれたおかげで助かったよお」
「いえ、結絆さんの判断力の速さには敵いませんよ」
二人は並んで歩きながら、セブンスミストの近くにあるクレープ屋に立ち寄ることにした。
さっきの事件で緊張した体を解すためにも、甘いものはちょうどいい。
「何にしようかなあ......お、季節限定のいちごチョコクレープがあるねえ!」
「私はシンプルにカスタードクリームのクレープにします」
注文を済ませ、クレープを受け取ると、二人はベンチに腰を下ろした。
ふんわりとしたクレープ生地から漂う甘い香りが、疲れを癒してくれる。
「......はぁ~、甘いものってやっぱり最高ですね」
「うんうん、頑張った後のご褒美って感じがするよねえ」
そんな風に会話を交わしながら、帆風はふとクレープの包み紙の中に何かが入っていることに気づいた。
「あれ? これ......」
「ん? ああ、クレープについてくるストラップみたいだねえ」
帆風が手に取ったのは、小さなゲコ太のストラップだった。
丸い目と愛らしい表情が特徴的で、アニメやグッズとして人気のキャラクターだ。
「......か、可愛い......!」
目を輝かせる帆風に、結絆は少し微笑ましい気持ちになった。
「そういえば帆風は、ゲコ太が好きだったよねえ?」
「ええ!部屋にもたくさん飾っていますよ!見ていると癒されるんですよね~」
帆風は大事そうにストラップを両手で包み込み、にっこりと笑った。
その姿はいつものしっかり者の彼女とは違い、どこか年相応の可愛らしさを感じさせた。
「ふふ、よかったねえ」
「はい! 大事にします!」
そうして二人は、平和なひとときを楽しみながら、クレープを頬張るのだった。
アニメでのクレープ屋の流れと似ていますが今回結絆たちが訪れたのは別の場所です。
結絆は帆風がゲコ太好きであることを知っていたので気を利かせていたということです。