ポーカーの決着がつきます。
結絆とエスメラルダのポーカーの試合が始まって、三試合目。
テーブルにカードが並べられていく。
結絆はゆっくりと自分の手札をめくった。
「ストレートだねえ」
「ふふ、確かに強いわ。でも、残念だったわね」
エスメラルダはカードを公開する。
「フルハウスよ」
場に並ぶのは、3枚のキングと2枚のエース。
「おやおや、やるじゃないかあ」
結絆は苦笑しながら、軽く肩をすくめた。
「やっと一本返せたわ。ここからは負けないわよ」
「その調子がどこまで続くか、楽しみだねえ」
結絆はそう告げると、ふと興味深げにエスメラルダを見た。
「ところで、ちょっと試したいことがあるんだけどお?」
「何?」
「トランプを上から下に弾いてくれないかい?」
「......?」
エスメラルダは首を傾げながらも、言われた通りにカードを上から下へと弾く。
その瞬間、結絆の目が細く光る。
「......ほお、なるほどねえ」
彼はカードがめくられる一瞬で、その配列をすべて記憶していた。
「何よ、その意味深な顔は」
「いやあ、ちょっと面白くなってきたなあってねえ」
エスメラルダはその言葉に眉をひそめたが、すぐに挑戦的な笑みを浮かべた。
「じゃあ、次の勝負も楽しみね」
「うんうん、お手柔らかに頼むよお」
二人のポーカー勝負は、ますます熱を帯びていくのだった。
四試合目、エスメラルダは巧みな手つきでカードをシャッフルし、テーブルの上で整えた。
「さて、それじゃあ配るわね」
そう言って彼女がカードを配ろうとした瞬間——
「おやおやあ?」
結絆が肘をつきながら、不敵な笑みを浮かべた。
「どうしたの?」
「いやあ、今のシャッフル、ちょっと面白かったなあってねえ」
エスメラルダは軽く眉をひそめながらも、平然とカードを配ろうとする。
しかし、結絆はその手を止めるように指を立てた。
「そのデック、一番下にキングが4枚入ってるよねえ」
——ビクッ。
エスメラルダの指が一瞬止まる。
「......何のことかしら?」
「おやおやあ、シラを切るのかねえ?」
結絆はくつくつと笑いながら、テーブルの上のカードを指でトントンと叩いた。
「まあ、いいんだけどねえ。でも、ちょっと確認してみようか」
結絆は手を伸ばし、デックの一番下のカードを確認する。
そこにあったのは——
「やっぱりキングだねえ」
結絆はカードを横に広げると、そこには4枚のキングがしっかりと揃っていた。
「へえ、偶然にしては出来すぎてるよねえ?」
「......そんなこともあるわよ?」
エスメラルダは、口元を片手で隠しながら微笑んだ。
「なるほどなるほど、そういうことにしておこうかねえ」
結絆は微笑を浮かべつつも、その眼光は鋭く光っていた。
「でもお、次に一番下のカードを自分のところに配ったら、流石に言い訳できないんじゃないかねえ?」
エスメラルダの表情が一瞬固まる。
「......ふふっ、さすがね」
「『ボトムディール』。一番下のカードを配るテクニック。まさか使おうとしてたわけじゃないよねえ?」
結絆が穏やかにそう言うと、エスメラルダは小さく肩をすくめた。
「......さすがにバレちゃったか」
「まあねえ。でも、俺に気づかれないようにやるなら、もうちょっと工夫が必要だったかもしれないねえ?」
「なるほどね。じゃあ、次はもっと上手くやるわ」
エスメラルダは悪びれる様子もなく、いたずらっぽい笑みを浮かべながらカードを集め直した。
「さて、もう一回ちゃんとシャッフルしましょうか」
「うんうん、正々堂々とやるなら大歓迎だよお」
二人のポーカー勝負は、さらにスリリングな展開へと突入していくのだった。
五試合目が始まる。
エスメラルダは先ほどのイカサマを見抜かれたことを気にしてか、今度は堂々とシャッフルを終え、カードを配る。
「さて、今回こそは本気で行くわよ」
「うんうん、期待してるよお」
結絆は余裕の笑みを浮かべながら、自分の手札を確認する。
(ふむ、なかなかいいねえ......)
手札にはキングのフォーカードが揃っていた。
「さあ、ショーダウンといこうかねえ」
結絆は手札を開き、堂々とキングのフォーカードを見せた。
「おおっ、フォーカードとは強いわね」
エスメラルダは微笑みながら、自分の手札をゆっくりと開く。
「でも、私の方が上よ」
そこに並んでいたのは、ハートの2から6までのストレートフラッシュ、滅多に出ない役の一つだった。
「......なるほどお、やるねえ」
結絆は驚いたように目を細めるが、その口元には楽しげな笑みが浮かんでいる。
「これで戦績は2勝2敗ね。そして、次の試合で勝敗が決まるわ」
エスメラルダはカードを丁寧に集めながら、結絆を挑発するような視線を送る。
「最後の試合、楽しみにしてるわよ?」
「うんうん、こっちこそお楽しみだねえ」
二人の勝負は、ついに最終局面へと突入する——。
六試合目が始まる。
エスメラルダはカードをシャッフルしながら、不敵な笑みを浮かべる。
「これで決着ね」
「うんうん、楽しみだねえ」
結絆は余裕の表情を崩さず、静かにカードを受け取った。
(さて、どう出るかねえ......)
結絆は、エスメラルダの様子を見る。
エスメラルダは手札を確認すると、目を細め、口元に笑みを浮かべた。
「ふふっ......これで終わりね」
彼女はそっと指を動かし、何かを念じるような仕草をする。
すると、彼女の手札は瞬く間に変化し、スペードの10からエースまでが美しく並んだロイヤルストレートフラッシュとなった。
「これで決まりね」
エスメラルダは勝ち誇った顔で、結絆を見つめる。
だが——
「本当にその手で勝負するのかい?」
結絆の穏やかな声が響いた。
「......え?」
エスメラルダは眉をひそめ、改めて自分の手札を確認する。
「え......な、何で!?」
そこにあったのは——バラバラの数字が並ぶ、完全なブタ手だった。
エスメラルダの顔から血の気が引く。
「そ、そんな......!」
結絆はくつくつと笑いながら、カードを指でトントンと叩く。
「まさか、魔術でイカサマをしようとしたんじゃないよねえ?」
エスメラルダは言葉を失いながら、冷や汗を流した。
「さあ、どうするかねえ?」
エスメラルダの顔色がみるみるうちに悪くなっていく。
手札がバラバラのブタになってしまったことが信じられないのだろう。
そんな彼女に、結絆は穏やかな声で語りかける。
「自分を信じられなくなったら終わりだよお」
その言葉は、彼女の胸に突き刺さる。
彼女はこれまで、確かな手応えを持ってこの勝負に挑んでいた。
それなのに、イカサマは見破られ、目の前で起こっている出来事が彼女の自信を揺るがせる。
「......そんなわけないわ。私は完璧なはず......!」
エスメラルダは震える指先でカードに手をかざし、再び魔術を発動した。
「今度こそ......!」
彼女の手札が再び変化する。
今度こそ勝てると確信しながら、エスメラルダはカードを開いた。
「......え?」
そこに並んでいたのは、再びバラバラのブタ。
「な、何で......?」
信じられないという表情で結絆を見つめるエスメラルダ。
一方の結絆は、ニコリと微笑みながら、自分の手札をゆっくりと開いた。
「さて、俺もカードを見せるとしようかねえ?」
スペードの10、ジャック、クイーン、キング、エース——。
「ロイヤルストレートフラッシュ、俺の勝ちだねえ」
エスメラルダは唖然とし、その場に崩れ落ちる。
「う......嘘......」
「これで勝負あり、だねえ」
結絆は微笑みながら、テーブルにカードを置いた。
ポーカー勝負は、結絆の勝利で幕を閉じたのだった。
エスメラルダは呆然としながら、結絆の手札を見つめていた。
ポーカーの勝負は、結絆の勝利で終わりました。
結絆は元々運がいいので、カードを交換しなくてもいいカードを引けています。
ポーカーのイカサマは色んなやり方がありますが、今回はボトムディールを使おうとしていたという流れで書きました。
僕自身マジックを少しやってたりしますが、マジックはとても奥深いと思っています。